北海道キャンプ場見聞録
シーソラプチ川・空知川(2022/08/21)
ヒーローコースを流される
カヌークラブ8月例回の二日目は、何処を下るのかわからないままに清水町の実家を出発。
昨日とは打って変わった素晴らしい青空が広がり、国体コースの濁りもかなり取れていた。
観測所の水位は少し減っていたけれど、見た目の水量は大して変わっていない気がする。
それでも、これならば2日連続で空知川を下るのも有りだなと思いながら、皆がキャンプをしている落庵へと向かう。
そこで耳にしたのは、今日は空知川を下る組とシーソラプチ川を下る組の2つに分かれるという話である。
私は昨日、シーソラプチ川のトラウマの瀬に入っているログを目にしていたので、それが信じられなかった。
シーソラを下る組の人に話を聞いてみると、トラウマの瀬にログが入っていることも知らない人もいた。
ラフトも下っているから大丈夫だろう、程度の話で決めたのだとしか思えない。
役員が決めることだから反対はしないけれど、本当に大丈夫なのかと心配になってくる。
最終的にシーソラプチ川を下るのは諦めたみたいなので、ホッとした。
落庵の裏は丁度良い出艇場所になっている
皆が宿泊していた落庵の裏から直接スタートすることになったが、ここも一応はシーソラプチ川である
昨日と同じく、国体コースが終わった場所からスタートする組もいるけれど、今日は私も国体コースにチャレンジするつもりだ。
落庵裏からスタートするのは16名で、昨日よりはチャレンジャーがかなり増えていた。
スタートして直ぐ先の王子橋の手前にちょっといやらしい場所がある。
水量が増えるとここがどうなっているか心配だったけれど、その手前で流れが2つに分かれていたおかげで、水量自体は何時も下っている時と変わりはない。
手前の分流に水が流れてくれたので橋の手前の瀬は何時もと同じ水量
しかし、早速ここでH川さんが沈脱してカヤックを流してしまった。
昨日に続いて私の舟が沈脱者運搬船となって、H川さんを流されたカヤックの場所まで送り届ける。
今日はI垣さんのミニラフトがないので、他に運搬船になれるのはNもとさんのSUPくらいである。
私も一度NもとさんのSUPのお世話になった事があるけれど、乗るのならばそちらの方が楽しいかもしれない。
無事に舟まで送り届けたけれど、この後勢い余って岩に激突
シーソラプチ川は増水しているものの、そんなに激しい流れにもなっていない。
水も澄んでいて気持ちが良い。
それでも、何時もより流れも早くて波も大きく、パドルを握る手にも力が入る。
波は荒くても下るのが心地よい
左側からルウオマンソラプチ川の濁った水が流れ込み、清流の川下りもここまでである。
国体コースに入ってまずは三段の瀬。
一人ずつ順番に下っていく。
増水により落差の少なくなった三段の瀬は、コースさえ間違えなければ何時もより難易度は低かったような気がした。
川の左半分だけが濁っている
全員が三段の瀬を下り終えるまで、スタートしてから1時間は経っていた。
下流からのスタート組は待ちくたびれていたことだろう。
三段の瀬は落差が小さくなっていた
そしていよいよ、一番の難所である渡月橋の落ち込みである。
昨日は写真班として皆がここを下る様子を間近で見ていたので、下るルートは大体が頭に入っていた。
そして、落ち込みの下の大きなウェーブの頂点を越えて瀬をクリアする自分の姿も、完全にイメージできていた。
渡月橋までの下るルートもしっかりと見えていたのだが
それでも、先に下っていったメンバーの何人かが沈脱していた。
そのレスキューが終わったところでGOサインが出て、次の人が下っていく。
途中、沈脱した人もいないはずなのにストップサインが出ていた。
何が起こったのだろうと思っていたら、ラフトツアーの一艇が右岸側のエディに捕まって出られなくなっていたようだ。
そのラフトをクラブのメンバーがロープで引っ張り出して、ようやくGOサインが出た。
主なメンバーも下り終えて、下流でのレスキュー体制も強化されたようなので、私も下ることにした。
クリアするイメージはできていても、もしも沈した場合、大きなカナディアンは引き上げるのも大変なので、下手をするとゴール地点を過ぎて流される恐れもあるのだ。
落ち込みまでは、無理をしないで左岸側のチキンコースを下っていくことにする。
ゆっくりと流れに漕ぎ出して、「さあ、いよいよだぞ」と気合を入れていたら、カヌーが突然傾いて、そのまままさかの沈。
近くで見ていた人達が一斉に「え~~っ!」と声を上げるのが聞こえたけれど、「え~~っ?」と言いたいのはこっちの方である。
波も立っていない緩やかな流れの中で沈するなんて、全くの想定外だった。
穏やかな流れの場所でまさかの沈
慌ててその先のザラ瀬で立ち上がろうとしたけれど、今日の水量ではそれは無駄な努力に過ぎなかった。
その際にパドリングシューズが片方脱げてしまう。
その途中でパドルも離してしまったようだ。
そのまま波に揉まれながら、パチンコ岩に向かって真っ直ぐに流される。
先に流れていたカヌーがパチンコ岩に引っかかりそうになっていたところに、そのままぶつかっていく。
嫌な瞬間だったけれど、トラブルもなくカヌーと一緒にパチンコ岩の右側をすり抜ける。
しかし、その先で波に巻かれて水を飲んでしまう。
