北海道キャンプ場見聞録
黒岳・北海岳・白雲岳(2018/09/11)
紅葉の大雪周遊一日目
私は紅葉時期の大雪山にまだ登ったことが無かったので、それを今年の秋の一つの目標にしていた。
紅葉のピークにはまだ一週間くらい早そうだったけれど、天気が三日間ほど続きそうだったので、紅葉よりも天気を重視して出かけることにする。
日の出前の風景を楽しみながら車を走らせる
かみさんが乗り気じゃなかったので、私一人での単独山行となる。
まだ暗いうちに一人で起き出して、朝4時過ぎに札幌を出発。
朝食は途中のコンビニで何か買おうと思っていたら、滝川で入ったコンビニの棚は見事に空っぽ。
地震によるブラックアウトの影響がまだ残っていることを再認識させられる。
それでも、少しだけ売られていたおにぎりで、何とか腹を満たすことはできた。
午前7時20分発の黒岳ロープウェイに乗り込み、リフトを乗り継いで、一気に黒岳7合目まで上がる。
そこまで上がれば紅葉も始まっているだろうと思っていたが、木々の葉はまだ緑色のまま。
札幌でも気の早い街路樹のナナカマドが色づき始めているというのに、ちょっとがっかりである。
リフトで7合目まで上がる
気温はそれ程高くはないのだろうが、陽射しが強いこともあり汗が噴き出してくる。
途中で着ているものを一枚ずつ脱いでいくが、長袖Tシャツの上に半袖Tシャツを重ね着していたものだから、最後に残ったのは長袖Tシャツ。
これは明らかに失敗だった。
なるべく汗をかかないように、いつも以上にゆっくりと登っていく。
それでも途中で、大きなザックを背負った女性を追い越した。
同じロープウェイに乗っていた女性で、同乗していた老夫婦との会話を聞いていると、今日が山でのテント泊デビューらしい。
背負っているザックの重さは18キロもあるとのこと。
私の荷物は、1㎏近くあるカメラの三脚、2リットルの水に350mlの缶ビール1本、ハーフサイズのワインまで入れてほぼ18キロである。
女性が背負うには明らかに重たすぎる。
黒岳の石室には泊まったことがあるみたいだが、テント泊デビューのためにザックの中に色々と詰め込んできたのだろう。
彼女は多分石室のテン場にテントを張るのだろうが、私は今回は白雲岳避難小屋のテン場まで行く予定である。
一緒に泊まれないのがとても残念だった。
まねき岩付近の紅葉
まねき岩付近まで登ってきて、ようやく美しい紅葉風景に出会えた。
足元の岩の間ではハイオトギリが赤く染まっている。
登山客で賑わう黒岳山頂
そんな風景に励まされながら、1時間35分で黒岳山頂に到着。
2年前に大雪を縦走した時は1時間20分で登っていたので、今回はかなりスローペースだったようだ。
しばし山頂からの展望を楽しむ。
雲一つない青空の下に大雪の山々の雄大な展望が広がるが、期待していたような紅葉の風景はそこにはなかった。
私は紅葉した大雪の姿を見たことはなかったけれど、他の登山者の話を聞いても今年の紅葉はパッとしないらしい。
初雪が早かった影響で、紅葉する植物の葉が傷んでしまったのだろう。
ウラシマツツジの紅葉も鮮やかさが失われていた。
それでも山頂からの風景は、感動するには十分なものである。
黒岳山頂より御鉢平方向を望む
20分ほど休憩して私が出発しようとしている頃に、テント泊デビューの彼女が頬を赤く染めながらようやく登ってきた。
山頂から降りていくと、その正面に凌雲岳や北鎮岳が大きく迫ってくる。
雪渓がほぼ消えた北鎮岳の姿は今までと全然違う印象である。
右が凌雲岳、その奥が北鎮岳、手前に石室が見えている
25分で石室まで降りてきて、そのまま北海岳を目指す。
赤石川へ向かって下っていく途中、チングルマの白い綿毛が目を惹く。
チングルマは紅葉も美しいはずだが、その色は既に茶色に変わっていて、これも雪の影響なのだろう。
チングルマの紅葉は色あせ気味だ
登山道の脇には霜柱が溶けずに残っている。
霜柱どころか、日陰の部分では土が凍っている所もある。
こちらは汗を垂らしながら歩いているというのに、今の気温は何度くらいなのだろうと考えてしまう。
日陰になっている所は、確実に10度以下だと思われる。
霜柱の残る登山道を下っていく
赤石川を渡る
赤石川、北海沢を渡り、北海岳へのきつい登りが始まる。
途中で後ろを振り返ると、腹を膨らませたガマガエルが仰向けに寝そべっているような黒岳の姿が見える。
層雲峡側から見上げると、山頂が鋭く尖った雄々しい姿を見せている黒岳だが、こちら側から見ると何とも情けない姿である。
沢を挟んだ向かい側に見えている北鎮岳や凌雲岳の方が余程立派である。
北海岳側から眺める黒岳の姿は不格好だ
