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釧路川

(屈斜路湖〜美留和橋)

利別川の川下りをメインとした3泊4日の道東の旅の途中、突然舞い込んだ釧路川源流部川下りの誘い。
札幌から遠く離れた釧路川を下る機会は、そう多くはない。
その日は天気も良くなりそうなので、何の躊躇いも無くその誘いに乗ることにした。

津別のキャンプ場を朝早くに出て、ノンノの森を散策し、津別峠からの展望を楽しみ、集合場所の眺湖橋に一番乗り。
しばらくして、今日の川下りに誘ってくれた亜香里さんが到着。
亜香里さんは、去年から我がカヌークラブに入会し、今年も4月の千歳川例会に参加してくれていた。
オンネトー近くのドライブイン・民宿「クマゲラ」で働いているので、釧路川がホームグラウンドのようなものだ。

赤いバス一緒に下るのは、亜香里さんのお友達の浜中で牛飼いをしているあしやんと、同じく浜中の漁師たかやん。
道東の魅力をそれぞれが背負ったような、何とも素敵な組み合わせの3人である。
そして、3人とも丑年生まれの同い年と言うのも面白い。

たかやんに続いて、あしやんが真っ赤なバスに乗って到着。
そのバスの中から16フィートのカナディアンを引っ張り出したのには驚いてしまう。

大阪出身のあしやんが北海道にやって来て牛飼いになるまでのスペクタクルな半生の話しを聞いていいるうちに、何時の間にか亜香里さんとたかやんが車の回送をしてくれていた。

屈斜路湖に赤いカヌーが浮かぶたかやんのカナディアンは、購入してから川に浮かべるのはこれが3回目らしい。
3人とも川下りの経験はそれ程多くはないと聞いていたが、湖に漕ぎ出したあしやんのパドリングは、とてもそうとは思えないものだった。
プロガイドの方に漕ぎ方を習ったとのことで、相変わらず自己流でしか漕げない私よりは明らかに上手なパドリングである。

眺湖橋の下をくぐって、釧路川へと入ってく。
川の水位も上がっているようで、思いっきり体を伏せないと、頭を橋桁にぶつけそうだ。
これまでに下った中でも、水位が一番高いような気がする。

河畔林からエゾハルゼミの大合唱が聞こえてくる。
天気は朝から快晴で、最高の川下り日和である。


釧路川ダウンリバー   釧路川ダウンリバー
あしやんとたかやん   後ろ姿の亜香里さん

早い流れに乗って下っていくと、あっという間に鏡の間と呼ばれるている場所までやって来た。
水位が上がっている影響で、そこの様子も今まで見たのとは随分違っている印象である。
そこにカヌーを乗り入れて一休み。
鏡の間の水辺亜香里さんのお手製チーズケーキが振舞われる。
多分、店で出しているものと同じものなのだろう。
最高に美味しい。

何時も感じる事だけれど、ここの鏡の間は千歳川のカワセミ撮影ポイントと雰囲気がとても似ている。
ここばかりでなく、川自体が二つの川はとても似ているのである。

どちらも美しい湖を源流として、河畔林も豊か。
岸からは倒木が張り出し、パドラーを捕らえようと待ち構えている。
そして途中から街の中を流れていく。
千歳川は釧路川のミニチュア版と言えるだろう。
違いは、町を過ぎた後は釧路川が湿原の中を蛇行しながら流れていくのに、千歳川は堤防に囲まれた直線水路と変わってしまう事くらいだ。


釧路川鏡の間

緑に包まれる鏡の間


釧路川のダウンリバー川に向かって倒れ掛かった樹木が、右から左からと行く手を遮る。
流れも緩やかなので余裕を持ってかわせるが、あしやんは敢えてその倒木の中へと突っ込んでいく。

最初は「大丈夫か!」とびっくりしたが、本人は練習のつもりらしい。
確かに、障害物に近づいた時のカヌー操作の練習になるし、いざと言う時でも慌てないで対応できるようになりそうだ。

それは、倒木避けばかりではなく、岩避けの練習も兼ねているとのこと。
確かに、釧路・根室周辺では岩が絡んだような流れは殆んど無く、釧路川の倒木相手に岩避けの練習をするしかないのである。

この日の夜、美幌に住んでいる方から私のフェイスブックに「ここは最高のロケーションと温泉には事欠かないが、ホワイトウォーターは遠い」とのコメントがあったが、釧路・根室も全く同じというか、ホワイトウォーターは更に遠そうだ。
何だか贅沢な悩みとも言えそうだ。

