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美々川・パンケナイ川(2021/10/31)

美々川よりも美しいパンケナイ川

美々川の支流であるパンケナイ川を下りませんかとNモトさんに誘われ、14年ぶりに美々川本流にカヌーを浮かべた。
3年前にも美々川に来ているけれど、その時は最上流部の美々橋から源流を目指して漕ぎ上がっただけ。
最後に本流を下ったのは14年前のカヌークラブの例会の時である。
クラブの例会で美々川を下るなんて、今では絶対に考えられないことである。

その当時は、カヌーポートなんて洒落た施設は出来ていなかった。
今回カヌーを出したのは植苗橋の上流左岸のカヌーポートで、その回りは美々川タップコップ親水公園として整備され、トイレまで建てられている。

美々川の川下り
タップコップ親水公園のカヌーポート


Nモトさんの他に一緒に下るのは、NモトさんのSUP仲間であるHのさんとMみさん。
Mみさんは知り合いに不幸があったとかで、後からやってくるらしい。
二人とは初対面だけれど、Nもとさんから色々と話は聞いていた。

以前は二人でアドベンチャーレースに出ていたとか、SUPで一緒に洞爺湖を一周したとか、Hのさんは裸足で山を登るとか、Mみさんは寒い時でも短パンで川に飛び込むとか。
そんな話ばかり聞いていたので、私の頭の中では超人のようなイメージが出来上がっていたが、実際に会ったHのさんは極普通の人だったのでホッとした。

カヌーポートにはオオハクチョウが一羽居座っていて、人が近づいても全く逃げようともしない。
23年前に初めて美々川を下った時以来、美々川に来ると必ず白鳥に会っている。
代替わりはしているのだろうけれど、すっかり美々川の主となっている感じである。

美々川の川下り
オオハクチョウに見送られながら出発


そんなオオハクチョウに見送られて、美々川を漕ぎ上がる。
美々川は殆ど流れのない川のイメージがあるけれど、橋の付近で見ていると結構流れていることが分かる。
ソロで漕いでいると結構苦戦したかもしれないが、今日はタンデムなのでそれ程苦労することもなく漕ぎ上がっていける。

600mほど遡ったところでパンケナイ川が流れ込んでいるけれど、水際のヨシの群落に少しだけ切れ目がある程度なので、教えてもらわなければそのまま通り過ぎてしまうところだった。

パンケナイ川の川下り
この奥がパンケナイ川、気付かずに通り過ぎるところだった


Nモトさんを先頭に、パンケナイ川へと入っていく。
国道を過ぎるまで川幅が狭いとは聞いていたけれど、予想以上の狭さだった。
水の中にパドルを入れる隙間も無いような場所もあり、そんなところでは水ではなくヨシ群落をパドルで掻くしかない。
漕いだパドルを前に持っていく時もヨシが邪魔になる。
そこで編み出した技が、パドルを真っ直ぐに立ててそのまま前に持っていく縦回転パドリングである。

パンケナイ川の川下り
ヨシ原をかき分けながら漕ぎ上がる


そうして800mほどヨシと格闘しながら、ようやく国道にかかる橋までやってきた。
Nモトさんが、私が蜘蛛の巣を払いますからと言っていたけれど、その意味が良くわかった。
カヌーの中には沢山のヨシの葉の他に、小さな蜘蛛も無数に入っていたのである。
SUPなら立っているから良いけど、カナディアンが先頭だったらクモの巣が丁度顔にかかるので、大変そうだ。

パンケナイ川の川下り
国道の下を通過


国道から先は、これが同じ川なのかと思えるくらいに川幅も広がって下りやすくなった。
ヨシ原の中を進んでいく。

パンケナイ川の川下り
国道を過ぎると快適に漕ぎ上がれる


ヨシ原からハンノキ林へと変わってきたなと思っていると、突然川の向こうに民家が見えてきて驚かされた。
普段はここには住んでいないのかもしれないが、川に向かってあちらこちらに椅子も置かれていて、なかなか良い環境である。
テレビ番組で「ポツンと一軒家」というのがあるけれど、それに取り上げられても良いくらいの、山の中の一軒家である。

