浜頓別町に入る手前で内陸へと向きを変えた。「なまら蝦夷」に載っていた「夕子のチーズ小屋」へと向かうのである。
今回の旅は道東へ出かけるつもりでいたので、道北方面のリサーチは何もしないままに札幌を出てきてしまった。一般的な観光地はほとんど回り尽くしているので、我が家が目指すのはひたすらマイナーな場所ばかり。
そんな我が家にとって「なまら蝦夷」は、とても役に立つ旅行ガイドブックなのである。
途中、今年の冬に泊まったファームイン「ぶんちゃんの里」の看板を見つけた。
随分昔の出来事にも思えるけれど、あれからまだ半年しか経っていない。ちょっと寄ろうかとも思ったが、一番牧草の収穫時期で忙しいだろうから、そのまま通り過ぎる。
「なまら蝦夷」の大まかな地図だけを頼りにして、ようやくたどり着いた「夕子のチーズ小屋」。
そのドアには、clozeのプレートが下げられていた。
金土日だけ営業している店だったのである。
そしてその横の張り紙には「牧草収穫期間中はお休みさせていただきます。」と書かれていて、これですっきりと諦めが付いた。
しかし、まだ諦めていないかみさんは、「なまら蝦夷」に載っているもう一件のチーズ屋さん「高橋チーズ工房ルーシュ」に行くと言う。
「そこだって休みに決まっている」と思いながら、頼りない地図を見ながら更に先へと進んだ。
草に埋もれかけた道路際の看板を見つけてそこから曲がる。
その先にも小さな看板が道路標識に取り付けられていたので、その看板の矢印の指す方向に車を走らせる。
「本当にこんな場所にチーズ屋があるのか??」
周辺は牧草畑が広がっているだけ。
その奥に、ごく普通の農家の家が見えている。
そこまで行ってみると、チーズ工房と書かれた小さな建物を発見。
オープンはしているようだけれど人の気配は無い。
「やっぱりこんな場所で商売なんてしていないのだろうな」と思っていたら、近くの母屋から女性が出てきてくれた。
クリームチーズのような「フロマージュブラン」の在庫しかなかったので、それを購入。
何だか、宝探しゲームでようやくお宝をゲットできた気分である。
中頓別の道の駅にここで作ったチーズを卸しているとのことだったが、今日の目的地とは逆方向になるので、来た道を戻って浜頓別へと向かうことにする。
いつの間にか、南の空には真っ黒な雲が広がってきていた。
このまま天気が崩れそうな雰囲気なので、クッチャロ湖畔のキャンプ場でテントだけ先に張ってしまうことにした。
ポツポツと霧雨の粒がフロントガラスを濡らすようになってきたが、本降りになる前にテントを張り終えることができた。
その後は昼食を食べに猿払へと向かう。
猿払と言えばホタテ。
目指すのは、そのホタテをたっぷりと食べられる「食事処やませ」である。
ここは4年前に初めて入って、お気に入りになった店である。
途中でとうとう濃い霧に包まれてしまった。
やっぱり霧男の名前はこれからも付いて回るのかなと、気が滅入ってくる。
霧の中に目的の店を発見。
以前は定食を食べたので、今回はホタテ丼を注文。
丼を埋めたホタテは期待通りである。
満腹になって店を出た。
相変わらず霧は濃く、当ても無いままに猿払周辺を車で走る。
猿払公園のキャンプ場も覗いてみたが、相変わらずキャンパーの姿は見当たらない。道の駅と温泉が隣接しているのに、ここでキャンパーの姿を見たことは私は一度も無い。
浜頓別まで戻るのに、猿払牧場の中の道を走ってみる。
国道ばかりでなく、たまに脇道に入ってみるのも面白いものだ。そんなところでは時々、思いがけない風景に出会えたりするのである。
しかし、霧に包まれた牧場風景は退屈だった。かみさんは助手席でぐっすりと寝込んでしまう。
今度は海に出て、海岸沿いのダート道へと入る。
周辺は一面の花畑だった。
ようやく目を覚ましたかみさんは、そんな風景がいきなり目の前に広がっていたのでかなり驚いたようである。
霧の中では、牧場風景よりも原生花園の花を楽しむに限る。
ダート道の探検を終えた後は、適当な場所に車を止めて周辺を歩いてみる。
何処を歩いても花を踏みつけそうなので、車が走り抜けたような跡を見つけて、足もとに気を配りながらその中を歩く。
この付近の原生花園には一応名前も付けられているが、観光バスが訪れるような場所ではない。
駐車場も無ければ、木道も展望台も無い。
でもこんな原生花園が私は大好きである。
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