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屋久島縦走(2016/05/15)

三日目(新高塚小屋〜鹿之沢小屋)


縦走3日目は鹿之沢小屋までの移動である。
比較的楽なコースなので、山小屋の中が暗いうちからゴソゴソと騒がしくなる中、5時までゆっくりと寝ていた。

問題はトイレである。
ここの山小屋にはバイオトイレが2基あって、前回の縦走ではわざわざこの山小屋のトイレで用を足していた。
しかし、そのトイレが処理能力を超える利用により閉鎖されていたのである。
多分、GWの時の利用で満杯になってしまったのだろう。

新高塚小屋を出発 残りの一つのトイレはドアを開けた瞬間に蠅が一斉に飛び出てくるような状態である。
入る時も、ズボンの裾をまくり上げてしまう程だ。
いざとなったら携帯トイレブースを利用するつもりだったが、幸いにこの日はもよおすことは無かった。

誰も居なくなった午前7時過ぎに、ゆっくりと山小屋を出発。
いきなり小雨が降ってきたので雨具を着込むが、暑くなって直ぐに脱いでしまう。

ヤクザルが姿を現した。
西部林道辺りのヤクザルは、車が近づいても逃げようとしないで道路上で寛いでいるが、この辺りのヤクザルは人慣れしていないので直ぐに逃げてしまう。

ヒメシャラの森、ヤクシマシャクナゲの花、巨大な石。
昨日に続いて気持ちの良い尾根歩きが続く。


ヤクザル 急な階段
今回の旅でヤクザルに初めて会った 急な階段も苦にならない

ヒメシャラの森
樹肌の赤いヒメシャラは森の中でも目立っている

巨大な岩の隙間を降りていく第一展望台からの展望は全く無し。
それでも、近場の風景だけで十分に楽しめる。
ロックガーデンのような風景の中で、ヤクシマシャクナゲやハイノキの花が彩りを添える。

第二展望台付近でも、 少し霧が晴れてくると、山の斜面に咲くシャクナゲが美しく見えていた。
しかし、その隣に見えるはずの坊主岩は、ボンヤリとその輪郭しか確認できない。

平石岩屋への急登を登っていく。
ヤクシマシャクナゲの群落が増えてくるが、花を咲かせているのはまだその一部だけだ。
これが全部花を咲かせれば素晴らしい風景となるのだろう。

この辺りから永田岳や宮之浦岳が見えるようになってくるはずなのだが、霧が晴れてきても近くの山までしか見えない。
シャクナゲが満開で天気が快晴の時に、平石岩屋からの展望を楽しんでみたいものだ。


ヤクシマシャクナゲ ハイノキ
ヤクシマシャクナゲ 水滴を纏うハイノキの花

第二展望台付近
この程度の展望でも十分に満足できる

近づいても逃げずに食事中のヤクシカ平石岩屋から降りていくと、笹原の中でヤクシカが食事中だった。
森の中で出会うと、直ぐに逃げてしまうが、この様な見通しの良い場所だと、彼らも安心しているのか、こちらを気にもせず笹の葉を食べ続けていた。

進行方向の岩山の上に人影が見えていた。
私達を追い越していったソロの男性がそこで休んでいるのかと思っていたが、近づいていくとどうやらその人影はヤクザルのようだった。
サルもやっぱり高い場所が好きなのだろうか。

もう少しでその近くまで達しそうになると、岩の上のサルはゆっくりとした動作で姿を消してしまった。
もっと遠くの岩の上では親子らしい2匹のサルが、こちらものんびりと寛いでいた。


岩の上のサル 岩の上から平石岩屋付近を眺める
岩の上からサルに監視されていた 奥に見えているのが平石岩屋付近か

遠くの山は直ぐに霧に隠れてしまう山頂に石を抱いた屋久島独特の山が近くに見えていたが、地図を見ても名前は載っていなかった。
見通せるのはその辺りまでが精一杯で、その山も直ぐにまた霧の中に姿を隠してしまう。

