北海道キャンプ場見聞録
十勝川ラフトコース(2019/08/17)
リタイア続出
カヌークラブの8月例会初日の土曜日はシーソラプチ川を下る予定になっていた。
勢力を保ったまま温帯低気圧に変わった台風10号が金曜日の夜に北海道の西海上を北上し、その影響でかなりの大雨になるとの予報。
土曜日の川下りは中止になるだろうと思っていたら、それ程の雨も降らず、幾寅観測所の水位も一晩で6センチ増えただけ。
雨雲も既に北に抜けて、これならば何とか川を下れそうだ。
増水して岩も水没、濁流となった空知川国体コース
ところが、そう思ってやってきた空知川国体コースは、まっ茶色な濁流となり、とても下れる状況ではなかった。
朝の8時から9時の間に水位が急に10センチも上昇していたのである。
上流の山の方で、また雨が降ったのかもしれない。
そこで、明日下る予定になっていた屈足の十勝川ラフトコースを下ることにする。
十勝川の方は上流のダムで水位がコントロールされるので、少々の雨ではビクともしない。
下見してきたIやまさんの情報では、水も濁っていなくて、水量も安定しているようだ。
台風に備えて水の抜かれた屈足ダム
大雨に備えて、下流の屈足ダムの水は数日前に完全に抜かれていた。
昔は暴れ川だった十勝川も、現在はこうしてダムのおかげで大洪水になる危険性はかなり低くなっているのだ。
それでも、屈足ダムの下流部ではダムの水を抜くときの放流で急に水量が増えたはずで、そんな時に川原キャンプでもしていたら危なかったかもしれない。
ダムで水位がコントロールされている河川の、これが怖いところでもあるのだ。
そうして、狩勝峠を越えてやってきた十勝川ラフトコース。
Iやまさんがスタート地点を下見した時は、チョロチョロとしか流れていなかった川が、今は河畔林の根元が水没するくらいの水量になっていたのである。
どうやら、上流のダムが放流を始めたようである。
車を回送している間にも更に水量が増えていた。
河畔林が水没する位に増水している十勝川
まあ、これくらい増水した十勝川は何度か下っているの。
それ程心配もしていないが、厳しい川下りになりそうなのは予想できた。
出艇場所の目の前は大きな波が立っていて、そこをフェリーグライドで対岸まで渡り、他の舟が川に出てくるのを待つことにする。
ところが、フェリーアングルをキープできずにカヌーが下流を向いてしまう。
かみさんから「何処に行くのよ!」と文句を言われるが、私は心の中で「貴方がしっかりと漕いでくれないからこうなるのに」と思いながらも、それは口に出さないでおいた。
対岸のエディで皆が揃うのを待つ
「大きな波のところには行かいなわよ」と、かみさんから釘を刺される。
増水して川幅が広がっているので、チキンルートを探りながら下ることは可能なのである。
しかし今日は、川面低くに川霧が立ち込め前方の様子が良く見えない。
気温はそれ程上がっていないが、湿度が高くムッとする様な蒸し暑さである。
そこにダムからの冷たい放流水が流れると、こんな川霧が立つのだろう。
参加者は23名22艇。
川幅も広く、この水量では皆がまとまって下るということもできず、それぞれの判断で下っていくしかない。
大きな波を避けてその横を下る
岩松橋を過ぎると直ぐに大きな波の立つ瀬が現れる。
できれば波の頂点を攻めたいけれど、かみさんから文句を言われそうなので、波の横を通り過ぎる。
他のメンバーは、雄叫びを上げながら、楽しそうに波の真ん中を下っていた。
できれば波の真ん中を下りたかった
川霧で前方の様子が分からず、とりあえず確認できる範囲内で安全そうな場所を探しながら、少しずつ下っていく。
二股の瀬までは、波の立つ場所を避けながら何とか下って来れたけれど、スラロームの瀬に入るとそうも行かない。
チキンルートを探すものの、川霧に邪魔され直前の様子しか分からない。
目の前に大きな波が迫ってきていた。
避けようとしても、流れがそこに向かっているので簡単には抜け出せない。
