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雨を逃れてウスタイベキャンプ

ウスタイベ千畳岩キャンプ場(6月30日〜7月1日)

 今年の我が家の長期?キャンプ旅行は4泊5日の日程で道東方面へ。テーマは道東の湿原カヌー巡り。
 ところが、2週間かけて綿密な計画を練り上げたのに、道東の天気予報は我が家の日程に合わせてくれたかのように雨マークの連続。
 出発2日前になって代替案の検討を始める。道北や道南、オホーツク・知床方面、利尻・礼文、それとも北海道ど真ん中の大雪山。
 勿論、第一候補は道東であることに変わりは無く、何れにせよ天気次第で、最終的には当日の朝の天気予報を見て判断することにした。
 しかし、当日になっても天気予報に大きな変わりは無し。しいて言えば、道南方面の雨の確立が低そうだ。
カヌー積んだり降ろしたり 道南ならばカヌーに乗る機会は無さそうなので、昨日から車に積み込んであったカヌーも降ろしてしまう。
 そうしてもう一度、何時も参考にしているサイトとは別のところの天気予報を見てみると、何とそこでは道南にも雨マークが。
 パソコンの前で途方に暮れる私。
 こうなったら今日の天気予報だけで決めるしかない。とりあえずは北に向かって車を走らせることに決めた。
 でもそうなると、カヌーに乗る機会があるかもしれない。
 川も下れて、山にも登れて、キャンプ場で無い場所で野宿もできて。
 カヌーの他に、ありとあらゆる状況に対応できるような装備を整えて札幌を出発した。
 行き先の決まらないまま家を出るキャンプは何度か経験はあるが、ここまで先行き不透明なのは初めてである。

少しだけ青空が 高速道路を北へ向かって車を走らせる。
 少しだけ見えていた青空が今日の見納め、いや、もしかしたらキャンプ旅行中の最後の青空となるかもしれない。
 その予感どおり、岩見沢辺りから霧雨が降り始めた。
 ところが、直ぐにその霧雨も上がって、前方には雲の切れ間から青空が顔を出すようになってきた。
 北上するに連れて、その青空がますます広がってくる。
 そして風連町の道の駅に着いた時には、夏を思わせる青空が上空に広がっていたのである。
 この道の駅には、数日前のクラブの例会で天塩川を下った際に立ち寄ったばかりである。
 これがあったので北に来るのは気がすすまなかったのだが、上空の青空がそんな私の気持ちを変えてくれた。
 今日のとりあえずの目的地は美深の松山湿原。
 青空が広がっている中で、その辺りにだけ夏の入道雲のような雲がかかっているのがちょっと気がかりだ。


途中のパーキングではかなり青空が   松山湿原の方向にだけ雲が

 松山湿原へ向かう前に、その手前の美深トロッコ王国に立ち寄る。
 ここは旧国鉄美幸線の線路がそのまま残され、片道5キロの線路を往復で10キロ、エンジン付きトロッコに乗って走ることができる子供連れには人気の施設である。
旧国鉄美幸線跡 息子が小さい頃に連れてきてやりたかったが、その機会も無いままに息子は成人。今は大人二人で乗るしかない。
 「いい歳をした大人が」と恥ずかしがるかみさんを無視して二人分の乗車券を購入。
 夏休み時期ならさすがに私も恥ずかしいけれど、空いている今時期ならば平気である。
 前のお客さんが乗っているので、戻って来るまで20分ほどかかるとのこと。何せ単線なので、何台も同時には走れないのである。
 往復で40分はかかるらしく、混雑する季節はどうやって対応するのだろうと心配してしまう。
 やがてエンジン音をひびかせて、トロッコが戻ってきた。
 それに乗っていたのは若い男性一人。
 満面の笑みを浮かべてトロッコから降りてきた彼は、私達に向かって「いや〜、楽しかったですよ〜」
 彼がそうなのかは分からないが、実際に汽車が走っていた線路でトロッコに乗れるなんて、鉄ちゃんにとっては最高の体験になりそうだ。
トロッコ 元鉄道マンらしき人から説明を受けてトロッコで出発。
 ブレーキとアクセル操作には直ぐに慣れたものの、初めての経験で最初はおっかなびっくりである。
 フルスロットルでかなりのスピードが出る。
 自転車のサドルのような腰掛けに座っているだけなので、ちょっとビビッてしまう。
 本物の線路なので踏み切りもあれば鉄橋もある。 踏み切りはこちらが停まらなければならないが、そこを渡る車などは殆ど無い。
 鉄橋は手すりも何も無く、そのまま川に転落してしまいそうだ。
 5キロ先で折り返して、また同じ線路を引き返す。
 トロッコから降りた時は、振動で暫く手が痺れていたくらいで、けっして快適な乗り物ではないけれど、最高に楽しいトロッコ体験だった。
 それにしても、最近やたらと厳しくなった遊園地の乗り物類の安全基準と比べたら、ここの施設などはその基準の殆どから外れていそうな感じである。
 だからこそ本物の面白さを味わえるのだろう。これからもずーっと存続して欲しい施設である。


