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我が家のファミリー通信 No.65

2015京都紅葉の旅三日目


京都の旅三日目の朝は、前日とは打って変わって快晴の空が広がっていた。
朝食は前日に買ったコンビニのサンドイッチで簡単に済ませて、早めにホテルを出る。

叡山電車今日のメインは、かみさんが以前から行きたがっていた比叡山延暦寺である。
叡山電鉄の出町柳駅で比叡山延暦寺入山きっぷを購入。
叡山電車、ケーブルカー、ロープウェイ、シャトルバスそれぞれの往復乗車券と延暦寺の巡拝券がセットになって2600円と、かなりお得なきっぷなのだ。

しかし、このきっぷには意外な落とし穴があったのだ。
比叡山に登る前に、洛北の紅葉の穴場である蓮華寺に寄り道するつもりでいた。
そのために、叡山電車の終点一つ前の駅で途中下車し、蓮花寺に参拝してからケーブルカー乗り場まで歩いて行こうとしたら、「途中下車はできない事になっているので、ここで途中下車したらきっぷ全部が無効になってしまう」と言われたのである。
釈然としなかったけれど、抵抗してもしょうがないので、そのまま終点の八瀬比叡山口駅まで乗っていった。

しかし、ケーブルカーの始発まではまだ1時間以上もあるので、タクシーで引き返して予定通り蓮華寺を見ることにした。
引き返すついでに、もっと先の三宅八幡宮までタクシーで送ってもらった。
三名院の多宝塔その隣の三明院に興味があったので、途中下車を断られたのは逆に良かったのかもしれない。

三宅八幡宮については全くリサーチしていなかったが、ここでは鳩が神の使いとされているらしく、狛犬ではなく狛鳩が鎮座しているのが面白かった。

そこから山道を歩いていくと、青空を背景にした美しい多宝塔が見えてきた。
どうやらそれが三明院らしい。
美しい紅葉がその多宝塔に被さり、美しい構図を作っていた。
境内には人を食ったような表情の地蔵があって、かみさんが嬉しそうにその写真を撮っていた。
ガイドブックや京都を紹介するWebサイトにも載っていない、本当の穴場的な寺だが、眺めも良くて結構楽しむ事ができた。


三名院の多宝塔
紅葉に囲まれた三明院の多宝塔

三宅八幡宮の狛鳩 三明院の地蔵
三宅八幡宮の狛鳩 三明院の俗っぽい地蔵

民家が建ち並ぶ狭い路地蓮華寺に向かって細い路地のような道を歩いていく。
道沿いに並ぶ民家を眺めていると、このような狭い土地の中で何代にも渡って暮していくためには信仰が支えになるのだろうなと漠然と考えていた。

北海道の広い大地で暮していると、信仰なんて二の次にしか思えない。
それは私の個人的な感覚でしかないのだろうけれど、北海道人と京都人の大きな違いはその辺にありそうな気もするのだ。

蓮華寺の拝観時間にはまだ早かったので、先に隣の崇導神社に立ち寄る。
樹木に覆われた参道は薄暗く、聖域に足を踏み入れたような感覚に囚われる。

崇導神社の参道木々の間を通して、美しい紅葉の風景とお寺風の建物が隣に見え隠れしていた。
多分それが栖賢寺だったのだろう。
この寺の紅葉も京都の超穴場スポットらしいが、そこへの入り口が見つからずに訪問を断念したのが心残りである。

神妙な気持ちにさせられて崇導神社を出てくると、既に蓮華寺の門は開いていた。
ここの見所は、書院から眺める池泉式庭園の紅葉である。
そんな風景は誰もいない部屋からゆっくりと眺めたいところだが、残念ながら私達の直ぐ後から一組の夫婦が入ってきてしまった。
それでも、参観者はその夫婦だけだったので、ゆっくりと美しい紅葉を楽しむ事ができた。


蓮花寺の紅葉
蓮花寺の書院から眺める庭の紅葉

叡山ケーブルその後は叡山ケーブルの八瀬駅まで歩き、ケーブルカー、ロープーウェーと乗り継いで、比叡山の山頂を目指す。
かみさんは何故か比叡山延暦寺に憧れているようだ。
NHKのゆく年くる年で、比叡山の鐘の音が山の中に静かに響き渡るシーンを見て、それが頭の中にイメージとして張り付いているのだろう。

私も学生時代に比叡山を訪れているはずだが、杉木立の中を歩いた記憶しか残っていない。
40年近い昔の事なので、本当に比叡山に登ったのかどうかも怪しいところだ。

比叡山山頂でロープウェイを降りると、吹き付ける風の冷たさに身体が震え上がった。
その風に乗って粉雪が舞ってきたとしても不思議ではない寒さである。
シャトルバスの乗り場まで暫く歩き、ちょうど良いタイミングで到着したバスに飛び乗る。
もしもそこで10分以上バスが来るのを待たなければならなかったとしたら、凍死していたかもしれない。

