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歴舟川

(第二の土壁下流の川原〜河口)

 カヌークラブの8月例会では歴舟川のキャンプツーリングをすることになり、カムイコタン公園キャンプ場を出発して、大樹町までの中間辺りの川原で1泊。
 キャンプ地の川原を出発して河口までの川下りの様子を、ここで紹介します。(出発からキャンプ地までの部分はキャンプ日記を参照)

気持ち良すぎて寝てます キャンプ地の川原を7時40分に出発。
 大雨による大増水からほぼ二日が過ぎて、水の量も通常よりやや多い程度まで下がり、瀬の中でカヌーの底を擦ることも無く、一番下りやすい状態になっている。
 川の水の透明度も、何時もと変わらないくらいにまで回復していた。
 そして上空の青空。
 スタート直前には急に雲が広がってポツポツと水滴まで落ちてきたけれど、その雲も直ぐに晴れてきた。
 晴れているか曇っているかで、同じくらいの水の透明度であっても、見た目の印象は全然違ったものになる。
 最高のコンディションの中、海を目指しての川下りが始まった。

第3の土壁下流の瀬 今年は雨が多くて歴舟川も増水を繰り返し、瀬の状況も微妙に変わってきている。
 第3の土壁を過ぎた先にある瀬は、年によってはドキッとするような大きな波ができることもあるけれど、今回は比較的大人しい瀬となっていた。
 それでも、初心者にとってはかなり緊張させられる場所である。
 ただ、嫌らしい障害物は無いので、爽快に下れる瀬でもある。
 メンバーの中のT葉さん、Kなべさん夫婦は、これまで千歳川や美々川などしか下った経験が無く、これらの川には瀬と呼べるような箇所は存在しない。(一部に落ち込みは除く)
 昨日、初めて瀬と言うものを経験し、そしてここの瀬がこれまで下ってきた中では一番大きな波が立っていそうだ。
 2艇とも危なげなく、とっても楽しそうな表情でその波の中を下っていく。


T葉さん   Kなべさん
颯爽と下るT葉さん   Kなべさんは何時も笑顔


小さな滝 右岸に長く続く第四の土壁も、その入り口部分と、途中の倒木の絡まる水制護岸が、ちょっとした難所になっているけれど、今回はどちらも問題なく下ることができた。
 土壁の途中に小さな小さな滝ができていた。
 今までにそんな滝は見たことも無く、これも2日前の雨の影響なのだろうか。
 土壁全体も、染み出してきた水で表面が濡らされ、それが太陽の光で輝いて、とても美しい。
 このような周りの風景の変化も、歴舟川の魅力の一つである。


キラキラと光る第四の土壁
キラキラと光る土壁を眺めながらのんびりと下る

護岸で固められた土壁 やがてコンクリートで固められた最後の土壁が見えてくる。
 去年よりも本流が右岸寄りにずれていて、そのおかげで護岸のテトラブロックに向かってまともに流れがぶつかるようになっていた。
急な流れではないので特に問題ではないけれど、Kなべ艇が、そのテトラをギリギリでかわして下ってきた。
 本人達よりも見ている方がヒヤヒヤしてしまう。

 そしてその先で、現在のところ歴舟川の中で一番の難所と思われる瀬が待ち構えている。
 今年、改訂版が発行されたの「北海道ののんびり下れる川の本」では、ここが「どんぐりの瀬」と呼ばれていた。
 名前の由来は全く見当もつかないけれど、瀬の名前は付けたもの勝ちって雰囲気もあるので、私としては「待ち伏せの瀬」と名付けたいところだ。
 川の流れが左岸に集まってかなり大きな波の立つ瀬となっている。
 これだけならば楽しく下れる瀬なのだが、問題はその先でテトラブロックが待ち構えていることである。
どんぐりの瀬で危機一髪 手前で沈すると、そのテトラに向かって真っ直ぐに流されてしまう。たとえ沈しなくても、そのテトラを右に避けるように艇をコントロールしなければならない。
 初心者にはちょっと厳しい瀬と言えるだろう。
 念のためにレスキューロープを用意する。
 T葉さんは、誰かのアドバイスが有ったのか、かなり上流からポーテージを始めた。
 Kなべさんご夫婦は、誰からもアドバイスされなかったのか、まともに下ってくるようだ。
 私の他にレスキューロープの用意をしている人はいない。
 こんな時に何時も悩んでしまうのが、ロープを構えるか、カメラを構えるかである。
 結局カメラの方を選択したのだけれど、Kなべさんご夫婦は危機一髪でどんぐりの瀬をクリア。


