北海道キャンプ場見聞録 夏山歩きの部屋
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芦別岳(2014/09/06)

降りてきたら青空


貯水池の暗い風景パッとしない天気のためにキャンプ場で少し朝寝坊して、芦別岳の新道コースを登り始めたのは午前6時30分を過ぎていた。
朝方にパラパラと降っていた雨も既に上がり、雨雲レーダーを見てももまとまった雨雲は確認されない。
天気は回復傾向にあると信じたいが、登山口の向かいにある貯水池には上空の灰色の雲が映り込み、そのモノトーンの風景が心を重たくする。

登山口付近には鹿避けの柵が張り巡らされており、その扉を開けて登り始める。
扉の先から直ぐに急登が始まる。
体がまだ慣れていないところへ、この急登は堪えた。

登るに従って霧が濃くなってくる。
霧に包まれた森の風景は幻想的だけれど、それを楽しむような余裕はない。
それに、天気が良くなるのが分かっていれば多少の霧も気にならないが、この霧は次第に天気が崩れてくる前兆のように思えてしまうのだ。


霧に包まれた森の中を登る
幻想的な風景を楽しむ余裕も無く、足下だけを見つめて登っていく

案の定、ポツポツと雨が降り始めた。最初から雨具を着ているので、その程度の雨は気にならない。
ところが私達の少し前に元気一杯で登って行った若者二人には、そうでもなかったらしい。
早々と下山してきた彼らとすれ違う。
「正解かもしれないね」と声をかけた。

途中で遊んでいるかみさん私も、山登りを始める前は、天気が悪いのに山に登る人達の気持が全く分からなかった。
多分彼らも同じで、「雨が降ってきたのに山に登るなんて意味がない」と考えているのだろう。

一方の私達は、雨の中を無理して山に登る人間に、いつの間にか変わってしまったのである。
多分、屋久島でずぶ濡れになりながら歩いた経験が、私達を変えたのかもしれない。

それにしても、いくら急登とは言っても、何時もより足取りが重かった。
先週の川下りや30キロ走の疲れが、まだ残っているのかもしれない。
それに、湿度が高くて蒸し暑い中を雨具を着て登っていることも影響していそうだ。
登り始めてまだ1時間程度なのに、これだけ疲れているようでは、山頂まで辿り着けるかも怪しくなってくる。

途中で、登山道の横から突き出ていた木の枝が顔にぶつかった。
枝の折れたところが尖っていたので、少し出血してしまう。後1センチずれていたら、目に刺さるところだった。
雨具の帽子を目深に被って前を良く見ていなかったせいである。疲れていたけれど、慎重に登ることにする。

見晴台からの風景1時間20分で見晴らし台まで登ってきた。
これまでは展望の利かない森の中を登ってきたが、ここでようやく下界の風景を見渡せた。
霧も晴れてきて、もしかしたらこのまま晴れてくるかもしれないと希望が湧いてくる。

雨も上がっていたので、雨具は脱ぐことにした。
ここで休んでいる間にソロの男性に追い越される。
かなり早そうな感じの人だが、今日の私のペースでは、一般の登山者にも追い越されそうだ。

休憩を終えて再び登り始める。
見晴台では天気が回復してくるかと期待を持ったが、それは空しい期待で終わってしまったようだ。
パラパラと雨が降ってきて再び雨具を着込み、止んではまた雨具を脱ぐ。不安定な天気に翻弄される。

鴬谷で休んでいた先ほどの男性を追い越した。
再び追い越されるのも悔しいので少しスピードを上げたものの、無駄な努力だった。

腰掛けられそうな岩を見つけて座り込んでしまう。
鶯谷からは細い尾根上の道となり、直ぐ横は転落しそうな崖となっているが、樹木が生えているので恐怖感はない。


森の風景は良いのだけれど 休憩
森の中は良い感じなのだが・・・ ちょうど良い岩を見つけて休憩

反面山の鐘美しいダケカンバ林の中を登って、スタートしてから3時間で反面山に到着。
ここも展望が良さそうなところだったが、霧で全く何も見えず。
そこにあった鐘をやけくそで鳴らしまくる。
テントを張れそうな平らな場所もあったが、3方が樹木に囲まれていて、テン場としの魅力は今一である。