このシャトルバスもちょっと誤算だった。
比叡山入山きっぷでは延暦寺バスセンターまでしか乗れないのである。
比叡山は山全体が寺域になっていて、東塔、西塔、横川の3地域を合わせて比叡山延暦寺と呼ばれているのだ。
横川は少し離れているので、まずは西塔までバスで行って、その後は歩いて東塔、そしてロープウェイ駅まで戻るつもりでいたのだ。
しょうがないので、バスセンターのある東塔で下車した。

比叡山の弁慶水標高は少し低くなったものの、風の強さと寒さに変わりはない。
直ぐに休憩所の建物に逃げ込んだ。
油断してタイツを履いてこなかったのが大失敗だった。
ザックに入れてあればここで履くこともできたのに、必要ないだろうと思ってホテルに置いてきてしまったのだ。

暖かい飲み物で身体を温めてから、まずは西塔まで歩くことにした。
杉木立の間の道は風も遮られ、風がないと体感温度も全然違う。
ようやく周りの風景を楽しむ余裕も出てきた。

この辺りの道は京都一周トレイルの一部になっているようで、所々に標識が出ていた。
昨日歩いた嵯峨野もこのトレイルの一部になっていて、寺社巡りと京都一周トレッキングの組み合わせも面白そうである。

山王院堂を過ぎると急な階段を延々と下っていく。
この道をまた戻ってこなくてはならないと考えると、追加料金を払って西塔までバスで行った方が良かったかなと後悔の念に駆られた。


東塔から西塔へ続く道
西塔へと続く道の急な階段

親鸞聖人修行の地で私も修行?途中に「親鸞聖人ご修行の地」と書かれた碑が立っていた。
今でこそ、杉木立の中に寺社がポツポツと点在している程度だけれど、昔はもっと多くの建物が山中に建っていたのだろう。
現在の状態では、織田信長による比叡山焼き討ちのイメージはどうしても湧いてこない。

浄土院、椿堂、にない堂と回って、最後に西塔地区の中心である釈迦堂に参拝する。
神社に参拝する場合は、賽銭を入れて鈴を鳴らし拍手を打つと一連の儀式があるけれど、お寺で参拝する時はそれがないので、何となく手持ち無沙汰になってしまう。
御朱印をもらう訳でもなく、献灯・献香するほど信心深くもない。
仏像を見るのは好きだけれど、本堂の中は概ね写真撮影が禁止されている。
結局は、本尊の前で手を合わせて出てくるだけで、お寺に参拝してもあまり充実感がないのである。

西塔地区は訪れる人も少なく、静かに見て回れるのが良い。
シーズンオフなので余計に人も少ないのだろう。
西塔と東塔を結ぶ道も未舗装で、何処かの登山道を歩いている気分だ。
それなので、すれ違う人とも自然に「こんにちは」と挨拶を交わす。


比叡山西塔のにない堂 比叡山西塔の釈迦堂
西塔のにない堂は私の好きな建物だ 西塔の中心である釈迦堂

比叡山延暦寺で鐘を撞く東塔まで戻ってくると、さすがに人は多い。
ここでは50円で鐘を撞くことができる。
ゆく年くる年で流れる比叡山の除夜の鐘は、この鐘の音である。
勿論、これを撞かずには帰られない。
50円玉を切らしていても、躊躇うことなく100円玉を入れる。
テレビで聞くのと同じ美しい鐘の響きに満足した。

国宝の根本中堂もやっぱり、何となく手持ち無沙汰のままで外に出てきた。
昼食に比叡山蕎麦を食べ、これ以上歩く元気は無かったのでシャトルバスでロープウェイ駅まで戻る。
着いた時よりも風は更に強くなっていて、その風のためロープウェイは運行見合わせになっていた。
幸い、直ぐに運行が再開されたが、運行見合わせの張り紙を見たときは一瞬「どうやって下山すれば良いのだろう」と途方にくれてしまった。
でも、落ち着いて考えれば、それ程長いロープウェイでもないので、歩いて下山するのは十分に可能なのである。
もしかしたら、そちらの方が面白かったかもしれない。

比叡山から降りた後は、漠然と詩仙堂近辺を歩こうと考えていた。
前日の嵯峨野と同じく、詩仙堂も12年前の秋に訪れているので、細かな計画は立てていなかったのだ。
歩き疲れてはいたけれど、夕暮れまではまだ時間もあったので、まずは前回訪れていない赤山禅院に向かうことにする。

