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沙流川

(幌去橋上流の橋〜池売橋下流)

トナシベツ川 カヌークラブの5月例会は沙流川を下る。
 その例会前日の土曜日、クラブメンバーの有志がトナシベツ川を下ると言う。
 空知川の支流、南富良野町を流れるトナシベツ川は、美しい十梨別渓谷を作り出している。
 数年前の同じ時期にこの十梨別渓谷を車で走り、美しい川の様子にすっかり魅せられていたので、出来ればそこに参加したかったけれど、初めて下る川なのでエキスパート限定とのこと。
 その代わりに、沙流川の例会で下る場所より下流、振内付近のの初心者でも下れるような区間で、会長がミニ例会を企画してくれたので、そちらに参加することにした。
 ただ心配なのが、最近の陽気で山の雪解けが一気に進んだようで川の水がかなり増水していることだ。
 会長からも「沈したら1キロ以上は流されることもあり」とのクラブBBSへの書き込みが二日前にあり、そのためか当日集まったのは会長夫妻とIW田さん、K島さん、22谷君、S水君と予想外の少なさ。
 エキスパートメンバーはトナシベツ川へ行ってしまっているので、これで本当に大丈夫?と皆の顔に不安の表情が浮かんでいる。
 ただ、会長一人だけが妙に元気で、「1キロじゃなくて2キロは流されるかも」と嬉しそうに話していた。

スタート地点 ゴール地点に車をデポして、会長の説明を聞きながらスタート地点へと向かう。
 その説明を聞く限りでは、本当に初心者向けコースなのか怪しくなってくる。
 そして、道路上から時々見下ろせる川の様子。これは絶対に初心者向けではない。
 スタート地点の川原に到着。目の前を流れる沙流川の勢いに圧倒される。
 参加メンバーの一人S水君は、去年の歴舟川、今年のGWの当別川に続くこれが3回目の川下りで、まだまだ立派な初心者と言える。
 先日の当別川では体が500m、艇が2000m流されると言う、新たな伝説を作ったばかりなので、もしかしたら今日はその記録をあっさりと更新してしまうかもしれない。

 恐る恐る川にカヌーを浮かべる。
 流れが速いので、その場に留まることもかなわず、有無を言わさずに流されていくしかない。
 水に変わりは無いはずなのに、増水した川の水はねっとりとして重たい。
 波のパワーに負けないように力を込めてパドリングするので、そう感じるのだろうか。
 おまけに向かい風も強いので、余計に力が必要となる。


川下りスタート
白く濁って水量の増した沙流川の川下りが始まった

余裕   S水君
まだ笑顔がこぼれる   緊張で体が強張るS水君

 ちょっとした瀬をクリアしてホッとしたところ、下からボイルしてくる水に危うくバランスを崩しそうになって、ヒヤリとした。
 増水時の川は気を抜ける場所が殆ど無い。
 S水君がその瀬を下ってくる様子を眺めていると、案の定そのボイルに巻かれて沈してしまった。
 慌てて私と22谷君がレスキューロープの準備をするが、川幅が広すぎて本流の流れる位置も岸からはかなり遠い。 22谷君がまずロープを投げたが、後数メートルで届かず。
 私のロープは15mしか無いので、投げるまでも無かった。
 後は、会長とIW田さん、K島さんが周りを取り囲んで岸に誘導する様子を、ただ眺めているしかない。
 あと少しで次の瀬の中まで流される直前、ようやく対岸の岸に無事上陸することが出来たようである。
 もしもその瀬の中まで流されてしまえば、記録更新は確実だったろう。


ちょっとひやり   沈
バランスを崩しちょっとひやり   S水君 沈!


 幌去橋の手前、会長の話では小さな堰堤があるそうだけれど、水量が多いので潰れてしまっている。
 その代わりに川幅一杯に白波が立っているのが見える。波の小さいチキンルートを探すが、そんなものは何処にも見当たらない。
 ここまできたら適当に見当を付けて、やけくそで突入するしかない。
 その白波の寸前まで来たとき、目の前の光景に愕然となる。そこには水の壁が立ちはだかっていたのだ。
 そしてその水壁が頭の上から崩れ落ちてくる。あっと言う間にカヌーの中は水浸しとなり、次の瞬間、カヌーは波の上に突き上げられた。
 「漕げ!漕げ!漕げー!」
 水没寸前のカヌーで次の波を超えながら、かろうじて岸まで漕ぎ着くことができた。
 かみさんは泣きべそ顔で、手の震えが止まらない。
 確かに、これまで経験した中ではこれが最大の波だったことは確かであり、その迫力に相当ショックを受けたようである。
 S水君が無事にそこをクリアできたのは、見事と言うのか偶然と言うのか、良く分からない。


