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十勝川

(岩松〜屈足)

 カヌークラブ8月例会の初日は十勝川上流部屈足(くったり)のラフトコースを下る。
 ここを下るのは今回が2回目。初めて下ったのが4年前で、まだアリーに乗っていた頃である。
 その時のアリー史上最大のピンチであった「くったりでぐんにゃり」事件は、今も鮮烈なイメージとして私達夫婦の頭の中に焼き付いているのだ。
水の中で集合写真 でも、その事件さえ起こらなければ特別な難所も無かったはずで、それ程苦労しないで下れた記憶がある。
 駐車場所から川へ降りていくと、川岸の木々が水没していた。
 4年前も確か同じくらいの水量だったはずで、その様子に驚かされたものである。この付近の川の水量は上流のダムの放流によって大きく増減する。
 直ぐ上流の岩松ダムの放流状況は分からないが、もう一つ上の十勝ダムの放流量はネットで確認できる。
 それによると今時期の日中は常に一定量が放流されているようなので、ここのラフトコースでは常にスリリングな川下りをを楽しめるのだろう。
 その増水した川にカヌーを浮かべても、4年前のような緊張感は無い。


川への降り口   ウォーミングアップ
ダムの放流で川は増水中   ダウンリバー前にウォーミングアップ

思い出?の岩 そこから直ぐ下流の橋を通り過ぎた先の左岸寄りに、水面からポコリと頭を出した二つの岩が並んでいるのを見つけた。
 くったりでぐんにゃり事件の原因となった岩である。
 この二つの岩(正確には今回は水没していたもう一つの岩にバウが引っ掛かる)にアリーのバウとスターンが捕まり、危うくくの字に折れるところだったのだ。
 そんなことになったのは、上流にできていた大きなウェーブにはまってしまい、カヌーの中に大量の水が入ってコントロールができなくなったからなのである。
 今回はそのウェーブも無くなり、あっさりと通り過ぎてしまう。
 頭を出した岩の様子から見ても4年前より水量が多いみたいで、そのせいで小さな落ち込みは潰れてしまっているのだろう。

岩松発電所の放水口 その先で岩松発電所からの水が合流して、更に水量が多くなる。
 十勝川の上流部とは言っても既に大河の様相である。
 前方に、中州を挟んで流れが二つに分かれている場所が見えてきた。(ここでラフトの営業をしているTOMのホームページでは二股の瀬と呼ばれている)
 川が大きく右カーブして、その途中で流れは再び合流している。
 上流から見た様子では左側の流れが波も高く、ヒーローコースの様だ。
 中州から右側の流れは、これも途中の大岩によって右と左へ流れが分かれている。
 左岸のヒーローコースは中州の樹木のために様子が分からないため、先を下っているメンバーの多くは大岩の左のルートを選択したようだ。
 大岩の右は波も小さく、いわゆるチキンルートの様子だが、浅瀬に乗り上げてしまいそうな感じもある。
 私も皆と同じルートを下ろうと思ったが、S吉さん夫婦のカナディアンがそのチキンルートを選択したのを見たかみさんは「S吉さん達は右へ行ったわよ!」とその後に続こうとする。
大岩の右がチキンルート 川を下っている時は自分で判断することが大切なのに、かみさんの場合はこんな具合に他の人に影響されやすいので困ったものだ。
 私は「左に行く!」と言ったものの、決断が少し遅れたためにカヌーの進路がやや右寄りになっていて、下手をすると真ん中の大岩にぶつかる恐れもありそうだ。
 「やっぱり右に行こう!」と慌てて方針転換。
 タンデムでカヌーに乗っていると、右か左かの選択をするのも一苦労なのである。
 おかげで、岩に乗り上げそうになったり、カヌーが後ろ向きになったりと、情け無い有り様でチキンルートを下ることになってしまった。
 下り終えたところで岩の後ろのエディに入ると、上流でI田さんの赤いカヌーがひっくり返っているのが見えた。
 途中の隠れ岩に引っ掛かったのだろう。
 水が増えて岩が水没し、減水時よりは下りやすくなっているけれど、水面すれすれに沈んでいる岩が曲者になっているのである。(二股の瀬の動画 35MB)


