北海道キャンプ場見聞録
混雑無縁のキャンプ場でまったり
塘路元村キャンプ場(7月23日~25日)
釧路川源流部を下り終え、弟子屈のスーパーフクハラで買い出しをしてから車3台で塘路湖の元村キャンプ場を目指す。
川下りで汗をかいたので風呂にも入りたかったけれど、少しでも早くキャンプ場入りしたかったので、先を急いだ。
昨日の摩周の森は、開設して間もないキャンプ場で、場内の整備も進んでないこともあってキャンパーは少なかったけれど、今日の元村キャンプ場はそうもいかないだろうと心配だったのである。
隅の方でも良いからテントを張る場所が残っていて欲しいと思いながら、午後4時過ぎにキャンプ場に到着。
まずはその手前にある管理棟で受付をする。
「今日は空いてますか?」と聞いてみたところ、「昨日よりもテントは少ないですよ、そんなに混雑するキャンプ場じゃないですからね」と言われる。
それを聞いて安心してサイトに向かったら、そこは本当に空いていてビックリしてしまう。
混雑とは無縁のキャンプ場だ
駐車場から近い場所には、あまりスペースが無かったけれど、その先はガラ空きと言っても良いくらいの状況だ。
私がタープを何処に張ろうかと迷っていると、Nもとさんがどんどん奥まで入っていって、湖に一番近い場所が良さそうだと言う。
荷物運びが大変そうだと思ったけれど、ここでは2泊するつもりでいたし、カヌーに乗るのなら湖に近いほうが良い。
そうして湖の見える場所にタープ設営完了。
湖岸側にタープを設営
次に各自のテントを設営。
Nもとさんは車中泊。
昨日は土埃を嫌って車中泊をした佐々木さんも、今日はテントを設営。
佐々木さんは色々なメーカーにスポンサーになってもらっていて、テントはかみさんと同じファイントラック。
一緒にテントを張りながら、かみさんは色々な技を教えて貰っていたようだ。
ファイントラックのテントが並ぶ
彼は道具類の扱いにもとても気を使っていて、テントはなるべく太陽の光には晒さないようにしていて、昨日のようなキャンプ場で土埃を被るのなんて以ての外らしい。
冒険家として色々な過酷なシーンでテントを張っているのだから、そんなことは気にしないのかと思っていたので、これは意外だった。
今日も源流部を降った後、トイレから何度も水を運びながら自分の乗っていたSUPを綺麗に洗っていた。
そんなSUPも知床では流氷に挟まれ、沖縄では波に煽られギザギザのサンゴ礁に乗り上げたりと、散々な目に遭っているのに、それでも使った後は常に綺麗に洗っているようだ。
自分の命をかける道具なのだから、少しでも疎かにはできないのだろう。
設営で汗をかいたけれど、これから風呂に入りに行くのも面倒で、我慢できずにビールを開ける。
このキャンプ場に泊まるのは21年ぶりで、その時は今回と同じ時期で蚊が酷かった思い出がある。
今回は虫も少なく、トイレや炊事場の施設も新しくなり、芝生も綺麗に管理されていて、昨日のキャンプ場とは雲泥の差の快適さだ。
サイト前の湖岸の様子
一休みしてから湖に漕ぎ出してみる。
湖面では見慣れない浮草が花を咲かせていた。
調べてみるとヒシとエゾノミズタデのようだ。
見覚えのある葉のヒツジグサは、まだ蕾だったけれど、これが咲けば湖面はもっと華やかになりそうだ。
夕暮れのカヌー散歩
タープに戻って、今日の夕食は清水町の辻屋精肉店で買ってきた盛岡冷麺。
昨日のキャンプの焼き肉も、この肉屋で買ったのだけれど、肉以外にも時々変わったものを仕入れて売っているのである。
ここで以前に買ったいぶりがっこは、私のいぶりがっこに対するイメージをガラリと変えてしまうくらいに美味しかったけれど、この盛岡冷麺もなかなか美味だった。
夕食は盛岡冷麺
食後はまた冒険談義。
そして冒険家佐々木さんの今後の身の振り方についての話となる。
彼は、とある町から自然ガイドとしての誘いを受けているみたいで、既に住む家の下見もしているらしい。
ちなみに現在の彼は完全な住所不定で、冬の山行のために最近買ったばかりの軽自動車が住まいとなっている。
その軽自動車には、冬の登山用具からSUPの用具、普段の生活用品から食べ物まで、隙間なく詰め込まれてるのだ。
ガイドとして案内できるフィールド等も、全て自分で回ってリサーチ済みで、商売としての勝算もあるとのこと。
意外と言っては失礼だけれど、かなり細かい部分までしっかりと調べあげているのには感心した。
冒険家としては、その様な細かさも必要なのだろう。
こんな写真を撮る時はテント内の明るさにも気を使わなければならないと教えてもらう
問題となるのは、定住してしまうと、今までのように自由な旅ができなくなること。
佐々木さんとは二日間一緒に行動しただけで、彼のことをまだ良く知っているわけじゃない。
それでも、自由を捨てて決まった職業につくのは無理じゃないのかなと、私には思えてしまうのだ。