急な登りを息も絶え絶えに登っていくと小さな平場に出てきた。
そこが焼野の三叉路である。
おじさんの6人グループが「お疲れ様」と迎えてくれた。
「今日は何処まで行くのですか?」と聞かれ、「鹿之沢小屋です!」と答えると、「それじゃあ僕達と一緒ですね」と言われる。

「そうなんですか!」と笑顔で答えたが、心の中ではガッカリしていた。
泊まる人の少ない鹿之沢小屋なので、今日こそは私達の貸切でのんびりできるだろうと期待していたのである。

おじさん6人グループは永田岳に向かって元気良く歩いていった。
時間はまだ午前10時を過ぎたところ。
天気さえ良ければここに荷物をデポして、屋久島の最高峰宮之浦岳に登るつもりでいた。
ここからならば30分もかからないで登ることができる。

細い登山道を降りる しかし、これだけガスがかかっていると山頂に登ったところで何も見えないのは分かりきっている。
諦めて、私達も永田岳を目指す事にした。

島の最高峰に登らないと完全縦走とは言えないが、そこまでの拘りも持っていないので、大して気にもならない。

永田岳に向かっては一旦下っていくことになる。
笹が両側から覆い被さってくる登山道は、まるで洗車機の中を歩いている感じである。

そこを下まで降りきると、今度は永田岳へ向かっての急登が始まる。
昼飯を食べていないのでエネルギー切れなのか、足がふらついてくる。
このままでは転んで怪我をしそうなので、前を登っているかみさんにストップをかけて、立ったまましばらく休憩する。

息切れが納まってきたところで再び登り始める。
霧が少し晴れると見覚えのある岩が姿を現した。


永田岳への登り

岩の風景を眺めながら永田岳へと登っていく


ようやく山頂直下の平場まで登ってくると、そこでは先程の6人グループが既に登頂を済ませて休んでいるところだった。
私達と入れ替わりに、鹿之沢小屋に向かって降りていく。
まだ12時にもなっていないのに、随分と先を急ぐ人達だ。

永田岳山頂私達もそこに荷物を下ろして、永田岳への山頂アタック。
永田岳に登るのはこれが3度目なので、あっさりと山頂に着いてしまう。
上空には青空が少しだけ見ていていたが、相変わらず霧がかかっていて、直ぐ近くの岩山くらいしか見えない。
山頂からの展望は諦めて直ぐに下山する。

山頂付近に奥宮の社が有ったはずだが、その場所が思い出せない。
海岸の砂を持ってくるのを忘れて、奥宮への届け物もないので、探すのは諦める。

荷物を置いたあったところで昼食にする。
昼食を終えたら、後は鹿之沢小屋まで下りていくだけである。

降り始めると直ぐに霧がパッと晴れて、新緑に彩られた美しい山の風景が目の前に現れた。
北海道の、春紅葉とも表現される新緑も美しいが、常緑照葉樹の新緑もなかなかの美しさである。


常緑照葉樹の新緑
南国の春紅葉だ

この様子だと、もしかしたらロウソク岩展望台からの眺めも楽しめるかもしれないと考え先を急いだ。
すると、下から若い男性が一人で登ってきた。
何処から登ってきたのかと驚いたら、淀川小屋を出て鹿之沢小屋をピストンしているとのこと。
小屋の管理でもしている人なのだろうかと不思議に思いながらすれ違った。

道が消えたそのまま降りていくと、その先で突然登山道が消えていた。
一応、ロープだけは垂れ下がっているが、足場が何も無いのである。
これではロープ1本を頼りに、3mほど垂直下降することになってしまう。

その左に何とか降りられる場所があったので、そちらを降りてみたが、その先も途中で崖になっていた。
右側に回ってみると、藪の中に何とか降りられそうなルートが見つかった。
しかし、大きなザックを背負ったままだとその藪を抜けられない。

