北海道キャンプ場見聞録
美々川(2018/04/10)
源流を訪ねて
久しぶりに美々川源流まで遡ってみよう。
前回源流部まで行ったのは17年も前の話なので、その時の川下り日記を読み直して記憶をたどる。
美々橋の上から上流部を眺める
前回は、美々橋の一つ下の松美々橋に車を停めて、源流部まで遡った後は松美々橋まで下っていた。
17年前からは体力も大きく衰えていそうなので、一応自転車は積んで行ったけれど、今回は美々橋と源流部の往復で済ませることにする。
美々川でカヌーに乗ること自体も11年ぶりである。
11年前はカヌークラブの例会で下っていたのだが、例会で美々川を下るなんて今のクラブの状況からは考えられないことである。
それくらいに流れの緩い美々川だけれど、スタート地点の美々橋付近は結構流れも速い。
天気も良くて鼻歌交じりで漕ぎ上がり始めたけれど、いきなり全力のパドリングとなる。
今月末に釧路川で行われる100キロカヌーマラソンに出る予定なので、これも良いトレーニングになりそうだ。
川幅が広がり流れも緩やかになる。
しかし、決して安心できないのが美々川源流部への遡上である。
早速、川を塞ぐ倒木が現れ最初のポーテージを強いられる。
川岸も所々がぬかるんでいるので、ポーテージも油断できない。
最初のポーテージ、川岸も所々ぬかるんでいて長靴が埋まる
葦が繁茂して川が消えかけている所にも何度も出くわす。
でも、木が絡んでいなければ、力わざで何とか切り抜けることができる。
草だけなら何とか通過できる
ポーテージはしなかったけど結構苦労したところ
更にもう一か所ポーテージ。
その次に現れた場所はポーテージすることもできず、水中の倒木の上に足をかけたりしながら、何とか切り抜けた。
ただ、20年以上履いている私のバーバリアンの長靴は脛のところに穴が開いているので、その最中に水が結構入ってしまった。
苦労したのはこの3か所で、後は腕力さえあれば何とか切り抜けられる。
こんなところばかりならば楽に漕ぎ上がれるのだけれど
フクジュソウの周りに生えている植物の名前が分からない
岸辺に咲いているフクジュソウを見つけて上陸してみる。
そこの森の中では、あちらこちらでフクジュソウが群落を作って咲いていた。
こんなに沢山のフクジュソウを見たのは初めてかもしれない。
ナニワズも黄色い花を付け、数は少ないけれどアズマイチゲにキバナノアマナも咲いている。
緑の細い葉を伸ばした植物も大群落を作っていた。
花を咲かせる種類なのかどうかは分からないが、もしもこれが全部花を咲かせたとしたら、とんでもなく美しい光景を見られそうだ。
ここの森の中でしばらく時間を過ごし、再びカヌーに乗り込む。
ここで上陸して花の風景を楽しんだ
更に漕ぎ上がっていくと、かみさんが何かを見つけたようだ。
「あれってアイヌネギじゃない?」
確かに枯草や落ち葉の茶色い風景の中で、川岸の一角だけが緑色に染まっているのが見えた。
カヌーに乗ったままアイヌネギを収穫
カヌーを近づけてみると、収穫するのにちょうど良い大きさに育った美味しそうなアイヌネギだった。
今回は「新鮮なフキノトウでも採って帰ろう」程度に考えていて、まさかアイヌネギが生えている何て思ってもいなかった。
カヌーに乗ったまま、ドライブスルー方式でアイヌネギを収穫する。
周りには水芭蕉も沢山あったけれど、まだ花は咲かせていない。
私のイメージでは雪解け後に一番先に花を咲かせるのが水芭蕉だと思っていたので、それより先にアイヌネギが大きくなっているのが不思議な気がした。
もう一か所、やや小さいアイヌネギの群生しているところを見つけたが、ネギがあったのはこの2か所だけ。
どちらも、そんなに大きな群落ではないので、ネギ収穫を目的としてやってくるような場所ではない。
この水芭蕉が一番大きく育っていたくらい
ナニワズとアズマイチゲ
水草がパドルに絡みついてくる
次第に水深が浅くなってきて、川底一面に水草が茂ってくる。
バイカモもあるけれど、バイカモを少しごつくしたような種類の水草が多い。
黒く枯れているのは、夏になれば緑色に染まるのだろう。
そんな時に見ればもっと美しいのだろうが、多分その頃には葦や他の水草も茂って、ここまでは遡ってこれそうにない。
パドルにもそんな水草が絡みついてくる。
途中で川が分流していたが、より水の多い方に進んでいく。
