北海道キャンプ場見聞録 夏山歩きの部屋
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屋久島縦走2日目(2012/4/12)
高塚小屋・宮之浦歩道・永田岳・鹿之沢小屋

屋久島の青い空


前日は余程疲れていたのだろう。6時半に寝て、何度か目が覚めただけで朝の5時までぐっすりと眠ることが出来た。
外は雨も上がって天気も回復しているようだ。
縄文杉を二人占めゆっくりと朝のコーヒーを飲んで、雑炊の朝食を済ませる。
出発の準備を整えた頃には、既に他の2組はいなくなっていた。

先へ進む前に昨日の道を引き返し、爽やかな朝の空気に包まれた縄文杉を楽しむ。
シーズン中ならばウンザリする程の人波に埋め尽くされるであろう展望デッキの上には私達二人しかいない。
これはもしかしたら最高に贅沢なことなのかもしれない。
その贅沢をもっと堪能していたかったが、当初の計画では午前7時に新高塚小屋を出発することになっていたので、のんびりともしていられない。
高塚小屋まで戻って荷物を背負い、そこを出た時には既に8時近くになっていた。


縄文杉 高塚小屋
森の中に佇む縄文杉 高塚小屋を出発

巨木に見惚れるそれでも今日は余裕のある行程なので先を急ぐこともない。
昨日は雨の中、うつむいて自分の足下しか見ずに歩いていたのが、今日はゆっくりと周りの森を観察しながら歩く事が出来る。

名前は無くても、圧倒的な迫力で迫ってくる屋久杉。
上空に枝を張り巡らせる巨木達。
地上で複雑に絡み合う根塊。

ゾシカと比べると驚くほど小柄なヤクシカは、人をあまり恐れないようだ。
森の中からきょとんとした顔でこちらを見ていた。
かみさんが絶対に見たいと行っていたヤクザルも姿を現したが、カメラを取り出そうと焦っている間に森の奥へ姿を消してしまった。
ビッシリと花を付けたアセビが目を楽しませてくれる。


絡み合う巨木 巨木 巨木

新高塚小屋1時間15分ほどで新高塚小屋に到着。
高塚小屋と比べると随分快適そうな小屋である。
何と言っても濡れたものを乾かすスペースが沢山あって、小屋の内部も広い。
昨日頑張ってここまでたどり着けば、とても快適に過ごせたことだろう。

高塚小屋では近くに水場がなかったので、ここの水場で歯を磨いて髪も洗う。
おまけにトイレで大も済ませ、すっきりしたところで再び歩き始める。

苔に覆われた倒木。
大岩を包み込むように根を張り、その上に育つ木々。
上り下りを繰り返しながら次第に高度を上げていく。
何時もならば「せっかく登ったのに、また下るのか」と愚痴を漏らすところだが、屋久島の山では何故か素直な気持ちになれる。
荘厳な自然の姿を目の当たりにすれば、それに逆らうことはできなくなる。


苔むした倒木 楽しい山道を登る
苔に覆われた倒木 楽しい登り坂が続く

木の枝越しに見える宮之浦岳第一展望台に到着。
樹木に遮られてそれ程展望は利かないが、島の南東方向の山々が見渡せる。
木々の間から見えるのは明日登る予定の宮之浦岳だろうか。

巨岩の間をすり抜けたり、ロープ場を登ったりと、アドベンチャー気分を楽しむ。
周りの展望も良くなってきた。
真っ青な空に一筋の飛行機雲が伸びていく。
坊主岩と名付けられた丸い奇岩が目を惹く。
宮之浦岳や翁岳、今日この後で登る永田岳の姿も見える。


枯れ木の向こうに飛行機雲 坊主岩
青空に一筋の飛行機雲 坊主岩が目を惹く

次第に大きな樹木の姿も見えなくなり、どうやら森林限界を越えたようである。
前方に岩がゴロゴロと露出した小高い山が現れる。
平石からの展望白く立ち枯れた樹木とその岩が不思議な光景を作り出す。
ロープ場や急な階段を登っていくと、その頂上には巨大な岩が積み重なっていた。
地図には平石と名前が付いている場所だ。
その岩の上に立つと、永田岳や宮之浦岳が間近に迫って見える。