緑のトンネルを抜ける   川の上を通過

ゴゼンタチバナの花を写しながら山道を登る そして本来の目的地である松山湿原に到着。
 ここには過去に2度、6年前の10月と4年前の6月に訪れたことがある。
 6年前に初めて訪れた時は既に茶色の秋枯れの風景、4年前は今回と同じような時期だったけれどけれど、花もほとんど咲いていなくて、その時のことは完全に忘れ去っていた。
 そのために今回は、「今時期ならば花が沢山咲いているだろうな〜」と湿原の風景を楽しみにしながら山道を登り始める。
 空は曇ってしまったものの、今のところ雨の心配は無さそうだ。
 湿度が高くて、汗が吹き出てくる。
 ゴゼンタチバナの花が美しい。
 他にも名も知らぬ花が所々に咲いていて楽しませてくれる。
 立ち止まって写真を撮ろうとすると、待ってましたとばかりに蚊が集まってきて、カメラに集中できない。
 20分ほどで湿原入り口に到着。
ワタスゲ そこではワタスゲの白い花が、ちょうど見頃を迎えていた。
 サッと吹きぬけていく風が、ワタスゲの花を静かに揺らすとともに、汗の掻いた体を冷やしてくれる。
 道東の湿原で楽しみにしていたワタスゲの咲く風景。
 それがまさか道北で見ることができるとは予定外の収穫である。
 遠くの方にワタスゲの花で真っ白に見えている場所があったが、残念ながら湿原を巡る木道はそこまでは延びていない。
 カメラのズームレンズで覗き見るしかなかった。
 他の花の姿はほとんど確認できないものの、タチギボウシの蕾だけは沢山上がっている。
 ワタスゲの後はタチギボウシの花で湿原は覆われるのだろう。
 前回は立ち枯れたタチギボウシ。今回はまだ蕾のタチギボウシ。次はこそは、その花の季節に合わせてここに訪れたいものである。


ワタスゲが満開の松山湿原

 湿原から戻る途中で脇道にそれて、雨霧の滝、女神の滝を見に行く。
 その途中にある仁字布の冷水で手持ちの水筒に水を満たした。以前に訪れた時には、この湧水には気付かずに通り過ぎていたので、最近になって周りが整備された様子である。
 ボツボツと大粒の雨が落ちてきたので、一度見たことがあるその先の滝まで行くのは諦めて、道道へ戻ることにした。
アメダス日照 携帯の圏内になったところで、天気の状況を確認する。
 それで、この先の行く先を決めるつもりだった。
 晴れているのはオホーツク海に面した一帯である。
 雄武町に出て、日の出岬キャンプ場辺りにでも泊まれば、その後の天気次第で知床方面に足を延ばすことができる。
 しかし、その方面の明日の天気はパッとしないので、このまま更に北に向かって今日は歌登のキャンプ場に泊まることにした。
 このルートを走ると、9月にクラブの例会で下る予定になっている徳志別川の下見もすることができる。
 この9月の例会は、私の独断で道北の清流として名高い徳志別川に決めたのである。
 ところが、森に囲まれた渓相は美しいものの、川底の石はヌルヌルした藻に覆われ、私の想像していた清流とは随分様子が違っていた。
 「これは例会の場所を変更しなければ」と思いつつ、歌登健康回復村に到着。キャンプ場はその一番奥の山の上。
先客のいたふれあいの森キャンプ場 車を走らせていると、ここに泊まった4年前の記憶が徐々に蘇ってくる。
 とても暑い日だったことが、強烈な印象として残っていた。
 そうして到着したキャンプ場。
 平日で、しかもそれ程人気のあるキャンプ場でもなく、他のキャンパーが居る事など考えてもいなかったので、そこに張られていた一張りのテントに驚いてしまった。
 人の姿は見えないものの、そのテントの様子からは長期滞在キャンパーだと思われる。
 しかも、一番良い場所をしっかりと占領していた。
 かみさんと顔を見合わせる。
 ここは狭いキャンプ場なので、たとえ一張りでも他のテントがあると、我が家的には落ち着かない状況なのである。
 諦めてウスタイベのキャンプ場に向かうことにした。
 歌登の温泉には未練があったけれど、ここで温泉に入っているとキャンプ場到着が遅れそうなので、向こうについてから枝幸の温泉に入ることにする。

