北海道キャンプ場見聞録
期待通りのタウシュベツ川橋梁
国設ぬかびら野営場(5月25日~26日)
タウシュベツ川橋梁をカヌーで潜って、十勝三股で満開のルピナスを見る。
6月に入ってからずーっとチャンスを窺っていたのに、天気に恵まれずにここまで来てしまった。
月曜日は曇り時々晴れ、火曜日は曇り、水曜日から先は雨が続く。
日曜日にママチャ耐久リレーに出場して疲れてはいたけれど、もうこれ以上先延ばしにすることはできないと、天気がパッとしないのは承知の上で月曜日の朝に糠平に向けて出発した。
これで500円で美味しいのだから大満足
月曜日と言うこともあって、途中の食事処は定休日のところが多く、最終的に昼食は上士幌町市街地の金亀亭で食べることになった。
豚丼が人気らしいので、私は豚丼と蕎麦のハーフ&ハーフを注文。
メニューの500円ランチが気になったので、最初は蕎麦を食べると言っていたかみさんに、それを頼んでもらう。
結局どちらも美味しかったので、かみさんに怒られなくて済んだ。
私の実家のある十勝清水町でもそうだけれど、上士幌を走っていても、大きな牛舎が何棟も建っている大規模酪農牧場が目に付く。
これで、個人で続けている酪農業が立ち行くのかと気になってくる。
それよりも、自由化で外国との競争になった時、これで生き残っていけるのかと心配してしまう。
タウシュベツ川橋梁を見に行くのに、昔は林道を自由に入って行けたけれど、今はゲートが締まっているので十勝西部森林管理署東大雪支署で鍵を借りなければならない。
平日なので簡単に借りられると思っていたが、この日は既に10本以上が貸し出されていて、鍵の残りが少なくなっていた。
去年あたりから訪れる人も増えているらしい。
原則1日単位の貸し出しなのだが、明日の早朝に行きたかったので返却を明日まで延ばしてもらう。
チップの敷かれたテント床
この日泊まるのは、14年ぶりになる国設ぬかびらキャンプ場。
丁度この日がオープン初日。
タウシュベツ川橋梁を見に行くのにはここが一番便利なので、これはラッキーだった。
午後1時半頃の到着だったけれど、既にライダーの方がテントを張っているところだ。
以前は少し盛り土されただけのテント床だったが、そこに丸太の枠が付けられ内部に木材チップが敷かれたものにレベルアップされていた。
ただ、木材チップなものだから、そこからキノコが生えてきてしまうようだ。
オープン初日だったので、キノコの生えたままのテント床が目立っていた。
木漏れ日が心地よい場内
14年前は一番奥の芝生広場にテントを張っていたけれど、今日は陽射しが強くて気温も高めだったので木漏れ日が心地よい林間部分にテントを張ることにした。
我が家のサイト
場内はシラカバが多く、その下にテントを張ると樹液が落ちてきてベトベトになりそうなので、なるべく上空の開けているテント床を選ぶ。
ここのテント床は、我が家のソレアードをギリギリで張れる程度の大きさしかない。
かみさんは隣のテント床に自分のテントを設営。
ソロキャンパーには丁度良い大きさのテント床である。
ここのキャンプ場は、木製のベンチや野外卓が沢山置かれているのが良いところである。
オープン初日で、それらはまだ炊事場の前に集められたままだったので、そこからベンチ2脚を使わせてもらう。
今日は、日勝峠を越えるまで雲が多かったのに、十勝に入ると青空が広がってきて糠平上空にも気持ちの良い青空が広がっていた。
この青空がいつまで続くかも分からないので、晴れているうちにタウシュベツ川橋梁へ行っておくことにする。
借りた鍵でゲートを開け、林道を走っていく。
車で走っても遠く感じるのに、3年前の冬、こキャンプ道具を背負って膝までの深さの雪をラッセルしながら、この道をタウシュベツ橋梁まで歩いたことが自分でも信じられなかった。
駐車スペースに車を停めて、湖までカヌーを降ろす。
ダム湖の水位が下がっているので、これが一苦労である。標高差にして30m近くはありそうだ。
風が強くて湖面全体にさざ波が立っているた。
