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自由気ままに上ノ国キャンプ

夷王山キャンプ場(11月3日〜4日)

 湯ノ沢公園を後にして松前町へと向かう。途中の知内町まで3回も同じ道を走れば、道路沿いの風景もすっかり見慣れたものとだ。
 知内町を過ぎて次の町は福島町である。
 まずは、昨日もしかしたら泊まることになっていたかもしれない森林公園キャンプ場をのぞいてみることにした。
 国道沿いに大きな看板があったものの、そこから先には何の案内標識も無く、何度かUターンしながら山の方に向かって走っていくと、ようやく森林公園の看板が立つ場所にたどり着いた。
 駐車所の横に小さな広場があったけれど、キャンピングガイドに載っている写真とは全く違う場所である。駐車場から先にも道路が続いているが、そこには車両進入禁止と書いた車止めが置かれていた。
 この奥にキャンプ場があるのだろうと、そこから歩いて中に入ったがその道はとんでもない急傾斜の道だった。歩くだけでも息切れしてしまい、とてもキャンプ道具を運ぶようなところではない。
 途中で立ち止まって上を見ると、トイレらしき建物が見えている。そこまではまだかなり登らなければならないし、「これは絶対に他から入る場所があるはずだ」と考えて、一旦車まで戻ることにした。
 公園の入り口横に全体の案内図があったので、それで確認してみたところ、やっぱり上に登るには今の道しかないみたいだ。
そしてその案内図には何処にもキャンプ場などとは書かれていなかった。
 結局、キャンプ場の姿を確認できないままそこを後にしたが、もしも昨日、ここに泊まるつもりで日が沈む頃にやって来ていたりしたら、かなり悲惨なことになっていただろう。
 選択を間違えなくて良かったとホッと胸を撫で下ろした。
 道の駅があったのでそこの駐車場へと車を入れる。その横には立派な横綱記念館が建っていた。そう言えば福島町は横綱千代の富士の故郷である。
 その記念館が道の駅なのかなと思ったら、本物の道の駅はその反対側にひっそりと建っていて、その外観はどう見ても大型の公衆トイレにしか見えない。どちらも中に入る気にはなれず、そのまま道路へと戻った。
 ここも含めて、今回廻った道南の道の駅はとても質素なものばかりである。まあ、元々道の駅とはこのような存在で、他の道の駅が立派過ぎるだけの話しかもしれない。

白神岬 何処にも観光する場所が無いなと思いながら車を走らせ、北海道最南端の白神岬にやって来て、そこでようやく今日はじめての記念撮影をした。
 そうしてようやく松前町に到着。観光ガイドも何も持っていないので、何処に行けば良いのかまるで分からないが、とりあえず松前公園を目指した。
 公園近くの道路は綺麗に整備され、道沿いの家も全て城下町のような創りに立て替えられている。最近、道内の市町村でこのように整備された街並みを見かけることが本当に多くなった。国道の拡幅工事により、それに支障となる建物を全て取り壊し、一つの基準によるデザインで再度建て替えて、統一した街並みを作り出すという事業。
 これに何の意味があるんだろう?とんでもない税金の無駄遣いをやっているんじゃないだろうか?
 こんな事業が平然と行われているのは、北海道だけのような気がする。開拓者として北海道に入ってきて、最初はバラックのような小屋で生活し、次第に豊になるにつれて家も新しく建て替える。そんなところから生まれた古いものにはこだわらないと言う北海道人気質が、こんな事業を許してしまっているのかもしれない。
 それが歴史のある松前町でも行われていたのは、ちょっとショックだった。 取り壊された建物の中にはそれなりの歴史を持つ建物がきっとあったはずなのである。
 松前城の案内標識を見つけて細い道へと入る。そこを進むとあまり迫力の無い天守閣が現われた。入り口の説明文によると、現在の天守閣は昭和35年に再建されたものだそうだ。
 それを読んでの私の感想が、「な〜んだ、俺のほうが歴史が古いんだ。」と言うものである。再建された松前城も、そんな価値基準で見られていると知ったらガッカリしてしまうだろう。
 周辺は松前公園として整備され、桜の名所で知られている。当然桜の時期は車で園内を走ることはできないのだろうが、今は自由に乗り入れられる。狭い路地沿いにお寺が立ち並ぶ寺町の様子など、北の小京都と呼ばれているのも納得できる。
 杉の木立に椿の生垣、おまけに竹林まであったりして、とてもここが北海道とは信じられない。
 300年以上も前からそこに根を張っているケヤキやイチョウの巨木、他では見たことのないような形の松前藩士の墓。北海道の殆どの町が100年少々の歴史しかない中で、松前町は500年以上の歴史を誇る町である。一度ゆっくりとその歴史を追って歩いてみたいものだ。