大樹橋が見えてきた
大樹橋が見えてきた!

 大樹町市街地に架かる大樹橋が見えてきた。
 前日にここの右岸まで車を回送してあり、一旦上陸して、キャンプ道具を下ろして、その後再び海を目指して下り続ける予定となっている。
 川岸で出迎えてくれたのは、ここから合流する予定のまるさんご夫婦だ。
 本州にお住まいのまるさんご夫婦は、北海道に来るのは初めてで、昨日函館に着いたばかりとのこと。
 今年の夏に千歳川を一緒に下ったKevipaさん達の知り合いでもある。
2艇積みのKなべさん そのためかどうかは分からないが、ワンボックスカーにカナディアン2艇積みと言うのは、本州からやってくるご夫婦パドラーお決まりのパターンだ。
 北海道でこんなスタイルを見かけることは殆ど無く、本州からやってくる知り合いのパドラーは全員がこのスタイル。
 誰か影響力の強い方がいるのだろうけれど、この極端な違いはとっても不思議に思えてしまう。

 キャンプ道具を下ろし、上流に置いてあった車を回収し、それを河口へと回し、昼食も買い込んで、トイレを済ませる。
 ここでツアーを打ち切るメンバーが2名。大型カナディアンに一人で乗っていたメンバーが別のカナディアンの人と新たにペアを組み、そこにT葉さんも乗り込み、3人艇となる。
 T葉さんもここで終わる予定だったのが、海まで出ることを勧められて、気が変わったようだ。
 そこにまるさん夫婦とワンちゃん1匹の乗るカナディアンが加わり、新たな体制で海を目指して川下りを再開した。

危なっかしい3人艇 大樹橋の下を過ぎると直ぐに、川底の岩盤が洗濯板のようになった瀬となる。
 さすがにここではカヌーの底を擦ってしまうけれど、ルートさえ間違えなければ座礁することも無く下ることができる。
 まるさんにとって、北海道に到着して最初に下る川が、いきなりこんな荒瀬と言うのも気の毒な気がするけれど、さすがに本州の方ではKevipaさん達と一緒に下っているだけあって、危なげなく瀬の中を下っている。
 逆に危なげなのは、S水君の艇にO橋パパとT葉さんが乗り込んだ3人艇である。
 3人でワイワイガヤガヤといたって楽しそうに下っているけれど、15フィートと若干小さめのカナディアンに巨漢のS水君など3人が乗り込むと、喫水も下がって、如何にも何かが起こりそうな予感を漂わせている。
頭から水をかぶるKなべ艇 ふるさと大橋を過ぎた先にある瀬は、数年前まではかなりの迫力があったけれど、去年あたりから大人しい瀬に変わってしまった。
 それでも、ファルトボート2人艇のバウに乗るKなべさんの奥さんは、頭から思いっきり波を被りながら瀬の中を下っていった。
 ふるさと大橋を過ぎると、人工物は殆ど無くなり、広大な川原の風景が広がってくる。
 その雄大さに、まるさんが「本州では見たことの無い風景だ」と感動しているけれど、それにはまだちょっと早すぎる。
 これから先、空はますます広くなり、もっともっと感動的な風景が待ち受けているのである。


