北海道キャンプ場見聞録
別寒辺牛川(2020/10/07)
川で道を間違える
尻羽岬を後にして真っ直ぐに別寒辺牛川橋カヌーポートへと向かう。
そこでカヌーを下ろしてから厚岸水鳥観察館まで移動し、そこでタクシーを呼ぶ。
10年前に一度下っているので、この辺りの要領は心得たものだ。
タクシーは10分ほどで迎えに来てくれたけれど、10年前のタクシー料金は4200円だったのに、今回は5040円もかかってしまった。
湿原を流れる川の様子は、10年が経過しても殆ど変わらないが、タクシー料金はそうはいかないようである。
タクシー料金は高いけれど、それでもツアーを利用するよりは安上がり
川に向かって丸太が敷き詰められたカヌー発着場は、10年前の時は泥で埋まっていたけれど、今回は比較的綺麗な状態になっていた。
これも誰かが管理してくれているのだろう。
感謝しながら、川にカヌーを浮かべた。
これでも前回よりは綺麗な状態だったカヌーポート
時間は午前10時40分。
この日は別寒辺牛川を下った後に、霧多布岬キャンプ場にテントを張り、琵琶瀬川でサンセットカヌーを愉しむ予定にしていた。
そのために、もう少し早く下り始めたかったのだが、尻羽岬に寄り道したのが影響していた。
河畔の木々は色付き始めていたけれど、まだ紅葉と言う程ではない。
木々よりも、川岸の葦などが茶色くなって秋の深まりを感じさせてくれる。
所々で木々の枝が川の上にまで張り出してきているが、釧路川の様に川を塞ぐくらいに倒れてきている樹木もなく、安心して下っていける。
私達の姿に驚いた鹿が一頭、林の中へと走り込んでいった。
釧路川辺りだと、カヌー慣れしたエゾ鹿が川岸から人間を眺めていたりするけれど、別寒辺牛川の鹿は人馴れしていないようだ。
少し風が吹いていた。
カヌーで下るのに邪魔になるような風ではないけれど、場所によっては川面にさざ波が立ってしまうのが残念だった。
緩やかな流れなので、この風さえ無ければ鏡のような水面がずーっと続いているはずなのだ。
風が止むと、周りからの音は全く聞こえなくなり、静寂の中をカヌーが流れるように進んでいく。
時々、その静寂を打ち破って、カヌーに驚いた水鳥が大きな水音を立てながら飛び立つ。。
前回下った時はカワセミの姿を何度も見たけれど、今回はヤマセミを2度ほど見ただけで、カワセミは1羽も見られなかった。
湿原の樹林帯を抜けると少し川幅が広がってくる。
鏡のような水面に青い空が映り込む。
私の所属しているカヌークラブでは、瀬のない川は退屈だと敬遠する人が多いけれど、こんな風景の中を下っていれば退屈することなんて殆どない。
丁度1時間で国道の別寒辺牛橋カヌーポートまで下ってきた。
その辺りから次第に向かい風が強まってくる。
別寒辺牛橋カヌーポート
向かい風に負けないように漕いでいると、突然目の前に大きな音とともに水しぶきが立ち上った。
ヒグマでも飛び込んだのかと思ったら、それはヒグマではなくエゾ鹿だった。
そのまま私達の前を泳いで川を横切っていく。
川を泳いで渡るエゾシカ
車で走っていて、道路を鹿が横切った時は、それに続けて他の鹿も横切ることが多いので注意しなければならない。
それは川でも同じで、さらにもう1頭が飛び込んできて、同じように横切っていった。
そんな姿に感動しながら、風の当たらない場所を見つけてそこで小休止をする。
花咲線の鉄橋が少し下流に見えていたけれど、そちらに進むと遠回りするように見えた。
Googleマップで確認すると、別の流れを下った方が近道になりそうだ。
休憩を終えて、そちらの分流を下っていく。
この辺りで小休止
向かい風はますます強くなり、必死にパドリングしないと前に進めない。
ようやく花咲線の線路が見えてきたけれど、その線路は盛土された上を通っていて、鉄橋の姿は見当たらない。
完全に裏切られた思いだった。
かみさんが急に不機嫌になる。
こんな時「たまにこんな事もあるわよね」などと優しい言葉をかけてくれることは一切無く、私はただひたすら「すいません、私が悪かったです」と謝るしかない。
このGoogleマップを見ると、どちらも通過できそうに見えてしまう、赤線は下ったルート
苦労して漕いできた川を引き返すことになってしまったけれど、結局往復で1.5キロを無駄に漕いだことになる。
自分で正しいルートをホームページにアップしているくせに、一度下っている川だからと、それを良く見ていなかったのが大きな間違いだった。
最初から素直にこの鉄橋をくぐれば良かったのだ
ようやく遠くの方に水鳥観察館の姿が見えてきたけれど、漕いでも漕いでもその姿が近づいてこない。
花咲線を走る列車の音が聞こえてきた。
カメラで写そうと思ったけれど、葦が邪魔になってその姿が良く見えなかった。
せっかくカヌーに乗っているのだから、時間を合わせて、川の上から見る列車の写真を撮ってみたいものだ。
水鳥観察館の手前でもう一度鉄橋をくぐる
そうしてスタートしてから2時間10分ほどで、水鳥観察館に到着。
漕いだ距離も時間も大したことがなかった割には疲れ果てていた。
最後の向かい風と、川を間違えて余計に漕いだ影響が大きかったようだ。
水鳥観察館カヌーポートに到着
夕方のサンセットカヌーは諦めて、霧多布岬キャンプ場へと向かったのである。