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紅葉を求めて然別湖キャンプ

然別湖北岸野営場(10月6日〜8日)

 10月に入り、そろそろ山の木々が色付き始める季節の3連休、毎年のことだけれど何処に行こうかと頭を悩ませる。
今年は紅葉も遅れ気味で、この3連休で紅葉が楽しめそうな場所は限られてしまうし、もっと悩まされるのは日月と天気が崩れそうなことである。
 道東やオホーツク方面が何とか土日は天気が持ちそうなので、そちらの方で紅葉が楽しめそうなところと考えると、チミケップ湖、オンネトー、然別湖、糠平湖と、何故か湖ばかりが頭に浮かんできた。然別と糠平は既にキャンプ場が閉鎖されているのだけれど、糠平はキャンプ場近くの公衆トイレがまだ使えるはずなので問題は無い。
 何年か前に糠平で見た素晴らしい紅葉が忘れられず、今年の紅葉キャンプは糠平へ行くことに決定した。

日勝峠展望園地 日勝峠経由で十勝に向かう。
 途中の紅葉はまだまだ色付き始めたばかりだけれど、さすがに峠を登るにしたがって日高山脈の山肌が艶やかに染まってきた。日勝トンネルの日高側入り口付近から砂利道を登ったところにある日勝峠展望園地に寄り道して、そこの湧き水を持参したポリタンク一杯に満たした。
 ここの湧き水はトンネルの内部から湧き出す水をポンプアップしたものだと聞いたことがあるけれど、日高山脈から湧いている水ならその味は保証付きと言っても良いだろう。
 トンネルを十勝側に抜けると、素晴らしい紅葉風景が広がっていた。
 そのまま峠を下って鹿追町までやってくると、ちょうど「鹿追そばまつり」が開催されていたので、そこで昼を食べられるかと考え、イベント会場を覗いてみる。しかし、新そばを食べられる店のテント前には長蛇の列ができていたので、諦めてどこか町内の蕎麦屋を探して入ることにした。
 国道沿いの「しかめん」と言う店に入ったけれど、わざわざイベント会場の雑踏の中でそばを食べるよりも、ほぼ同じ値段で食べられるこちらの方がずっとましである。
 でも、肝心のそばの味の方は、私もかみさんも全く同じ意見だった。
 「何だか、そばの味がしなかったよな〜」
 その後、瓜幕の道の駅によると「酔狂キャンパー西東」の直人さんご夫婦と遭遇した。これからオンネトー、チミケップ湖でキャンプをする予定とのこと。
 やっぱり考えることは皆同じである。

