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緑に囲まれて兜沼キャンプ後編

兜沼公園キャンプ場(7月3日〜4日)

アメダス日照 アメダスの日照を確認すると、北海道で晴れているのはこの付近だけである。
 これはもう、霧男返上どころか晴れ男に昇格したのかもしれない。
 兜沼公園に連泊することに決めたので、今日は時間に余裕がある。
 そこで今日はサロベツ川を下ることにした。
 当初の計画では、道東に出かけて別寒辺牛川、琵琶瀬川、オンネベツ川と湿原の川を巡るつもりでいたので、サロベツ川ならこれらの湿原の川と大して変わりはない。
 原生花園の花も楽しめたし、これで当初計画と同じような体験をできたことになるのだ。
 出艇場所の音類橋を目指して、まずは牧場地帯を通る道道763号兜沼豊徳線経由で稚咲内へと出る。
道道763号から見る利尻島 途中で利尻富士の姿が美しく見える場所があった。
 でも、今日は晴れている割にはその姿もちょっと霞んで見えていた。
 この付近は何処の道を走っても、利尻富士の姿がアクセントになって美しい景観を楽しめる。
 豊徳に出てきたところで、サロベツ川に架かる橋の上から川の様子を見てみたが、どんよりと淀んであまり良い雰囲気ではない。
 音類橋まで行っても同じような様子なら、下るのを躊躇ってしまいそうだ。
 稚咲内からはオロロンラインを南下する。
 ここでも勿論、海上に見える利尻富士が添景である。
 オロロンラインを走ると、今時期ならばエゾカンゾウの花が美しいはずなのに、今年は花があまり目立たない。
 年によって花付きの良い悪いがあるようだけれど、よく見ると既に花の終わっているエゾカンゾウが多いようだ。
 今年の6月は気温が高かったので、花の時期も短かったのかもしれない。


オロロンラインと利尻富士

 音類橋に到着して川の様子を眺めると、上流で見た様子とは全然違って、直ぐにでもカヌーを浮かべたくなるような美しい流れである。
サロベツ川にカヌーを浮かべる ワクワクしながら出艇の準備をしていると、飲み物を忘れてきたことに気が付いた。
 今日は天気が良くて気温も高いので、飲み物なしではカヌーには乗れない。
 しょうがないので、自販機を探しに下サロベツ原野の幌延ビジターセンターまで行ったが、まだ開館前。
 付近を走り回ったが、自販機など何処にもありそうもない。
 結局、幌延の町のコンビニまで行ってやっと買うことができたが、100円のお茶1本買うために片道15キロも走ることになるとは思いも寄らなかった。
そしてようやく、サロベツ川にカヌーを浮かべる。
(この後の川下りの様子は川下り日記参照)

 川を下り終える頃には、青空は雲に隠されてしまった。
 この後の予定は、とりあえず豊富温泉に入ることしか考えていない。まだ昼前で時間も早かったので、下サロベツ原野の遊歩道を歩くことにする。
下サロベツ原野の遊歩道 今回の旅行では、最初に誰も人のいない美しい原生花園を満喫してしまったので、その後はどうも観光客のいる原生花園には興味が無くなっていた。
 それに、ここの遊歩道も既に一度歩いたことがあるはずだ。
 おまけに蒸し暑くて、気乗りしないまま歩き始めたが、湿原の中には涼しい風が吹き抜け、ヒオウギアヤメの花も涼しげで、なかなか気持ちが良い。
 一度歩いたと思っていた遊歩道も、もしかしたら初めて歩く場所かもしれない。
 何時も穴場ばかりを追い求めていたら、意外なところに盲点があったようである。
 ヒオウギアヤメだとばかり思っていた花も、ここではカキツバタやノハナショウブも咲いているらしく、どれがどれなのか区別が付かない。
ヤマドリゼンマイの中を歩く 草の間でひっそりと花を咲かせているトキソウや、長沼の湖面で小さな黄色い花を咲かせるコウホネがとても可愛らしい。
 木道は長沼の横を通り過ぎて、ヤマドリゼンマイの淡い緑に囲まれる中を更に奥へと伸びていて、パンケ沼まで続いているらしい。
 今日カヌーで乗り入れるつもりが途中で挫折してしまったパンケ沼の姿を一目見ようとその木道を更に奥へと歩き始めた。
 しかし、 途中から木道を覆うように笹が伸びていて、半ズボンで歩いてきた私は途中で引き返すしかなかった。


