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北海岳・間宮岳・北鎮岳(2018/09/12)

紅葉の大雪周遊二日目

前日は寝付くまで寒さに震えていたけれど、夜中は寒さも感じずにぐっすりと眠ることができた。
目が覚める頃にはテントの中も明るくなってきていた。
星空の写真を撮ろうと思っていたけれど、暗いうちに目が覚めたとしても、暖かなシュラフの中から抜け出す勇気は湧かなかっただろう。
それでも、テントから顔を出し雲一つない澄んだ空を見た時は、ちょっとだけ後悔してしまう。

コーヒーを飲んで頭がすっきりとしたところでテントから抜けだして、避難小屋横のトイレに入る。
ここのトイレは、使用した紙を持ち帰らなければならないので、便意はあったけれど小だけで我慢した。
本当はトイレがあるだけで有り難いのだが、私の場合、山で携帯トイレを使用して持ち帰った経験が無いものだから、紙だけ持ち帰るにしても、正直言って結構抵抗があるのだ。


朝日に照らされるトムラウシ山に忠別岳


遠くトムラウシ山が朝日に照らされ、その朝の光は次第に高根ヶ原へと広がってくる。
白雲岳にも朝日が当たっていたが、テン場にはまだその光が届いていない。
そのテン場の地面は、カチカチに凍っていた。


テン場に日が射してきても地面は凍ったままだ

トムラウシまで縦走するような人達は、早々にテントを撤収して出発していく。
朝食はフリーズドライの雑炊。
胃の中に流し込むように食べられるので、縦走時の朝食に向いているかもしれない。

昨日の受付時に「キツネがいるので注意して」と言われていたが、近くにテントを張っていた人が、見事にテントを破られていた。
笑いながら破られたテントを見せてくれたけれど、天候の悪い縦走時ならば、笑い事では済まないところだろう。

私は、ゴミはジップロックに入れて臭いが漏れないようにしていたけれど、それ以上の自衛策はとりようがないので、困ったものである。

撤収を終えて、午前6時35分テン場を後にする。
水場の横の水溜りには氷が張り、登山道も真っ白な霜柱に覆われていた。
足裏にできたマメはそれ程痛まず、北海岳まで戻ったところで、その先の行動を考えることにする。


テン場を後にする

水溜りには氷が張っていた


登山道を登っている途中に後ろを振り返ると、朝日に照らされる白雲岳避難小屋、高根ヶ原の中に続く縦走路、その先に聳えるトムラウシ山と素晴らしい絶景が広がっていた。


白雲岳避難小屋とトムラウシ山


白雲岳分岐を過ぎた後は、白雲岳の北側に回り込むように下っていく。
昨日も歩いた道だけれど、光の当たり具合が違うので、昨日の景色とは違って見える。

白雲岳の岩場の下を歩く時は、このタイミングで地震が起きたらどうしようと不安になってくる。
一週間足らずの前に胆振東部地震の揺れを体験したばかりなので尚更である。


これから岩だらけの白雲岳の裾野を歩くと思うと良い気持ちはしない


霜柱を踏みながら歩いていても、強烈な日差しを浴びていると汗が滲んでくる。
北海岳への登りに差し掛かる前に半袖のシャツに着替えた。

登っていくにしたがって、噴煙を上げる十勝岳など十勝岳連峰の山々が遠くにくっきりと見えてきた。
今日は昨日よりも空気が澄んでいるので、遠くの山まで本当に良く見えている。


十勝岳連峰も良く見える



そして8時25分に北海岳山頂に到着。
靴下を脱いで足裏の状態を確かめる。
マメの上に貼った絆創膏は剥がれていないし、痛みもそれ程ではない。
最初の予定通り御鉢平の周りを一周して、黒岳石室のテン場でもう一泊していくことにする。