東ヌプカウシヌプリ 然別湖に向かって山道を登っていくと、見事に色付いた東ヌプカウシヌプリが次第に目の前に迫ってくる。そのまま然別湖に向かって下っていっても、その紅葉の風景はあまり変わらない。
 紅葉の最盛期にはまだ少し早い感じだけれど、予想以上の色付き具合に嬉しくなってしまう。
 天気に恵まれた3連休の初日、紅葉の名所の然別湖はさすがに混雑していて、温泉街の辺りでは道路も渋滞気味だ。
 温泉街を通り過ぎて、湖畔の曲がりくねった1.5車線の細い道路へ入っても、対向車が結構くるものだから運転するのにも気を使う。
 地元十勝の人間の紅葉ドライブの定番と言えば、然別湖から糠平湖へ抜けるこの道になるので、何時も以上に混雑するのはしょうがない。
まずは然別湖北岸野営場の様子を見てみる。
 既にクローズした後で、まさかテントなど張られていないだろうと予想していたが、その予想に反して場内には結構な数のテントが張られていたので驚いてしまった。その中でもモンベルの緑色のテントが目立っている。
 「もしや!またしてもモンベル軍団と遭遇?」
 「モンベル軍団」とは、大量のモンベルのテントでキャンプ場をほぼ占領している一団(某野外教育財団の活動らしい)に私が勝手に名前を付けたものだけれど、これまでに晩成キャンプ場やオコタン野営場で遭遇したことがある。
 然別湖北岸野営場にも出没するとの話を聞いていたけれど、まさかこんな時期にまでいるとはビックリである。でもモンベルのビッグタープに数張りのテントだけで、さすがに軍団の迫力は無い。
 そのモンベル軍団のためかどうかは分からないが、場内の今年新しく建てられたばかりらしい清潔な簡易水洗のトイレは使えるし、炊事場もまだ水が出るようになっていて、普通にキャンプが可能だった。
 駐車場から見て右奥のほうに、かみさんがトドマツに囲まれたサイトを見つけて「ここにテントを張りたいな〜」とつぶやいている。
「う〜ん」
 湖からの風が強く吹き付け、そこはトドマツに囲まれて日当たりも悪い。どうも最近、私は少し軟弱になってきたようで、今時期にテントを張るのならば、日当たりが良くて暖かそうな場所の方が良さそうに感じてしまう。それに場内にはモンベル軍団。
 「とりあえず糠平まで行って、そこがダメならまた戻ってくるか」
 それを妥協点にして、まだ名残惜しそうにしているかみさんを無理やり車に乗せて、糠平へと向かった。
ぬかびらキャンプ場 然別湖と糠平湖を結ぶ幌鹿峠を下っていくと、次第に紅葉の色付きも薄れてきてしまった。それでも温泉街では、所々でモミジが真っ赤に色付き秋の風景を演出している。その温泉街を通り過ぎて、キャンプ場へと到着。
 駐車場にはキャンピングカーが一台停まっていた。ここは風も無く、場内のシラカバが黄色く染まり、それを太陽の陽射しが柔らかく照らしている。
 「やっぱりこっちの方が良いや!」
 そのまま場内へ入ろうとすると、既に無人となった管理棟の前に「営業終了のため入場を固くお断りします」と書かれた看板が掲げられているのが目に飛び込んできた。
 「・・・」
 オートキャンプ場などと違って、ここはただの林間広場である。それがまさか入場禁止となっているとは、全くの想定外の事態でだった。
 「これじゃあ無理ね〜。」然別湖へ戻れると思って、どこか嬉しそうな様子のかみさん。
 別に私も然別湖に泊まることに不満があるわけでもなく、ちょっと残念だったけれど、素直に再び幌鹿峠を越えて然別湖へと戻ることにする。

我が家のサイト キャンプ場へ戻ってくると、かみさんが目を付けていたサイトの近くに新たなキャンパーが増えていたので焦ってしまった。
 何とか予定通りの場所にテントを張ることができたけれど、まさかシーズン終了後のキャンプ場で場所取りに苦労するなんて思ってもいなかった。
 この付近にテントを張るのは初めてだったけれど、トドマツに囲まれた様子は然別峡野営場のサイトを思い起こさせる。
 直ぐ前には入り江状に然別湖の湖面が伸びてきていて、そこに流れ込む小川の水音も聞こえてくる。湖畔のカエデが黄色く色付き、その黄葉が太陽の光を受けて、トドマツの梢越しに尚更鮮やかに見えている。
 風も次第に弱まり、素晴らしいキャンプを楽しめそうな予感がしてきた。
 まださざ波の残る然別湖にカヌーで漕ぎ出す。
 トドマツに覆われた深緑の山肌で、所々で真紅に色付いているのはナナカマドの木だろうか。日中は晴れていたのに、然別湖の上空だけに雲がかかってしまっているようだ。太陽が早々と山陰に隠れてしまったので、テントまで戻ってくる。
 場内はまだ明るいのに、トドマツに囲まれた我が家のテントの辺りだけがやたらに暗く見える。でも、もう少し暗くなれば何処も同じなのだから、それほど気にはならない。

