北海道キャンプ場見聞録 夏山歩きの部屋
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小辺路縦走(2016/04/16)

二日目(伯母子峠〜三浦峠)


激しい風と雨の音で目が覚める。
この様子では行動するのも無理そうなので、しばらくはシュラフの中で微睡んでいた。
マイケルが外に出ていく気配を感じて、私達もようやく起き出す気になった。

暴風雨の朝時間は朝の7時。
昨日シュラフに潜り込んだのが午後8時頃なので、11時間は寝ていたことになる。
普段の生活では8時間以上は寝ていたことがないので、余程疲れていたのだろう。

マイケルは近くの沢から水を汲んできたようだ。近くと言っても、歩いて5分くらいはかかる。
外の風雨はかなり激しいらしい。
この状態で外を歩くのは危険と言っても良いだろう。

朝食を済ませてしばらく様子を見ていたが、風雨は一向に弱まる気配を見せない。
昨日の朝に確認した天気予報では、今日の昼過ぎからは回復してくるはずだった。
昨日無理して歩いたおかげで、今日の行程には余裕がある。

雨の中を出発 とは言っても、小辺路を歩き終えた後の宿も既に予約してあり、これ以上は出発を遅らせれない。
もう少し様子を見ると言うマイケルを残して、9時50分、雨具を着込んで山小屋を出発した。

前回中辺路を歩いた時も雨に降られていたし、屋久島ではもっと激しい風雨の中を歩いてこともあるので、少々の雨は気にならない。
それでも、昨日まで歩いてきた道とは様子が変わり、急な崖に付けられた道に緊張を強いられる。
その道を横切るように沢水が流れ落ちているところもあり、大雨が降れば簡単に道は崩れ落ちてしまいそうだ。

ブナの幹を伝って雨水が流れ落ちていた。
初めて目にするブナの樹冠流である。
雨が降っていれば、こんな良いこともあるのだ。


道を横切る沢水 ブナの樹冠流
沢水が登山道を横切っていた 初めて見たブナの樹冠流

崩れかけた登山道途中、崖崩れで通れない時は迂回路を回ってくださいとの看板が立っている場所があった。
その迂回路が何処にあるのかも分からず、崩れかけた崖を無理矢理通過する。

迂回路は多分、その崖が崩れている場所の上部を通過するようになっているのだろう。
それもきっと際どい道に違いない。
小辺路の険しさを改めて感じさせられた。

そんな険しい道を過ぎ、ようやく平らな場所へと出てきた。
上西家跡である。
江戸の初めから旅籠があった場所で、昭和の初めまで人が住んでいたらしい。
辺りは苔生して、なかなか良い雰囲気の場所である。
コケに覆われた切り株に誰かが置いた瀬戸物の皿が、その場所での人の生活を思い出させた。


上西家跡
上西家跡で出会った苔の犬?

上西家跡 上西家跡
上西家跡で小休止 人が生活していた痕跡も残る

霧に霞む杉林今日の道程は伯母子峠から三田谷まで、長い下りが延々と続いている。
ようやく雨も上がってきて、美しい杉林が霧に包まれる。
雨のおかげで出会える幻想的な美しい風景である。

水ヶ元茶屋跡の小さな祠の中には石の仏像が安置されていた。
熊野古道は祈りの道でもある。
道中で出会う仏像や地蔵には、全て手を合わせてお参りする。

次第に日も射してくるようになってきた。
それが霧に霞む森を一層美しく見せる。

途中から古道らしく石が敷かれた道が現れた。
しかし、中辺路でも経験しているけれど、雨に濡れた石畳の道はとても滑りやすいのである。
尻餅をつかないように慎重に下りていく。

三田谷に近づくにつれて急な下り坂へとなっていく。
小辺路の縦走では、この様に集落のある谷への上り下りが傾斜も一番きつくなるのである。
川によって大きく削られた谷の底に集落が作られているので、これも道理である。


美しい杉林
霧に霞むスギ林が美しい

石畳の道と光の射す森
森の中に日が射してきた、道は石畳に

祈りの道 回りの風景も見えてきた
地蔵仏等には必ず手を合わせる 天気も回復し、周りの山も姿を現す

三田谷を流れる神納川も平成23年の大雨で被害を受けたのか、その川原に重機が入って復旧作業が行われている最中だった。
川の水も今日の雨の影響なのか、真っ茶色に濁っていた。

下界まで下りてきたここまで殆ど休むこともなく3時間歩き続けて、標高差900mを下ってきた。
雨具も着たままで、その中は汗でびしょ濡れ。
「自動販売機これより1km下流」と書かれた看板を発見。
もう少しで冷たいコーラを飲める!