そこから登山道を下っていくと、道の真ん中でヤクシカが食事中だった。
エゾシカと比べて警戒心の少ないヤクシカは、私達を無視してヤクザサを食べるのに夢中になっている。
こちらの方が困ってしまって、ゆっくりと近付いていくと、ようやく脇に避けてくれた。


平石への急峻な登り ヤクシカとにらめっこ
ロープを頼りに平石へ登る ヤクシカが道を塞いでいる

焼野三叉で休憩永田岳と宮之浦岳への分岐である焼野三叉路へ到着した。
腰掛けられる岩もあったので、ここで昼食にする。
少し離れた沢まで下りて水を汲み、ラーメンを作る。
その間に、濡れた靴下や登山靴の中敷きを岩の上に広げて乾かすことにした。
昨日の雨で濡れた登山靴や靴下は、山小屋の中で一晩おいても、全然乾かなかったのだ。

短時間だったが、南国の陽射しは岩の上に広げておいた靴下などをかなり乾かしてくれた。
焼野三叉路から宮之浦岳山頂までは20分で登れる。
明日は天気が崩れるとの予報なので今のうちに宮之浦岳に登る案もあったけれど、体力的にちょっと厳しそうなので、今日は永田岳だけにとどめることにする。

永田岳の岩峰を仰ぎ見るそこから永田岳の山頂は直ぐ目の前に見えるのだけれど、まずは一旦、鞍部まで下らなければならない。
そして鞍部まで達したところから急峻な登りが始まる。

登るにしたがって、巨大な岩の展望が間近に迫ってくる。
後ろを振り返れば、宮之浦岳の姿が一望される。
そんな風景に、急な登りの辛さも忘れてしまう。

頂上直下の登山道にザックを降ろして、山頂への最後のアタック。
ロープ場をよじ登り、岩場の山頂に到着。
屋久島の北側に位置する永田集落と、そこへ続く永田岳が刻んだ深い峡谷が眼下に見渡せる。
ただでさえ岩が多い周辺の山岳景観の中でも障子岳へ連なる岩峰群が一際目を惹く。

永田岳山頂でそんな展望をたっぷりと味わった後、私たちが山頂から降りようとしていると男性が一人登ってきた。
途中で私たちを追い抜いて行った人である。
その時に話しを聞いたところ、今朝白谷小屋を出てきたとのことで、その健脚ぶりに驚いたものだ。
私たちの後から登ってきたということは、私たちが休んでいる時には宮之浦岳に登っていたのだろう。
その彼も、今日は鹿之沢小屋に泊まるらしい。
利用者の少ない鹿之沢小屋だと聞いていたので、今日は小屋を独り占めできるだろうと考えていたが、そうはならないようである。


永田岳山頂
青空を背景にした永田岳山頂

宮之浦岳 障子岳
永田岳から眺める宮之浦岳 永田岳から眺める障子岳と岩峰

再び重たい荷物を背負い、鹿之沢小屋へ向かって降りていく。ここが今回の縦走ルートの中で一番きつい部分である。
おまけに登山道は雨水で大きくえぐられ、とても歩きづらい。昨日の雨の時には、一体ここはどうなっていたのだろうと心配してしまう。

国分岳と永田の集落が見下ろせる途中まで降りたところに、ロウソク岩展望台と書かれた木製の脇道があった。
そこで後ろを振り返り、初めてその素晴らしい景観に気が付いた。
ロウソク岩とそこら続く岩峰の連なりに圧倒される。

そこからまたひたすら急な下り坂が続く。
鹿之沢小屋と言うくらいだから、沢の近くに小屋はあるのだろう。
しかし、沢と呼べそうな地形は、まだ遥か下である。
そこまで降りなければならないのかと思うと、気が遠くなってきた。