講演を依頼させることもあるらしいが、そんな依頼を受けてしまうと、事前に日程を押さえられて自由な旅ができなくなるからと全て断っているくらいなのである。
その気持は良く理解できて、私も先の予定を決められるのは、あまり好きではない。
予定ができてしまうと、それだけで自由を奪われた気持ちになってしまう。
別に、毎日何かをしているわけじゃないけれど、何処かに旅にでも出ようと思いついた時に直ぐに実行に移せる様な自由の身でいたいのだ。
まあ、何事もタイミングであり、人から必要とされている今は良いチャンスなのかもしれない。
佐々木さんがガイドをするツアーにも、参加してみたい気もするのである。
テントに入ると、小さな明かりが点滅を繰り返しながら、インナーテントの上を移動していた。
キャンプ場でホタルを見たのは21年前にここに泊まった時が初めて。
それがまた今回も見られるとは感激した。
翌朝、佐々木さんは起きて直ぐにテントの撤収を始めていた。
少しでも紫外線を浴びる時間を少なくしたいのだろう。
この日は釧路川湿原部の川下りである。
朝食を済ませ、岩保木水門まで車を回してから、サイトの目の前の湖岸からカヌーを漕ぎ出す。
こんなお手軽な川下りができる場所は、北海道内で他には思い当たらない。
キャンプ場の前から川下りに出かけられるのが最高
そうして川下りを終え、午後2時過ぎにキャンプ場に戻ってくると、タープの下が少し散らかっていた。
カラスを警戒してゴミなどは片付けておいたのだが、テーブルの下に付けてあるネットの物入れに置いてあったナッツの缶が狙われるとは思ってもいなかった。
どうやってその物入れから缶を引っ張り出したのかは分からないが、プラスチックの蓋を開けて、その中身は見事に一つも無くなっていたのである。
他には大した被害は無かったけれど、カラスの賢さには舌を巻くしかなかった。
佐々木さんは例によって、乗っていたSUPを綺麗に洗っている。
その佐々木さん、SUPの部品を上陸地点の岩保木水門に忘れてきたことに気が付き、それを探しに戻る。
部品は無事に見つかったようだが、冒険家でもそんなミスをするのがちょっと微笑ましかった。
ツアーのカヌーが次々と出ていく
こんな時間になっても、キャンプ場の前から出艇していくツアーが結構あった。
飛行機で釧路について、そのまま2時間程度の川下りを楽しんでからホテルにチェックイン。
多分そんな旅程なのだろう。
ツアーでカナディアンを漕ぐガイドの方は、私と同じくらいの年代の人が多かった。
定年退職してから、アルバイトで働いているのかもしれない。
私もこちらに住んでいれば、そんなバイトをやってみたいものだ。
佐々木さんは、この後また道内をブラブラとするらしい。
霧多布岬のラッコを見てみたいと言うので、浜中町の昆布漁師で「風と土のナベタカ」としてカヌーガイドもやっている知り合いのたかやんを紹介しておいた。
この数日後、佐々木さんは、たかやんや白滝で犬ぞりツアーなどをやっている村林さんと一緒に嶮暮帰島に渡ったりして、北海道の新たな絶景を楽しんでいたようだ。
こうやって、人と人を取り持つのも面白い。
佐々木さんはこの軽自動車に全ての荷物を積み込んで北海道の旅を続ける
佐々木さんとは、また一緒に歴舟川でも下りましょうと約束してお別れをした。
その後、Nもとさんと一緒に標茶まで温泉に入りに行き、スーパーで買い出しをして、キャンプ場に戻ってくる頃には既に辺りは薄暗くなっていた。
この日は3人でまったりとキャンプの夜を楽しむ。
霧雨が降ってきた。
昨日の夜は少し冷え込んで上着を1枚着込んだけれど、今夜は昨晩ほど寒さは感じない。
静かな夜が更けていく。
4連休最後の日は札幌に帰るだけ。
今日も朝から沢山のカヌーツアーが出ていく。
3人で湖畔に降りてそんな様子を見ていると、小学生くらいの男の子が近づいてきて、恥ずかしそうに「あの~、カラスがいたずらしてますよ」と教えてくれた。
慌ててテントへ駆け戻り、テーブルの上に乗っていたパンを持ち去られずに済んだのである。
昨日やられたばかりなのに、何も学習していない私達は、カラスよりも劣っているのかもしれない。
水辺で遊ぶファミリー
その男の子は私達の隣にテントを張っていたファミリーだった。
多分、お父さんが「カラスが狙っていると教えてあげなさい」と息子さんに言ってくれたのだろう。
そのファミリーもSUPを1艇持ってきていて、犬と一緒に楽しそうに湖畔で遊び始める。
のどかな風景だ。
霧雨や夜露で濡れていたタープも何とか乾かすことができて撤収開始。
少しずつ荷物を運べば、駐車場から離れていても、そんなに苦労しないで撤収できる。
キャンプ場にもお別れ
急な誘いにも快く応じてくれたNもとさんのおかげで、初対面の佐々木さんともリラックスした時間を過ごすことができて、Nもとさんには本当に感謝するしかない。
楽しい夏の思い出ができたキャンプだった。