北海道キャンプ場見聞録
キャンプ場で冒険談義
摩周の森(7月22日~23日)
南北アメリカ大陸をリヤカーで縦断、冬の知床をSUPで一周など、世界を股に掛けて冒険を続ける冒険家の佐々木規雄さんと、ひょんなきっかけで釧路川を下ることとなった。(佐々木さんのFacebook)
私が考えた計画は、4連休を利用して、まずは弟子屈町内のキャンプ場に泊まって、翌日に釧路川源流部を下り、その後塘路湖の元村キャンプ場に移動して、次の日は釧路川湿原部を下り、元村キャンプ場にもう1泊してから札幌へ帰るというもの。
我ながら完璧な計画だと思っていたら、前日になってその完璧な計画にほころびが生じたのである。
最初に泊まる予定だったRECAMP摩周のフリーサイトが、この日だけ満員になってしまったのだ。
オートサイトはずっと前から満員だったけれど、フリーサイトは夏休み期間中も十分な空きがあったので、予約をしなくても泊まれるだろうと甘く考えていた。
ここは完全予約制のキャンプ場なので、当日に行って隅の方にテントを張らせてもらうという訳にはいかないのである。
慌てて他の代替え案を考えたけれど、4連休の初日ともなれば、屈斜路湖周辺のキャンプ場は何処も大混雑なのは明らかだ。
キャンプ場ガイドを見ていると、弟子屈の街の近くに「摩周の森」という聞いたことのないキャンプ場が有るのを見つけた。
予約不要となっているので、どんなキャンプ場かは分からないけれど、そこに望みを託すことにする。
十勝の実家に来ていたので、当日は少し早めに出発して、昼ころには弟子屈に到着。
まずは腹ごしらえと思ったが、人気店は何処も行列ができていたので、昼食はコンビニ弁当で済ませる。
「摩周の森」は国道沿いの同名のカフェの裏がサイトになっているようだが、そこにテントの姿は見当たらない。
これならばキャンプ難民という最悪の事態は避けられそうなので、安心して和琴半島湖畔キャンプ場の様子を見にいくことにした。
まだ昼を過ぎたばかりなので、隅の方ならテントを張るスペースがあるかもしれないと考えていたのだ。
しかし、その考えが甘かったことは直ぐに分かった。
キャンプ場の入り口に「本日はテントサイト満席です」と書かれた看板が立っていたのである。
屈斜路湖畔キャンプ場は昼で既に満員
場内に入ってみると、まだ余裕があるようにも見える。
しかし、地面にはロープが張られていて場内は区画割りされていた。
最近はこんなシステムになったのか、コロナの関係でこうしているのかは分からないが、これではソロ用テントを隅の方に張ることもできない。
諦めて、摩周の森に戻ることにした。
区画割りされているので場内はそんなに混雑しているようには見えない
摩周の森は3年前にオープンしたばかりのキャンプ場で、カフェの後ろの広大な敷地をそのままキャンプ場として開放している。
場内はまだ整備途中のようで、トイレも数棟立っているが、使えるのはまだ一箇所だけ。
場内を一周する通路は土が剥き出しで、しばらく雨が降っていないので、車で走るとものすごい土埃が舞い上がる。
サイト部分はそんな土の上に雑草がまばらに生えているだけ。
ワイルドと言えば聞こえは良いけれど、普通のキャンパーならばテントを張るのも躊躇いそうなサイトである。
それでも、もっと酷い場所にテントを張ったこともあるし、私にしてみればこの日の宿を確保できるだけでありがたかった。
そしてこの日の弟子屈は気温もそんなに高くならなかったので助かった。
札幌の最高気温は30度を超えていたけれど、弟子屈のこの日の最高気温は26度程度。
気温が25度を超えるとキャンプへ出かける気も失せてしまう私達だけれど、これなら何とか我慢できる範囲内である。
この日は佐々木さんの他に、同じカヌークラブのNもとさんも来る予定なので、最近は滅多に張らなくなったタープを場内の真ん中に設営し、佐々木さんの到着を待つ。
横から見ると地面は緑の覆われているように見えるが・・・