トキソウ   コウホネ

 この付近での食事処情報が全く無かったので、幌延町のコンビニで弁当を買って食べることにする。
 トナカイ牧場まで行けばレストランがあるが、そこは4年前に一度入っているし、観光地にはあまり行く気がしないのだ。
幌延の町を見下ろす展望台? それよりもコンビニ弁当を眺めの良い場所で食べた方が気分が良い。
 道路地図を見ると近くにふるさとの森展望台があるようなので、そこを食事の場所に選ぶ。
 このふるさとの森にはキャンプ場があって、訪れるのは初めてだった。
 道路を挟んでサイトの目の前に民家があり、私が最も利用する気になれないタイプのキャンプ場である。
 それでもライダーらしきテントが、民家の真正面にポツンと張られていたのには驚いてしまった。
 ここの展望台も期待はずれだったが、とりあえず空腹は癒された。

 豊富温泉へと向かっていると、トナカイ観光牧場の隣に巨大な展望タワーらしき建築物が聳え立っているのが目に入った。
 4年前に来た時にはそんなものは無かった筈で、観光牧場の展望台かと思って近くに行ってみたら、幌延深地層研究センターPR施設の「ゆめ地創館」と言うものらしい。
ゆめ地層館の建物 それを見て、幌延町では高レベル放射性廃棄物の地層処分が計画されていることを思い出した。
 日本原子力研究開発機構がお金を湯水のように使って建設したPR施設には全く興味が無かったけれど、無料で入れるようなので寄ってみることにした。
 まずは、地下500mに造られた展示室へ一気に降下。
 もしも何か事故があって地下に閉じ込められてしまったらどうなるんだろう。
 マジでそんな事が心配になってくる頃に、地下に到着。
 騙された〜と思いながら、そこの展示物を見て回る。(ネタバレになるので詳細は書きませんが・・・)
 展望タワーからの眺めも大したことが無く、無駄な時間を過ごしてしまったと思いながら豊富温泉に到着。
 昨日プリンを買った川島旅館の温泉に入ろうと思ったが、車が沢山停まっていたので向かいのニュー温泉閣ホテルに変更。
 昨日入ったホテル豊富よりも、温泉の色が濃かったような気がした。
 キャンプ場と同じく、風呂の中もリタイアキャンパーらしき人ばかり。
 ライダーは勿論、道ですれ違うチャリダーまでもおじさん、おばさんなのである。
 今回の旅で一番印象に残ったのは、このリタイア組の元気の良さだったかもしれない。