寺町を歩く   北海道の竹林

 近くにキャンプ場があればもっと松前観光に時間をかけられるのだけれど、今日も遠くのキャンプ場まで移動しなければならない。
 寺町の中を車から降りて歩いていたりしたら、いつの間にか昼を過ぎてしまっていた。「松前物産館よねた」で松前漬けを購入した後は、どこかで昼食を食べることにする。
 以前にネットで松前について調べた時、「漁師の店」と言う食堂が記憶に残っていたので、そこを探すことにする。国道沿いで直ぐにその店は見つかった。
 お昼なのに誰もお客さんがいないようで、ちょっと入るのが躊躇われる様な店である。かみさんと顔を見合わせたが、覚悟を決めて店に入った。おばあちゃんが一人でやっているような店だ。
1000円也のイカ刺定食 メニューを見て迷っていると、私達が観光客だと分かったのか「イカの刺し身とかあるよ」と声をかけてくれた。直ぐに二人ともイカ刺し定食を注文。一人前1000円と言うのは、結構な値段である。壁に張られたイカ刺し定食のメニューに、鉛筆で「むちゃくちゃしんせん」と添え書きされていた。
 もしかしたらもの凄いイカ刺しが食べられるかもしれないと、期待が膨らんでくる。
 そうして、もの凄いイカ刺しがテーブルの上に出てきた。
 「・・・。」
 とりあえず一口食べてみる。まあ、食べられないわけではない。
でも、どう見ても、解凍したばかりのイカですって代物である。
 帰るときに昆布を一束、お土産に持たせてくれた。
 別にそのためでは無いけれど、思いっきり外れのイカ刺しを食べさせられても、大して腹は立たなかった。おばあちゃんが一人で一生懸命作ってくれた料理である。旅の途中でのちょっとした出来事として一つの思い出になりそうだ。
 松前を出て次の上ノ国町までの50kmは全く何も無い区間である。松前半島のの山並みが海に没する海岸線を走るワインディングロード、景色も良くてドライブルートとしてもとても楽しい道である。
快適なワインディングロート ちょっと怪しげな雲が出てきたけれど、それも北に向かうにつれて次第に晴れてきた。
 今日のキャンプ予定地は厚沢部レクの森キャンプ場。初めて泊まるところだけれど、森の中のキャンプ場であることだけは確かである。
 そうなると焚き火用の薪に不自由はしなくて済みそうだが、走っている途中に手ごろな流木が転がっている海岸を見つけたので、そこで袋一杯の薪を拾って、車の荷台に無理やり積み込んだ。
 松前町を出てから久しぶりに人家を見るような気がした。上ノ国町に到着である。
 町の手前に夷王山の案内板を見つけたので、ちょっと寄り道してみる。ここには夷王山キャンプ場があるが、10月いっぱいでクローズしているはずだ。ロケーションの良いキャンプ場とのことなので、もしもオープンしていれば宿泊候補地にも入っていたかもしれない場所である。
 それで様子だけでも見ておこうと考え立ち寄ったところが、炊事場の水も出るし、木工センターの建物に併設されているトイレもまだ使えるようになっていた。
 かみさんはすっかりここのキャンプ場が気に入ったみたいで、直ぐにでもテントを張りたそうな様子である。一方の私は、頭っから厚沢部レクの森のことしか考えていなかったので、そう簡単に気持ちは切り替わらない。
 ここのサイトは、谷の部分に作られているので思っていたほどロケーションも良くないし、海風がちょっと気になるくらいの強さで吹き付けてきている。このまま厚沢部まで行って、もしもそこが気に入らなければここまで戻ってくる時間的余裕もまだありそうだ。
 そう考えて予定通り厚沢部まで向かうことにする。上ノ国町を過ぎ江差町を通って厚沢部までは、それまでの道のりと違ってとても賑やかだった。
 予想以上に時間がかかって、厚沢部町に到着。混雑する道の駅の前を通り過ぎ、キャンプ場の看板に従って山側へと曲がる。その山裾の森の中がキャンプ場になっているらしい。
 「く、暗い・・・。」
 あらかじめ、キャンピングガイドを見ているかみさんから「樹木が茂って薄暗いところみたいよ」とレクチャーは受けていたが、そこは私の考えていた以上に樹木が茂っていた。
 少し開けて日当たりの良い場所にテントを張ろうと思っていたのに、そんな場所は何処にも無い。
 11月までオープンしていて人気のあるキャンプ場なので、3連休初日のこの日ならば物好きキャンパーも数組はいるだろうとも思っていたが、テントどころかバンガロー利用者さえいないみたいだ。
 今時期のキャンプでは少しでも長く太陽の光を浴びていたいところなのに、ここのキャンプ場はサイトまで陽が差し込むことがあるのだろうかと思えるような薄暗さである。
 我が家の車が駐車場に入って、それからサイトの中を下見している間、ここの管理人らしき人が管理棟の前からずーっと私達の様子を見ていた。多分、今日始めてやって来たキャンパーを歓迎しようと、優しい気持ちで見守っていてくれたのだろうが、実は私達夫婦はこれが苦手なのである。
 他に誰もいないようなキャンプ場で自由気ままにキャンプをするのが一番の楽しみなので、こうして監視されているような状況下では心からリラックスすることができないのだ。
 「やっぱり止めよう!」
 「えっ?本当に良いの?」
 私がこのキャンプ場に泊まるのを楽しみにしていたのを知っていたかみさんは、意外そうだった。
 他に行く場所が無ければここでも不満は無かったけれど、先ほど見たばかりの開放的な夷王山のサイトと比べると、この薄暗い場所にテントを張る気にはなれなかった。
 かみさんも、管理人さんからジロジロと見られているのが気になってしょうがないみたいだ。
 こうして、昨日に引き続き予定を変更して引き返すことになった。昨日は45km、今日は25kmなので、まだましである。