黒岳石室から1時間25分で北海岳山頂に到着。
2年前の縦走時は、この区間を歩くのに1時間40分かかっていた。
しかしこれは、2年前は途中で花の写真を撮るのに時間がかかっていただけで、今回はその時間を短縮できただけのことなのだろう。
北海岳山頂から見下ろす御鉢平とその向こうに聳える北鎮岳
風が強いので汗を冷やさないように上着を着て、御鉢平の風景を眺めながら15分ほど休憩。
水を入れて持って来ていた「尾西の五目ごはん」を食べるが、美味しくなくて半分を残してしまう。
水で60分で食べられるようになるアルファ米だが、やっぱり熱湯15分で食べた方が美味しい気がする。
白雲岳山頂近くの岩場、ここで少し迷ってしまった
その後、白雲岳を目指して下っていく。
途中で10分の休憩を取りながら1時間で白雲岳の分岐へ。
そこに荷物をデポし、カメラだけを持って白雲岳を目指す。
身軽になってサクサクと登るつもりだったが、最後の岩場で登山道を見失ってしまう。
黄色いペンキで岩に目印が付けられているのだけれど、途中でその目印が無くなってしまったのだ。
岩場の中で行ったり来たりを繰り返す。
かみさんと二人で登っていたとしたら、直ぐに後ろから非難の声を浴びせられるところだが、一人だとそんな事も無く、落ち着いて黄色い目印を探すことができる。
そしてようやく、正しいルートを発見。
30分近くかかってしまったけれど、何とか白雲岳山頂に立つことができた。
眼下に広がる広大な高根ヶ原、その先に見える忠別岳や化雲岳、そして更にその奥に一際高くそびえるトムラウシ山。
少し目を転じると、北海道最高峰の旭岳が御鉢平を囲む山々の陰に控えめにその姿を見せている。
白雲岳山頂から眺める旭岳
そんな展望を楽しんで下山開始。
花が咲いていない白雲岳の火口原は何か殺風景だ
登る時には分かりづらかった黄色い目印も、上から見下ろすと一目瞭然である。
何の苦労も無く火口原まで降りていくことができた。
7月に登った時は、登山道の周りを埋め尽くすように咲いていた花々に感動したけれど、今の季節は殺風景な火口原の風景が広がっているだけだ。
分岐まで戻ってきて、一休みしてから今日の野営地である白雲岳避難小屋を目指す。
登山道を下っていくと小高くなった丘の上に立つ避難小屋の姿が見えてきた。
何度見ても印象的な姿である。
その下のテン場に張られているテントは疎らで、良い場所を確保できそうだ。
白雲岳避難小屋とテン場が見えてきた
水場の水源となる雪渓もまだ残っていて、ちょろちょろと流れる小川を渡って午後2時40分、テン場に到着。
テン場は、雨水が流れたり溜まったりして少し湿っているような場所しか空いていなかったが、今夜は雨の心配もなさそうなので、諦めてそこにテントを張る。
そして、ザックの中に1本だけ忍ばせてあった缶ビールを水場で冷やしておく。
目の前の岩場からはナキウサギの声が聞こえてきた
北海岳から降りてくる頃から、足の裏に痛みを感じていた。
恐る恐る靴下を脱いで足の裏を見てみると、両足の裏に見事にマメができていた。
何時もの様にインナーソックスを履いていればマメはできなかったはずなのに、2年ぶりの山登りなので、そんなことも忘れていたのだ。
明日は御鉢平を一周し、黒岳石室にもう一泊する予定でいたけれど、このマメでは最短ルートで下山することも考えた方が良いかもしれない。
丁度良い大きさの湿潤タイプの絆創膏が有ったので、それを両足の裏に張って様子を見ることにした。
山陰から次第に雲が湧いてきて、寒さを感じるようになってくる。
多分、気温はそんなに変わらないけれど風も結構吹いているので、陽射しが遮られると体感温度が下がってくるのだろう。
沢水に漬けてあったビールは程よく冷えていたけれど、寒くてあまり美味しく感じない。
フリーズドライの夕食を無理やり腹に詰め込む。
縦走の時の食事は、重さや食べる時の手間を考えて、フリーズドライ食品ばかりになってしまうけれど、もう少し食べるのが楽しくなる食事を考えた方が良いかもしれない。
白雲岳テン場の様子
向かいの岩場から、ナキウサギと思われる鳴き声が時々聞こえてくる。
寒さに耐えられず、午後6時過ぎにはシュラフの中に潜り込む。
油断して体を冷やしてしまったようで、歯がガチガチと音を立てるくらいに震えていが、やがてそのまま眠りについた。
※ コースタイム
リフト終点(08:00)-(09:35)黒岳(09:53)-(10:17)黒岳石室(10:17)-(11:43)北海岳(12:00)-10分休憩-(13:03)白雲岳分岐(13:05)-(13:32)白雲岳(13:42)-(14:09)白雲岳分岐(14:16)-(14:41)白雲岳テン場