まずは間宮岳を目指す。
途中の小さなピークには松田岳の名前が付いているが、その山頂にはケルンと山頂標識らしき残骸があるだけだ。
間宮岳から御鉢平へと落ちていく斜面では、ナナカマドと思われる紅葉が何本もの赤い筋を描いていて、なかなか美しい。


間宮岳への縦走路、奥に覗いているのは旭岳の山頂


御鉢の反対側を見ると、やっぱりトムラウシ山の姿が目立っている。
手前の方には幾つかの沼が点在している場所が見えていた。
そこには高層湿原が広がっているのだろうけれど、登山道が無いので、ここから眺めて楽しむしかない。


遠くに見えるトムラウシ山、手前には幾つかの沼も見えている


御鉢平の丁度反対側に黒岳の姿が見えるようになってきた。
そして、北海岳からおよそ50分で旭岳への分岐に到着。
缶ビール1本と水2リットル分が軽くなったので、今日は大体コースタイム通りに歩けていた。


間宮岳は御鉢平を挟んで黒岳の丁度反対側に位置する


間宮岳の山頂はその分岐の直ぐ近く。
平らに広がる地形の中に山頂標識だけがポツンと立っているだけだ。

中岳分岐に向かって標高差140m程を一気に下っていく。
御鉢平一周は、6年前に今回とは逆回りで回ったことがある。
黒岳石室に重たい荷物を置いて、身軽な装備での一周だったにも関わらず、ここの登りが結構堪えたことを思い出す。

安足間岳と比布岳が、双耳峰の様に目の前に並んで見えていた。
二つの山の間は、植物も育たない急な崖となっている。
去年のGWに山スキーで安足間岳に登り、その二つの山の間を滑り降りたことが、今となっては信じられない。


左側が安足間岳、GWには中央の谷をスキーで滑り降りた


中岳分岐を過ぎると、中岳、北鎮岳に向かっての登りが始まる。
足に負担をかけないように歩幅を小さくし、ゆっくりゆっくりと登っていく。
足裏のマメが心配なこともあるけれど、今月末には網走マラソンを控えているので、ここで足を痛めては一大事なのである。


中岳から見下ろした御鉢平の様子


山登りがマラソンの練習代わりになるのならば良いけれど、私の経験では山登りではランニング時とは違う筋肉を多く使うようで、あまり役に立たないような気がするのだ。
練習どころか、関係ない筋肉が痛くなって走るのに支障になってしまうかもしれない。
中岳の小さなピークを越え、更に北鎮岳分岐に向かって登っていく。


中岳を過ぎ、更に北鎮岳を目指して登っていく



ゆっくりと登っていた割には、中岳分岐から北鎮岳分岐までコースタイム50分のところを40分もかからずに登ってきた。
まあ、昭文社の山と高原地図のコースタイムは、あまり当てにならないことも多いので、それだけを見て喜ぶことはできない。

分岐に荷物をデポし、カメラだけを持って北鎮岳山頂を目指す。
軽く駆け上ろうと思ったけれど、昨日からの疲れもあって足取りは重い。
それでも分岐から14分で北鎮岳山頂に到着。

旭岳に次ぐ北海道第2の高峰だけあって、山頂からの眺めは素晴らしかった。
隣の凌雲岳やその先の黒岳が随分と低く見える。


北鎮岳から眺める凌雲岳(左)と黒岳(右)


御鉢平も眼下に一望できる。
その反対側の愛別岳や比布岳の姿もなかなか印象的だ。


北鎮岳から眺める安足間岳(左)、比布岳(中央)、愛別岳(右)


山頂からの展望を暫し楽しんだ後は分岐まで下って昼食にする。
昼食は尾西食品のアルファ米おにぎり。
白雲のテン場で水を入れて持ってきたのだが、上手く袋を破れば、普通のおにぎりの様に食べる事ができる。
今回は五目おこわだったけれど、これはなかなか美味しかった。


雲の平の風景


その後は、御鉢平や雲の平の風景を楽しみながら黒岳石室を目指す。
その途中で鮮やかな赤に色づいたウラシマツツジを見つけた。
その株だけが色づく時期が違っていたのだろう。


