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テント村出現歴舟川キャンプ

歴舟川の川原(8月22日〜23日)

 歴舟川を下りながらの川原キャンプは、これまでに2度ほど経験していたけれど、今回はカヌークラブの例会でそれをやることになった。
 その準備段階での持ち物リストには、大鍋があるのは分かるけれど、それ以外にダッチオーブンまで含まれている。
 「川のツーリングキャンプにダッチオーブン?」
 私の頭の中では、ありえない組み合わせである。
 準備が進むうちに、「ダッチオーブンが足りないので、誰か持ってこられる方はいませんか?」との、掲示板への書き込み。
 「た、足りないって、一体幾つダッチオーブンを積んでいくの?」
 一生懸命準備している役員のためにも、こんな時には率先して手を挙げたいところだけれど、今回ばかりは静かに見守っていることにした。
 自分のやってきた川原キャンプとは全く次元の違うキャンプが、これから始まろうとしているのだ。

 買い物部隊の集合時間から少し遅れて大樹町までやってくると、皆は既にスーパーフクハラで買い物を終えてレジに並んでいるところだった。
 段ボール箱に入れられた大量の食材を見て、唖然としてしまう。それで買い物は終わりなのかと思ったら、道路を挟んだAコープの店舗に移動してそこでトウモロコシと餃子などを購入。
 大量の買い物も、S吉隊長の入念な事前準備により順調に進んだようだ。
 その後、近くで昼食を済ませてからキャンプ場に到着。
 まずは、キャンプ場の炊事場を借りて、大量の食材の詰め替えや下処理をする。
 このために、S吉隊長が事前に管理人のおじさんに、炊事場を使わせてもらう了解を得ようとしたところ、突然その管理人さんが怒り出したそうである。
 「あんた達みたいな奴がいるから、どうのこうの!」
 以前に、そう言って炊事場を使った人間が大量のゴミを捨てていったことがあったそうで、そんな人間と一緒にされて怒られた隊長も気の毒だけど、炊事場の使用だけは認めてもらったようだ。

荷物積み込み風景 今回の参加者は総勢17名。
 普段はカヤックや小さなOC-1に乗っているメンバーも、今回は大型のカナディアンで参加してくれたので、7艇のカナディアンが揃った。
 これだけあれば荷物の分担も楽になったけれど、その荷物の量も半端ではない。
 大鍋二つにダッチオーブン三つ、着替え・トイレ用テント、スコップ、ノコギリ、おまけに普段のクラブキャンプで使用しているビッグタープまで乗せていくらしい。
 それに加えて各自のキャンプ道具や、カヤックで参加するメンバーの荷物も引き受けなければならない。
 私も、水30リットルに、普段はオートキャンプの時しか使わないような大型のクーラーボックス、それに前日の雨で川原の流木が湿っていることも予想されたので、乾いた薪まで用意してきていた。
 それに加えての二人分のキャンプ道具や着替えなどを積み込むと、カヌーは引きずるのも困難なくらいに重たくなる。
荷物満載カナディアン それでもまでスペースがあるので、今日仕入れた食材などを次々とカヌーに積み込んでいると、かみさんが「も、もうそれ以上積まない方が良いんじゃない?」と心配し始めた。
 いくら荷物が重たいと言っても、大人の人間をもう一人乗せるのとそれほど違いは無いはずである。
 そこで試しに、かみさんと二人で荷物を載せたカヌーを水面に浮かべ、ちょっとだけ漕いでみた。
 それでようやく、かみさんも安心できたようだ。
 16フィートのカナディアンカヌーならば500kg程度の積載能力があるので、地上でいくら重たく感じても、水に浮かべてしまえば重さは大して関係ない。
 カナディアンカヌーは、瀬の中で遊ぶための乗り物ではなくて、こうして荷物を載せて運ぶのが元々の目的に合った使い方なのだろう。