我が家のサイト 江差町で買い物を済ませて、日が傾きはじめる3時半には上ノ国町まで戻ってくることができた。
 夷王山のキャンプ場の近くには「北海道夜明けの塔」と名づけられた立派な展望台が聳えている。
 その大仰な名前を見ると「これは是非とも、明日の朝はここから夜明けを向かえなくてはならない」と言った気持ちになってしまう。
 管理人も他のキャンパーも誰もいないキャンプ場というのは、本当にリラックスすることができる。
 そこに付いた瞬間から全てが自分の庭となる。誰に気兼ねすることも無く自由気ままに時間を過ごせるのだ。
 テントを張り終えて、直ぐに温泉に入りに行くことにする。
 キャンプ場を出て丘の上に戻ると、そこは直ぐ牧場になっている。
 西日を受けて赤く霞んだ遠くの山並みを背景に牛達が草を食んでいる。その姿にカメラを向けると、好奇心旺盛な子牛が私に向かって駆け寄ってきた。
愛嬌のある子牛 とても可愛らしいのだけれど、ゆったりと草を食む姿をシルエットにして写真を撮ろうとしていたのに、その構図が崩れて困ってしまう。
 水平線に浮かんだ雲に夕陽が沈もうとしている。後ろを振り返ると、既に月が高く昇っていた。
 しばらくその様子を楽しんでから、そこから2km程の花沢温泉簡易浴場へと向かう。入浴料が200円と安い割には源泉かけ流しで洗い場も広く、とても快適な温泉だった。
 キャンプ場に戻ってきて、早速焚き火をはじめる。
この周りは一部に樹林があるものの、殆んどが牧草地に囲まれているので薪を拾うのは難しい。
 途中の海岸で流木を拾っておいて大正解だった。
 今日のダッチオーブンメニューは丸タマネギのワイン煮込みだ。
 ダッチオーブンと言うのは本当に便利なものである。焚き火をするためにキャンプをしているような我が家にとって、その趣味を楽しんでいる間に同時に料理も出来上がってしまうと言うのだから、こんなに良い事は無いのだ。
 唯一の不満は、ダッチオーブンを乗せている間はあまりガンガン火を燃やせないということである。それは食後のお楽しみに取っておいて、料理中は小さな炎でも別に不満は無い。
丸タマネギのワイン煮込みチーズ包み そうしている間に料理が完成。本によると最後に粉チーズを振り掛けることになっているみたいだが、かみさんが使ったのはピザトースト用のとろけるチーズ。
 シェラカップに入れたタマネギの上にチーズを乗せて、それに皿で蓋をする。
 しばらくしてその蓋を取れば、見事なタマネギのチーズ包みの出来上がり。
 食べる前に一応記録写真を撮る。
 テーブルクロスでも敷いてもっと美しく写せば良いものを、我が家の場合キャンプではとりあえず喰えれば良いと言う主義なので、散らかりまくったテーブルでも全然気にならない。
 そうして食後は思いっきり焚き火を楽しむ。
 ところが昨日までと違って全然寒さを感じない。
 顔に吹いてくる風が生暖かく感じられるくらいの気温だ。温度計を見ると14度もある。これでは焚き火の暖かさもあまりありがたくものには思えないのだ。
 トイレの灯りは付くけれど、場内の照明灯は消えたままだ。
 これは我が家にとっては大歓迎のことである。
月夜のキャンプ場 キャンプに来てから夜の月は次第に丸みを増し、明日が十三夜だ。その月が放つ光を、人工の明かりに邪魔されること無く、全身に浴びれる心地良さ。
 上空を次々と雲が流れ去り、その中で月が見え隠れする。そんな様子を飽きもせずに見続けていた。
 明日の「北海道の夜明けの塔」から見る朝日を楽しみに、夜9時には眠りに付いた。