静かな湖面に映り込むタウシュベツ川橋梁の風景をイメージしていたので、ちょっと期待外れである。
しかし、上空の澄んだ青空、緑に覆われた山々、そんな風景の中にくっきりと浮かび上がる白く風化したタウシュベツ川橋梁の姿。
その光景には感動するしかなかった。
ここを初めて訪れたのは14年前の全く同じ日。橋は殆ど水没してかろうじてその上部が見えているだけだった。
11年前に訪れた時はアーチの上の部分までが水上に出ていて、何とかその下をカヌーで通り抜けることができた。
それが今は橋脚部分がほぼ姿を現していて、湖上から眺めるには一番良い状態かもしれない。
14年前の水没したタウシュベツ川橋梁
今年は水位の上昇が遅れているらしい
タウシュベツ川橋梁は風化が進み、こうして全体が繋がっている姿を見られるのも後数年とも言われている。
それもあって、最後にもう一度、橋の姿を見ておきたかったのだ。
見学ツアーの一行なのだろう。橋の近くには10名以上の人影が見えていた。
その全員がカメラを橋の方に向けている。
急いで橋の下を通り抜ける
せっかくカヌーに乗ってきたのだから、橋の下からじっくりとその姿を眺めていたかったが、この状況ではそんなこともしていられない。
橋の下を急いで通り抜けて、湖岸に上陸する。
そこからは、タウシュベツ川橋梁の後ろにウペペサンケ山の姿が見えていた。
なかなか良い風景である。
しかし、私が楽しみにしていたのは、まだ雪の残るニペソツ山とタウシュベツ川橋梁とのツーショットである。
ここへ来るのが遅くなると、ニペソツ山の雪渓も消えてしまいそうなので、少し焦っていたのだ。
湖岸を上まで登るとそのニペソツ山が良く見えるようになる。
上空には青空が広がっているのに、ニペソツ山の上にだけ雲がかかり太陽の光が当たっていなかったのが残念だった。
今年は例年よりもダム湖の水位の上昇が遅れているようで、音更川が流れ込むダム湖のインレット付近には草原が広がっていた。
その草原の中にも、水に浸かっている部分にも、樹木の切り株が頭を出していて、独特の風景を作っている。
糠平湖のインレット付近
次に向かったのが十勝三股である。
14年前は、そこらじゅうで咲き乱れるルピナスの風景に感動したのだが、そのルピナスが随分減ってしまった気がした。
ここまで来る途中の道路の法面の方が綺麗に咲いていた。
笹が蔓延っているので、その影響なのだろうか。
しかし、家に帰ってから昔の写真と見比べると、笹とは関係なく、ルピナスがただ消えてしまっただけであることが分かった。
ルピナスは丈夫な植物なので放っておいても勝手に広がっていくものだと思っていたが、なぜこんなに減ってしまったのか不思議である。
流れの中ではバイカモが咲く美しい場所だが、肝心のルピナスの花が少ない
キャンプ場に戻ってきた時は午後5時を過ぎていた。
テントが沢山増えていてびっくりする。
殆どがソロテントで、大体がリタイア生活のおじさんキャンパーである。
オープン初日の平日でこんなに賑わうのならば、もっと早い時期からオープンして欲しいものである。
静かな良い夜だった
家から二日分の薪を持ってきたけれど、それも必要ないくらいに場内には枯れ枝が沢山落ちていた。
それに、伐採したシラカバを玉切りにしたものが場内に積まれていた。
割らないと焚火には使えないくらいに太いものが多かったが、その中の細めのものを少し分けてもらう。
薪には不自由しないので、帰ってきたらすぐに焚火を初めて、ビールを開ける。
湖上では風が強かったけれど、キャンプ場は森に囲まれているので、その風も全く気にならない。
森の中からはアオバト、ツツドリ、コノハズクなどの鳴き声が聞こえてくる。
頭上の木々の間で、満月三日前の丸い月が輝いていた。
少し夜更かししたくなるくらいの良い夜だったが、明日の朝もタウシュベツ川橋梁を見に行くつもりだったので、9時過ぎにはテントに潜り込んだ。
べた凪の湖に漕ぎだす
翌朝も天気予報は大外れで青空が広がっていた。