とうとう1本の倒木に行く手を阻まれ、そこからは歩いて先を目指すことにした。
川岸に咲くフクジュソウ
ここでもフクジュソウが沢山咲いていた。
川岸に咲くフクジュソウがなかなか画になっている。
小さな流れ込みの横に黄色の花を見つけた
フクジュソウにしては随分鮮やかな黄色だなと思ったら、それはエゾノリュウキンカの花だった。
エゾエンゴサクの花も開き始めている。
美々川でこれだけ多くの花が咲いているとは驚きだった。
岸に沿って踏み分け道らしき跡が確認できる。
カヌーでここまで来る人は殆どいないと思われるが、近くから歩いてくるようなツアーは行われているかもしれない。
エゾノリュウキンカも花を咲かせていた
水深が次第に浅くなり、背の低い苔のような植物が一面に広がってくる。
如何にも川の源流らしい風景である。
源流部に近づいてきた雰囲気
放置された人工物
そんな中に突然人工物が現れて興ざめする。
コンパネを組み合わせてウライのようなものでも作っていたのだろうか。
しかし、川の本当の源流部にこんなものを作っても意味が無いと思われ、何のための施設なのか検討が付かない。
いずれにせよ、使わらなくなったまま放置された人工物は見苦しいことこの上ない
一番流れの強いところを追っていくと、崖の下から勢いよく水が流れている場所を見つけた。
ここも、土が崩れないようにするためなのか、木の枠が付けられていた。
こんな場所での人工物は本当に不自然でしかない。
もう一つの人工物は上空をひっきりなしに通過する飛行機。
物凄い音に野鳥のさえずりも聞こえなくなってしまうが、新千歳空港が直ぐ近くなのでこれは我慢するしかない。
木の枠のところからコンコンと水が湧き出している
他にも水の湧いていることろは近くに幾つかあったけれど、個人的にここを美々川の源流と認定する。
17年前に訪れた源流がここだったのかは、当時の写真を見てもハッキリとはしない。
とりあえずはこれで今回の目的は達成できた。
人工物はちょっと邪魔だけれど、美々川源流は無理してでも訪れる価値のある場所である。
近くではワサビのような葉の植物が沢山群生していた。
葉をちぎってかじってみたけれど、ワサビのような味がしない。
違う植物かと思ったが、後で調べてみたら葉ワサビで間違いなさそうである。
葉ワサビを山菜として食べたことは無かったので、できればこれも収穫して持ち帰りたかった。
カヌーまで歩いて戻る
カヌーまで戻って舟の上で昼食にする。
カヌーに乗り込もうとした瞬間に深みに足をとられてバランスを崩し、その拍子にもう片方の長靴にも水がどっぷりと入ってしまう。
危うく美々川で乗り沈するところだった。
緩やかな流れでも、そこを遡るのと比べると、下るのは全然楽である。
川の中で揺れる水草や、その中を横切る魚の群れの姿を楽しみながら、のんびりと下っていく。
水草の上を流れるように下っていく
かみさんが森の中にエゾシカの角が落ちているのを見つけた。
かみさんが上陸して、半分くらい埋もれていたその角を引っ張り出す。
両角の残ったエゾシカのスカル
すると、かみさんが小さな悲鳴を上げた。
その角に繋がってシカの頭蓋骨も土の中から現れたのである。
両方の角が付いたままの頭蓋骨、持ち帰れば良いコレクションになりそうだったが、かみさんが嫌がるので諦めることにした。
今度は私が森の中を動く動物の姿を見つけた。
その動物は水の中に入って泳ぎ去ったので、多分野生化したミンクなのだろう。
本当に、全く退屈することのない美々川である。
気になったのが、ところどころに固まっていた、レンコンのような物体である。
多分、何かの植物の地下茎だと思われるが、もしかしたらレンコンのようにして食べたら美味しいかもしれない。
さすがに、そんな妄想を実行に移すことはなかった。
レンコンのように見える何かの地下茎
迷路の中を下っていく
帰りはポーテージも面倒なので、無理やり木の下を潜り抜けたり、上を乗り越えたりして、カヌーから一度も降りずにスタート地点の美々橋まで戻てくることができた。
美々橋まで戻ってきた
美々川源流部はとても魅力的なフィールドである。
何年後かにはもう一度下ってみようと心に決めて、札幌へと戻ることにした。
(当日12:00美々川水位 ウトナイ上流:2.02m)
美々川源流を訪ねる動画