いよいよ出発 そうしていよいよ、キャンプ予定地の川原に向けての川下りがスタートした。
 歴舟川上流の日高山脈では前日の明け方に雨が強くなり、川の水位情報を見ていたら僅か数時間で1m以上も水位が上昇し、これで明日の川下りが本当にできるのか、心配だった。
 前日に現地入りした人の話では、濁流の中を倒木が次々と流されていく、すさまじい状況だったらしい。
 5年前の歴舟川例会で、あっと言う間に姿を変えてしまう歴舟川の様子を目の当たりにしていたので、その状況がリアルに浮かんでくる。
 しかし、歴舟川は増水するのも早いけれど、水が減るのも早い川である。大増水から一日過ぎた歴舟川は、濁りもかなり取れて、水量も川下りには程好い状態まで落ち着いてきていた。
 今回の例会では、2週間前に千歳川を一緒に下ったT葉さんが、いよいよ本格的なカヤックでの川デビューとなる。T葉さんの場合、川下りだけでなく、これまでにキャンプをした経験も殆ど無いそうである。
 川の方は初心者でも何とか下れるレベルだけれど、キャンプデビューが、いきなりのトイレも水場も無い川原キャンプでは大変である。
ドキドキ 川下りと同じくらいに、キャンプの方にもドキドキしているみたいだ。
 そしてもう一組、ゲストで参加しているKなべさんご夫妻も、湖以外でカヌーに乗ったのは千歳川と美々川だけと言うことで、相当に緊張しているらしい。
 何しろ、スタートする川原から直ぐ下流にある歴舟大橋の橋脚が、最初の障害物に見えたそうである。
 確かに私も、現在はその橋を過ぎた先の流れしか目に入らないけれど、初めて歴舟川を下った時は、まず最初にその巨大な橋脚を見て恐れを感じたものである。
 荷物を満載してカヌーの喫水が下がり、それに水量も多めで波もやや高くなっているので、歴舟大橋を過ぎた先の瀬を下っている時でも、ガンネルを越えてカヌーの中に水が入ってきた。
 これでは、同じ瀬の中を下る時でも、少しでも波の小さなルートを選びながら進まなければならない。
 後続の初歴舟組も、本日最初の瀬を、緊張しながらも無事に下ってきた。
 私が今日のキャンプ地の案内役になっているので、先頭で下っていくと、右岸にぶつかる左カーブのところで、かなり大きな白波が立っているのが見えてきた。
 普段ならばそのまま流れに乗って波の真ん中に突っ込むところだけれど、さすがに今日はそんな危険は冒せない。
 瀬の手前から左岸に寄って、波の低い場所を漕ぎ抜ける。
無謀なI田さん 直ぐにカヌーから降りて、後続のメンバーに左に寄るよう合図を送る。
 何せ、重たいダッチオーブンを積んでいる舟もあるので、絶対に沈させるわけにはいかない。
 今回は水遊び用に水中眼鏡も持ってきたけれど、「水中に沈んだダッチオーブンのサルベージに役立ちそうですね」と言われていたのだ。
 そんな私の心配をよそに、カヤックのK島さんから預かったキャンプ道具と全員分の米を積んでいるI田元会長が、わざわざ一番波の高いヒーローコースに突っ込んでいって皆をハラハラさせてくれる。
 初歴舟組も、何とかその瀬をギリギリでかわすことができて、本当にドキドキしたみたいだ。
 見ている方もドキドキである。
 ここで沈されても、荷物満載のカナディアン以外でレスキューに動ける人は僅かしかいないのである。
 第一の土壁まで下ってくる頃には、何時もとは一味違った川下りにも慣れてきたようで、皆それぞれリラックスした表情を浮かべている。


土壁の下を下る
 

 4年前に我が家が最初にキャンプした川原に上陸してみたけれど、昨日の増水で洗われた様子もあるのでそこはパスして、当初の予定通り、2年前の我が家のキャンプ地まで下ることにする。
 その時よりも随分と草が茂っているように見えたので、偵察隊員としてかみさんを上陸させ調べさせたところOKサインを送ってきた。
 キャンプ地の選定を任されていたので、ホッとする。去年下った時もこの場所の様子は確認していたけれど、その時と同じ状態であることは、増水の度に様子が変わってしまう歴舟川では全く保障されないのである。
 川原キャンプでも、できればゴツゴツしていない平らな場所にテントを張りたい。ここは歴舟川の川原でも、数少ないそんな場所である。唯一心配だったのが、参加者17名がテントを張れるだけの平らなスペースがあるかどうかだった。
 上陸してみて、そんな心配は消し飛んでしまった。
 若干草が生えているものの、下手なキャンプ場のテントサイトよりも快適そうな川原が広がっていた。そして流木もたっぷり。文句の付けようのない場所である。
 隊長が決めた場所に全員でテント村の設営を始める。


設営開始   テント村出現
設営開始!   あっと言う間にテント村出現!