深緑の山肌に紅葉が点在   サイト前のカエデの黄葉

 それよりも、我が家のテントの近くに新たにもう一組のキャンパーがやってきたのが気になってしまう。この時期でも施設が使えることを、皆、知った上で来ているのだろうか。
 やがて、その我が家の隣人キャンパー達がそろって焚き火用の枯れ枝集めを始めた。そうなるとこちらも黙ってはいられない。自宅から大量に薪を持参してはきたけれど、沢山あるに越したことは無い。
焚き火に火を点ける 十分に枯れ枝が集まったので早速焚き火に火をつける。秋の夜長は焚き火無しには過ごせないのだ。
 気温も下がってきたので、早々にビールからワインに切り替える。
 夕食を終え、焚き火の前で寛ぎながらふと上を見上げると、トドマツの梢越しに星が煌いているのが見えた。あれ?と思いながら開けた場所に出てみると、いつの間にか上空には素晴らしい星空が広がっていた。そして然別湖は波一つ無いべた凪となって、その星空を真っ黒な湖面に映しこんでいる。
 「カヌーに乗るか!」そう提案すると、かみさんも二つ返事でOKした。
 湖岸にランタンを置いて、真っ暗な湖面に漕ぎ出す。出艇場所に目印を置いておかなければ、帰る場所が分からなくなってしまうのだ。キャンプ場の灯りがあるので方向だけは見当がつくけれど、真っ暗闇の中でカヌーに乗っていて、戻るべき場所が分からないのは気持ちの良いものではない。
 聞こえるのはチャポンチャポンとパドルが水をかく音だけ。
 カヌーの上で仰向けに寝転がる。いつもなら直ぐに見つけられるはずの白鳥座が、星が多すぎて一瞬何処にあるのかも分からなくなってしまう。
焚き火 漆黒の闇に包まれている山の姿と見比べると、その星空がやたらに明るいのことに気が付く。まるで幾千万の星が夜空を明るく照らし出しているようだ。
 湖面に映った北斗七星がゆらりゆらりと揺れている。
 出艇場所にガソリンランタンを置いたのは大間違いだった。光が強烈過ぎて、岸からどんなに離れても、その明かりが届いてしまうのだ。
 その灯台のような光を頼りに岸まで戻ってきた。
 場内のあちらこちらでチロチロと焚き火の炎が見えている。
 営業終了後もトイレと水場は使えるけれど、トイレも含め場内の照明は完全に消えてしまっている。これはクローズ期間ならではの良さかもしれない。
 北海道の中で一箇所くらい、照明の全く無いキャンプ場があっても良いと思う。それを作るとしたら、私はこの然別湖以外には考えられない。
 明日の朝は4時に起きなければならないので、早めに就寝する。

 キャンプの朝は、目覚まし時計など無くても4時には確実に起きることができる。
 テントの中はまだ真っ暗闇だった。隣のかみさんのテントからも既に起きている様子が伝わってきた。完全装備に着替えてテントから出ると、既に外に出ていたかみさんが「凄い、凄い」と興奮した様子だ。
 この日は朝の4時頃に、三日月と明けの明星の金星が近くに並ぶ姿を見られると聞いていたので、それを楽しみに真っ暗なうちから起き出すことにしたのである。
三日月と金星 私も直ぐに樹木のない開けた場所まで行き、そして思わず感嘆の声を上げてしまった。
 「何だ?あれは?」
 三日月の横で輝いているのが星だと理解するまで、ややしばらく間があったような気がする。とてつもなく明るいその星は、三日月以上の光を放っていた。
 この時期の金星はマイナス4.5等星まで輝きを増しているのだけれど、それを然別湖の真の闇の中で見るとこれほどまでに大きく見えるものなのだ。
 他のキャンパーは誰も起きていないので、場内に人工の光は何も無い。そんな状況で見上げる星空。
 周りの森からは鹿やフクロウの野生の声が時々響いてくる。然別湖の大自然を身近にひしひしと感じる一時だ。
 原始の森の闇の中で焚き火に火をつける。こんなに素晴らしい焚き火なんてそうできるものではない。
 相変わらず三日月と金星が輝き続ける夜空も次第に青みを帯びてきていた。然別湖が朝もやの中に霞んで見えている。

 朝のコーヒーを味わった後は今度は然別湖の早朝カヌー散歩だ。
 朝霧の立ち上る湖面にカヌーを浮かべる。湖の西側の山々は一足早く朝の光を浴びているけれど、その光は東側の山々に遮られてなかなか湖面までは届いてこない。
 とりあえず、湖中央の弁天島を目指してカヌーを進める。
 弁天島の周りでは、白い朝もやがまるで生き物のように刻々と形を変えながら漂っている。

