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労山熊見山(2016/3/20)

ガリガリ君


最高気温が10度を上回るような日が4日も続き、それが春分の日の三連休になった途端に気温が一気に低くなる。
こうなると、山の雪は完全にガリガリであることは想像に難くない。
三連休の天気予報もパッとせず、今年に入ってからずーっと続いていたI山さんとの山通いも、いよいよ途切れる時が来たようだ。

と思っていたのに、それでも無理矢理予定を入れてくるところがI山さんの素敵なところである。
最初に目訓内岳と言っていたときは丁重にお断りしていたが、日勝峠に行き先が変更になったので考え直すことにした。
労山熊見山の南斜面なら、日中に陽が当たれば凍った雪面も解けて少しは柔らかくなるかもしれない。

そうして向かえた日曜日、日勝トンネル入り口駐車場に朝9時の集合時間に間に合うように家を出る。
日高町の市街地では0度だった気温も、山を登るにつれて下がってきて、現地に着く頃には車の外気温計はマイナス6度を表示していた。
駐車場には既にI山さん、N島さん、O川さんの車が停まっていた。
車のドアを開けると、雪混じりの冷たい風が吹きこんできて、あまりの寒さに震え上がる。

車から下りてきたI山さんが口にした言葉を聴いて、私は唖然とした。
「いや〜、こんな酷い天気だとは予想外でした」
天気予報を見ていれば、峠の天気がこんな状態なのは簡単に想像できるはずだ。
先週末まで殆んど毎週、パウダーと良い天気に恵まれてきたのは、I山さんが天気図や天気予報を綿密に研究して場所と日程を決めてくれるおかげだと感謝していた。
しかし、それはどうやら私の思い込みに過ぎなかったようで、I山さんはただ能天気に決めていただけだったようである。

凍った雪の上を登り始める北風が強いので、日勝ピークは止めて、私の考えていたとおりに労山熊見山に登ることになった。
スノーシェルター入り口の駐車スペースに移動し、T津さんの到着を待って登り始める。

予想していたとおり、昨日までの暖気で解けた雪がそのままカチカチに凍り付いていた。
その時のスキーのトレースも、そのまま凍りつき、雪面はデコボコである。
何時もならばトレースの跡を登るのに、今日はトレースを避けながら登る感じだ。

勿論ラッセルする必要もないので、何時もの一列縦隊ではなく、横に並んで話しをしながら登っていける。

時々上空に青空が広がり陽も射してくるけれど、雲の流れも速いので、直ぐにまた太陽の姿を隠してしまう。

折れたダケカンバダケカンバの太い老木が、幹の途中から見事に折れていた。
他にも折れた跡がまだ生々しい倒木が目に付く。
今冬の日勝峠は例年より雪も少ないので、風で折れたものだと思われる。
異常気象の影響で、十年、数十年に一度の大雨や強風が毎年のように記録されるようになり、その影響がここにまで及んでいるのかもしれない。

標高が上がるにしたがって、周りの木々が樹氷に覆われてくる。
陽が射して、気温が上がれば、直ぐに消えてしまいそうな樹氷だけれど、今日の気温ならば消える事は無さそうだ。

ガリガリだった雪面も、登るにしたがって柔らかく感じてきた。
この辺りではそんなに気温も上がらず、雪の表面が軽く凍る程度で済んでいたのだろう。


労山熊見山を登る 労山熊見山を登る
固い雪面の上を登っていく 木々が樹氷に覆われてきた

労山熊見山を登る
背後に国道のシェルターや日勝ピークが見えてくる

労山熊見山を登るおまけに2、3センチ程度の新雪も積もっていた。
スキーアイゼンでもなければ登れないんじゃないかと心配していたのに、これならば楽に登れる。

今日はO川さんが一人で先頭を突っ走っていた。
I山さんは、N島先輩に気をつかっているのか、のんびりペースである。
私はラッセルの必要が無いので、写真を撮るために好きなところを歩き回りながら登っていく。
その間に皆から遅れてしまうので、写真を撮り終わったら急いで追いかける。

それ程ゆっくりとしたペースでもない。
シーズンも終わりに近づくと、皆の登る能力も自然と高まっているのかもしれない。

太陽の光が辺りを照らすと、真っ白な樹氷が更に輝きを増し、本当に美しい風景が広がる。
パウダーを滑れなくても、こんな景色が楽しめるから冬山は止められないのだ。


労山熊見山を登る
樹氷の美しい風景の中を登っていく

労山熊見山を登る 労山熊見山を登る
回りは樹氷で真っ白 木々の枝先まで樹氷に包まれている

十勝平野も見える本来ならば、背後には日勝ピークや沙流岳を初め日高山脈の山々が広がっているのだが、今日は暗い雲に覆われたままだ。
恐らく、日高町や反対側の清水町の上空には素晴らしい青空が広がっているのだろう。
山の上にだけ雲が広がっている感じである。

