トップページ > キャンプ > キャンプ日記 > 2005年キャンプ日記

滝巡り紅葉キャンプ(後編)

ふうれん望湖台キャンプ場(10月16日〜18日)

 また今日も、キャンプ場への到着は4時過ぎになってしまいそうだ。
 最近はこんな感じの余裕のないキャンプばかりである。特に秋になると日も短くなり、最近は4時半にはもう暗くなってきてしまう。
 まずはセンターハウスで受付を済ませてからキャンプ場へと向かう。
 オートサイトを通り過ぎて我が家が泊まる林間サイトまでやってきた時、目の前に広がる光景に思わず感動の声をあげてしまった。
 場内の樹木は全て赤や黄色に色付き、綺麗に刈り込まれた芝生の上には落ち葉の絨毯が敷き詰められている。突然、全てが暖色に塗られたおとぎの国に迷い込んでしまったような錯覚に囚われる。
 「ど、何所にテントを張ろう」
我が家のテントサイト 前のキャンプ場ではテントを張れる場所が無くて困ってしまったのに、ここでは何処にテントを張っても素晴らしい光景が楽しめそうなので逆に迷ってしまうのだ。
 でもコムケ湖の時と同じように、ゆっくりとサイトを選んでいる時間もないので、比較的荷物運びが楽そうな場所で妥協することにした。
 猛スピードでテントを張って荷物を運び込む。
 時間に余裕のないキャンプばかりしていると、テントを張る早さだけは誰にも負けないくらいに早くなった気がする。
 テントを張り終えた時、既に太陽は西の山陰に隠れてしまっていた。
 暗くなってしまう前に、焚き火用の薪集めにとりかかる。
 林の中にはあちらこちらに伐採した樹木が積み上げられているので、薪集めには苦労しない。
 ただ、湿っている木ばかりなので燃やすのにはちょっと苦労しそうだ。やたら太い薪を1本だけ拾ってきて、それを燃やし尽くすのを今日の焚き火の目標に設定した。
 センターハウスで一風呂浴びてから、夕食の準備にとりかかる。
 今夜のメニューは「ホタテご飯の素」を使った炊き込みご飯、シイラの切り身の塩焼き、そしてキムチ汁だ。
 焚き火で暖まりながら夕食を済ませ、その後はビールのつまみ用に目鯛を焼く。
満月の夜 いつの間にか東の空が明るくなっていた。そうしてシラカバの枝越しに月が昇ってきた。明日が満月のはずだが、今日の月でもほとんど真ん丸に見える。
 ランタンの灯を消すと今夜も真の静寂が訪れた。
 遠くからは鹿の鳴き声が響いてくる。
 フウマが時々、耳をピンと立てて森の奥をじっと見つめている。
 野生動物の気配を身近に感じられる森の中の夜だ。
 月が高く昇ってくると、場内は昼のような明るさになった。落ち葉の絨毯の上には木々の陰がくっきりと映っている
 当初の予定通りならば、今頃はこの月を歌登の山の上から眺めていたのにと、ちょっとだけ後悔の念が頭を過ぎった。
 湿った薪はなかなか景気よく燃えてくれないが、たまに家から持ってきた乾いた薪やオホーツクの海岸で拾ってきた流木を火の中に放り込むと、その時だけ威勢良く炎が舞い上がる。
 乾燥させながら燃やして行くので、たき火台の上にはうずたかく薪が積み上げられることになる。
 その中に湿った細い枝を入れた時に、ピーッと言う美しい音が鳴り始めた。湿った薪を燃やす時には時々こんな音のなることがあるが、この枝はそれが素晴らしい音階を奏で始めたのだ。
 しばしその笛のような音色に聞き入ってしまった。
 気温は6度くらいまで下がってきたが、全然寒さは感じない。ただ、空は快晴なので明日の朝はかなり冷え込みそうだ。
 最初に入れた太い薪もほぼ燃え尽きて今夜の焚き火の目標は達成できたので満足して眠ることにする。

赤岩への滝へ続く道 赤岩の滝
今夜の目標はこの太い薪を燃やし尽くすこと 静かな夜に静かに焚き火を楽しむ

 翌朝の気温は2度、寒さは感じずに、逆にひんやりとした空気が心地よいくらいだ。
 テントから出た時に、周りの風景の変化に驚いてしまった。
紅葉の朝 昨日到着したときよりも、落ち葉の絨毯はより厚くなり、木々の紅葉もその鮮やかさを増していた。
 かみさんが、「湖から水蒸気が立ち上って良い感じになっているわよ。」と呼びに来た。
 早速カメラを抱えて様子を見に行く。
 ダム湖である風蓮湖はかなり水位が下がっていて、普段は水の中に沈んでいる部分が草原のようになっている。
 その草原の枯れた草が霜に覆われて真っ白になっていた。
 滅多に見られないような不思議な光景だ。
 急な崖を降りて、その真っ白な草原の上に降り立つ。
 所々に細い流れがあり、そこに足を落とさないように注意しながら草原の中を進む。
 草原の中には朱鞠内湖のような切り株が点々と黒々とした姿を見せていて、何とも面白い。
 湖面には霧が立ち込め、その向こうには赤や黄色に色付いた山が浮かんでいる。
 やがて朝日が昇ってきて、真っ白な草原を光り輝かせる。
 そんな風景をひとしきり楽しんでテントに戻る。そこでは既にかみさんが焚き火に火を付けコーヒーを入れていた。

