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滝巡り紅葉キャンプ(前編)

ふうれん望湖台キャンプ場(10月16日〜18日)

 今日のキャンプ予定地は歌登健康回復村、その途中で興部川上流にある三つの滝を見るつもりだ。その前に、まだ行ったことのない滝上町にも寄ってみたかったが、さすがに時間が無さそうなので諦めることにする。
 キャンプ場を出た後は、コムケ湖とオホーツク海の間に延びる砂利道を走って北を目指す。
 この付近では、初夏には原生花園の様々な花が咲き乱れているのだろう。そんな様子を思い浮かべながら、オホーツク海沿いの荒涼とした風景の中を走るのが私は大好きだ。
コムケ湖の近くで 眺めの良い場所で車を駐めて写真を撮る。海岸に降りてみると手頃な流木が沢山落ちているので、今夜の焚き火のために少し車に積んでいくことにする。
 そこから紋別までは突然雨が降り出したと思ったら、道路が全く濡れていない場所があったりと、いかにも秋らしい不安定な空模様だ。
 紋別の街では何か美味しそうな海産物が手に入らないかと、漁港に寄ってみる。
 港のすぐ前に渡辺水産直営店という店があって、中に入ってみると札幌では見られないような珍しい魚が沢山売られていてなかなか面白い。
 今日の夕食用にシイラの切り身と目鯛の開き、ホタテご飯の素を購入した。
 その後は興部町から内陸部へと入る。この道は我が家も初めて走る道で、名寄まで続いている。
 観光目的で道北を回るような時、この道路は途中に見るべきものは何もないので、まず通ることは無いだろう。
 今回は、たまたまその途中にある滝を目的にしていたので、この道を走ることになったのである。
 西興部を過ぎるとほとんどすれ違う車も無くなってくる。内陸に入るにしたがって、再び山々の紅葉は鮮やかさを増してきた。
 やがて目的地の「行者の滝」の巨大な看板が道路際に現れた。ほとんど知られていないような滝だと思っていたので、この看板にはちょっとがっかりさせられてしまう。
 それでも山の中へと続く砂利道を走っていると、次第に期待が高まってくる。
パンク修理中 美しい紅葉風景に、思わず車から降りてカメラを向ける。再び車に乗り込んで先へ進もうとすると、突然ガタガタという大きな音が響いてきた。
 ビックリして車から降りてみると、見事に後ろのタイヤがパンクしてしまっていた。
 しかし、そんなパンクは少しも気にならない。以前から空気の抜け気味のタイヤが1本あったので、もしもの時のためにスプレー式のパンク修理材を積んであったのである。ジャッキをかけなくても、そのまま注入すれば空気が入ってパンクも直るという優れものなのだ。
 タイヤの注入口に接続して缶の弁をひねる。シューッと言う音と共に、白い液体が透明な管を通ってタイヤの中へ入っていくのが見える。
 しかし、一向にタイヤが膨らんでくる気配がない。
 「何じゃこりゃあ〜、全然使い物にならないじゃん!」
 諦めてスペアタイヤに取り替える。そのまま先へ進むのはちょっと不安だったが、もう1本がパンクすることなんてまずは無いだろうと、気にしないで滝を目指すことにした。
 直ぐに広い駐車場に到着、その駐車場の直ぐ横に「行者の滝」があるみたいだ。滝までの険しい道のりを歩く覚悟をしていたのに、何だか拍子抜けである。
 おまけに10人近い団体が石碑の前に集まり、神主らしき人物が祝詞をあげていたので、ひとまずそこはパスして先へ進むことにする。
 ところが、その先の林道の入り口がチェーンで塞がれているではないか!何のため苦労してここまでやって来たのだろうと、途方にくれてしまった。
チェーンの横に、農薬散布のために立ち入り禁止と張り紙がされていた。その張り紙を良く読んでみると、農薬散布は数日後だ。チェーンには鍵もかかっていなかったので、それを外して、入林届けに名前を書いて中に入らせてもらうことにした。
 そこから先は急に路面状態も悪くなって、頻繁に車の腹を擦るようになる。しょうがないので片側の車輪を道路の中央に乗せてもう片側は路肩ギリギリで車を走らせた。
 普段ならこんな道でも気にしないで走れるのだけれど、何せ今回はスペアタイヤを履いての走行である。こんな場所でパンクしたらちょっと悲惨すぎる。ハンドルを握る手にも汗が滲んできて、ノロノロと林道を進んだ。
名前の分からないキノコ 4kmほど走って、ようやく「赤岩の滝」入り口に到着。
 車を降りて直ぐに、近くの倒木に美味しそうなキノコが生えているのをかみさんが発見。
 キノコ図鑑を引っ張り出して調べてみたが、種類を特定できなかったので1株だけを鑑定用に持ち帰ることにした。
 これだけ山奥まで来ると熊の気配も心配になってくる。「どうして熊除けの鈴を持ってこなかったの!」とかみさんから怒られてしまった。
 かみさんは熊の気配に人一倍臆病なのであるが、この臆病さは別に悪いことではない。
 たまたまカヌー用のホイッスルをかみさんが持っていたので、それを時々吹きながら山の中を歩く。
 車を駐めた場所から「赤岩の滝」までは300mほどで、ウッドチップを敷き詰めた遊歩道が整備されている。それほど距離は無いものの、最後は急な階段を谷底まで降りるようなアプローチである。
 その階段を下まで下りてくると、それほど落差は無いものの二股に分かれて落ちる「赤岩の滝」が現れた。
 滝の下は赤い岩盤となっていてその上を水が伝い落ちる。滝よりもこの赤い岩盤の方に目が引かれてしまう。