十勝川二股の瀬
二股の瀬を下流から見た様子、上流で赤いカヌーが・・・

 暫く穏やかな流れが続いていた。
 やがて徐々に波が高くなってきたが、まだまだ緊張するほどでもない。
 その時である。前を下っていたはずのK藤さんの姿が突然消えてしまった。
K藤さん沈! その消えた場所まで下っていくと、大きな隠れ岩がちょっとした落ち込みを作っていて、その下でK藤さんのカヤックがひっくり返っているのを発見した。
 しかし、その先では更に大きな波が待ち構えていたので、そこでK藤さんに救いの手を差し伸べる余裕は私達には無い。
 無慈悲な人間だと思われるかもしれないが、水の中で必死にもがいているK藤さんを横目で見下ろしながら、その横をただ通り過ぎるしかなかった。
 そして大波の立つ瀬を通り過ぎたところにちょうど良いエディを見つけ、そこでK藤さんをレスキューすることにしてカヌーを乗り入れる。
 そして上流に目をやると、今度はKenjiさん夫婦の乗るカナディアンが沈をして、流されてくるところだった。
 これでは上陸してロープを投げる暇も無い。
 カヤックよりも大型のカナディアンのレスキューの方が大変なので、K藤さんは他の人に任せて、kenjiさん艇の後を追いかけることにする。
kenjiさん艇も沈! 流されながらも途中でkenjiさんが裏返しになっていたカヌーを元に戻したので、これでレスキューが楽になった。
 ひっくり返って水に沈みかけたカヌーは、重たくて簡単には動かせないのである。
 流れも緩やかになり、流されるカヌーの後を一緒に付いていくが、そのポジションではレスキューのしようが無い。
 そこへカヤックのY田さんがやって来て、横からカヌーを押してくれたので、何とか足の立つ場所まで誘導することが出来た
 これでもう安心なので、私達はそのまま下り続ける。
 すると、その先にK藤さんが流れているのが見えた。
 「え〜っ!まだ流れてたの!」
 川幅も広がっているので、その真ん中を流されていてはレスキューのしようも無かったのだろう。
 可哀相なK藤さんは、再び現れたの瀬の中に突っ込んでいった。
 それでもしっかりと舟とパドルを確保し続けているのは大したものである。
 私達もその瀬の中に突っ込む。
 そしてその瀬を過ぎたところで、かみさんがこちらを振り向いた。
 「水を抜かないの?」と言ったようだが、K藤さんがどんどん流されているのにそんな悠長なことはしていられない。
 瀬はあと一箇所、その後は流れも緩くなっているので、もう少し頑張れば良いだけだ。
 しかし、ふと自分のカヌーに目をやると結構な水が中に入っていることに気が付いた。その量は、カヌーの操作に深刻な影響を及ぼすレベルにまで達していたのである。
瀬の中を流れるK藤さん そうしてもう一度前に目をやると、直ぐそこに迫ってきている瀬の波の高さは半端ではなかった。
 もうK藤さんのことなど構ってはいられない。
 先に大波に突っ込んだK藤さんは、もみくちゃになりながら水の中で浮き沈みしている。
 私達はただひたすら、波に跳ね上げられるカヌーの中でバランスを保つだけである。
 そこへ左岸から1本のロープが投げ入れられ、K藤さんは何とかそのロープにしがみつけたようだ。
 その様子を確認してから、私達も瀬を抜け出し右岸側の流れの緩やかな場所に入って、ようやく岸に上がることができた。
 結局、沈した人をレスキューしようと思いながら、何もできないままただその後を追いかけ、最後は危うく自分がレスキューされる側になりそうになって終わっただけの話である。
 後で動画とGPSのデータを合わせながらK藤さんの流された距離を調べたところ、約600mであることが判明した。
 この距離は、5年前に私が雪解け水で増水した雨竜川で流された距離とほぼ同じであるが、その過酷さにおいては今回のK藤さんが優っていることだけは確かである。(この間の一部始終の動画 83MB)

古堰の瀬 その後も息つく間もなく瀬が現れる。
 K藤さんはそこで2度目の沈。
 今度はそれ程流されることはなかったけれど、その姿を見て4年前にここを下った時のF迫さんを思い出した。
 カヤックでの川下り5回目にしてこのラフトコースを下ったF迫さんも、ひたすら沈を繰り返していたのだ。
 なかなか厳しい十勝川の流れである。
 古堰の瀬は、この区間の中で一番大きな波が立つ場所かもしれない。
 カヤックのメンバーはそこで楽しそうに遊んでいるが、私達は怖くて近づく気にもならない。
 でも、下るだけならば、余計な障害物も無いので楽しい瀬である。
 更に瀬を下っていくと、川原に張られた緑色のタープが見えてきた。
 かみさんが「えっ?もう着いちゃったの?」と驚いている。
パドリング練習 スタート地点からここまでおよそ2.2キロ、途中で遊ばずに下り続ければあっと言う間に着いてしまう距離なのである。
さすがに少し漕ぎ足りないので、かみさんを降ろしてから1人でパドリングの練習をする。
最近は毎朝ランニングをしているので持久力は付いてきたけれど、筋トレは全然やってないので、上流に漕ぎあがろうとしても直ぐに腕が疲れて動かなくなる。
「もう1本漕ごう!」と言って他のメンバーは再び車に乗って出かけたけれど、私のこの1人パドリングですっかり消耗してしまい、1本だけで止めることにした。
山に登るためにはランニング、カヌーに乗るためには筋トレ。
アウトドアで楽しく遊ぶためには体も鍛えなければならないのだ。


野営地の河原に到着
あっという間に野営地の河原に到着

2010年8月21日 晴れ時々曇り



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