赤岩への滝へ続く道 赤岩の滝
ダム湖のそこの草原が霜で白く染まる 朝日が霜の草原を染め上げた

 改めて周りを見渡すと、本当に素晴らしい秋の風景が広がっている。我が家がこれまでに経験した紅葉キャンプの中でも、文句なしに最高のシチュエーションだろう。
 サイトに射し込んでくる朝の光が落ち葉の絨毯を照らし出し、これがまた美しい風景を創っている。
林の中でキノコ狩り 朝食を終えて林の中を歩くと、落ち葉の中からムラサキシメジが顔を出していた。
 その周りを見てみると白っぽいキノコも沢山生えている。
 「ムムッ、これは何だろう?」
 とても美味しそうなキノコだ。ホンシメジに似ているが、それにしては色が白っぽすぎる。
 図鑑を見てもその種類は特定できなかった。
 朽ち果てた切り株にはエノキらしいキノコが密生して生えていたが、古くなって変色してしまっていた。
 もう少し早かったら大収穫だったのにと口惜しくなってしまう。
 キノコ狩りを趣味としているわけでも無いけれど、秋の森の中をキノコを探しながら歩くのは本当に楽しい。
 朝早くから森林組合の文字が書かれた車が何台もやってきた。そう言えば今日は月曜日である。皆さんしっかりと働いているのだ。
 公園の奥の方からチェーンソーの音が聞こえてきた。おばさん達は場内の樹木の冬囲いを始める。
 我が家は公園内の遊歩道を散歩することにした。
 前回訪れた時にミズバショウやエゾノリュウキンカなどが咲いていた湿地帯は、寂しい秋の佇まいに変わってしまっていた。
 樹木園の入り口にはテープが張られ、「この先はもう公園として管理していないため危険です」の張り紙がされていた。
 そんなことは全く気にしないで、テープをくぐって樹木園の中に入る。確かにその中の園路は草に覆われ、全く管理はされていないようだ。
 草が刈られて無くても樹木の紅葉の美しさには何の影響もない。真っ赤なヤマモミジが一際目を引いた。
 これまで黄葉ばかり見てきたので、モミジの紅葉がとても新鮮に見える。そして上空に広がる真っ青な空。
 今年のキャンプの中で一番天気に恵まれた瞬間である。

秋の湿地帯 樹木園の紅葉
湿地帯の木道も秋の風景だ 鮮やかな樹木園の紅葉

 サイトへ戻る途中、今夜の焚き火用の薪をしっかりと拾い集める。天気の良いうちに少しでも乾燥させておこうという算段だ。
 本当は今日は、2日目の宿泊予定地にしていた歌登まで移動するつもりでいた。
 しかし、さすがに移動ばかりのキャンプにも疲れてしまったので、この快適なキャンプ場でもう1泊してゆったりと時間を過ごすことに決めたのである。
 出発前にもう少しじっくりと検討していれば、多分最初の日に一気に歌登まで行ってしまい、それからゆっくりと南下してくるような行程を組んでいたはずだ。
 去年の秋、朝に札幌を出て途中で松山湿原などを見ながら歌登を通り過ぎ、その先のクッチャロ湖まで一気に走ったことがあったので、歌登はそれほど遠くないという意識が頭の中に残っていた。
 地図を見てみたら、歌登まではまだまだ北上しなければならないのである。