朝靄の然別湖に漕ぎ出す   朝靄に包まれる弁天島

 ようやく湖面まで朝の光が届いてきて、朝もやの風景をより幻想的に見せている。
 それまで寒そうな様子だったフウマも、太陽の光を浴びて気持ち良さそうに目を細めている。
 弁天島までやってくると急に北風が強く吹き始めた。ここまでは、周りの風景を楽しみながらゆったりとしたパドリングだけで来ることができたのに、帰りは二人で必死に漕いでもなかなか前に進まない。これがあるから湖でのカヌーは油断できないのだ。幸いこの風も直ぐに弱まり、またのんびりと漕ぐことができるようになった。
湖畔の紅葉見物 東側の湖岸にカヌーを近づける。この付近の岸辺は、むき出しの岩肌と美しく色付いた木々が、まるで日本庭園のような美しさを作り出している。どんなに熟練した庭師でも、この自然の作り出す造形美には適わないだろう。
 まだ朝の7時前なのに、早くも観光船がやって来た。5人ほどのお客さんが乗っているのが見える。我が家のカヌーの前を通り過ぎる時、観光船の船長さんが汽笛を鳴らして手を上げてくれた。私達がそれに答えて手を振ると、お客さんたちもこちらに手を振り返してくれる。爽やかな気持ちになれる一時の交流だった。
 寒くなってきたので、日の当たっている西側へと移動する。そこには3艇のカナディアンが浮かんでいた。ネイチャーセンターのツアーらしい。
 こんな日にツアーに参加したお客さんは、本当に幸せ者だと思う。
 しっとりとした日本庭園の様な雰囲気だった東側の湖岸と比べて、こちらは紅葉した木々が太陽の光を正面から受けて、一歩間違えれば原色のけばけばしい世界となってしまいそうな感じである。
 朝のカヌー散歩を満喫してサイトまで戻り、朝食にする。

 宿泊場所は糠平から然別湖に変更になったけれど、最初に予定していた糠平湖のタウシュベツ川橋梁はどうしても見に行きたかった。
 そしてどうせ見るのなら、カヌーに乗って湖上から眺めなければ面白くもなんとも無い。
 然別湖の湖畔からカヌーを引き上げて車に積み込んでしまうと、糠平湖から戻ってきた時にそれをまた然別湖に浮かべる気にはなれないだろう。何せここの駐車場から湖畔までは距離があるので、アリーと違って重たいフリーダムを運ぶのは、非力な私にはかなりの重労働なのだ。
 そう考えると、最後にもう一度然別湖でカヌーに乗っておきたかったので、朝食を済ませて再び湖上散歩へと出かける。
 ヤンベツ川が流れ込む付近で、湖の水深がやたら浅くなっているのが気になった。川から流れ込んだ砂が堆積しているようである。糠平へ向かう途中の道路沿いで新たに護岸工事を行なった場所があったので、そこから流されてきた土砂なのかもしれない。
 それほど大きな工事でもないのに、これだけ大きな影響があることを目の当たりにすると、原生の自然を守ることの難しさを思い知らされてしまった。