そこから少し下ると周辺は湿地帯になっていた。
そこにある小さな沼は、夏山ガイドの地図では熊ノ沼と書かれていた。
近くには旭商生の遭難碑も立っていたので、軽く手を合わせる。

その付近から、登山道沿いにエゾオヤマリンドウやシラタマノキが目立つようになってきた。
エゾオヤマリンドウエゾオヤマリンドウの花は全てが蕾のままで、そのまま枯れてきているものもある。
「このリンドウって花が開かないんだろうか?」と私が言うと、「このリンドウは開かないのよ」とかみさん。
「ふーん、それじゃあどうやって受粉するんだろう・・・」
二人でそんな会話を交わしていたが、後で調べてみるとエゾオヤマリンドウは晴れた日の日中しか花を開かないらしい。
この日の天気では、開く訳はなかったのである。

霧が晴れてくると、目の前に笹に覆われた斜面が広がっていた。
その所々でナナカマドなどが赤く紅葉している。
そこからの登山道は笹の中の藪こぎ状態となるが、7月に歩いた礼文島の8時間コースの事を思えば、楽な藪こぎである。


霧が晴れる シラタマノキ
この辺りで森林限界を越える シラタマノキ

4時間で霊峰山に到着。
再び霧が出てきて、ここでも何も見えず。
小休止後、再び歩き始めるが、そこから登山道が一気に下っていて、登ってきた道を逆戻りしているのかと思って慌て地図を確認する。
霧で何も見えない確かに、霊峰山から芦別岳に向かっては一度鞍部まで下らなければならないようだ。
何せ、周りの風景が全く見えないものだから、自分達が何処に向かっているかも分からない状況なのである。

ようやく鞍部まで降りてきたところで、見上げるような岩峰が霧の中から姿を現した。
「えっ、あそこまで登らなければならないのか」
とてもそんなところを登れるわけがないと怯んでしまう。
しかし、次第に霧が晴れてくると岩峰の横に普通の斜面が見えてきて、そこにジグザグの登山道が続いているのが確認できた。
そこならば何とか登れそうだと安心する。

山頂まであと少し途中まで登っていくと小さなお花畑があった。
綿毛になったチングルマ。タカネトウチソウはまだ少し花が残っている。
ブルーベリーの実を見つけて口に含むと、その酸っぱさに顔が縮む。

そこで登山道が二つに分かれていた。
事前に調べていたかみさんの説明では、頂上への直登ルートと巻き道らしい。
そこは躊躇わずに巻き道へと進んだ。

岩峰を大きく回り込むように登って山頂到着。
結局4時間40分かかってしまい、標準のコースタイムより20分もオーバーしていた。

かみさんが最後の岩場を登れずに「私はここで止めるわ」と言い始めた。
最後の僅か2mほどの岩場である。
頂上直下で苦労するかみさん足をかける場所が無くて難儀しているようだが、横に1m移動すればいくらでも足場はある。
それが、恐怖で体がすくんでしまい、横にも動けないまま固まっているのだ。
それを何とかなだめすかして、ようやく二人揃って登頂となる。
霧が晴れているのは山頂付近だけで、遠くの風景は何も見えない。

幸い風も吹いていないので、山頂で昼を食べながらもっと霧が晴れるのを待つことにした。
その間に男性1名と女性2名のパーティーが登ってきた。
先週末は天気が良かったので、山頂も記念写真の順番待ちになるくらいの賑わいだったようだが、この日はこれでもう終わりかもしれない。
キャンプ場から旧道コースに向かったパーティーは、時間的にそろそろ登頂しそうな時間だったが、姿が無いところを見ると、途中で引き返したのかもしれない。

霧は晴れてくるどころか、次第に濃くなってきて、とうとう雨まで降り始めた。
それも、これまでと違って本格的な雨である。
天候回復は諦めて、サッサと食事を済ませて下山開始。


何も見えない山頂 雨まで降り始めた
何も見えない山頂 食事中に雨まで降り始める

登りと同じ巻き道を降りていく。
雨に濡れたハイマツの中を掻き分けながら歩いていると、雨具を着ていない下半身がびしょ濡れとなる。
直登とコースとの合流点まで下っていくと、そこには既に3人パーティーの姿があった。
もしかしたら直等コースの方が楽だったのかも知れない。