 温泉で汗を流した後は、真っ直ぐにキャンプ場に向かって直ぐにビールを飲みたいところだが、今日はその前に一仕事が待っていた。
 キャンプ旅行最後の夜くらいは焚き火を楽しみたい。そのためには、薪を確保しなければならないのである。
エゾカンゾウの咲くサロベツ原野 日本海の海岸に出れば流木はいくらでも落ちている。
 サロベツ原生花園の前を通って、再び日本海を目指した。
 今年はエゾカンゾウの花が少ないと感じていたが、サロベツ原生花園は逆に、これまで私が見た中では最も花が多いような気がした。
 車の中から見ると遠くのほうがオレンジ色に染まって見えている。
 ちょっと迷ったが、そのまま通り過ぎることにした。
 隣の芝生が青く見えるのと同じ理屈で、実際にそこまで歩いていけば、疎らにしか咲いていないのかもしれない。
 稚咲内まで出てきて、そこからはオロロンラインを北上する。
 これでコウホネの家まで走れば、細切れだけれど、今回も私の好きなオロロンラインの風景を全て楽しんだことになる。
 さすがにこの辺りでは道路沿いのエゾカンゾウも沢山花を付けていた。
オロロンラインのエゾカンゾウ そんな風景を楽しみながらゆっくりと車を走らせ、同時に海岸に出られそうな枝道を探す。
 4年前にサロベツ川を下った時は、この付近の海岸にテントを張って悲惨なキャンプをしたはずである。
 でも、その時に海岸に降りた道がなかなか見つからない。途中でUターンして引き返してきたが、それでも見つからない。
 4年前のキャンプ地を探すのは諦め、流木の集まっている場所を見つけて、その近くまで車を乗り入れる。
 そして海岸に出てびっくりした。潮の流れの関係なのか、そこには大量の流木が折り重なるように打ち上げられていたのである。
 盛大な焚き火をするつもりも無く、焚き火台に乗る適当な長さと太さの流木を集めるのに時間はほとんどかからなかった。
 次々と通り過ぎる車の中から不思議そうにこちらを見ている人がいるが、キャンプの焚き火用の流木を集めているとは誰も思わないだろう。


流木の集まる海岸   流木を積み込む

兜沼郷土資料室 そのままコウホネの家経由でキャンプ場へと戻る。
 兜沼の集落を通ると、そこの郷土資料館が開館しているのに気が付いた。
 変わったデザインの建物で、昔から気になっていたのだが、土日しか開いていないため今まで中に入る機会が無かったのである。
 一刻でも早くビールを飲みたいのは山々だが、ぐっと我慢してこの資料館へと入った。
 1934年に建築され郵便局として利用されていた建物らしいが、ギシギシとなる床板といい、ほとんどそのまま手を入れられずに残っているので、なおさらその古さを感じさせてくれる。
 古い生活用具は付近の住民の人から寄贈されたものらしく、それぞれ寄贈者の名前が書かれている。
 かみさんが、古い家の納屋の臭いがすると喜んでいた。

テントに戻ってまずはビール そうしてようやくキャンプ場に戻ってきて、今日は蟻の巣事件も無く、直ぐにビールを飲むことができた。
 ここへ戻ると、もう何をする気も起こらなくなる。
 木々の緑を眺め、鳥の声に耳を済ませるだけ。
 せいぜい、テントの周辺を歩いて写真を写す程度である。
 BMWのキャンパーは帰ってしまったようで、その代わりにバンガローに2組の夫婦が泊まっているようだ。
 勿論、老夫婦である。
 バイクが1台、テントを張る場所を探しに入ってきた。
 軽く挨拶を交わしたが、何と彼は若者のようである。
 今回のキャンプ旅行で初めて出会った若者キャンパーで、見知らぬ外国を旅行していて心細くなった時に始めて日本人旅行者に巡り会った時のような気分だった。
 最も、彼にすれば、「またここにも年寄り夫婦キャンパーが・・・」と思っているのかもしれない。
 そのライダーは、樹木の無い芝生部分にテントを張ったようである。
 結局この日のテントキャンパーは他には彼一人。
デージーの咲く場内 いくら天気が悪いとは言え、7月の週末にしては寂しすぎる。
 このキャンプ場の鬱蒼とした雰囲気が、嫌いな人もいるのかもしれない。
 私達が始めてここに泊まったのは、もう20年近く前になるが、その時は場内も今よりもっと明るかった気がする。
 その後、場内の植栽も進められたのだろう。
 20年も経てば木もそれなりの大きさに育つ。今の状態は、専門的な目から見ても、明らかに樹木が過密な状態である。
 1本1本の樹木をのびのびと育てて良い森を作るには、間引きが必要である。
 その二次的な影響として、気持ちよくテントを張れる場所も昔から比べたら少なくなった気がする。
 場内の草が少々伸び気味なのは、今が花盛りのデージーの花を刈ってしまわない様にとの配慮かもしれない。
 折角の素晴らしいキャンプ場なので、その将来のことが心配に思えてくる。