叡山電鉄の修学院駅で下車し、体力温存のため赤山禅院までタクシーを使う。
過去の京都旅行でタクシーに乗ったことは一度もなかったのに、これはやっぱり歳のせいなのだろう。
タクシーの運転手さんに「あかやまぜんいんまで」と伝えると、怪訝そうな顔をされた。
「あっ、やっちゃったかな」と思いながら、「あの〜、修学院離宮の隣の〜」と説明すると、「ああ、せきざんぜんいんね!」と言われた。
京都の地名や寺院名は、音読みか訓読みかで統一して欲しいものだ。

赤山禅院の寒桜赤山禅院も紅葉が美しいことで知られている。
山門から社殿へと続く参道が紅葉のトンネルになると聞き楽しみにしていたのに、タクシーはその山門を抜けてどんどんと奥へ入っていってしまう。
参道は帰りにゆっくりと歩けたけれど、紅葉は境内の方が美しかった。

また、境内では寒桜も花を咲かせていて、北海道では絶対に見ることのできない花に感動する。

観光客の姿が疎らなのも良かった。
隣接する修学院離宮は事前予約が必要な事もあり、わざわざここだけを目当てにやってくる観光客は少ないのだろう。
どちらかというと地元の方が紅葉を見に来ることの方が多そうである。


赤山禅院の紅葉
赤山禅院弁財天付近の紅葉

赤山禅院を後にして、修学院離宮の生垣を眺めながら曼殊院門跡を目指す。
12年前にこの付近を訪れたときは、曼殊院門跡、詩仙堂を回った記憶がある。

曼殊院門跡の紅葉曼殊院門跡は書院の中から眺める小堀遠州作の枯山水の庭園が見所である。
私も学校では造園学を学んでいるので、少しは専門的な目で庭を鑑賞するのだけれど、今回は紅葉が美しいかどうかにしか興味がない。
結局は、外に出てきて道路から眺める紅葉がここでは一番美しかった。

次に向かったのは圓光寺。
その途中ちょっと回り道をすれば、紅葉の穴場の鷺森神社に行くことができる。
しかし、そろそろ疲れも溜まってきて、回り道するような元気はなくなっていた。

そうして辿り着いた圓光寺は、山門を通り抜けた先に近代的な枯山水風の庭が広がっていて、ちょっと興ざめだった。
紅葉だけが目的とは言いながら、やっぱり京都のお寺の庭には侘び寂びの世界を求めてしまうのだ。

ところが、本堂の書院から眺める庭とその紅葉は素晴らしかった。
紅葉に彩られた十牛之庭と縁側に敷かれた緋毛氈、それが書院の柱や障子で縁取られ、額縁に飾られた一枚の絵のように見えるのである。
京都の紅葉で画像検索すると決まって出てくる風景だが、実際にそれを目にするとやっぱり感動する。


圓光寺十牛之庭の紅葉
圓光寺十牛之庭の紅葉、額縁の中の絵を見るようだ

圓光寺十牛之庭の紅葉次はその庭に下りてみる。
池泉回遊式の美しい庭である。
園内の紅葉は紅葉の見頃となり、苔生した地面も散り紅葉で埋め尽くされている。
最高のタイミングで訪れる事ができたようだ。
緑の竹林と紅葉の対比も美しい。
人が多くて、水琴窟の奏でる音に耳を澄ませることまではできなかったが、それでも十分に楽しむ事ができた。
今回の京都の旅で一番良かったところは?と聞かれれば、躊躇いなく圓光寺と答えることになるだろう。

圓光寺を出て直ぐ隣にあるのが詩仙堂。
前回の旅では、この詩仙堂を一番の楽しみにしていたが、それ程良かった記憶がない。
観光客も多そうなので、ここはパスする事にした。


圓光寺の竹林と紅葉
竹林と紅葉の組み合わせは好きな風景だ

そこから真っ直ぐに曼珠院道を下っていけば叡山電鉄の一乗寺駅に着く。
今日の寺社巡りはこれで終わりにしようと思ったが、日没まではまだ間があり、少し遠回りするだけで紅葉が評判の金福寺があるので、そこを今日最後の寺にすることにした。

金福寺の紅葉芭蕉庵の藁葺き屋根とそこにかかる紅葉が良い雰囲気だ。
与謝蕪村の墓もあって、できればここで一句詠みたいところだが、そんな才も無い。
西日を受けて赤く染まる本堂越しに京の街並みが見えていた。

後は宿に戻るだけ。
叡山電鉄、京阪電車と乗り継いで、祇園四条駅からバスに乗り換え。
鴨川を渡って四条川原町のバス停まで歩く間、人の多さにたまげてしまった。
さっぽろ雪祭り時の大通周辺の人出と変わらないくらいだ。

ホテルに戻って一息ついてから、昨日と同じ金時で夕食。
店に入っていくと、老夫婦が笑顔で迎えてくれる。
いよいよ明日が京都の旅最終日である。

京都の旅三日目の写真 


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