北海道キャンプ場見聞録
釧路川湿原部(塘路湖~岩保木水門)
(2021/07/24)
久しぶりの湿原川下り
釧路川川下りの二日目は塘路湖の元村キャンプ場から漕ぎ出して釧路川湿原部を下る。
テントを張っている直ぐ近くから出艇できるのは、とても気分が良い。
メンバーは昨日の源流部と同じく、女性SUP乗りのNもとさんと冒険家の佐々木さん。
キャンプ場前の湖岸からスタート
湖岸近くの湖面は浮草に埋め尽くされていた。
後で調べてみると、ヒシ、エゾノミズタデ、ヒツジグサ等が花を咲かせていたようだ。
湖岸には浮草で完全に覆われているところも
そんな浮草をかき分けて沖に出ると、佐々木さんがSUPを力強く漕ぎ始めた。
川よりも海でSUPに乗ることの多い佐々木さんなので、広々とした水面を見ると力が入るようだ。
力が入り過ぎて、塘路湖と釧路川を結ぶアレキナイ川への入り口を通り過ぎて、どんどん先へと進んでいってしまう。
ホイッスルを吹いて呼び戻した。
どんどんと漕ぎ進む佐々木さん
鉄橋の下を抜けてアレキナイ川へと入っていく。
流れは殆どない。
鉄橋を抜けるとアレキナイ川だ
早速、エゾシカが出迎えてくれる。
釧路川のエゾシカは、カヌーが自分達に危害を加えないことを知っているらしく、近寄っていっても逃げようとしない。
SUPに興味がありそうなエゾシカ
川幅が狭まり、ジャングルクルーズの様相になってくる。
そこを抜けると、急に視界が開けた。
釧路川の本流へと出てきたのである。
アレキナイ川と釧路川の合流部
私が初めて川を下ったのは29年前の釧路川。
その時も塘路湖から漕ぎ出したのだけれど、殆ど流れのないアレキナイ川から蕩々と流れる釧路川へと出てきた時は、とても心細く感じたものである。
その後、もう一度塘路湖から漕ぎ出しているけれど、それももう21年も昔のこと。
今の感覚では「あれ?こんなに緩やかな流れだったかな?」といった感じである。
本流の流れも漕ぎ上がれるくらいに緩やかだ
私達とほぼ同じ頃に国道の橋の袂から出艇してきたツアーのカナディアンが私達を追い抜いていく。
長大な釧路川だけれど、漕ぐスピードに余程の差がない限り、近づいたり離れたりしながら同じペースで下っていくことになる。
途中から、そこにタンデムのファルトボートが加わる。
バウに乗っている奥さんが巨大な望遠レンズを持って、鳥を写しながら下っているのだろう。
これならツアーのお客さんも喜ぶだろう
野生動物の撮影が目的ならば、なるべく先頭で下っていた方が有利である。
後ろから下っていくと、鳥や動物達は大体が逃げ去った後なのだ。
それでも、カヌーを恐れないエゾシカは近づいていっても逃げようとせず、良い被写体になってくれる。
私達にもサービスしてくれるエゾシカ
普通に漕いでいれば先頭に出ることも可能だけれど、他の人の邪魔にならないようにゆっくりと下っていく。
川岸ではピンクのホザキシモツケが花盛りである。
今日も佐々木さんから一眼レフカメラを渡され、佐々木さんの漕いでいる姿の撮影を頼まれる。
湿原らしい風景を背景にして撮影しようとしたが、あまりにも茫洋とした風景に構図も上手くまとまらず、ちょっと不本意な写真になってしまったかもしれない。
湿原らしい風景を探すが曇り空だと見栄えがしない
下っていく途中で、線路と川が並走する区間がある。
良いタイミングで湿原ノロッコ号が来てくれれば良いのだけれど、そうは上手くいかない。
鉄ちゃんカヌーイストならば、事前にノロッコ号が通過する時間を調べて、それに合わせてここまで下ってくるところだろう。
釧路川の風景にはカナディアンが似合うと言われるけれど、SUPもなかなか似合っている気がする
