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朝里岳沢(2018/03/21)

くされ雪からパウダーへ

ニセコ縦走の予定が、前日になってI山さんから「雪が降っていないから朝里岳沢に変更しました」とのメールが入る。
私としては、当日は天気が良さそうなこともあり、雪が降ったかどうかは関係なくニセコ連峰の風景を楽しみにしていたので、ちょっと残念だった。

それでも、天気が良いことに変わりはなく、久しぶりに朝里岳からの展望も楽しめそうだ。。
それに、登りは札幌国際スキー場のスカイキャビンを利用するできるし、家からも近いし、お気楽モードで国際スキー場へと向かう。

I上さんが来るのは分かっていたけれど、他に誰が来るのかは聞いていなかった。
それが他の参加者はF本さんだけと聞いて、それまでのお気楽モードが完全に吹き飛んでしまう。

I上さんとF本さんは、最近のカヌークラブでのツアーには参加しないで、二人だけで羊蹄山とかを滑りまくっていたようだ。
I山さんも以前にこの二人と余市岳に行った時、何度も登り返しさせられて、最後はボロボロになって暗くなるころにスキー場に降りてきたことがあったらしい。

スカイキャビンを下りて、まずは朝里岳を目指す。
I山さんとは、「今日は天気が良いので、朝里岳の山頂まで登ってみましょう」と話していた。


おびただしい数のスノーモービルの跡

ニセコ方面に雪は降っていなくても、この辺りでは昨日、一昨日と雪が降っていて、良い雪が積もっている。
ラッセルを全く苦にしないF本さんが先頭で登っていく。

ここへ来る途中の朝里峠の駐車場には、そこから溢れるくらいのスノーモービル関係者の車が停まっていた。
そこから来たと思われるスノーモービルのトレースが沢山あってがっかりさせられる。
でも、どこか遠くへ行ってしまったみたいで、耳障りなエンジン音が聞こえてこないのが幸いだった。

それにしてもF本さんの登るペースは速い。
F本さんはラッセルしながら登っているのに、こちらはそのペースに付いていくだけで精一杯である。
何時ものツアーならば、遅れている人を時々待っていたりするのだけれど、今日はそんな人もいないので、ただひたすらF本さんの後を追うしかない。


数組のパーティーが私たちと一緒に登っていた。
天気も良くて雪も良い。


余市岳の山頂が見えてきたけれど・・・

こうなると黙っていられないのがI上さんである。
誰よりも早くノートラックの斜面を滑りたいI上さん。
最初は一番後ろにいたのに、途中から我慢できなくなって、F本さんの後ろにピタリと付いて登り始めた。
この時点で私は朝里岳の山頂まで登ることを諦めてしまった。

なだらかな朝里岳の山麓を巻くように、朝里岳沢の源頭を目指して登っていく。
やがて、真っ白な雪原の先に余市岳の山頂がポコリと姿を現した。
もう少し登れば、その余市岳の全貌を眺められるはずだ。

「この辺から滑りましょう!」
誰も余市岳のことなんか気にも留めていない。
それでも快晴の空の下、そこまで登らなくても手稲山の遥か先に見える夕張岳や芦別岳、それに大雪山の姿を楽しむことができた。


I上さんとF本さんは、ここを滑るのは初めて。
準備ができたら、もう我慢できないとばかりに沢に向かって滑っていく。


ドロップポイントを間違えてここから登り返し

「あれ?去年、皆で滑った時はもっと別の場所からドロップしたのに」
その先がどうなっているかも分からず、ちょっと不安はあったけれど、その二人はもう止められない。

しょうがなく、その後ろに付いて滑り降りたが、沢の斜面に入った途端に雪質ががらりと変わった。
それまでのパウダーが、湿雪の重たい雪に。
おまけに沢に降りていく斜面は崖である。
何とか滑り降りることはできそうだけれど、ここを滑ったとしても全然楽しくない。

ここの斜面は南向きだけれど、去年滑った斜面は東向き。
雪質もここよりは良さそうなので、いったん登り返してそちらを滑ることにした。


 

私たちがウロウロしている間に、そちらの斜面は既に誰かの滑った跡が付いていたが、まだノートラックの斜面は残っている。
それぞれが思い思いのラインで滑り降りる。

I上さんが下の方で転んでいるのが見えた。
そこの雪もやっぱり悪そうだ。
私はI上さんとは少し離れたラインを滑ってみたが、そこの雪もやっぱり重たく、時々スキーをとられる。
かみさんも珍しく転んでしまう。
今日は何処を滑ってもダメかもしれない。

しかし、皆は全く諦めていなかった。
沢の挟んだ反対側の斜面が良さそうだからと、そちらに向かって登り返すことにする。
先に滑り降りていたボーダーの二人も、同じ方向に登り返していったが、私たちとは違う斜面を狙っているようだ。


