兜沼のキャンプ場まで戻るのに国道を走るのもつまらないので、湿原の中の道を走ることにした。
ところが、道路地図を見ながら近道を走るつもりだったのが、途中で道に迷ってしまった。
農道が複雑に入り組んでいるが、迷ったと言っても、北へ向かって走っていればそのうちに大きい道路に出るので問題はない。
でも、近道するつもりがかなりの遠回りになっていることだけは確かである。
途中で利尻岳の素晴らしい姿に出会う。
なまら蝦夷の中に「道に迷ってみよう」との文書が書いてあった。そうすれば思わぬ景色に出会えることが出来るとのこと。
この利尻岳の風景がそれなのだろう。
でもそれは時間に余裕がある時の話し。
こちらは一刻でも早く風呂上りのビールを飲もうとしているのに、景色を楽しんでいる余裕など無いのだ。
そうしてようやくキャンプ場に戻ってきた。
テントを開けると随分と蟻が多いことに気が付く。特に、テントを収納していた入れ物に蟻が沢山群がっている。
恐る恐るそれを除けてみると、その下がちょうど蟻の巣になっていて、気味が悪くなるくらいの蟻が蠢いていた。 到着後直ぐにビールを飲むはずが、結局テントを蟻の巣の上から移動させることになり、その後でやっとビールの缶を開けることが出来たのである。
既に風呂上りの気分は消え去ってしまっていた。
でもここは、本当に落ち着けるキャンプ場である。
うっそうとした森の中で周りの風景が見えるわけでもない。
たとえ夕焼けで西の空が赤く染まっていたとしても、森の中では少しだけその赤味を感じられるだけだ。
緑に囲まれた中で鳥の囀りを聞くだけしか、ここですることはない。
昨日のクッチャロ湖では素晴らしい夕日に心が舞い上がっていたが、ここでの様に心が落ち着くことは無かった。
別にここでも、兜沼の湖畔まで出れば利尻岳を赤く染める夕日を見られそうだが、わざわざそうする気も起こらない。
ここでは、この静かな時間を楽しむのが正しい過ごし方なのである。
今夜は夏のキャンプらしく焼肉とビールの夕食。
今年の我が家の単独キャンプでは初めての焼肉である。
アオバズクの鳴き声が森の中に響く中、静かに夜はふけて、今日も9時に就寝。
朝は鳥の囀りで気持ち良く目が覚める。
コーヒーを入れて、昨日川島旅館で買ってきた白いプリント特濃プリンをいただく。
それはプリンと言う食べ物とは全く別のものだった。白いプリンは牛乳を食べているようだ。特濃プリンもあっさりとしていてとても美味しい。
そのうちに、木々の間をやっと通り抜けた朝の光がサイトまで届いてきた。
その僅かな光を受けた木の葉が透明に輝く。
芝生一面に花を咲かせた白やピンクのデージーが光の中で輝いて見える。
場内をぐるりと一回りする。
他のキャンパーは、BMWに乗ったソロの男性一人だけだ。
他にはトレーラーが1台、兜沼に近い広場に停まっていた。
さすがにトレーラーを引いては、場内の細い道は入ってこれないのだろう。
我が家のキャンプ旅行も明日が最終日。
札幌まで帰ることを考えれば、もう少し南のキャンプ場に移動すれば楽そうだが、ここがあまりにも快適なので、もう一泊ここに泊まることに決めた。
兜沼キャンプ後編へ続く
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