ヒーローコースを流されていく
去年、渡月橋で沈した時はメガネを流してしまって、これからは川を下る時にはメガネバンドを絶対に付けようと心に決めていた。
しかしここで、メガネバンドをしていないことに気がついた。
シューズとパドルは流してしまったけれど、メガネだけは死守しなければならない。
慌ててメガネを押さえる。
その後、一瞬だけ穏やかな流れとなるが、落ち込みが目の前に迫ってくる。
舟に乗ったまま下るとしたら、一番避けなければならない右岸側からの落ち込み突入である。
カヌーが凄い勢いで落ち込みの先へと流されていったが、人間の方はその落ち込みの手前で足がついた。
「ラッキー、このまま岸に上がれるかも」と思ったのは、ほんの一瞬の間だった。
流れの強さに抗うことはできずに、そのまま落ち込みの中に。
ここに体一つで落ちていくと思うと良い気持ちはしない
渡月橋の落ち込みに巻かれるのは、これが初めてではない。
暫く浮き上げれないのは分かっているので、大きく息を吸って息を止めたまま水中に没する。
本人は長い間水中でもがいていた気がするけれど、動画を見るとほんの一瞬だったようだ。
再び水中から浮き上がるとN島さんがドンピシャで目の前にレスキューロープを投げてくれた。
ボロボロになって岸に這い上がる。
一発でレスキューロープを決めてくれたので助かった
そこでパドルも流してしまったことを告げると、幸いなことに少し後から私のパドルも流されてきた。
ここでは回収できなかったけれど、カヤックで追いかけていってくれたので何とかなりそうだ。
沈して流される間の苦しさにおいては、今回は私のカヌー経験の中でも3本の指に入るのは間違いないだろう。
ちなみに他の2回は、雪解け水で増水した雨竜川を600m流された時と、増水の鵡川でアンダーカットの大岩に吸い込まれそうになりながら流された時である。
流されている間も苦しかったけれど、もっと苦しかったのは下流組のスタート地点まで道路に上がって歩いていく時だった。
私の知り合いに裸足で山に登る人が居るけれど、それがどれだけアンビリーバブルな行為であるのか、改めて知らされた気がした。
メッシュの靴下だけで歩くのは至難の業だ
やっとの思いで下流組スタート地点まで辿り着き、そこで無事に回収されている私の舟とパドルを見つけ、ヘナヘナと座り込んだ。
そこでは相変わらず、流れてくる舟を回収したり、E田さんの愛犬大ちゃんが川に流されかけたのをレスキューしたりと、皆が忙しそうにしている。(沈して流される動画)
対岸に取り残されたH川さんをレスキューするのに「カナディアンに乗せて連れてきた方が安全だ」なんて会話も聞こえてきたが、私は片方だけ無くなってしまったKEENのパドリングシューズを見つめながら「これって結構高かったんだよな~」と一人うなだれていた。
同じく流されながらレスキューされた大ちゃんとお互いを慰め合う
片足が裸足のままこの先を下るのも大変だなと思っていた時に、今日も川を下らずにレスキュー役に徹しているガンちゃんの首に巻かれている手ぬぐいが目に入った。
ガンちゃんのトレードマークとも言えるその手ぬぐいを、私は図々しくも「その手ぬぐい貰えるかな?」と聞いてみると、優しいガンちゃんは惜しげもなく手ぬぐいを首から外して私の方に放り投げてくれた。
裸足の足にこの手拭をグルグル巻にすると、踏ん張りも効いて、小さな石ころだらけの川原もそんなに不自由なく歩くことができ、大いに役立ってくれたのである。
此処から先の川下りは、傷心の私にとっては消化試合のようなものだった。
夏の終わりを思わせるような、川の上に広がる青い空とそこに浮かぶ白い雲の風景を見ても、特に何も感じない。
向かい風でカヌーがクルクルと回される。
それに抵抗する力は既に残っていない。
最高の川下り日より
どうして何もない場所で沈したのか、その理由が全く分からずにいたけれど、後になって考えてみると身体的な疲れが原因だったような気がした。
今年の4月に四国の石鎚山で滑落して肋骨を骨折して以来、それまで続けていた筋トレを全くやらなくなってしまっていた。
山の緑も眩しい
増水した川のダウンリバーでは何時も以上にパドリングに力が必要となる。
前日のダウンリバーの疲れが取れないままに、今日のシーソラプチ川と国体コース。
気持ちとは裏腹に、体力的には既にカラータイマーが点滅し始めていたのだ。
水に差したパドルにちょっと水圧がかかっただけで、それに抗うこともできずにカヌーはあっさりとひっくり返ってしまったのだろう。
小学生とは思えない漕ぎっぷり
気が付くと皆から大きく引き離されていた。
今日はI上さんが、職場の若い女の子を連れてきていた。
カヤックでの川下りが2回めだという彼女は、全く臆する様子もなく瀬にチャレンジしては、その度に沈脱を繰り返している。
それでもめげる様子が無いのは、若さゆえのパワーなのだろう。
沈してもめげる様子のない若い女の子を見習いたい
これからも皆と一緒に楽しく川で遊び続けるためには、筋トレをさぼってはいられない。
そんなことを考えながら、向かい風の中を必死になってカヌーを漕ぎ続けたのである。
この日の川下り動画
(当日12:00空知川水位 福寿橋:364.93m)
北落合橋(堤防天端からの高さ):-4.91m