 車にカヌーを乗せ、再び幌鹿峠を越えて糠平へと向かう。昨日通った時よりも木々の紅葉が進んでいるような気がする。
 相変わらず紅葉見物の車が多い。タウシュベツ川橋梁へと続く林道に入っても対向車が次々に走ってくるので、先の見えないカーブでは冷や冷やさせられる。
タウシュベツ川橋梁 途中でノロノロと走るマイクロバスに追いついて、そのマイクロバスが対向車とすれ違えずに立ち往生してしまった。林道に不慣れなドライバーまで入ってくるので、路肩ギリギリまで車を寄せることもできずに、余計に混乱するのである。
 ようやく橋梁近くの駐車場に到着。直ぐに車からカヌーを降ろし、それを水際まで運ぶ。
 ここの駐車スペースは湖畔に隣接しているので、カヌーを出すのにはちょうど良い場所だ。
 鏡のような湖面の糠平湖へと漕ぎ出す。周りの山々は、然別湖より紅葉は若干遅れているようだけれど、それでも秋の美しい風景を織り成している。
 タウシュベツ川橋梁は例年ならば今時期になると殆ど水没してしまうのだけれど、今年は夏場に雨が少なかったのでダム湖の水位が上がるのも遅れているようで、まだアーチの部分が水上に現れていた。
 前回ここを訪れた時は春先で水位の高い時期だったので、そのアーチ部分も殆ど隠れてしまっていたのだ。
アーチ橋の中をくぐり抜ける そのアーチの一箇所をカヌーでくぐり抜けてみる。その様子を岸から見ていた観光客から歓声が上がった。こんなところで注目なんか浴びたくないので、慌てて沖まで逃げ出した。
 夏場の渇水期ならばアーチ橋の全体が現れていてその周りを自由に歩けるようだけれど、今時期はカヌーがなければ岸からその様子を見るだけである。
 カヌーならではの構図の写真を撮ろうとその周りを回っていると、いつの間にか湖面にさざ波が立ちはじめた。こうなるともう良い写真は取れそうに無い。
 諦めて出艇場所まで戻ってくると同時に急に風が強まり、あっと言う間に湖面全体が波で覆われてしまった。
 本当にギリギリのタイミングでカヌーを楽しめたようである。
 糠平の温泉街まで戻り糠平館観光ホテルで風呂に入った。糠平の温泉は全旅館が源泉かけ流しとなっていて、とても素晴らしいお湯を楽しめる。
 温泉から出てくるとちょうど昼の時間帯だったので、何処の店も混んでいる。ここでの食事は諦めて、カップ麺を買って然別湖まで戻った。

 キャンプ場まで戻ってくると、湖側からの風が強まっていてかなり肌寒く感じる。昨日も全く同じで、糠平とここではかなり気候も違うようだ。
 お隣のキャンパーは、昨日の後から来たほうの一組が既に帰ってしまっていて、そのテントが立っていた場所には、直火の焚き火跡と燃え残った薪がそのまま残されていた。
 既にクローズした後のキャンプ場でこれをやってしまっては絶対にダメである。こんなことが重なると、糠平のキャンプ場のような措置がとられることになるのだ。
紅葉と焚き火 その後を片付けるような立派な気持ちは無いけれど、燃え残った薪はありがたくいただくことにする。
 テントの中で寛いでいると、朝の4時から起きて動き回っているものだからさすがに眠たくなってきてしまった。でも、私達夫婦に昼寝の習慣は無く、もし昼寝をしてしまうと一日が全て終わってしまったような怠惰な感情に囚われてしまいそうなので、絶対に寝るわけにはいかない。
 昨日もそうだったけれど、このキャンプ場は日中に湖からの南風が強く吹いてくるけれど、夕方になると止んでくる傾向にあるみたいだ。
 我が家がここに泊まった時は、殆どがそんなパターンである。
 そして今日も次第に風が止んできた。
 糠平湖からよく乾いた流木を沢山拾ってきていたので、早めに焚き火を始める。それにしても糠平湖は流木の宝庫である。
 もしも糠平に泊まっていたら、流木集めも楽しい遊びのメニューの一つに入っていたはずだ。
 上空には次第に雲が広がり始め、確実に天気は下り坂へと向かっている。天気予報を確認すると深夜に雨が降り始めて午前中にはその雨もあがりそうな感じである。
 そうなってくれたら、かなり理想的に今回のキャンプを締めくくれそうである。
 最後の夜の焚き火をたっぷりと楽しんで、9時前には眠りに付いた。