赤岩への滝へ続く道 赤岩の滝
ウッドチップの敷き詰められた遊歩道 「赤岩の滝」滝の下流の赤い岩盤が特徴的だ

 三つ目の「黒岩の滝」は、そこからさらに1kmほど林道を進まなければならないが、タイヤの状況が心配なのでちょっと弱気になってしまう。
 それでも、ここまで来る機会はもう2度と無いだろうからと、頑張って行ってみることにした。
 しばらく進むと、滝まで500mの案内板が立っていて、そこには小さな駐車スペースもあった。その先も林道が続いていたので、あまりゆっくりともしていられないし、そのまま車で進むことにする。
コガネタケ  すると、途中で林道の上を川が流れていて行き止まりになっていた。そのまま渡れそうな浅さだったけれど、無理をしないでそこに車を駐めて、後は歩くことにする。
 長靴に履き替えてその川を渡った。
 その先の道の真ん中に、美味しそうなコガネタケが生えているのを発見。
 昔、職場の同僚からこのキノコをもらって食べたことがあるが、なかなか美味しいキノコである
 特徴があるので間違えることもなく、戻る時に採って帰ることにする。
 そこから直ぐで滝への降り口に到着。
 林道から少し降りたところに「黒岩の滝」はあった。
 滝の手前に一本の倒木が横たわっている。
 苔むした緑の岩肌を真っ白な水が伝い落ち、そのコントラストが美しい滝だ。
 滝を楽しんだ後、帰り際ににコガネタケを回収して車へ戻る。