 ようやく朝日が昇る時間を把握できてきたので、とんでもなく早起きすることもなくなってきた。
 テントの中が薄明るくなってから落ち着いて起き出す。
 顔を洗ってから車で夜明けの塔へ向かった。サイトからその塔までは歩いていけるような距離だけれど、せっかちな性格なものだから少しでも早く現地に着きたいのである。
 雲が多いので朝日が見られるかどうかちょっと心配だった。塔の立っている丘の上までやって来て、そこからの風景を見た瞬間にそんな心配も吹き飛んでしまった。
薄く霞んで重なり合う遠くの山並みがまるで山水画のような風景だ。雲の間からのぞいている空はピンク色に染まり、その風景の中を流れる道南の名川天の川が、空の色を映しこんで光の帯となって優雅な曲線を描いている。
やがて山陰から朝日がその姿を現してきた。霞によってその光の大部分を吸い取られてしまい、朝日が昇った後でも周りの風景は淡いピンク色のままで変わらない。
塔の展望台まで登ってみると上ノ国町の市街地も見渡せて、その向こうには江差のかもめ島の姿も霞んで見えている。今日はそのかもめ島を歩いてみるつもりだ。
気が付くと上空の雲もいつの間にか消え去り、朝日の上に残っている雲を通して朝の光がスポットライトのように空に向かって広がっていた。

上ノ国の夜明け   空を彩る朝日のスポットライト

 キャンプ場に戻る頃には、サイトまで朝の光が届いていた。
 後は何時もの朝と同じく焚き火を楽しみながらコーヒーを味わう。ダッチオーブンに昨日のタマネギ煮込みが残っていたので、それに余り野菜などを加えてスープにする。
 今日もまた天気の良い一日になりそうだ。江差のかもめ島などに寄り道し、途中で温泉に入って、それから長万部公園へ向かうと言う大雑把な計画を立てる。
 愛想の良い牧場の子牛にさよならを言って、最後に夷王山のレストハウスにも立ち寄った。そこの広場でもテントを張れそうな様子である。
 景色は文句無くこちらの方が素晴らしくて、最初にこちらを見ていればそのまま躊躇わずにテントを張っていたのにと後悔してしまう。
 過ぎたことは気にしないで、今日の最初の目的地江差へと向かい夷王山を下りることにした。

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