ウスタイベ千畳岩キャンプ場にキャンピングカーが勢揃い キャンプ場に到着して、そこの風景にびっくりしてしまった。
 ずらりと並んだキャンピングカーの一団。
 その殆どが道外ナンバーの車ばかり。
 「これは一体何のイベントなのだろう?」
 今週末、ここを会場に「枝幸かにまつり」が開催されるのは知っているけれど、まだその3日前である。
 広々とした芝生の広場には、ロープを張って区画が作られている。
 それを見ると、まだまだキャンピングカーを集まって来そうな様子だ。
 とんでもない所へ来てしまったと後悔するが、これ以上場所を変更する余裕は無く、そのままここに泊まることにした。
我が家のサイト 幸い、混み合っているのは炊事場やトイレの施設周辺だけで、奥の方はまだがら空きである。
 芝生のロープは車の通る場所を示しているらしい。
 その中を通り抜けて、場内の小高い丘の上に真っ直ぐに向かった。
 以前に利用した時もテントを張った場所で、ここのキャンプ場の中では我が家の一番のお気に入りの場所である。
 その場所を確保できただけでも満足だった。
 テントを張り終えたら直ぐに、枝幸のホテルニュー幸林の温泉に入りに行く。
 その後はもう時間も遅くて夕食の準備も面倒なので、コンビニ弁当を買ってキャンプ場へと戻る。
 ここでようやく、旅の一日目を祝ってビールで乾杯することができた。
 真正面の山陰からは夕日の姿が少しだけ覗いていた。
 太陽の姿さえ拝めないと覚悟していたことから思えば、上々の天気である。


ウスタイベの夕陽

 それにしてもキャンピングカーで泊まっているキャンパー達、ほぼ全員が60を過ぎた様なじいちゃん、ばあちゃんばかりである。
 そんな年寄り達が全国からキャンピングカーで集まり、一体ここで何のイベントが行われると言うのだろう?
 数年前の同じ時期にここに立ち寄った時もキャンピングカーが沢山集まっていてびっくりしたことをふと思い出した。
 「毎年恒例のイベントなのだろうか?」 謎は深まるばかりだった。
冷え込む夜  次第に冷え込んできて、ダウンの上着まで着込む始末である。
 明日の予定は、朝起きてからの天気予報で決めることにする。
 さすがに、ここから道東に向かうのは無理なので、道北にもう1泊して、その後は旭岳か白金温泉のキャンプ場に泊まって日帰り登山を楽しみたいところである。
 寝る前に炊事場に歯を磨きに行くと隣りで魚をさばいている夫婦がいたので「今日は何かキャンピングカーのイベントでもあるんですか?」と聞いてみた。
 すると「ああ、これですか?、皆さん、かにまつりを目的に集まってきているんですよ!」とのお返事。
 「えっ?、!」
 ようやく全てが納得できた。カニ祭りまでまだ三日もあるので、それと結び付けて考えることができなかったのだけれど、ここに集まってきているのは全て仕事をリタイアした人達ばかり。
 一ヶ月、二ヶ月と北海道に滞在し続ける彼等にとって、三日前も一週間前も関係無いのかもしれない。
 かみさんは「そこまでしてカニが食べたいのかしら?」と驚いていたけれど、彼らにとってはそれが目的なのではなく、リタイア後の刺激の無い生活に何か目標とするものが欲しいだけなのだろうと私は思うのである。
 謎が解けてすっきりしたところで9時過ぎに就寝。

ウスタイベの朝 翌朝は漁船のエンジン音で目が覚める。
 テントから出ると、夜中に降った雨でテントは濡れていたものの、青空も覗いて予想外の展開である。
 前日の天気予報では道北は曇り。ましてこんな海岸沿いならば、濃い海霧に包まれた薄暗い朝を迎えるのは間違いないと思っていたのだ。
 それが、海霧こそ発生していたものの、それは周囲の風景に変化を加えるためのアイテムの様なものだった。
 千切れ千切れの海霧が光と影を作り出し、周りの山や海の風景を更に美しく演出している。
 アメダス情報を確認すると、北海道で陽射しがあるのは、私達のいるこの付近だけであった。
 これまでは自分達のいる場所だけが雨が降ったり霧に包まれたりして、とうとう6月初めの天売焼尻キャンプでは自分で自分に霧男と命名するに至ってしまった。
アメダス日照 これはついに霧男の汚名返上と宣言しても良いだろう。

 朝食を済ませ、テントが乾くまでの間、千畳岩を散歩する。
 エゾカンゾウにヒオウギアヤメ、ハマナスにハマエンドウ、北海道の初夏を彩る原生花園の花々が、そこでも沢山花を咲かせていた。
 この後は、宗谷岬を回って兜沼か遠別辺りで一泊、その後に大雪山方面に向かおうとも考えたが、雨を避けられるのはどうも道北方面だけのようなので、今日は無理をしないでクッチャロ湖に泊まることにする。
 それならば時間に余裕もできるのでゆっくりと片付けを済ませ、ずらりと並んだキャンピングカーの間を通り抜けて、午前8時前にキャンプ場を後にした。

クッチャロ湖キャンプへ続く 

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千畳岩を散歩   キャンピングカーの集団

千畳岩と枝幸の町


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