今日のキャンプ予定地は歌登健康回復村、その途中で興部川上流にある三つの滝を見るつもりだ。その前に、まだ行ったことのない滝上町にも寄ってみたかったが、さすがに時間が無さそうなので諦めることにする。
キャンプ場を出た後は、コムケ湖とオホーツク海の間に延びる砂利道を走って北を目指す。
この付近では、初夏には原生花園の様々な花が咲き乱れているのだろう。そんな様子を思い浮かべながら、オホーツク海沿いの荒涼とした風景の中を走るのが私は大好きだ。
眺めの良い場所で車を駐めて写真を撮る。海岸に降りてみると手頃な流木が沢山落ちているので、今夜の焚き火のために少し車に積んでいくことにする。
そこから紋別までは突然雨が降り出したと思ったら、道路が全く濡れていない場所があったりと、いかにも秋らしい不安定な空模様だ。
紋別の街では何か美味しそうな海産物が手に入らないかと、漁港に寄ってみる。
港のすぐ前に渡辺水産直営店という店があって、中に入ってみると札幌では見られないような珍しい魚が沢山売られていてなかなか面白い。
今日の夕食用にシイラの切り身と目鯛の開き、ホタテご飯の素を購入した。
その後は興部町から内陸部へと入る。この道は我が家も初めて走る道で、名寄まで続いている。
観光目的で道北を回るような時、この道路は途中に見るべきものは何もないので、まず通ることは無いだろう。
今回は、たまたまその途中にある滝を目的にしていたので、この道を走ることになったのである。
西興部を過ぎるとほとんどすれ違う車も無くなってくる。内陸に入るにしたがって、再び山々の紅葉は鮮やかさを増してきた。
やがて目的地の「行者の滝」の巨大な看板が道路際に現れた。ほとんど知られていないような滝だと思っていたので、この看板にはちょっとがっかりさせられてしまう。
それでも山の中へと続く砂利道を走っていると、次第に期待が高まってくる。
美しい紅葉風景に、思わず車から降りてカメラを向ける。再び車に乗り込んで先へ進もうとすると、突然ガタガタという大きな音が響いてきた。
ビックリして車から降りてみると、見事に後ろのタイヤがパンクしてしまっていた。
しかし、そんなパンクは少しも気にならない。以前から空気の抜け気味のタイヤが1本あったので、もしもの時のためにスプレー式のパンク修理材を積んであったのである。ジャッキをかけなくても、そのまま注入すれば空気が入ってパンクも直るという優れものなのだ。
タイヤの注入口に接続して缶の弁をひねる。シューッと言う音と共に、白い液体が透明な管を通ってタイヤの中へ入っていくのが見える。
しかし、一向にタイヤが膨らんでくる気配がない。
「何じゃこりゃあ〜、全然使い物にならないじゃん!」
諦めてスペアタイヤに取り替える。そのまま先へ進むのはちょっと不安だったが、もう1本がパンクすることなんてまずは無いだろうと、気にしないで滝を目指すことにした。
直ぐに広い駐車場に到着、その駐車場の直ぐ横に「行者の滝」があるみたいだ。滝までの険しい道のりを歩く覚悟をしていたのに、何だか拍子抜けである。
おまけに10人近い団体が石碑の前に集まり、神主らしき人物が祝詞をあげていたので、ひとまずそこはパスして先へ進むことにする。
ところが、その先の林道の入り口がチェーンで塞がれているではないか!何のため苦労してここまでやって来たのだろうと、途方にくれてしまった。
チェーンの横に、農薬散布のために立ち入り禁止と張り紙がされていた。その張り紙を良く読んでみると、農薬散布は数日後だ。チェーンには鍵もかかっていなかったので、それを外して、入林届けに名前を書いて中に入らせてもらうことにした。
そこから先は急に路面状態も悪くなって、頻繁に車の腹を擦るようになる。しょうがないので片側の車輪を道路の中央に乗せてもう片側は路肩ギリギリで車を走らせた。
普段ならこんな道でも気にしないで走れるのだけれど、何せ今回はスペアタイヤを履いての走行である。こんな場所でパンクしたらちょっと悲惨すぎる。ハンドルを握る手にも汗が滲んできて、ノロノロと林道を進んだ。
4kmほど走って、ようやく「赤岩の滝」入り口に到着。
車を降りて直ぐに、近くの倒木に美味しそうなキノコが生えているのをかみさんが発見。
キノコ図鑑を引っ張り出して調べてみたが、種類を特定できなかったので1株だけを鑑定用に持ち帰ることにした。
これだけ山奥まで来ると熊の気配も心配になってくる。「どうして熊除けの鈴を持ってこなかったの!」とかみさんから怒られてしまった。
かみさんは熊の気配に人一倍臆病なのであるが、この臆病さは別に悪いことではない。
たまたまカヌー用のホイッスルをかみさんが持っていたので、それを時々吹きながら山の中を歩く。
車を駐めた場所から「赤岩の滝」までは300mほどで、ウッドチップを敷き詰めた遊歩道が整備されている。それほど距離は無いものの、最後は急な階段を谷底まで降りるようなアプローチである。
その階段を下まで下りてくると、それほど落差は無いものの二股に分かれて落ちる「赤岩の滝」が現れた。
滝の下は赤い岩盤となっていてその上を水が伝い落ちる。滝よりもこの赤い岩盤の方に目が引かれてしまう。
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