雄大な歴舟川の風景
下るにしたがって空が広くなってくる

 ただ、分流や浅瀬も多くなるので、下るルートの見極めが大事になってくる。
 今日は、I上さん・F本さんが乗るカナディアンが先頭で下っているので、私達はその後に付いて下るだけで良い。
 最初のうちは、「本当にそっちで良いの?」と思いながら付いていたけれど、確実に正解ルートを選んでくれるので、途中からは信頼してその後に付いていた。
 普段はカヤックに乗る二人だけれど、流れを読む力はさすがベテランである。

横から流れ込む分流 難しい瀬は無いものの、思わぬところから分流が流れ込んでいて、その水流にバランスを崩されヒヤッとすることもある。
 3人艇がその流れにやられたのか、あっさりとひっくり返ってしまった。
 流されながらもこの3人、とっても楽しそうである。
 沈というよりも、水遊びをしているようにしか見えない。

 休憩で上陸した川原では、Mるさんの連れているワンちゃんが、意味も無く走り回っている。
 何だか、あまりにも広すぎてどうして良いのか分からずに戸惑っているように見えてしまう。
 それでも誰かがガサガサと音をたてて袋を開けると、何かおやつを貰えるのかと、大急ぎで戻ってくる。
 そんな様子を見ていると、フウマと一緒にここを下った時のことを思い出してしまった。


休憩   犬のまるちゃん
川原で休憩   何か食べてる人いないかな〜

 追い風に押されて快調に下っていく。
 やがて、遠くに水平線が見えてきた。
 静かに広がる歴舟川の水面、何処までも続く玉石の川原、白い雲の浮かぶ真っ青な空。
 下った人間にしか分からない、感動的な風景に圧倒される。


海が見えた
水平線が見えてきた

まだまだ瀬は続く  しかし、歴舟川の河口はまだ少し先で、相変わらず気持ちの良い瀬が続いている。
 先を下っているメンバーが分流を右の方へ下っていこうとしている。
 確かにそちらの方が本流のように見えるけれど、去年の河口部の本流は左岸側を流れていたはずである。
 3人艇もそう思ったのか、分流を左へ入ったので、我が家もお付き合いすることにした。すると、Mるさん艇も私達の後に付いてきてしまったようだ。
 他にはカヤックのIW田さん。4艇だけが集団から離れてしまったけれど、ここまで下れば大した危険は無い。
 でも、次第に川幅が狭まり、外れの分流を選んでしまったことだけは確かである。
 先を下っていた3人艇が左岸から張り出した倒木を避けようとして、右岸に乗り上げ、そのまま後ろ向きになって下っていくのが見えた。
 危ないな〜と思いながら我が家もそこまで下ってくると、全く同じ状態で右岸に乗り上げ、後ろ向きになってしまう。川幅が狭くて、そうするしか倒木をかわしようがないのである。
 まるさん艇も全く同じ状態で下ってきた。
先に上陸したメンバー その後も、今日初めてカヌーから降りて舟を引っ張ったりしながら、ようやく本流へと合流できたのは河口直前だった。
 既に本流を進んだグループは、既に河口の砂丘に上陸している。
 まあ、他の人よりちょっとだけ違う経験ができたことだし、これで良しとしておこう。
 腹に響くような波の音が聞こえてきた。
 この波の音も、海まで下ってきた感動を更に大きくしてくれる。
 崩れやすい砂利に足を取られながら砂丘に上陸。
 その先で待ち受けている太平洋。
 歴舟川ダウンリバーのフィナーレである。
 襟裳岬へ続く海岸線が、遥か遠くまで見渡せる。
 お決まりのように、波と戯れるメンバー。
 逃げ遅れて波に呑み込まれかけるS水君。
 それを見て笑い転げる他の人達。
 皆、底抜けに楽しそうだ。
 心が洗われるような川下りだった。


波と戯れる   記念撮影
お決まりの波との戯れ   記念撮影中も波が!

河口の風景
最高の川下りだった


2009年8月23日 晴れ時々曇り
当日8:00 歴舟川水位(尾田観測所) 102.41m



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