 私は隊長から「できるだけ早く熾きを作ってください」と特命を受けていたので、設営部隊には加わらず、一人焚き火の準備を始める。
 川原到着が午後3時50分。今時期は6時には暗くなるので、それまでに料理を完成させなければならず、隊長からの強い命令ももっともである。
 それよりも、この困難な任務を私に与えてくれた隊長の命令を意気に感ずる私であった。
 乾いた建築端材を持参していたので、少々湿った流木でも燃やせる自信はあったけれど、そこらに転がっている流木は表面だけは完全に乾燥していた。
焚き火完成 これならば、文化焚き付けが一片あれば十分である。
 最初に小さな炎が上がり、その上に次々と、無造作な様でいながら完璧に計算されつくした角度と間隔で流木が積み重ねられ、あっと言う間にその流木の山が巨大な炎に包まれた。
 テント村設営から戻ってきた隊員達が口々に「ヒデさん、何時の間にこんな焚き火作ったのですか!」と感心するのを聞き、密かに職人としての誇りを感じながら煙草に火を付けたのである。

 その間に、歴舟川の川原には忽然としてテント村が出現していた。
 色とりどりのテントが14張り、壮観な眺めである。
 全く関係ない人間がこの光景を目撃したら、何処かの危ない団体が何かを始めようとしていると警察に通報されそうだが、そんな心配は全く無い。
 川を下ってくるか、偵察衛星を使うしか、この場所を発見する手段は無いのである。
働くO橋隊員 O橋隊員が、メイン焚き火から火を分けて、餃子を焼いたりホタテのバター焼きを作り始める。
 去年の歴舟川河口流下訓練において、途中で脱走しかけたのを隊長から無理やり河口まで連れていかれた経歴を持つO橋隊員にしては、見違えるような動きである。
 最近になってようやく一人で幕営できるようにもなり、これも隊長の厳しい指導の成果なのだろう。

 椅子とテーブル代わりにするのにちょうど良さそうな石を川原から拾ってくる。
 そこに腰掛け、ビールをセットして、自分の特命任務も終了したので、後は料理が出来上がるのを待つだけだ。
 他の隊員も、手持ち無沙汰にO橋隊員の働き振りを見守り、川原全体にのんびりとした雰囲気が漂っていたところに、S吉隊長の号令が響き渡った。
隊長からの指令が飛ぶ 「これから大鍋二つで石狩鍋、ダッチオーブン二つに牛肉のワイン煮、大きなダッチオーブンではご飯を炊いてダッチビビンバを作ります!暗くなるまでには完成させ無ければなりません。各鍋それぞれ3人くらいで担当して、遊んでいる人がいないようにすること!はい、それでは取り掛かってください!」
 突然の命令、それも各自の役割を命ぜられる訳でもなく、自分が何をして良いのか分からず、うろたえる隊員達。
 隊員の自主性を育てようとしているのか、突き放したようなやり方である。
 そうでもしなければ、こんな寄せ集めの部隊の統率は取れないのだろう。
 しかし、ふと隊長の足元を見やると、そこにはネットで公開されている各料理のレシピをプリントしたものが束になって置かれていた。
 多分何日も前から、仕事から帰ってはパソコンに向かって、この日のために色々と準備をしてきたのだろう。そのレシピのプリントに会長の苦労が偲ばれた。

料理中 私もオロオロしながら、とりあえず鍋数分の焚き火を作り、その後はダッチオーブンでご飯を炊く係を引き受けたらしいIW田隊員の手伝いをする。
 IW田隊員は、旧日本陸軍から引き継いだような年代物の飯盒を使って、何時も美味しいご飯を炊き上げる、これも一種の職人隊員と言えよう。
 そんなIW田隊員も、30cmのダッチオーブンで米を炊くのは初めてで、ちょっと戸惑っている。
 「水の加減てこれくらいなかな〜」
 「手のひらが隠れるくらいの水の量って言いますよ」
 「米の量が変わっても、それは同じなの?」
 「手のひらと言っても人によって厚さが違うし」
 「まあ、これくらいで良いか!」
 皆でワイワイガヤガヤと、まるで小学生の炊事遠足みたいだけれど、これがとっても楽しい。
料理完成 焚き火の上に吊るされたダッチオーブン、石狩鍋を作っている鍋から立ち上る湯気が食欲をそそる。
 そうして全ての料理が日没前に出来上がった。
 鍋の蓋を取るたびに皆の歓声が沸きあがる。
 どれを食べても無茶苦茶に美味しい。
 川を下りながらのキャンプなのだから、装備はシンプルに、食べ物もレトルトご飯にカレーライス程度で十分。
 最初はそう考えていたけれど、それは全くの間違いだったことを思い知らされた。
 夢中になって料理にむさぼり付く隊員の向こうで、いつの間にか空が赤く染まっていた。