結局、私が先に降りて、それからサックだけを下で受け取り、最後にかみさんが降りて、何とかその場所を切り抜けることができた。

ローソク岩は姿を現さず永田岳から鹿之沢小屋までのルートが荒れていることは過去2回の経験で知っていたが、こんなに酷いところは無かった。
これでは、明日歩く予定の永田歩道の状態が余計に心配になってくる。

そんな所で時間をとられている内に再び霧が出てきて、楽しみにしていたローソク岩はかろうじてその姿を確認できる程度にしか見えていなかった。

霧の流れが速いのでもしかしたら突然姿を現すかもしれないとしばらく待っていたが、次から次へと霧が流れてきて一向に晴れる気配がない。
諦めて、再び下り始める。

その先も厳しい場所が幾つかあったが、登山道自体が消えているような所はなく、14時20分無事に鹿之沢小屋に到着。

鹿之沢小屋に到着小屋の前では先の6人組が宴会中だった。
小屋の中は土間を挟んで両側が蚕棚式の部屋になっている。
下は両方とも6人組に占領されていたので、私達は2階に場所を確保した。

ただ、その真ん中が濡れているのが気になった。
雨漏りと言うより、壁の通気口から雨が吹き込んできた様子だ。
荷物を片付けている間に、小屋の裏を流れている沢でビールを冷やす。
他に誰も居なければ、ここで裸になって汗を拭きたいところだ。

ビールが冷えたところで、私達も外に出て乾杯。
ビールを開ける音に気が付いたおじさん達は、羨ましそうな喚声を上げた。
彼らもビールを持ってきたかったが、諦めて焼酎にしたのだとか。

空は晴れた上空にはいつの間にか青空が広がり、この日の最後の1本のビールが一番美味しく感じたのである。
おじさん達は同じ職場の仲間で、山登り以外でも自転車やカヌーに乗る人もいて、気の良い人達だった。

私達が明日永田歩道を降りると言うと、一様に驚きの表情を浮かべた。
既に永田の民宿を予約している話しもすると、「それじゃあ行くしかないよね」と、如何にも気の毒そうに言われた。

これまでも不安そうにしていたかみさんが、余計に心配し始める。
おじさん達は明日、淀川登山口まで戻ってその日のうちに島を出るとのこと。
永田歩道を歩くのはやっぱり私達だけしかいないようだ。

おじさん達の話しでは、この後もしかしたら9人くらいのツアーがやって来るらしいとのこと。
途中ですれ違った若者は、偵察隊として山小屋の様子を見にきていたのかもしれない。

宴会中のおじさん達小屋に戻って、どうすればここに後9人も入れるのだろうと考えていると、男性2人連れがやって来た。
どうやらその大人数のグループの一部らしく、この後女性グループも降りてくるとの話しである。
その男性二人は、向かい側の2階に陣取った。
こうなると私達の方にも女性2人くらいは受け入れるしかないだろうと、スペースを半分だけ空けておくことにした。
夕食を済ませ、他にすることもないのでシュラフに入っていると、ソロの男性がやって来て、その人は6人組のスペースの一部を使わせてもらうことにしたようだ。

後6人、どうやって寝るのかと心配していたが、7時を過ぎてもやって来る気配がない。
多分、偵察隊の若者が鹿之沢小屋には泊まれるスペースがないと考え、他の山小屋に行くように指示したのかもしれない。
それに、途中の登山道の状態を考えれば、女性のグループには無理だと判断したのかもしれない。

何れにせよ、これで今夜は安心して寝られそうだ。

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屋久島縦走3日目のアルバム 



新高塚小屋7:05 - 平石9:05 - 焼野三叉路10:10 - 永田岳山頂11:50 - 12:00永田岳下12:40 - 鹿之沢小屋14:20 (縦走記録グラフ



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