 ゆったりと時間を過ごそうと思っても、貧乏性な性格なのでどうしてもじっとしてられない。最初の予定に入れていた名寄の近くの滝を見に行くことにする。
 天気予報を確認すると、いつの間にか夕方から雨が降るような予報に変わっていた。やっぱり今年の私には雨男の称号がつきまとっているようである。
 念のため雨雲レーダーを調べてみると、もう直ぐそこまで寒冷前線の雨雲が近づいてきていた。これならば、夕方と言うよりも午後1時過ぎにはこの辺でも雨が降ってきそうな感じだ。何とかそれまでには戻ってこられるだろう。
 まずは、かみさんの希望により、一旦下川町まで戻って手延べうどんを購入する。ここのうどんはこしが強くてなかなか美味しいのだ。
 それから名寄に向かい、名寄のやや北、ピヤシリ山の麓にある「比翼の滝」を目指す。
 名寄の西の空は、既に雲に覆われ始めていた。北に向かうとますますその雲が厚さを増してきて、とうとう真っ黒な空に変わってしまう。
 テントの内部が乾くようにメッシュの窓を少し開けてきてしまったし、それよりもせっかく乾かしておいた焚き火用の薪が濡れてしまうのが心配だった。
 滝は諦めてそのままUターンしようかと思ったが、もう一度雨雲レーダーを確認すると雨雲本体はまだそれほど近づいてきてはいないようだ。
 予定通り滝へと向かう。
 天塩川を渡り林道を5kmほど入る。タイヤも直っているので、ダート走行も気にならない。滝の看板を見つけて、そこから滝壺までの階段を下りる。
 素直な直落タイプの滝で、大岩がゴロゴロと転がる様子はなかなか迫力がある。
 上空を覆っていた黒い雲もいつの間にか薄くなって、太陽の陽射しが周りの紅葉を鮮やかに照らし出した。

比翼の滝 滝周辺の黄葉
「比翼の滝」の荒々しい風景 滝周辺の黄葉も美しい

 滝見物を終えて、キャンプ場まで戻ってきた。
 雨は2時頃になってポツポツと落ちてきた。テントの中に拾ってきた薪を持ち込む。
 今夜は焚き火を楽しみながらダッチオーブン料理を作ろうと言うことになっていたので、拾ってきた薪であってもとても貴重品なのである。
 札幌を出てから三日間ともしっかりと雨に降られている。自分の雨男パワーには我ながら恐れ入ってしまう。
 その雨も4時過ぎには上がって、雲の切れ間から強烈な太陽の陽射しが林の中に射し込んでくる。
 何処かに虹が出ていないかとあたりを見回したが、何処にも虹の姿は現れなかった。そうしている間に、あっと言う間に山の陰に太陽は隠れてしまった。秋の夕暮れはあっと言う間に終わってしまうのだ。

雨を避けて 雨上がりの陽射し
雨のち晴れ

 今日の夕食は白滝の道の駅で購入した「マイタケご飯の素」を使った炊き込みご飯、そしてダッチオーブンでたっぷりと煮込むポトフである。
 薪は大量に用意してあるので直ぐに焚き火を始める。そうしてダッチオーブンを焚き火の上に吊す。後はポトフが出来上がるまで焚き火を楽しんでいれば良いだけだ。
焚き火で料理 先日の旭川の橋の下キャンプでこのスタイルがすっかり気に入ってしまい、これからの我が家の定番になりそうである。
 完成したポトフはまさに絶品の味だった。
 マイタケの炊き込みご飯も美味しくて、ダッチオーブンの威力を改めて思い知ることになった。
 食事が終われば、後はたき火台の上に大量の薪を積み上げ、最後の夜の焚き火を楽しむ。
 雲の切れ間から満月が顔を出した。空も澄んでいるので眩しいくらいに月が輝いて見える。
 その月をよく見ると下の方が少しだけ欠けていた。そう言えば今日は部分月食が見られる日だった。
 凄い早さで流されていく雲。その割にキャンプ場内は全くの無風である。絶好の焚き火日和だ。
 三日間も誰もいないキャンプ場で過ごしていると、フウマもすっかり敏感になってしまったようである。木の葉から水滴が落ちる音にも反応して吠えてしまうくらいだ。
 いつもなら「吠えるな!」と直ぐに叱られるのに、他に誰もいないので叱る必要もない。反って、野生動物を遠ざけてくれるので、そんなフウマが頼もしく感じてしまう。
 そうして静かな夜は更けていった。

最後の朝 キャンプ3日目の夜ともなると、それまでの疲れもあってぐっすりと眠ることができた。
 すっきりとした気分で朝を迎える。昨日の朝よりはかなり暖かな気がする。温度計を見るとそれでも3度まで下がっていた。
 昨夜の残りのポトフを焚き火で温める。
 雲の多い空だったが、その切れ目から日が射してくると、場内の落ち葉の絨毯がいっそう鮮やかに染め上げられる。
 到着したときよりも木々に残っている葉は、かなり少なくなった気がする。後数日も経てば、ここの景色も初冬のそれに変わってしまうのだろう。
 森林組合の人達が今朝も車でやって来た。
 昨日は奇異な目で私たちを見ていたようだが、今朝は呆れたような目で見られている気がする。
 テントを完全に乾かし、その中も綺麗に掃除して、キャンプ道具も整理整頓。
 まるでシーズン最後のキャンプの後片付けみたいな雰囲気だが、これが本当に今年最後のキャンプになったとしても全く悔いの残らないような充実したキャンプだった。
 二日間の生活の後を全て消し去り、紅葉した木々に別れを告げて札幌への帰途についた。

滝巡り紅葉キャンプ(前編)へ戻る

キャンプの写真アルバムを見る



戻る   ページTOPへ