樹木に囲まれ、雨水で深くえぐられた登山道の中を歩いていると、自分がどの辺まで下ってきているのかも分からない。
参考になるのは地図に載っているコースタイム。
しかし、永田岳から鹿之沢小屋までは40分となっていたのに、その時間を過ぎても全然着きそうな気配がない。

やがて、沢の水音が聞こえてきて、ようやく目的地が近いことを知った。
そうして午後4時、永田岳から65分かかって鹿之沢小屋に到着した。

素晴らしい一日に乾杯まだ誰もいないだろうと思っていた小屋の前には、1組の男女の先客がいた。
そこら中に濡れた衣類等を広げて「すいません、今片付けますから」と恐縮している。
「いや、良いんです、気にしないでください」
こちらもすぐに同じような状態になるのである。
時間はまだ早かったけれど、山間の小屋なので日の当たる部分は限られている。
そこには彼らの靴や靴下が並べられていたので、その隣に私たちの靴下なども置かせてもらう。

何処かで見覚えのある二人だと思ったら、昨日、雨の白谷小屋に私たちが逃げ込ん時、ちょうど入れ違いで出て行った人たちだった。
昨日は新高塚小屋に泊まったそうで、私たちの装備を見て「きっと同じ場所に泊まるのだろう」と思っていたとのこと。
昨日は残念ながら、そこまでたどり着く気力は私達には無かったのである。

男性の方はツアーガイドもやっている様な感じで、北海道のトムラウシなどにも何度か登っているとのこと。
靴の中が濡れることについても「本当は雨具の下にスパッツを付けなくちゃダメなんですが、面倒なので上に付けたままそのまま歩いていたら濡らしちゃいました。北海道の人は雪が主だから、雨具の下にスパッツを付けるなんて思いつかないですよね」と笑いながら話していた。
小屋の中に濡れたものを干す驚いたのは、夕食の準備をするのに5キロ入りの米袋(スーパーで売られている状態)を取り出したことである。
「何日間、山に入ってるんですか?」と聞くと、「いや、日程は皆さんと大して変りないですよ。山に入る時は何時もこうなんです」と、さらりと答えた。
こちらは少しでも荷物を軽くしようと四苦八苦していると言うのに、呆れてしまう。
それでいて、水は黒い袋に入れて持ち歩いていて、「こうして温度を上げておけばお湯を沸かす時に燃料の節約になりますから」と細かな気配りもしている。
背負っている荷物の重さを聞くと「40キロくらいです」とさらりと言う。
まだ若い男性だったが、多分ただ者ではない人なのだろう。

永田岳であったソロの男性は、なかなかやって来ない。
夕食を済ませた二人は「夕日を写してきます」と言って、再び永田岳へと登って行った。
私たちは呆れて見送るだけである。

空が紅く染まる山小屋に静けさが訪れた。
回りの森から聞こえる鳥のさえずりと、小屋の裏を流れる沢の音だけが聞こえてくる。
その沢で冷やした缶ビールで喉を潤す。
持参したワインの2本目が空になる頃には、上空の雲が赤く染まっていた。

辺りが暗くなるころになって、男女が下りてきた。
美しい夕日を楽しめたらしい。
「ソロの男性はどうしたんでしょう?」と話していると、その男性は真っ暗になってからやっと山小屋にやってきた。
そのまま永田岳山頂で夕食を済ませ、夕日を楽しんでから降りてきたらしい。
さすがにこの小屋に泊まる人は、独自の山の楽しみ方を知っている人達ばかりである。

寝る前に二人でトイレに行ったが、ここのトイレは小屋から離れたところに建っていて、途中で沢を渡ったりロープ場を登ったりと、ちょっとした冒険気分を味わえるところである。
明日の天気を気にしながら、午後8時には眠りについた。

縦走2日目の写真 

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縦走断面図


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