後で誰かが「水が重たく感じた」と言っていたけれど、水量が多くても少なくても流れている水に変わりは無いはずである。
それでもやっぱり、こんな時の川の水は確かに重たいのである。
まともに大波に突っ込んでしまった
どうしようもないままに大波の中に突っ込む。
あっと言う間にカヌーの中は水浸しである。
一瞬舟のコントロールができなくなったけれど、何とか体制を立て直す。
前方でA達さんが沈脱。
そのままホールに巻かれてカヤックを離してしまう。
そのすぐ横を通り過ぎるが、自分たちのことで精一杯で手を差し伸べることもできない。
A達さんを助ける余裕はないし、前方では他のカヤックが沈
誰が乗っているのか分からないが、さらに前方でカヤックが沈脱しているのが見える。
このままで下り続けるのは無理だと判断し、波に翻弄されながらも岸に向かって漕いでいく。
やっとのことで岸に上がってホッとしていると、誰かが流されていくのが見えた。
カヌーの水を抜いて再び下り始める。
何艇かが集まっているエディを見つけて、私たちもそこに合流。
沈脱したらしいK谷さんがカヤックの水抜きをしていた。
そこにいたのは、私たちの他にOC-1が3艇にカヤック2艇。
そして岩を超えた上流側には、沈脱して流れ着いたがんちゃんと舟を流してしまったA達さんがいるらしい。
がんちゃんとA達さんの二人はここでリタイアすることとなった。
残りのメンバーで再び下り始めようとしていると、ここまで一度も沈しないで下ってきた熊五郎さんまで、心が折れてしまったらしく「ここで止めると」と言い始めた。
同じく心が折れて泣きそうな顔になっていたかみさんも、それに付き合わせてリタイアさせることにする。
エディに避難した人たち、最終的にここで5人がリタイアすることとなる
1人で下る私に向かって「大丈夫なの?」とかみさんが声をかけてくるが、すっかり弱気になっているかみさんとタンデムで下るよりは、一人で下った方がまだましである。
それに、たとえ沈したとしても、スタートからゴールまで2.5キロしかないこのラフトコースなので、流れているだけでゴールに辿り着けるのである。
その先で待ち受けているのはシュートの瀬。
吸い込まれるように大波に突っ込んだが、木の葉が波の間を流れるようにその大波を乗り越え、カヌーの中にも殆ど水が入ってこない。
こんな大波の中では、タンデムよりもソロの方が安定しているようだ
後ろからホイッスルの音が聞こえたが、振り返っている余裕も無い。
こんな波に突っ込んでもソロだと簡単に乗り越えられる
そうしてようやく他のメンバーが待つゴール地点まで下ってきた。
そこで、途中リタイアの人間を含めて人数を確認するが、まだ二人足りない。
「そう言えば、俺の後ろでホイッスルが鳴っていたみたいだけれど」
暫くしてE田さんが1人で下ってきた。
K谷さんが再スタート後間もなく沈して、そこでリタイアしたとのことである。
結局、23名中5名が途中リタイアしたことになった。
例会での途中リタイア率としては、もしかしたら過去最高だったかもしれない。
無事に皆が待つ場所まで下ってこられた
今回は流された人が皆、右岸側に上陸したのでそのまま道路に上がれたけれど、左岸に流れ着いたとしたら結構厄介なことになっていたかもしれない。
時間はまだ12時を過ぎたばかり。
今日の宿泊地であるどんころの炊事棟が午後4時半まで入れないので、この後新得まで蕎麦を食べに行く組、ラフトコースをもう一度下る組、そしてシーソラプチ川を下る組とに分かれて行動することとなる。
ラフトコースをもう一度下る程度は想定内だけれど、あの濁流となったシーソラプチ川を下る人達にいたっては、ちょっといかれている人達としか言い様がない。
私たちは当然、蕎麦組に入って、午後の時間をゆっくりと過ごしてから、今日の宿泊地どんころ野外学校へと向かったのである。(どんころキャンプの様子へ)
この日の動画
(当日9:00~12:00十勝ダム放流量 60~70t)