北海道キャンプ場見聞録
釧路川(2017/08/28)
感性を磨いて下る釧路川
カヌークラブのN野さんと、民宿やレストランの仕事が忙しくてクラブの例会になかなか参加出来ない亜香里さんとの間で、釧路川を下りましょうとの話しがまとまる。
その日程調整の役割が私に回ってきて、丁度帯広でのクラス会の予定があったので、それに合わせて月曜日に予定を組んだ。
参加メンバー
一応はクラブの掲示板でもアナウンスしておく。
ホワイトウォーター指向の人が多いカヤッカーは釧路川には興味を示さず、しかも札幌から遠く、おまけに月曜日である。
どうせ誰も来ないだろうと思っていたら、帯広在住のO元さんから参加表明があった。
前日から屈斜路湖でキャンプし、そこから釧路川源流部川下りのスタート場所になる眺湖橋へ移動。
亜香里さんのお友達であるあしやんも、牧場で牛の分娩を終えてから駆け付けてくれた。
あしやんは、牧場経営の他にASHIYAN CANOEの名前でカヌーガイドもやっている。
2年前に一緒に釧路川を下って以来の再会である。
2年前には、大型カナディアンをその中に積み込んだ真っ赤なバスで現れて驚かされたが、今回も外国製のバカでかいジープに乗ってきてまたまた驚かされる。
この次に会う時は、大型コンバインに乗って現れそうである。
まずは湖にカヌーを浮かべる
道外の小中学校はまだ夏休みのところもあるのか、釧路川のガイドツアーも最後の賑わいをみせていた。
そんなツアーがひとしきり出艇していった後、私達も湖にカヌーを浮かべる。
あしやんが連れてきた愛犬メリッサは、カヌーの中でご主人の方を向いてちょこんと座っている。
メリッサは、カヌーの上から見える風景よりもご主人を見つめている方が楽しいようだ。
そして、湖から釧路川へと流れ出る水流に乗って眺湖橋の下をくぐっていく。
今年の釧路川は、道内の他の川と同じくかなり水が少ないようで、眺湖橋の下を通過する時もカヌーの中で平伏す必要がない。
それでもやっぱり、頭をぶつけそうな気がして姿勢を低くする。
眺湖橋の下をくぐって釧路川へ入る
倒木の間を下っていく
流れの中に倒木が横たわり、岸からも倒木や木の枝が張り出し水面に覆い被さる。
人間が手を入れない自然のままの川の姿を楽しみながら下っていくと、直ぐに鏡の間に到着。
湧き水が流れ出る鏡の間の水はとても冷たく、私達の舟に積んであったスイカをカヌーの横からぶら下げて、その水で冷やす。
スイカは亜香里さんが差し入れしてくれたもので、美留和橋で上陸したら皆で食べようとの話しになっていた。
先日の忠別川例会と言い、舟にスイカを積んで下るのは普通の風景になってしまったようだ。
太陽の日射しが有ると鏡の間の風景ももっと美しくなるのだが、今日は生憎の曇り空である。
それでも、鏡の間の澄みきった水の上に浮かんでいるのは、至福の一時である。
鏡の間でスイカを冷やす
渇水のため中州もできていた
そこで暫く楽しんだ後、再び流れにカヌーを戻す。
川幅が広がっているところでは、水が少なくて中州までできていた。
それでも他の川のように、ゴリゴリと舟の底を擦ることがない。
浅瀬の川底は小さな火山礫で覆われているので、岩避けの苦労も無い。
倒木の間を抜け、カヌーの下を流れていく川底の様子を眺めていると、あっと言う間に美登里橋まで下ってきてしまう。
これで美留和橋までの約3分の1を下ったことになり、楽しい時間が直ぐに終わってしまいそうだ。
美登里橋の上流には丁度良い川原があるので、そこで一休み。
青空が広がって日も射してきた。
今日は一日曇りの予報だったので、この青空は嬉しかった。
美登里橋手前の川原に上陸
O元さんが水の中に入って、とても気持ち良さそうだ。
私も泳ぎたかったけれど、上下に着ているのがファイントラックのフラッドラッシュでは積極的に水に入りたくはない。