佐々木さんは、数日前に徒歩で知床岬を目指し、今日は斜里岳に登り、その後は摩周岳にも登ってからキャンプ場入りすると聞いていた。
住所不定の佐々木さんは今年の冬にSUPで知床を一周し、そのまましばらく北海道内に滞在しているようだが、常に体を動かしていなければ気が済まないのが冒険家というものなのだろうかと感心してしまう。
結局、摩周岳はガスに包まれていて登るのをやめたとのことで、間もなくして佐々木さんもキャンプ場に到着。
一緒に弟子屈の温泉「泉の湯」に入りに行く。
200円で源泉かけ流しの温泉に入れるのだからたまらない。
佐々木さんはテントを張らずに軽自動車で車中泊
温泉から返ってきた後は佐々木さんの冒険談に耳を傾ける。
平凡な生活をしている私達から見れば信じられないような世界の話である。
今年の冬のSUPによる知床一周でも、ルシャおろしの強風でSUPがひっくり返ったまま沖へと流されたり、流氷に挟まれてSUPが潰されそうになったりとか、何時命を落としてもおかしくはない状況だったようだ。
午前中まで仕事をしていたNもとさんが到着したのは午後8時過ぎ。
実は、Nもとさんと佐々木さんは今年、札幌のパドルクラブに偶然に居合わせて、そこで言葉を交わしたことがあったらしい。
その前にも、佐々木さんがイベントの手伝いでホタテを焼いていた時に、そのイベントに参加していたNもとさんが一生懸命にホタテを焼いている佐々木さんの姿を覚えているという。
狭い世界なのである。
同じカヌークラブの初代SUP乗りのIくらさんは、佐々木さんの南北アメリカ大陸リヤカー縦断の時にサポートをしていたそうだ。
そのIくらさんが、佐々木さんから「川を下ってキャンプをするような人がいないか?」と聞かれて、私のことを紹介してくれて、それで今回のキャンプに至っている。
人の繋がりとは面白いものである。
冒険談義で夜は更けていく
佐々木さんは冒険家でありながら、自らも絶景ハンターと名乗るくらいに、行く先々で素晴らしい絶景写真を撮っている。
「写真集を出してくれたら絶対に買うから」と言っておいたけど、どうだろう。
その写真の中に自らが写り込んでいるものも沢山あり、誰かに写してもらったり、30秒くらいのタイマーでもセットして写しているのかと思ったら、全てカメラの10秒セルフタイマーで写していると聞かされ驚いた。(佐々木さんのInstagram)
カメラのシャッターを切ってから写る場所まで全力ダッシュ。
かなりの距離があるので、走るルートから一歩一方の足を置く場所まで、何度もシミュレーションして、ようやく1枚の写真を撮っているらしい。
まあ、私も同じ様にセルフタイマーで写真を撮るために、一人で焚き火の周りを走り回ったりしているので、その話には笑ってしまった。
また、風景写真の中に自分のテントを一緒に収めているものも多い。
それなので、テントを張る時には、常に写真映えする場所を考慮しているそうだ。
冬の知床で沖に流されて、低体温症で死にそうになりながら岸まで戻ってきた時も、少しでも写真映えする場所を探してテントを張ったと言うから、徹底している。
私もホームページにアップするのにキャンプ風景の写真を撮ることも多いので、これは参考にさせてもらうことにした。
朝から冒険談義
そうして翌朝も、冒険談から装備のウンチクまで、参考になる話を沢山聞かせてもらう。
佐々木さんはお酒も飲まず、コーヒーも飲まない。
極限状態の冒険をしている時に、そんなものに手を出している余裕など無いのだろう。
3泊程度の縦走でも、一日一本のビールは欠かせずに、ザックにビールを詰めこんで歩いているような私達には、とても真似できそうにない。
朝食にミルクココア
ちょっと気が引けながらも私達はコーヒー、佐々木さんはココアを飲みながら朝食を済ませる。
この日は、釧路川源流部を下ってから、次のキャンプ地である塘路湖の元村キャンプ場へと移動する予定である。