 テントを叩く雨音で目が覚めて、時計を見てみるとまだ10時を過ぎたばかりだった。予想より降り始めが早いけれど、その分雨が上がるのも早くなるかもしれない。そう思って再び眠りに付く。
 その後も何度か目が覚めたけれど、雨音はずーっと続いている。時々、風の塊りがもの凄い音を出しながら森を震わせて通り過ぎていった。テントの中は真っ暗で何も見えないけれど、その風を周りの木々が遮ってくれているようで、テントは殆ど揺れていない。
 やがてテントの中も明るくなってきたけれど、雨は止むどころかますます激しく降っている。テントの中に敷いてある銀マットに触れてみると、その表面がやたらに湿っている。テントの中もかなり湿度が高くなっているのだろう。
 それ以上寝てられないので起き出すことにした。
テントの周りは水浸し この雨では身動きも取れないので、インナーテントだけを先に取り外して生活の場を広げることにする。吊り下げ式のインナーテントはこんな時に本当に便利である。
 テントの中を片付け、最後に銀マットをめくると、その下がびしょ濡れになっていたのでビックリしてしまった。そしてインナーテントを取り外すと、その下には水溜りができていた。
 これではテント中が湿っぽいのも当然である。
 恐る恐るテントの外に出てみると、私の寝ていた辺りがちょうど雨水の流れる通り道になっていた。
 テントを張るときにそれなりに注意はしていたつもりだったけれど、まさかここまで雨が降るとは思っていなかった。
 テントの周りには松葉もびっしりと張り付き、もう見るからに悲惨な状況だ。
 私が少しずつ荷物を片付けていると、かみさんも自分のテントから起き出してきて、この有様を見て驚いている。
 ラジオの天気予報では道東の天気が回復するのは昼ごろになると話していたそうである。
テントの中で朝食準備 さて、どうやって撤収しようかと呆然としていると、かみさんが「少し落ち着いて考えましょう」と言ってきた。
 それもそうである、ジタバタしてもしょうがない。まずは何時もどおりに朝の洗顔から行動を開始することにした。
 炊事場の中に避難する方法もあるかなと考えていたけれど、横殴りの雨でその中もずぶ濡れである。もしも雨に備えてタープを張っていたとしても、これでは何の役にもたっていなかっただろう。
 テントに戻って朝食。昨日の夕食の残りのキムチ鍋に、五目御飯の残りで作ったおにぎりをそのまま放り込み、それを温めて食べる。これがとても美味しくて、腹が一杯になるとパワーも出てきた。
 「よし!片付けるか!」
 雨が降っていても、何時もの撤収作業と違うのは雨具を着ているか着ていないか程度の違いで、それほど大変な作業でもない。
 最後にテントをたたんで、それを大きなビニール袋に入れて車の荷台に放り込んで作業完了。一番大変なのは、家に帰ってからこのテントを乾かさなければならないことである。
 そうして、殆どのキャンパーがまだテントの外にも姿を現していない午前8時、我が家だけが早々とキャンプ場を後にした。
 最後に雨にたたられたけれど、それも含めて我が家のこれまでの然別湖キャンプの中では今回が一番素晴らしいキャンプだった気がする。

三国峠の紅葉 札幌までは三国峠経由で帰ることにした。
 糠平への幌鹿峠を越えるのはこれで5度目、すっかりお馴染みの道になってしまった。ここを初めて通った二日前よりも確実に木々の色付きが深まっている。
 糠平を過ぎて三国峠を上っていくと全山がまっ黄色に染まっていた。どこかに車を停めてその風景をじっくりと楽しみたいけれど、駐車できるようなスペースが何処にも無いので、走りながら車の窓から眺めるしかない。
 峠頂上の駐車場は観光バスが一杯で混雑していたので、そのまま通り過ぎる。
 トンネルを抜けて上川町側に出ると、ようやく雨も止んできた。そしてこちら側の紅葉も目の覚めるような美しさだった。
 路肩も広いので、所々で車を停めてはその風景をカメラに納める。
 今年は夏以降、台風や発達した低気圧で大荒れになることも無く、山の木々は全く傷むことなく紅葉の季節を向かえた。
 多分そのためだと思うのだけれど、今年の紅葉は一際鮮やかだ。
 その後、こちらはまだ色付き始めといった感じの層雲峡の紅葉を楽しみながら、札幌には昼過ぎに到着。
 庭にもう一度テントを張って、全面に張り付いている松葉を洗い流し、夕方には何とか乾いたテントを片付けることができた。

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