細岡のカヌーポートまで下ってきた。
キャンプ場からここまでの10キロちょっとを1時間50分で下ってきた。
川の流速は時速2~3キロくらいだろうか。
のんびりと下って大体は2時間前後でここまで下ってくることができる。
殆どの商業ツアーはここで終りとなる。
私達はこの先の岩保木水門まで下る予定である。
細岡のカヌーポート
私は細岡から先を下るのは今回が初めて。
Nもとさんも湿原部を下るのは初めて。
佐々木さんは100キロカヌーマラソンでこの区間を漕いでいるので、経験者は佐々木さんだけという可笑しなことになっていた。
でも100キロマラソンでは周りの景色など眺めている余裕は無いだろうから、全員が初めてのようなものである。
他のカヌーがいなくなったおかげで、早速タンチョウの姿を発見。
この時は私が先頭で下っていたので、他のメンバーは飛び立った後の姿しか見られなかった。
川の中に入っていたので最初はタンチョウだと気付かなかった
しかし、また直ぐに次のタンチョウが現れた。
今度はつがいである。
驚かせないようにゆっくりと近づいていく。
それでも最後には飛び立ってしまうのだが、Nもとさんと佐々木さんの真上を優雅に飛んでいったのである。
二人の目の前をタンチョウが飛んでいく
佐々木さんがSUPの上で横になって下っていた。
佐々木さんはユーコン川を下ったこともあり、ユーコン川ならば岸に衝突する心配もなく寝ていられるのだろうが、釧路川ではそうもいかない。
それでも、規模こそ違うものの釧路川はユーコン川に似ているところがあるそうだ。
これは気持ちが良さそうだ
釧路川は蛇行を繰り返しながら、釧路湿原の中へと入っていく。
河畔林も無くなり、川岸の土手の向こうには広大な湿原が広がっているのだろう。
しかし、水面からはその様子を目にはできない。
SUPの高い視点でもそれは同じだ。
何処かの支流に入り込めば、湿原の風景を直接見られるのかもしれない。
そのうちにチャレンジしてみたいものである。
周りの湿原の風景を直接見られないのが少し残念だ
今日は南風が少し強く吹いていたけれど、蛇行を繰り返す川の上ではその風もあまり気にならない。
昨日は素晴らしい青空が広がっていたけれど、今日はスタートした時から空はどんよりと曇ったまま。
でも、湿原部を下るのならばこれくらいの方が涼しくて下りやすい。
それが次第に青空が覗いてくると、急に暑さを感じるようになってきた。
風と日差しを遮れる場所を探して一休みする。
風と日差しを避けて一休み
スマホで現在地を確認すると、ゴールの岩保木水門まではもう少しの所まで下ってきていた。
休憩を終え、ゴールを目指して最後の一漕ぎ。
しかし、水門の少し手前から川は直線化されていて、向かい風が真正面からまともに吹き付けてくる。
カナディアンをソロで漕いでいたら、前に進むのも困難なくらいの風の強さである。
最後に少しだけ風の洗礼を受けたけれど、12時15分岩保木水門の前に上陸。
キャンプ場をスタートしてから3時間30分、距離はおよそ18キロである。
この区間もやっぱり、細岡で上がるよりも岩保木水門まで下ったほうが、湿原部の魅力をたっぷりと楽しめるだろう。
岩保木水門
キャンプ場に戻る途中に細岡展望台に寄り道する。
自分達が下ってきたばかりの川を、山の上から眺めるのも良いものである。
細岡展望台から自分達が下ってきた川を眺める
川の上からこの展望台を探してもその場所がはっきりと分からなかったのに、展望台からは川を一望できるのだ。
できるものなら、この展望台から自分達が川を下っている様子を眺めてみたいものである。
(当日12:00釧路川水位 標茶観測所:18.69m、岩保木観測所:1.19m)