パンケナイ川の川下り
私もこんな場所で暮らしてみたい



パンケナイ川の川下り
川はハンノキ林の横を流れる


その先、川はハンノキ林の中を蛇行しながら流れている。
無風なので、流れの緩やかな場所では川面に河畔の木々が写り込んで、なかなか美しい。

パンケナイ川の川下り
こんな風景も面白い


途中からはコブハクチョウの夫婦だろうか、私達を道案内するかのようにカヌーの前を泳いでいる。
と言うか、邪魔なカヌーが現れたので、しょうがなく私達の前を進んでいるだけなのだろう。
このまま追い回しているのも申し訳ないので、川幅が少し広がったところで追い越させてもらう。

パンケナイ川の川下り
このコブハクチョウの夫婦を暫く追いかける形になってしまった


上空をひっきりなしに飛行機が飛んでいく。
この辺りは、千歳空港の滑走路の丁度延長線上に位置するのだ。
飛行機好きの人ならば、川の上からその姿を見るのも楽しみの一つかもしれないが、便数が多いので結構煩わしくも感じる。
スタート時には青空が広がっていたのに、次第に雲が広がってきたのがちょっと残念だ。

パンケナイ川の川下り
たまに飛んでくるのなら良いけれど、ひっきりなしに飛んでくる


土手に生えている樹木が、川に向かって枝を長く伸ばしている。
殆どの木々は既に葉を落としているが、少しだけ紅葉した葉を残している樹木もあり、晩秋らしい風景を楽しませてくれる。

パンケナイ川の川下り
水面に映る紅葉した樹木


たまにそんな木々にコクワ(サルナシ)の蔓が絡んでいることもあり、カヌーに乗ったままでコクワの実を収穫できる。
その小さな実を二粒食べたかみさんは、耳の奥が痒いと言い始めた。
果物アレルギーのかみさんは、コクワにも反応してしまうようだ。

パンケナイ川の川下り
コクワの実を見つけて喜んだけれど


野鳥の数も多く、飛行機の音が途絶えると、その鳴き声が川面に響く。
春先ならば、もっと賑やかになるかもしれない。

深い自然に囲まれている気分だけれど、航空写真で見ると、直ぐ横にはゴルフ場が広がっているのだ。
一部ではゴルフ場の緑の芝も見えているけれど、それも一部分だけなので大して気にはならない。

美々川本流よりも、こちらの方が湿原らしい風景や河畔林の風景も楽しめる。
これならば、わざわざ車の回送をして美々川を下るよりも、パンケナイ川を遡ってきた方が良いかもしれない。

パンケナイ川の川下り
斜面を緑色に染めるシダ


Nもとさんからは「パンケ湖まで行きます」と言われていた。
川幅がかなり広がってきたので、そろそろ目的地に着いたのかと思ったが、もう少し先のようだ。

航空写真で見ても、特に湖らしき場所は確認できない。
パンケ湖というのは通称なのだろう。

パンケナイ川の川下り
川幅が広がったり狭まったりを繰り返す


広々とした水面の中に樹木の生えた小島がポツンと浮かんでいた。
なかなか絵になるな~と思いながら写真を撮っていると、Nもとさんから「パンケ湖に着きましたよ」と声をかけられた。
カヌーポートを出発してから1時間25分、距離では4.8キロくらいだろうか、今日の目的地に到着である。

パンケナイ川の川下り
小さな島が絵になっていた


パンケ湖とは呼んでいるけれど、少しだけ川幅の広がった沼ってイメージだ。
まだ葉を落とさずにいるモミジの紅葉が美しい。

パンケナイ川の川下り
美しい風景に感動


鏡の水面には回りの風景が写り込んでいる。
これで青空が広がっていたら最高だろう。
次にここに来るとしたら、風のない晴れた日であることが絶対条件になりそうだ。

パンケナイ川の川下り
波が立ってないのが嬉しい


紅鮭が群れているかも知れないと聞いていたので、それも楽しみにしていた。
しかし、いるにいるが今年は数が少ないようだ。

湖の奥の方では湖底から水が湧き出ている場所があった。
美々川源流の湧き水は長沼の馬追丘陵が水源となっているらしいが、ここの湧き水は支笏湖から来ているような気がする。