その思いだけで、休みも取らずに舗装道路をひたすら歩いていく。
しかし、その自動販売機がなかなか見つからない。
道路沿いの民家に人影が見えたので場所を聞こうとした時、かみさんが「有ったわよ!」と声を上げた。
その自販機は1本下の道路際に立っていたのである。

「やった〜、自販機だ〜」
自販機を見つけて大騒ぎしている私達を、地元の方は呆れた顔で眺めていた。

吊り橋を渡って三浦峠を目指すそこで遅い昼食をとり、午後2時に再び歩き始める。
神納川に架かる吊り橋を渡り、そこからまた急な登りが始まった。

今日の宿泊予定地は、ここからまた標高差800m近くを登った先の三浦峠である。
伯母子峠から三浦峠までの距離は約14キロ、コースタイムは4時間半。

前日と比べればかなり楽に歩けるだろうと考えていたが、それは大きな間違いだった。
900m下った後に800mを登り返すというのは、体力的にかなりきついのである。
勿論、この間に小さな上り下りも数え切れないくらいにあるので、累積標高はもっと大きな数字になるのだ。

棚田の風景に感動登っていく途中に棚田が作られていて、そこからカエルの鳴き声が聞こえてきた。
先日見たばかりの丸山千枚田と比べるとその規模は全然違うが、ここの棚田には地元の人達の暮らしぶりが直接感じられ、その風景を眺めているだけで心が癒されるようだった。

石垣や石畳も残っていて、登りのきつさを忘れさせてくれる。

巨大な杉が目を惹いた。
樹齢が500年程度と推定されている。
ここで旅籠を営んでいた吉村家の屋敷林だったらしい。
ここでは昭和23年まで実際に人が暮らしていたらしく、周辺にもそれと分かる跡が残っていた。


吉村家跡の防風林
スギの巨木に圧倒される

その先に三十丁の水と呼ばれる水場があって、そこで水を補給する。
そこから三浦峠までの登りは、自分との戦いだった。
前日は自分の限界を越える登りだったけれど、今日もまた自分の限界を越えていた。

スギの皆伐跡斜面の杉が皆伐されている場所へ出てきた。
見通しは良くなったが、樹木が無くなると斜面も崩れやすくなるようだ。
途中には完全に崩れて道が無くなっているようなところもあった。
誰かが歩いた足跡だけが残っていたので、その足跡を辿りながら何とかそこを通り過ぎることができた。

何かに喰い散らかされた様なシカの死骸が道の真ん中に転がっていた。
異臭を放っていたので息を止めながらその横を足早に通り過ぎる。
なかなか大変な小辺路歩きである。

その斜面を登り切ったところが東屋のある三浦峠だった。
午後4時30分、今日の野営地に到着である。

今日のテン場やや風があったけれど、東屋周辺はその風も遮られちょうど良いテン場になっている。
トイレは出来たばかりのようで、飲むことは出来ないけれど雨水を溜めたタンクから水が出るようになっていて、かみさんはその水で真っ先に金麦を冷やしていた。
雨や汗で濡れた服やザックを、鹿避けのネットを物干し代わりにして乾かす。

そんなことをしている内に、昨日の山小屋に一緒に泊まっていたマイケルが追い付いてきた。
出発も遅かったはずで、彼は今日中にはここまで来れないだろうとかみさんと話していたのだが、さすがに若者は馬力がある。
再開を喜び合った。

三浦峠それにしても、峠からの眺めは素晴らしいものだった。
私達が昨日その山頂に立った伯母子岳がらしき姿が、はるか遠くに見えていた。
自分達が今日、そこから一日かけて歩いてきたのだとは、にわかには信じられなかった。

風も止み、昨日よりは少し冷えた金麦を飲みながらその風景に見惚れる。
直ぐに空が夕暮れ色に染まり始め、素晴らしいサンセットショーも楽しめた。
雨の中を出発し、ここまで苦労しながらも頑張ってきたご褒美に、熊野の神様が微笑んでくれたのかもしれない。

こうして小辺路縦走2日目も無事に終わったのである。

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小辺路縦走二日目のアルバム 


三浦峠からの風景
最高の風景を眺めながら金麦を飲む

三浦峠から見る夕日
一日の締めくくりの素晴らしい夕景だ

伯母子峠9:50 - 上西家跡10:35 - 水ヶ元茶屋跡11:20 - 待平12:20 - 伯母子岳登山口12:55 - 13:15船渡橋14:10 - 吉村家跡14:45 - 三十丁の水15:35 - 三浦峠16:30 (縦走記録グラフ



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