最初は私達に見向きもしてくれたなかったメリッサだが、少し慣れてきたのか私の足にもたれかかるように身体を預けてきてくれた。
メリッサは水に濡れるのが嫌いらしく、あしやんがカヌーに乗って川の上からメリッサを呼ぶものの、岸を走り回るだけで川に飛び込もうとはしない。
図体は大きいけれど、何となくいじらしいメリッサである。
カナディアンを2艇連結したツアーが下ってきた。
このスタイルだと、ガイド一人でファミリーなどを乗せられるので良いらしい。
でも、カヌーの操作も大変そうで、繁忙期にはこれで一日に度も下るとのことで、ガイド稼業も大変である。
水の中に入れないでいるメリッサ
水の中でクールダウン中のO元さん
再び下り始める。
周りの風景を眺めながら、川の流れに舟を任せるように下っていく。
川の流れに舟を任せて下っていく
川の上には見るものが沢山ある
昔はクラブの例会で釧路川を下ったこともあったけれど、最近はホワイトウォーター指向が強くなり、釧路川例会は候補に挙がることもない。
それなので今回は、ミニ例会のような形で釧路川まで遠征してきたのである。
確かにホワイトウォーターを下るのは気持ちが良いけれど、カヌーの楽しみはそれだけではない。
川の中に沈んだままの流木、河畔林の中で花を咲かせている植物、実が赤く染まり始めた樹木、川底の様子は場所によって全く姿を変える。
注意深く見ていれば、次々に新しい発見がある。
釧路川を楽しく下るためには、カヌーの技を磨くよりも自分の感性を磨くことが必要なのである。
谷地坊主が生える湿地帯を小川が流れる
小さな流れ込みに上陸する。
水が多い時は、カヌーに乗ったままもう少し奥まで入れたはずだが、今日は本流の脇にカヌーを上げて、そこから小川の中を歩いていく。
直ぐ近くから湧き出している水なのだろう。
無茶苦茶冷たくて足が痺れてくる。
亜香里さんが小川の横を歩こうとしたら、ズブズブと膝近くまで埋まりそうになった。
その辺りの地面を足で軽く踏みつけたら、周辺一帯が波打つように揺れるのには驚いてしまった。
川の中の倒木は緑のコケに覆われ、所々に谷地坊主もあって、なかなか楽しい場所である。
美しい風景が広がる釧路川の穴場ポイントである
シラカバの倒木が川を塞いでいる
そこから先は流れが緩くなり、湿原の中を流れる川らしい雰囲気になってくる。
さすがにちょっと退屈してくるが、それを紛らわせてくれるのは川を塞ぐ倒木である。
フェイスブックの友達から渇水で倒木が多いので注意した方が良いとアドバイスを受けていたし、地元のガイドの方からも最後の方に川をほとんど塞いでいる倒木があるから気を付けてと言われていた。
確かに、シラカバの倒木が川のほとんどを塞ぎ、かろうじて左岸側に通り抜けられるスペースがあるような所もあったが、ある程度カヌーの操作ができる人ならば、余裕をもって避けられそうな倒木がほとんどである。
そんな倒木を避けながら下るのも釧路川の楽しみの一つだと思う。
川の中から岸に這い上がったような足跡だ
あしやんが川岸に熊の足跡を見つけた。
その前から何となく熊の気配を感じていたらしい。
その足跡は川の中から岸に這い上がった時の跡のようで、少し滑ったのか爪痕もはっきりと残っていた。
この辺りでは、阿寒から続く山塊が川の直ぐ近くまで迫っているので、熊が出てきても全く不思議ではない。
でも、カヌーに乗っていて川を泳いでいる熊とは絶対に会いたくはない。
そしてようやく、前方から瀬の音が聞こえてきた。
この瀬を下ればゴールの美留和橋も直ぐそこである。
水が少ないので瀬の迫力も今ひとつ。
でも、釧路川に瀬を求めては来ているわけではないので、不満は無い。
この区間唯一の瀬だ
そしてゴール後は釧路川で冷やしたスイカを皆で食べて解散。
釧路川はやっぱり癒しの川だった。
年に一度は癒しを求めて下りに来たいものである。
(当日12:00釧路川水位 弟子屈観測所 99.97m)