パンケナイ川の川下り
そろそろ引き返すことに


パンケ湖で少し時間を過ごしてから引き返すことにした。
流れが殆ど無さそうに見えても、やっぱり遡ってくる時よりはカヌーが楽に進んでいく気がする。
川の中の水草も、下流に向かってなびいているので、それなりの流れはあるのだろう。

パンケナイ川の川下り
水草のなびく方向で上下流の区別がつく


途中でまたコブハクチョウの夫婦とすれ違う。
周りの風景を楽しみながらのんびりと下っていく。

パンケナイ川の川下り
美しい風景を楽しめる川だ


私達が先頭で下っていると、ポツンと一軒家が近付いてきた辺りで、前方からSUPが現れたのでビックリした。
遅れていたMみさんが追いついてきたのである。
午前8時過ぎに出発して、今の時間は午前11時半を過ぎていた。
川を遡って、また同じコースを下ってくるのだから、少しくらい遅くなっても何処かで追いつくことは間違いない。



それでも、これだけ遅くなっても追いかけてくるというMみさんの行動力に感心してしまう。
そのMみさん、見たい場所があるからと、更に全力で漕ぎ上がって行った。
その後姿を唖然として見送る。
ただ、噂に聞いていた短パン姿ではなくてウェットスーツに身を固めていたので、Mみさんも普通の人だったのだと少しホッとした。
しばらくして戻ってきたMみさんが加わり、ようやく全員が揃ってパンケナイ川を下っていく。

パンケナイ川の川下り
ようやく全員が揃った


国道を過ぎた細い水路部分は、今度は私達が先頭で下っていく。
川が細くなった分、流れも結構早い。
直ぐ後ろから下ってきたNモトさんから、「ヘアピンカーブをドリフトしながら曲がっていくのは流石です」と褒められた。
初めて美々川を下った時の川下り日記を読み返すと、もっと川幅のある本流部で、流れも緩やかだったはずなのに、曲がりくねった川を苦労しながら下っていたようだ。
その頃と比べたら、パドリングも少しは上達しているのだろう。

パンケナイ川の川下り
細い水路を下るのにも慣れてきた


もう少しで美々川本流に合流するところでNモトさんが「Mさんは全然漕ぎ足りないと思うので、多分美々川を遡ることになります」と忠告してくれた。
まあ、今回のメンバーを教えてもらった段階で、普通に終わらせてはもらえないだろうと、ある程度の覚悟はしていたので、それを聞いても特に驚きはしなかった。
何せ、SUPで洞爺湖を一周してしまう人達なので、疲れたから帰りますなんて話にはならないのである。

パンケナイ川の川下り
美々川本流へと出てきた


そうして12時25分、美々川本流に出てきたところで、「さて、どうしましょう?」などという会話は全く無しで、当然のように皆は上流に向かって漕ぎ上がり始めた。

美々川の川下り
美々川本流を漕ぎ上がる


南風が少し吹き始めていたので、それが追い風となり、流れに逆らって漕いでいる感じがしない。
30分もかからずに第2美々橋まで漕ぎ上がってきた。
そこで一区切りつけて引き返すのかと思ったが、ここでもそんな気配は全く無し。

美々川の川下り
第2美々橋のカヌーポート


NモトさんとMみさんが乗っているSUPを取り替えていた。
Mみさんは今まで湖をフィールドにしていたが、川用のSUPも最近購入したようだ。
そのSUPがリバーサーフィン用らしく、長さも短く、ロッカー(反り)もかなりきつい代物。
一体何を目指すの?って感じである。

美々川の川下り
MみさんのSUPに乗るNモトさん、かなり短いSUPだ


NモトさんのSUPを借りたMみさんは、早速SUPの先端を上げるノーズリフトに挑戦。
Hのさんも、下りながら何度もやっていたけれどSUPの技の一つらしい。
そして見事に頭から落水してくれた。