霧が薄くなってきた雨が少し小降りになったと思ったら次第に目の前の霧が薄くなって、ぼんやりと下界の様子も見えてきた。
降りるに従ってどんどんと霧が晴れてきて、とうとう雲の切れ間から日も射してきた。

振り返るとそこには、初めて目にする芦別岳山頂の姿があった。
芦別岳から続く南側の山々はまだ雨のために霞んでいるが、芦別岳の北側の霧は完全に晴れて、急道コースのある北尾根もその荒々しい姿を現した。

先に降りて行った3人パーティーは、既に霊峰山の頂に立って、そこからの風景に感動の声をあげている。
霊峰山の向こうには、青い空と陽の光に照らされた富良野盆地が広がっていた。


霊峰山
霊峰山とその向こうに見える富良野盆地

そんな天気がこのまま続くとも思えないので、私達も一刻も早くその場所に立とうと、霊峰山への登り返しを息を切らせながら一気に駆け上る。
既に3人パーティーは下山したようで、入れ替わりに男女の二人連れが登ってきていた。
芦別岳の山頂が美しく見える自分達が最初に霊峰山に登ってきた時とは、あまりにも天気が違いすぎ、これから芦別岳山頂に向かう二人がとても羨ましい。
でも、何も見えないままに下山することを思えば、この霊峰山からの眺めを楽しめただけでも幸せである。
まるで生き物の様に、白い雲が流れては消え、また湧きあがる。
こんな風景は、雨上がりの今しか見られないものだろう。

十勝岳連峰の辺りには巨大な積乱雲がかかったままで、そこではまだ雨が降っていそうだ。
このまま一気に晴れるのかと思ったが、やはりそうは甘くなかった。
芦別岳の向こうからは次の雲が流れてきているようだ。
それを見てようやく、下山する気になれた。
そのまま天気が良くなり続けていたら、美しい風景に惹かれて下山できないまま、ずるずるとそこで時間を過ごしていたところである。


芦別岳
霊峰山から眺める芦別岳山頂

芦別岳北尾根
険しい姿の北尾根

富良野盆地
十勝岳連峰の上には入道雲が

霊峰山から登山口までは、標高差がまだ1200m以上もあり、それをひたすら下っていかなければならない。
ただ、登る時は周りの風景が何も見えなかったけれど、下山時はその風景を楽しめるのがまだ救いだった。
空知川や東京大学演習林が見える半面山からは、空知川が東大演習林付近を縫いながら流れているのが良く見えた。
山の上から自分が下ったことのある川を眺めるのもなかなか良いものである。

下りが苦手な私達なので、慎重に下っていたつもりが、濡れて滑りやすくなっていた岩の上で思いっきり尻餅をついてしまう。
今年は、川下り中に2回、岩の上で尻餅をつき、そのダメージが完全に治っていないのに、3回目の岩の上での尻餅である。
泣きそうだった。

歳をとると、たかが尻餅とは笑っていられない。
体の反応が鈍いので、思わぬダメージを受けるのである。
もうこれ以上は絶対に尻餅をつかないぞと思いながら歩いていたのに、もう少しで登山口にたどり着くと言う時に、一番派手な尻餅をついてしまった。
下山中体に電気が走り、転んだ状態のまま暫く動けずにいた。
肘をかなり打ったので、ゆっくりと腕を曲げ伸ばし、骨に異常が無いことを確認する。
転んだ瞬間は嫌な予感がしたけれど、打撲と擦り傷とズボンのお尻が泥だらけになったことと、翌日になって軽いむち打ち症状になった程度で済んだのは幸いだった。

そんなこともあってボロボロになりながら登山口まで降りて来た時には午後3時半になっていた。
登り始めた時から9時間が経過し、我が家の日帰り登山としては最長記録である。
もしも旧道コースを登ったとしたら、プラス2時間以上は余計にかかった筈である。
山頂からの素晴らしい展望を楽しむためにもう一度チャレンジしたい山でもあり、次回は太陽の里キャンプ場に2泊して、旧道コースから登ってみたいものである。

芦別岳登山のアルバム 



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