風も吹いていなくて、これならば期待していた光景を見られそうだ。
湖上で飲むコーヒーを入れてから、勇んでキャンプ場を出発。
糠平湖には、期待通りの鏡の湖面が広がっていた。
ワクワクしながらカヌーで漕ぎだす。
朝の5時だと言うのに、早くも橋の周りには何人かのカメラマンの姿が見えている。
昨日は、太陽が湖側からタウシュベツ川橋梁を照らしていたが、今朝はタウシュベツ川橋梁の後ろの山陰から昇ってきた朝日が、逆光となって橋を照らしていた。
早く橋の向こう側へと行きたかったが、鏡の湖面には私たちのカヌーが作り出した波が広がっていく。
カメラマンの邪魔にならないように、昨日よりも気を使いながら大きく回り込んで橋に近づく。
そして、その付近のカメラマンに声をかけながら、一番端の橋脚の下を通り抜ける。
余計な波を立てないように、直ぐに湖岸に上陸。
湖上からでなければ撮れない構図もあるけれど、タウシュベツ川橋梁の一般的な写真を撮るのならば、陸上からでも十分である。
朝日を浴びて、べた凪の湖面に映るタウシュベツ川橋梁の姿は、やっぱり素晴らしい。
今日はニペソツ山も、真っ青な空を背景にその姿をくっきりと浮かび上がらせている。
期待していた通りの風景だった。
もしも天気が悪かったとしたら、霧の中に浮かび上がるタウシュベツ川橋梁の姿も良いかもしれない。
そんなことも考えていたけれど、やっぱりこんな天気の方が良いに決まっている。
天候によって様々な表情を見せるタウシュベツ川橋梁の姿は、地元の写真家の方に任せるしかないのである。
周りのカメラマンの撮影会が一段落したようなタイミングを計って、再びカヌーで橋の下を通り抜け、そこから少し離れた湖上で朝のコーヒータイムを楽しむ。
ニペソツ山は、タウシュベツ川橋梁とセットでなくとも、それ単独で十分に見ごたえがある。
その姿が湖面に映り込む様子を眺めるためだけに、カヌーで湖上に漕ぎだす価値はあるだろう。
早朝に到着した時とは光の当たり具合が少し変わったので、タウシュベツ川橋梁の表情もまた変わって見える。
カメラマンの邪魔にならない角度から再び橋に近づく。
湖面に僅かに波が立ち、そこで反射した光が橋の裏側にゆらゆらと揺れる光の模様を作っていた。
カヌーを漕ぎだした場所まで戻ろうとすると、そこに一頭のメス鹿が山から下りてきて水を飲んでいるのが見えた。
多分カヌーの姿など見たことないだろうからと、気づかれないようにカヌーでそーっと近づいていくが、直ぐに気付かれて逃げられてしまった。
エゾシカが湖畔に降りてきた
キャンプ場に戻りゆっくりと片付けを済ませる。
シラカバの木の下を避けてテントを張ったけれど、それでもテントは樹液でベトベトになっていた。
頭の上に伸びてきていたのはドロノキの枝である。
もしかしたらドロノキの方がシラカバよりも樹液を多く出すのではと思えるくらいの汚れ様である。
土砂降りの雨の日にキャンプでもしない限り、この樹液は取れそうにない。
鉄道資料館
糠平温泉周辺にはタウシュベツ川橋梁以外にも旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群や鉄道資料館など見どころが多い。
それに、源泉かけ流しの温泉も魅力である。
今回はタウシュベツ川橋梁だけに目的を絞っていたので、帰り際に鉄道資料館の写真を撮っただけで、他の場所には寄らず、温泉も入らないまま糠平を後にしてしまった。
大体は昔に一度は見ているところなのだが、もう一度時間をかけてゆっくりと回ってみたく思えるくらいに、糠平は魅力的な場所である。
上士幌で鍵を返却した後、かみさんの希望でドリームドルチェでジェラートアイスを食べる。
最近できたような店で、自社農場のしぼりたて牛乳で作ったという目移りして選ぶのに苦労するくらいの沢山のジェラートはとても美味しかった。
上士幌は他にもおしゃれな店が多く、ここもじっくりと探索したい町である。
ヌプカの里と言う魅力的なキャンプ場も近くにあり、今年中にはもう一度再訪することになりそうな気がするのだった。