美々川の川下り
落水しても楽しそうなMみさん


Hのさんが片足SUPをやっているのを見ると、Mみさんが「私だってできるわよ」とその真似をするが、なかなか上手くできない。
すると「三点倒立だってできる」と、今度はSUPの上で逆立ちしようとする。
楽しいキャラのMみさんである。

美々川の川下り
三点倒立にチャレンジするも成功せず


再び青空も広がってきていた。
そうすると川面も青く染まり、周りの風景が急に美しく見えてくる。

上流に進むに従って川幅も次第に狭まってくる。
物理学的には、その状態で同じ流量を維持するためには、川の流速を上げなければならない。
そうなると漕ぎ上がるのにも力が必要になってくる。
このまま次の松美々橋まで漕ぎ上がるつもりなのだろうか。

美々川の川下り
天気が良くなると風景も変わってくる


既に5時間以上カヌーに乗りっぱなしなので、お尻は痛くなるし、手のひらの皮も擦り剥けてきそうだ。
何時もウライが設置されている場所までやってきた。
岸に上がって、NモトさんとMみさんがSUPを取り替える。

美々川の川下り
6月から9月までここにウライが設置される


ここで初めて、Hのさんが「ここで松美々橋までの半分くらいですが、どうしますか?」と私に向かって聞いてきた。
私にも意地があるので、「い、いや、皆さんに付いて行きますよ」と強がってみせる。
するとHのさん、「私達も特に松美々橋を目指しているわけじゃないです」と言ってくれた。
「そ、それじゃあ、私はここでもう十分かな」
これでめでたく、美々川遡りツアーは終了となったのである。

午後1時35分、ここで初めて美々川の正しい川下りが始まったと言えるだろう。
天気も良くなって気持ちが良い。

美々川の川下り
流れは緩くてもやっぱり下る方が楽だ


帰りは向かい風になることを心配していたが、それ程強い風ではないので、下るのに大して支障にはならない。
昔は、水草が茂って下るのに苦労した記憶があるが、今回はルートさえ間違えなければ問題はない。
Nもとさんの話では、水も多いみたいだ。
それでも水草の中に突っ込んでしまうと、パドルに水草が絡みついて鬱陶しい。

美々川の川下り
時々パドルに水草が絡みつく


午後2時に第2美々橋まで戻ってきた。
橋の近くにある焼肉店は、日曜日なのでお客さんも沢山入っているようだ。
こちらに向かって手を振ってくれる。

美々川の川下り
第2美々橋の下流には焼肉店がある


この季節、午後2時を過ぎると日もかなり傾いてくる。
そんな様子を見ていると、今年のアウトドアシーズンもそろそろ終わりかなと思えてくる。

Mみさんの姿が全く見えなくなったので、暫く待つことにした。
短いSUPではスピードが出ないので、下るのも大変なのかも知れない。
ようやく追いついてきたので、心配して「大丈夫ですか?」と声をかけると、本人はケロッとしている。
途中で遊んでいたので遅れていただけのようだ。

美々川の川下り
やっと追い付いてきたMみさんを心配していたけど・・・


そもそも洞爺湖を一周するような人が、この程度で疲れるわけがない。
他の二人も、Mみさんのことなどまるで心配していないようで、全然関係ない話に花を咲かせている。
「大丈夫ですか?」なんて声をかけたのは、Mみさんに対して大変失礼な行為だったのかも知れない。

そうしてスタート地点の植苗橋に戻ってきた時は午後2時35分になっていた。
トイレタイムを除いて6時間20分もカヌーに乗っていたのは、初めての経験である。

美々川の川下り
植苗橋が見えた


そこで出迎えてくれたのは、スタートの時に見送ってくれたオオハクチョウ。
私達がカヌーに乗っている間、このハクチョウもずーっとここに留まっていたのだろうか。
そちらの方が驚きである。

美々川の川下り
再び出迎えてくれたオオハクチョウ


パンケナイ川はとても良い川だったし、久しぶりに下った美々川もやっぱり魅力的な川だった。
これで心置きなく今年のカヌーシーズンを終えることができそうだ。
 

(当日12:00美々川水位 ウトナイ上流観測所:2.04m)



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