夕日の下で夕食

豪快な焚き火 風が少し強いけれど、寒さは全く感じない。
 その風が焚き火を更に燃え上がらせる。
 5m以上離れて、しかも風上に座っていても、その焚き火の熱が伝わってくる。
 IW田さんが、太いところで直径50cm以上はありそうな流木を、押し倒すようにして焚き火の中に放り込む。
 まさに傍若無人な焚き火である
 キャンプ場では、どんなに豪快な焚き火でも、所詮は焚き火台に乗せられる範囲が限界である。
 キャンプ場のファイヤーサークルを独り占めして、大きな焚き火を楽しんだこともあるけれど、それもやっぱり限度がある。
 こんな焚き火を楽しむためには、川を下って、誰もいない川原に上陸するしかないのである。

 前日の雨で洗われた漆黒の空では、無数の星達が一際明るく輝いていた。
 あちらこちらで感嘆の声が上がる。
 薄雲がかかっているのかと思ったら、それは久しぶりに見る天の川の姿だった。
 「歴舟の空に横たふあまの川」(ヒデ)
 楽しい時間が過ぎ、酔って立ち上がれなくなる前に、テント村の一番奥に設営した自分のテントにもぐりこんだ。

川原の朝 天気予報によると日曜日の天気は朝から曇りとなっていたので、あまり早起きする気にもなれず、何時ものキャンプよりも寝坊してしまった。
 ところが、テントの入り口を少し開けて外の様子を覗いてみると、素晴らしい青空が広がっていたので慌てて飛び起きた。
 かみさんを含めた早起きメンバーは、既に焚き火の周りで寛いでいる。
 朝焼けがとっても綺麗だったとの話しを聞いて、寝坊したことを悔やんでしまう。
 焚き火の上には太い流木が乗ったままなので、昨夜から燃え残ったものなのかと思ったら、大量の流木は朝までに殆ど燃え尽きてしまって、今あるのは新たに拾ってきたものだと言う。
 あれだけ太い流木が一晩で燃え尽きるとは驚いてしまった。
 歴舟川で顔を洗う。
 昨日よりも更に水位が下がり、その分透明度も増して、普段の歴舟川に戻りつつあるようだ。
 朝の光が、河畔林を越えて川原のキャンプ地まで射し込んできた。
 Kjiさんが早くも、昨日の石狩鍋の残りを使ってうどんを作っている。
 私が何時ものキャンプと同じく、朝のコーヒーを飲んでいるうちに、出来上がったうどんはあっと言う間に食べ尽くされてしまう。
 皆が起きてきたところで、もう一鍋のうどんが作られ、これでようやく私もうどんにありつくことができる。
 昨夜の料理に引き続き、このうどんも最高に美味しかった。


朝餉の風景

出発 満腹したところで、ぼちぼちと撤収に取り掛かる。
 何せ、隊長からは7時30分までの撤退命令が出ているのだ。
 真夏のような陽射しが川原に照りつけ、撤収作業中も暑くてたまらない。
 ようやく片付けも一段落したところで、歴舟川の清流でクールダウンする。
 わざわざ持参してきた水中眼鏡とシュノーケルを初めて使うことができたけれど、結構流れの速い場所なのでのんびりと浮かんで川底を眺めてもいられない。
 できれば、深い淵が近くにあって水遊びもできるような川原だったらもっと楽しいのだけれど、そこまで贅沢は言ってられない。
 最後に、川原にゴミが残っていないか確認し、楽しかった思い出だけをそこに残して、歴舟川の河口に向けて出発した。

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8月22日 14:00 歴舟川水位(尾田観測所) 102.54m




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