緑がまぶしい兜沼公園キャンプ場

夕食のカレー 今日の夕食は、キャンプ旅行の初日に名寄の道の駅で買った丘の上のレストランμのレトルトカレーである。
 一袋600円と値段は高かったが、士別サフォークの肉が食べられるならと2袋入りセットを買ってしまった。
 羊の肉が食べられないかみさんも、もしかしたら士別サフォークならと考えたようだが、結局羊に変わりは無く、肉は全て私が食べることとなった。

 食後は、海岸で拾ってきた流木で焚き火を楽しむ。
 そして、昨日豊富の工房レティエで購入したチーズ「リィシリ」を肴にワインを飲む。
 洞爺湖サミットの夕食でも出されたと言うチーズに、セイコーマートで買った500円ワイン。
最後の焚き火 このミスマッチを焚き火の炎が取り成してくれる。
 何の計画も無いままに札幌を出て、朝の天気予報を頼りにその日の行動を考えるような毎日。
 結局は、過去の我が家の道北キャンプの軌跡を辿るような旅となってしまったが、それでも新しい発見も沢山あって、今回も思い出に残るキャンプになりそうだ。
 拾ってきた流木を全て燃やし終えたところで、最終日も9時過ぎに就寝。

 最終日の朝も鳥の囀りで目が覚める。
 時間の割りに薄暗く感じるのは、厚い雲がかかっているのかもしれない。
 朝のコーヒーを飲みながら今日の行動を考えていると、ポツリポツリと雨粒が落ちてきた。
 露も降りていなくて、これならば最後の撤収も気持ち良く終われそうだと思っていたのに、ここでテントが濡れてしまうと乾かすのにも時間がかかりそうだ。
 ところがテントを乾かすどころか、次第に本格的な雨降りとなってきた。
雨雲レーダー 雨雲レーダーを確認すると、北海道で雨が降っているのはこの付近だけである。
 ようやく晴れ男になれたと思っていたのに、これでは霧男から雨男に変わっただけの話しみたいだ。
 インナーテントだけを片付けて、テントをタープ代わりにして雨が止むのを待っていたが、なかなか止む気配が無い。
 今日は寄り道しないで、無料化になったばかりの高速道路で一気に札幌まで戻ることに決める。
 濡れたテントは家に帰ってから乾かすことにして、撤収を始めることにした。
東屋の中でテントを片付ける 久しぶりの雨の中での撤収だったが、近くにあった東屋を使わせてもらって、楽に片付けることができた。

 二日間お世話になった兜沼公園に別れを告げて、南へ向かって車を走らせる。
 途中の天塩川は、一週間前に下った時とは比べ物にならないくらいに茶色に濁り、その付近で降った雨の激しさを物語っていた。
 士別剣淵インターで高速道路に乗る際、前を走っていた大型トラックを先頭とする十数台の車列が、全部そのままインター方向に曲がっていった時には、無料化の現実を見せ付けられた様でガックリときた。
 でも、その先の2車線区間ですんなりと全てを追い越すことができて、その後は遅い車につかまる事も無く、何時もと同じペースで札幌まで走ることができた。
 無料化された高速道路では、今まで以上に大らかな気持ちで運転することを求められそうだ。
 途中から雨も止んで青空も広がっていたのに、札幌の自宅に近づくにしたがって怪しい雲が広がり、雷に稲光も。
 何だかまた、旅行最終日に雨を呼ぶ男に変わってしまったようである。

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茶色く濁った天塩川   帰ってきたら雷雲が



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