そのうちに後ろの方から子供の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。今日が川デビューのOさんの息子さんのようです。カヌーの上に立ち上がってもヨシが邪魔で後ろの様子が全く分かりません。
しばらく泣き声が続いていましたが、突然ぱたりと泣き声が聞こえなくなりました。ようやく機嫌が直ったのかなと思ったら、カヌーの中で暴れまわって川の中に落ちてしまったとのことです。
のんびり下れる美々川のはずなのに、何だか大変なことになってきました。
そうしてようやく、松美々橋へ到着。
ここからはT山さん艇に、奥さんとこれまた今日が川デビューの娘さんが乗り込みます。ここから下流ならば何とか下れるでしょう。
Oさんの息子さんもここでリタイアかと思われましたが、ようやく機嫌が直ったようで、まだカヌーに乗ると言ってます。
小さなお子さんの川デビューは何処も大変ですね。
そこから先も相変わらず、カヌー1艇が通るのがやっとのような狭い川幅です。それでも松美々橋の上流部よりはかなり下りやすくなってきました。
先頭でラッセルする必要も無くなったので、後ろの方からのんびりと下ることにします。
ヨシに囲まれ蛇行しているので先の様子が全く分かりません。その蛇行の一つを回ったところに突然、川の中に突っ立っている人間が現れたのでビックリしました。
「えっ?ま、まさかここで沈したの?」
普通の川ならば、沈した人は直ぐにネタとして取り上げさせてもらうのですが、この美々川で沈したとなると、さすがに本人の名誉のこともありますので、それが誰だったかはここでは伏せておくことにします。
それにしても初心者ならともかく、北海道ウィルダネスカヌークラブの会長 ともあろう人が、よりによって美々川で沈するとは一体どうしたことでしょう!
他のクラブに対する手前もありますから、これはもう 北海道ウィルダネスカヌークラブの会長が美々川で沈した と言う事実は絶対に秘密にしなくてはならないのです。
ウェットスーツならぬスウェットパンツのままカヌーに乗って美々川で沈したのが北海道ウィルダネスカヌークラブの会長だった ことは決して口外しないようにお願いします。
まあそんな事件もありながら相変わらず細い流れを一列縦隊で下っていくと、三沢川が合流するところでようやく川幅も広がり、その合流地点でカヌーに乗ったまま昼食にします。
川幅が広まるのは良いのですが、今度は美々川名物の向かい風がもろに吹き付けてくるようになります。昼食中もこの風によってカヌーが反対岸に吹き寄せられ、おかげでとても親密な昼食タイムとなりました。
そこから先は向かい風と戦いながらゴールを目指すのですが、この向かい風を考慮してゴール地点を第二美々橋にしたのは正解でした。
もしも当初の予定通りに植苗橋をゴールにしていたら、悲惨な美々川下りになっていたと思われます。
それでもそこから先の向かい風で、一人でカヤックを漕いでいたK岡さんの息子さんは相当体力を消耗したようで、途中からお父さんの舟にロープを?いで引っ張ってもらうようになりました。
お父さんの方も娘さんをインフレータブルの前に乗せて一人で漕いでいるわけですから、かなり大変だったと思われますが、辛そうな表情を一切浮かべず父親の威厳を保つために息子さんを後ろに引っ張りながら必死にパドリングするその姿はとても感動的なものであり、世間一般の軟弱な父親達に是非とも見せてやりたいような勇姿でした。
|