釧路川のダウンリバー漁師のたかやんが一人遅れて、時々その姿が見えなくなり、何処かで倒木に捕まったのではと気になってしまう。
しかし、他の二人は全く心配する素振りも見せない。
そもそも、たかやん本人が最初から沈したくてしょうがないって感じなのである。

普段から太平洋の荒波の中で船に乗っていれば、水を恐れる気持ちなんて全く無いのだろう。
倒木に引っ掛かって沈することなど、たかやんに取っては子供の水遊びのようなものなのかもしれない。

彼を見ていると、カヌークラブのメンバーで海上自衛隊出身のM上君の姿とだぶってしまう。
11月末の川下りでもウェットスーツ姿で、瀬の中でカメラを向けると期待に応えてわざと沈する様なM上君。
体格と言い、屈託の無い笑顔と言い、同じ匂いのする二人なのである。
この二人が一緒に、激流の中をニコニコしながら流される姿を是非見てみたいものだ。

みどり橋手前の川原に上陸して一休み。
何時もならばもっと広い川原があったはずなのに、ここも水位が上がって水没していた。

釧路川のダウンリバーそこから先も、岸から張り出した樹木がますます多くなってくる。
釧路川の水面ばかりでなく、人間までもが緑色に染まってしまいそうだ。
そんな風景の中で、3人の乗る真っ赤なカナディアンだけが一際鮮やかに見えていた。

下り始める前に地元の方から、ペンションアトレーユの裏辺りに川を塞ぐような倒木があるので注意した方が良いと言われていた。

そこらじゅうが倒木だらけなので、どの倒木の事を言っているのか良く分からなかったが、アトレーユの裏付近にそれらしい倒木があったのは確かである。
左岸側に、通り抜けるのに十分なスペースが開いていたが、真横に倒れて川を塞いでいる倒木は、そこに引っ掛かると厄介な事になりそうだ。


釧路川のダウンリバー
緑のトンネルの中を下る真っ赤なカヌー

釧路川の瀬ゴールの美留和橋手前にこの区間唯一の瀬がある。
今回の水位ならば、かなり高い波が立っていそうだ。

皆の下っている写真を撮ろうと、最初に私達が下っていく。
瀬の途中で止まろうと思って適当な場所を探してみるが、予想以上の激しい流れで、無理をしたら自分達が沈してしまいそうだ。
結局、瀬が終わるところまでそのまま下ってしまい、カメラを構えても遠くの方に白波が見えているだけだった。

そして、美留和橋の下で上陸。
ところが、3人はまだまだ漕ぎ足りないと言った様子で、フェリーグライドの練習などをしながら、暫くの間漕ぎ続けていたのである。


釧路川美留和橋   釧路川のダウンリバー
ゴールの美留和橋に到着   直ぐには上陸せずに練習する皆さん

川弁当「お昼は私が作るので用意しないでください」と亜香里さんから言われていた。
フェイスブックで亜香里さんの料理上手なのは知っていたので、お言葉に甘えて「亜香里さん弁当」を楽しみにしていた。

あしやんのカヌーに積んであった大きなクーラーボックスから、一つ一つ折に入れられた弁当が出てくる。
こんなに本格的なお弁当だとは思っていなかったのでビックリである。
地元で採れたラワンブキ、ウド、ミツバ、シイタケ、そして自分で漬けた梅干。
豪華山菜弁当は感動的な美味しさだった。

そしてあしやんが持ってきてくれたお菓子。
食後にはたかやんがコーヒーを入れてくれる。
まるで何処かの川下りツアーにお客さんとして参加している気分だ。

あしやんの持ってきてくれたお菓子には浜中町の店のシールが貼られていた。
わざわざそこで買ってきてくれたのかと思ったら、作っているのはあしやんの奥さん達だと言う。

釧路川のダウンリバー亜香里さん弁当に、あしやん奥様手製のお菓子。
何だか、田舎暮らしの豊かさがそこに現れているような気がした。

天気が良いので、3人はそのまま弟子屈まで下る事に決めたらしい。
あしやんとたかやんは初めての土壁チャレンジ。
ワイワイキャーキャー言いながら楽しそうに下っていくチーム丑年の3人を見送ってから、私たちは和琴のキャンプ場へと向かう。
天気にも恵まれ、本当に楽しい川下りだった。

2015年6月12日 快晴 
当日12:00釧路川水位(弟子屈観測所) 100.17m 


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