藻琴山(2016/3/25)

ホワイトアウトも楽し


藻琴山の冬季間の登山口にもなっているハイランド小清水キャンプ場前の駐車スペースに着いた時は、見通しも利かないくらいの雪がもさもさと降り続いていた。

道東の川湯温泉に宿泊するついでに何処かの山に登ろうと考えて、選んだのが藻琴山。
コースタイムも登り1時間40分程度で、温泉に入る前に軽く一汗かくにはちょうど良い山である。

駐車スペース山頂から屈斜路湖を眺めるのを楽しみにしていたが、この天気ではあまり期待できない。
しばらくの間、車の中で途方に暮れていた。
しかし、ホテルのチェックインまではまだ3時間もあるので、他にすることも無く、覚悟を決めて登る準備を始めた。

道路際の駐車スペースから坂を登っていくと直ぐに、平坦な場所にでる。
その辺りがキャンプ場のサイトになるのだろう。
アカエゾマツの森に囲まれ雰囲気の良さそうなキャンプ場だが、我が家はどうしても屈斜路湖畔のキャンプ場に泊まってしまうので、ここを利用する機会はなかなか訪れそうにない。

キャンプ場のバンガローなどは、まだ半ば雪に埋もれたままだ。バーベキューハウスの軒先には立派なツララが並んでいた。
そんな様子を眺めながら森の中へと入っていく。


キャンプ場の中を登る 氷柱
キャンプ場の敷地を通り抜ける バーベキューハウスのツララ

藻琴山を登る昨日はこの辺りでも結構な降雪があったみたいだ。
既に3月も下旬になっているのに、雪景色の森を見られるのはラッキーだった。
おまけに気温も低いので、積もっている雪はパウダーである。
これで天気が良ければ最高なのだが、そこまでの贅沢はいえない。
到着時に降っていた雪が止んでくれただけでもありがたい。

今日のものと思われる新しいスキーのトレースが残っていた。
単独の登山者らしく、既に滑り降りてしまったようだ。
普通は、午後から雪山に登り始めるなんてあり得ないことだが、最近は日没も午後5時半頃となり、藻琴山ならばそれでも十分だと考えていた。

スキーのトレースは沢に沿うように続いていた。
付近は緩やかな傾斜になっているのだが、トレースはその斜面を登ろうとせず、ひたすら沢沿いを歩いていた。
藻琴山は、屈斜路湖カルデラの外輪山を形成する山の一つである。

森の中のサルオガセ それなので、カルデラの縁まで登ってしまえば、後は尾根伝いに藻琴山に歩いていける。
藻琴山への夏道もそんなルートになっていたはずだ。

少しずつ標高を稼ぎながら登った方が最終的には楽になるはずだと思い、一向に標高をあげようとしないトレースに痺れを切らし、ルートを変更した。
そのためにラッセルする事になっても、それ程深い雪ではないので苦にならない。

周りはダケカンバが主体の疎林になっていて、下山は何処を滑っても気持ち良さそうだ。
ただ、斜度が足りないので、滑り重視の人にはこれでは物足りないのだろう。
藻琴山では、山頂から沢に向かって滑り降りる斜面が唯一滑りを楽しめるところらしい。


ダケカンバと抱擁
両手を広げたようなダケカンバを見つけて思わず抱きつくかみさん

尾根の上に屏風岩が見える尾根の上に岩の塊が見えてきた。
「あれが屏風岩ね」とかみさん。
「随分詳しいね」と聞いたら、ガイドブックで十分に下調べをしてきたようだ。
私は藻琴山を完全に甘く見ていたので、ガイドブックの記事さえ読んでいなかった。

その屏風岩が外輪山の縁になる。
ガスが、かかったり晴れたりを繰り返し、この調子では外輪山まで登ってもそこからの眺めは期待できそうにない。
しかし、その予想は見事に外れ、外輪山の縁まで登ってきた瞬間、喚声を上げてしまった。

眼下に広がる屈斜路湖の風景。
まだ結氷している湖面は、たまたま射してきた太陽の光が雲の影を落としているのか、まだら模様になっていた。
天気の良い時に見るより幻想的かもしれない。


雲の晴れ間に屈斜路湖が見えた
凍った湖面に斑模様の影が落ちる

雪庇の発達した尾根そこからは、外輪山の縁に沿って藻琴山の山頂を目指すだけである。
しかし、如何にもカルデラの縁らしく、屈斜路湖側は崖のような急斜面で、その崖に向かって雪庇もできていた。
それも、昨日の雪で新たに発達した雪庇である。

下の様子が全く見えない状態で雪庇の上を歩くのは、気持ち良いものではない。
雪庇の反対側は潅木が密生し、否が応にも、雪庇の発達した細い尾根の上を歩かなければならないのだ。
おまけに次第にガスが濃くなり見通しも利かなくなってきた。

尾根の上は恐ろしいので潅木の中を歩くことにする。
しかし、直ぐに枝が邪魔で前に進めなくなってしまった。
「今日はここまでにしよう」

ホワイトアウトの中を滑るトレッキング気分で登れると思っていた藻琴山で、まさか山頂も踏まずに撤退する事になるとは思ってもいなかった。
簡単に登れる冬山なんて、そうは無いのである。

シールを剥し、潅木の中をズルズルと下りていくと、間もなくしてオープンバーンが現れた。
ガスはますます濃くなり、ここで完全なホワイトアウト状態になる。
しかし、このまま降りていけば必ず沢にぶつかるので、迷う心配はない。
それでも、ホワイトアウトになると、自分の滑っている雪面が何処にあるかも分からなくなって、方向感覚も失われてしまう。

お互いの姿を見失わないように、交代で少しずつ滑り降りる。
樹林帯まで降りてきて、ようやく一息つけた。


藻琴山を滑る
ダケカンバの疎林を滑る

藻琴山を滑る
スプレーが舞い上がる

駐車場まで戻って来た途中で見切りを付けたトレースとも合流。
最初からそのトレースに従っていれば、難なく山頂に立てていたのだろう。
初めて登る山は色々と難しい。

その後は余裕を持って、パウダーを楽しみながら滑り降りていく。
今シーズンは、先日の日高でガリガリ斜面と遭遇しただけで、それ以外は全てパウダーを滑れている。

あっという間に駐車場所まで滑り降りてきた。
結局はスタートしてから2時間ちょっとで戻ってこられたので、時間的にはお手軽な山だった。
それでも冬山の怖さも十分に感じさせられ、なかなか楽しい山行となったのである。

GPSトラック


藻琴山を滑る 藻琴山を滑る


駐車場所12:35 − 13:55山頂手前14:10 - 駐車場所14:40 



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