赤岩への滝へ続く道 赤岩の滝
倒木に遮られた「黒岩の滝」 黒と白のコントラストが美しい「黒岩の滝」

 帰り道になるとようやく心に余裕も出てきて、運転に気を使いながらも周りの紅葉の風景を楽しむことが出来るようになってきた。
 この付近の紅葉は赤い色が少なく、ほとんどが黄色ばかりだ。赤い色がないとどうしても華やかさには欠けるが、黄色ばかりの紅葉もそれなりに美しい。
 特に太陽の光を浴びている時の鮮やかさは、確実に赤い色よりも勝っているだろう。
行者の滝で昼食中 入り口の駐車場まで戻り行者の滝の下でお弁当を食べる。
 前に見た2つの滝と比べると、この行者の滝が迫力に欠けるように見えてしまうのはいかんともしがたい。
 滝巡りを終えて、次はとりあえずパンクの修理をしなければならない。 そこで、改めて道路地図で歌登までの距離を調べてみると、そこから100km以上はある。
 これからパンク修理をして歌登まで行く時間を考えると、到着はかなり遅くなってしまいそうだ。風も強いし、山の頂上のキャンプ場では遮るものも無いので、ちょっと辛そうである。
 予定を変更して、3泊目に泊まるつもりでいた日向キャンプ場へ向かうことにする。
 かみさんは風連町の望湖台キャンプ場に泊まりたいと言っているが、私は穴場的な予感のする日向キャンプ場へどうしても行きたかったのである。
 パンク修理のために下川町のGSに入る。しかし、そこで出てきたのは、かなり年のいったおじさんだった。そのおじさんにパンク修理を任せる気にはなれなくて、ガソリンを入れただけで出てきてしまう。
 名寄まで行くと、普通に若いお兄ちゃんのいるGSがあったので、そこでパンクの修理をしてもらうことにする。
 ところが、穴が大きすぎて修理できないとそのお兄ちゃんに言われてしまった。スペアタイヤのまま、後2日走り続けるのはリスクが大きすぎる。
 どうしようかと途方に暮れていると、そのお兄ちゃんが「あっ、もしかしたら!」と言って店の後ろに走っていった。そうして、1本の古タイヤを抱えて戻ってきた。このGSでタイヤを買ったお客さんが古いタイヤを置いていって、それがちょうど我が家のタイヤのサイズと同じだったのだ。
 どっちみち捨てる予定のタイヤだからと交換手間だけの料金で済ませてくれて、これで安心してこの後も旅を続けられることになった。お兄ちゃんに丁寧にお礼を言って、今日の宿泊地日向森林公園へと向かう。
 目的地へ近づくと、名寄盆地の田園地帯の風景が眼下に広がり始めた。このキャンプ場のロケーションが星4つになっているのは、多分サイトからこの風景が見渡せるのだろう。
 初めて泊まるキャンプ場へ行く時は期待と不安が入り交じり、何となくドキドキしてしまう。
 かみさんには、「キャンプ場に着いてからは、どんな場所でも絶対に文句を言わないこと」と念を押しておく。これから他のキャンプ場へ移動するのも大変なので、少しくらい外れだったとしても我慢してテントを張るつもりでいたのだ。
 日向温泉を通り過ぎると、直ぐに日向森林公園の看板が立っていた。そこから森の中へと車を入れる。
 紅葉した森の樹木、そして、そこから見下ろす田園の風景、私の頭の中に描かれていたキャンプ場のイメージである。
 そのイメージと目の前に広がる風景には、ちょっと、いや、かなり開きがあった。
 草が伸び放題の傾斜地、森のイメージは何処にも無い。木の陰から少しだけ田園風景が見える程度。
 「何処にテントを張れば良いんだ・・・」
 傾斜地の一番下まで降りてくると、そこに炊事場やトイレの施設がある。その周りの草地は水が溜まっている状況だ。
 そこでUターンして、もう一度テントを張れそうな場所がないか確認しながら坂道を上る。草地の中に一部だけ樹木が残されている場所があって、その辺ならいくらか快適そうに見えた。しかし、平らな場所が何処にもない。
 「絶対に文句は言わないこと」と自分で言っておきながら、絶対にテントを張る気になれないキャンプ場というのもたまにはあるものだ。
 前言を翻して他のキャンプ場へ移動することにした。
 (この時は、到着時間も遅くなり、心に余裕のない状況で訪れたために、このような印象を持ちましたが、別の状況であればもっと違った印象になっていたと思います。)
 そこから我が家のお気に入り朱鞠内湖までは20km程、車を飛ばせば直ぐの近さだ。しかし、今回はカヌーを持ってきていないので朱鞠内湖にだけは絶対に泊まらないと言うのが、私とかみさんの共通した考えだった。
 朝靄に包まれたべた凪の朱鞠内湖を前にしてカヌーに乗れないというのは、我が家にとって絶対に受け入れられないことなのである。
 結局、最初のかみさんの意見を取り入れてふうれん望湖台キャンプ場へ目的地を変更することにした。
 「だから言ったでしょ!」と得意顔のかみさん。ここは確かに良いキャンプ場だけれど、今回は他のキャンプ場のイメージが強すぎて、なかなか違う場所に泊まろうという気にはなれなかったのだ。

「滝巡り紅葉キャンプ(後編)」へ続く

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赤岩への滝へ続く道 赤岩の滝
滝への途中で見た美しい紅葉


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