鮮やかな赤に染まったウラシマツツジ

他のウラシマツツジは、早過ぎた降雪に痛められたのか、くすんだ赤色になっている。
全てのウラシマツツジが、この鮮やかな色に染まっていたとしたら、大雪山の紅葉風景も全く違ったものだったかもしれない。

12時50分に黒岳石室に到着。
早い時間だったにも関わらず、良い場所は既にほとんどテントが張られてしまっていた。

ここのテン場は、ロープーウェイで黒岳に登った人がこちらに降りてきて直ぐにテントを張ることが多そうなので、比較的早い時間からテントが張られる気がする。
それでも何とか、テント正面に桂月岳が見える場所を確保できた。


黒岳石室

相変わらず陽射しが強くて暑いくらいの気温なので、石室の売店で売られている500円の冷えた缶ビールを買うことにした。
棚に置いてある缶ビールをそのまま取り出したので、思わず「それって冷えてるの?」と聞いてしまった。
今時期は、朝に氷点下まで気温が下がるので、室内の日の当たらない場所に置いてあれば、日中でも冷たいままなのである。

実は今回、うっかりして現金をあまり持って来なかったものだから、ここでビールを買ってしまうと下山してからの温泉か昼飯のどちらかを我慢する羽目になるかもしれなかった。
それでも、冷えたビールの魅力には勝てなかったのである。

黒岳石室には雨水などを溜めたタンクがあって、そこから水を得る事ができる。
ただ、そのタンクの水で手を洗ったりすることは禁じられている。
昨日から結構汗をかいていて顔を洗いたかったので、他にすることもないし、北海沢まで歩いていくことにした。


北海沢どころか赤石川までも結構時間がかかった

北海岳に登る途中にある北海沢までは昨日も歩いているけれど、そんなに時間はかからなかったはずである。
と思っていたら、その手前の赤石川まで15分もかかってしまった。
北海沢は更にその先。

赤石川の水は硫化水素が含まれているので飲用には適さないが、顔を洗うだけなら問題ないだろう。
赤石川の源流は御鉢平の中にあって、近くには硫化水素の火山ガスが噴出していることから名づけられた有毒温泉がある。
名前は悪いけれど温泉水で顔を洗うのと同じことである。
顔だけじゃなく、裸になって体も洗いたかったけれど、他の登山者もやってきそうなので我慢することにした。


緑色が私のテント、正面は桂月岳

テン場に戻ると、私のテントの隣で若い女性がテントを張っていたので軽く挨拶をする。
後でこの女性が他の登山者と話している内容を聞くと、彼女は今日が山でのテント泊デビューらしい。
昨日もそんな女性がいたけれど、黒岳石室のテン場は、女性がテント泊デビューするにはおあつらえ向きの場所である。

何と言っても、山のテン場の中ではトイレが清潔なことが女性には嬉しいところだ。
ただし、バイオトイレなので、使用後はおがくずをかき混ぜるための自転車漕ぎが必要となる
私も、白雲岳避難小屋のトイレと違って紙を捨てられるここのトイレで、ゆっくりと用を足すことができた。

今日こそは星空の写真を撮ろうと思っていたけれど、昨日と同じく夕方になると雲が広がってきて、星空は見られそうにない。
石室の前からは若者たちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
隣のテント泊デビューの若い女性と親しくなる機会もないままに、一人寂しく味気ない夕食を済ませ、ザックに忍ばせてあったワインを空にして、午後6時過ぎにはシュラフに潜り込んだ。


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※ コースタイム
白雲岳テン場(06:35)-(07:13)白雲岳分岐-(10分休憩)-(08:25)北海岳(08:34)-(09:26)間宮岳(09:39)-(10:36)北鎮岳分岐(10:47)-(11:01)北鎮岳(11:10)-(11:21)北鎮岳分岐(11:40)-(12:50)黒岳テン場
 


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