その斜面の下まで行くと、雪質が再び変わった。
そこは完全なパウダースノー。

気温が上がって雪が解けてきたのかと思っていたが、単に陽射しの影響だけだったみたいだ。
斜面の向きだけでこれだけ雪質が変わるとは、驚きである。

そのパウダーを見て張り切ったF本さんが先頭で登っていく。
2月に東ヌプカウシヌプリを登った時も、F本さんの付けた急なトレースに閉口させられたが、今日はそれをも上回る有無を言わせないような急登である。

後続メンバーもその急なトレースの中を必死に登っていく。
普通に登っているとスキーがスリップしてしまう。
シールが効くように一歩一歩スキーを強く踏みしめ、ストックで体を支えながらスキーを前に進める。
それ程深いラッセルではないので、トレースから外れて自分の好きな斜度で登ることもできるが、それもしゃくなのである。

周りに樹木が生えていればそんな急登も耐えられるが、オープン斜面の急登になると滑落の恐怖も湧いてくる。
それに、下から見上げた斜面はかなり急そうなので、私たち夫婦は皆から分かれて、登ってきた斜面を滑り降りるつもりでいた。

更に登り続ける3人を見送って、斜面の途中でシールを剥がす。
そして先に滑り降りて、皆が滑る様子を撮影することにした。

陽射しの強いところの雪はやっぱり重たいけれど、少し横にずれたらそこはパウダーである。
ターンをすると、そこから小さな雪玉が一斉に転がり落ちて、真っ白な斜面はあっと言う間に筋だらけになる。
春スキーらしい風景だ。



斜面の下まで回り込み、皆が降りてくるのを待つ。
かみさんが「ここからなら、私たち二人だけで先に戻ってもいいわよね」などと言っている。
私も、もう一度あの急登をする気にはなれないので、かみさんの意見に賛成だった。

そこへ3人が順に姿を現した。
まずはI山さんが林間斜面を、次にI上さんが目の前のオープン斜面を、最後にF本さんが奥の方のオープン斜面を、それぞれ派手なスプレーを巻き上げながら滑り降りてきた。
そして口々に「いや~最高だった」と感想を述べる。
I上さんは、「今シーズンで2番目くらいの良い雪と斜面だった」と満足そうである。


そして当然のように登り返すこととなる。
ノートラックの斜面はまだ残っているのである。
皆の嬉しそうな顔を見ていると、私たちもそのまま先に帰る気は無くなってしまった。

一休みしてから登り返し。
最初に登ったトレースは軽く凍り付いて、更に滑りやすくなっていた。
先を登っていた人達も耐えられずに、少し緩い斜度で登り始めて、これで少し助けられた。

気が付くと、いつの間にかかみさんが先頭を登っていた。
しかも、あのF本さんを大きく引き離してである。

最初に私たちがシールを剥がした場所も通り過ぎて、どんどん登っていってしまう。
私も、皆から大きく遅れながらも必死にその後を追う。

何処まで行くつもりなのだろうと思って上を見上げていると、かみさんが下の方でシールを剥がしているのを見つけた。
途中から登るのをやめて、斜面をトラバースしていったらしい。
私もその上で、シールを剥がす。

滑走準備の終わったかみさんは、さっさと一人で滑り降りていって直ぐに姿が見えなくなる。
それも、最初は滑るのを躊躇っていた急斜面を滑り降りていったようだ。
何時もは急斜面で泣き言を言っているくせに、今日はやけに積極的である。

そこへ上からI上さんが豪快な雪煙を上げながら、私の横を通り過ぎていった。

私もそれに刺激されて、後を追う。
最初にF本さんが滑っていた斜面である。
これが深いパウダースノー。
皆が感激していたのも無理はない。
滑っている姿をI山さんに撮影してもらえないのが残念である。

F本さんは、最初にI上さんが滑った方の斜面を下りてきた。
そして最後にI山さんが同じ斜面を下りてくる。


何時もは先に滑り降りて皆の姿を動画で撮影してくれるI山さんだけれど、今日のメンバーは滑ることしか考えていない人達なので、これでは撮影のしようが無い。

I山さんの滑った跡を見ると、途中で小雪崩も発生していた。
そして転がり落ちた雪玉で、3本しか滑られていない斜面なのに、随分汚れてしまっていた。

果たしてもう1本登り返すことになるのか?
冷や冷やしながら皆の様子を見守る。
F本さんは何となく心残りがありそうに見えたけれど、I山さんが「これで終わりにしますか」と言ったので、間髪入れずに「そうしましょう」と声を上げた。
もしもノートラックの斜面がまだ残っていたとしたら、多分もう1本登り返すことになっていただろう。
斜面が適当に荒れてくれたのが救いだったのである。

今シーズン一番の天気。
そして思いがけないパウダー斜面。
体は疲れ切っていたけれど、充実した気分で朝里岳沢沿いに駐車場目指して滑り降りたのである。



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