瀬を下り終えて
水舟のカヌーを放心状態で確保しているかみさん

 スタートしてからここまで、まだ僅かしか下っていない。
 今日の下る区間は約5キロ、増水して流れも速いので30分で下ってしまうかもしれない等と話していたのが、今になってはゴールまで無事にたどり着けるかどうかが心配になってきた。
 次の瀬を下見したところ、対岸から出艇した方が良いだろうとの結論になる。
 しかしそのためには、川幅が広がって流れが速いところをフェリーグライドで渡らなければならない。
 大きなうねりを横から受けながらのフェリーは、あまり気持ちの良いものではない。
 最後に残ったS水君が渡り始めたが、カヌーを上流に向けようと苦労している間にも、どんどんと下流へと流されている。
 その下は強烈な瀬となっていて、そこに引き込まれる姿はあまり見たくない。
 「もっと漕いで〜!」と皆で声をかけ、ギリギリで渡りきることができたのを見て、皆胸をなで下ろした。

フェリーグライドのルート   無事に到着
ここから対岸へ   瀬の手前で渡りきれた

余裕で瀬をクリア 巨大な水壁に突っ込んだショックがまだ癒えないかみさんは、次の瀬を見て「ここは無理〜」と泣き言を言い始めた。
 それほど難しいような瀬でもないけれど、しょうがないので私一人で漕ぐことにする。
 「本当に一人で大丈夫?」と、私のことまで心配してくれるけれど、一人で乗る方が瀬の中ではバランスを崩しにくいのである。
 余裕でそこをクリアできた。
 かみさんは、河原を歩いている途中で蛇の死骸を見てしまい、瀬を下るよりも怖い思いをしたようである。


敵前逃亡のかみさん
サッサと逃げ出したかみさん

 次に現れたのは、道路の護岸に流れがぶつかって大きな波が立ち、そのまま大きく右カーブしているところで、先の様子が分からない。
 そこも歩いて下見をするけれど、疲れてきて次第に歩くのも面倒になる。
インコースを下る インコースを下れば全く問題は無さそうだけれど、ここでもまたかみさんは舟に乗るのを嫌がり、また私一人で漕ぐことになる。
 皆、先に下り終えてS水君が下ってくるのを待ち受ける。大丈夫かなと心配しながらも、カメラを構えるのだけは忘れない。
 しかし、なかなか上流のエディから出ようとしないS水君。目の前で暴れ狂う大波に完全に怖じ気づいてしまったようだ。
 やや暫くの間そこでグズグズしていたけれど、何とか心の踏ん切りがついたらしく、ようやく動き始めた。
 が、その次のS水君のとった行動、何とカヌーから下りてそれを引きずりながら歩き始めたのである。
 今か今かと固唾を呑んで見守っていたメンバーは、一斉にずっこけてしまった。
 このS水君の行動を笑ってはいけない。
 最終的には自己責任で楽しまなければならないのが、カヌーと言うスポーツである。
 止めると言う判断も、勇気を持って自分で決断しなければならない時もある。
 ただ、今後のクラブの例会では、今日のS水君の行動が毎回のように酒の肴にされることだけは覚悟しておいたほうが良さそうだ。


びびるS水君   歩き始めた!
なかなか流れに出られない   結局こうなりました

 最後の難関は池売橋の橋脚。
 車の回送時に道路上からその様子を確認し、会長から「橋脚に張り付く恐れがあるので注意して」と言われていた場所である。
池売橋をくぐる その時はかなりびびったけれど、そこまで激しい瀬の中を下ってきているので、全員が危なげなくそこを通り抜けた。
 後はゴール地点まで穏やかな流れが続くだけだ。
 穏やかと言っても、それまでの流れと比べたらの話しである。
 川全体がまるで海のように波立っているので、気を抜くことは出来ない。
 そしてようやくゴールに到着。
 皆の顔には、下り終えた満足感と言うよりも、無事に下り終えた安堵感の笑みが浮かんでいた。
 しかし、今日のここが初心者コースならば、明日の例会本番で下る区間は一体どうなっているのだろう。
 安堵感が不安感に変わるのに、それほど時間はかからなかったのである。

2009年5月9日 晴れ
当日12:00 沙流川水位(幌毛志橋観測所) 57.80m
写真提供 サダ吉さん


下り終えて大満足
皆の笑顔


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