尾根の上まで出てくると、強風がまともに吹きつけてくる。
今シーズンの山スキーで吹かれた一番強い風かもしれない。
冬山で吹く風としては並みのレベルの風だけれど、これまでが良い条件過ぎたので、その風が身にこたえる。

登り始めてから1時間10分で、強風が吹きつける労山熊見山(標高1,327m)山頂に到着。
1時間ちょっとでこれだけ標高の高いところまで登れるのが、日勝峠周辺の山の良いところである。


樹氷の美しい斜面
この美しい樹氷の中を滑ることができた

労山熊見山を登る 労山熊見山を登る
尾根の上は風が強い 山頂への最後の登り

労山熊見山山頂周りの風景が楽しめるわけでもなく、記念撮影を済ませたら早々に滑り降りる。
山頂から少し滑り降りたところで、そこが東側の沢に降りる斜面である事に気が付いた。
そのまま滑っていくと、分水嶺の反対側に降りることになってしまうのだ。

雪が良ければ、そこを滑って登り返す方法もあるけれど、今日は横向きに立っていてもズルズルと滑り落ちてしまうようなアイスバーンの斜面である。
慌ててそこからトラバースし、尾根を越えて南側の斜面へと移動する。

尾根を越えた先には、開けた沢状の地形が広がっていた。
登ってきたルートにまで戻るには、そこもトラバースする必要があったが、そのまま通り過ぎてしまうには勿体無い斜面だった。
まずはここで1本滑ってから、登り返すことにする。

労山熊見山を滑る例によって、ビデオ班のI山さんが最初にそこを滑り降りていく。
その様子を見ていると、雪の状態も結構良さそうである。
斜度もそれ程急ではないので、こんな斜面では思い切り良く滑ることができる。

I山さんがカメラを構えていた場所から先にも斜面は続いていたので、次は私が最初に滑り降りる。
途中から傾斜が急になり、その先の様子が分からなかったが、気にしないで一気に滑っていく。
ノールを超えた先も、障害物のない斜面が広がっていたので、そこも気持ち良く大きなターンで滑り降りた。
適当なところで止まってカメラを構える。

I山さんが私の横を通り過ぎて、細くなっている沢の底まで滑っていった。
と思ったら、途中で転倒。
沢の底に溜まっていた重たい雪にスキーを取られたようだ。

沢の下で小休止沢の中は風も当たらす暖かだったので、そこで小休止をとる。
相変わらず気温は低いけれど、南東向きの斜面なので、その辺りの雪は解け始めていた。

休憩を終えて登り始めると、私達の後から登ってきたグループが、上の方を滑っていた。
こちらの沢には下りてこないようだ。
パウダーの時ならば「あ〜、ノートラックの斜面を先に滑られる!」と心急くのに、今日の雪ならばそんなことは全く気にならず、心穏やかなまま登っていける。

この登り返しは、登ってきた時の尾根の途中に出れば良いだけなので、標高差は大したことがない。
覚悟を決めて登り返していたN島さんが、拍子抜けしてしまうくらいに、あっさりと尾根まで上がってこられた。


N島先輩の滑り 登り返し
N島先輩の格好良い滑り 登り返しも楽々

それでも少し登りすぎたくらいで、昨シーズンに楽しく滑ることができた斜面は、まだもう少し下だった。
去年の3月初めにそこを滑った時は、最高のパウダーに恵まれ、何度も登り返してはそのパウダーを満喫したのである。

樹氷の中を滑るしかし今日は、カリカリの斜面だった。
最初に滑った沢には、風で飛ばされてきたような雪が若干だけど積もっていた。
ここにも少しは積もっているけれど、殆んど無いのと同じである。
しかも、その下の雪面はまだ固く凍ったまま。

それでもアイスバーンにはなっていないので、何とか普通に滑る事はできる。
樹氷に包まれたダケカンバの間を縫うように滑るのが、なかなか快適である。

何時もはテレマークスキーで優雅なシュプールを描いているO川さんも、この固い雪面ではそんなターンはしていられないようだ。
小刻みなショートターンで滑っていた。
テレマークスキーのショートターンは初めて見せてもらったが、かなりの体力を必要としそうだ。

テレマークのO川さん最後の方に、林間部分が真っ直ぐに開けている場所があった。
その下でI山さんがカメラを手に待ち構えていたので、そのカメラに向かって一気に滑り降りる。
しかし、途中から雪面が更に硬くなってきて、エッジが滑って尻餅をついてしまった。

普通は、標高が下がれば、それにつれて雪も柔らかくなってきそうなものだが、今日はまるでその逆である。
これでは、「もう一度登り返そう」などと言い出す人もなく、素直にそのまま車まで戻ることにする。

登りのルートより一本隣の沢へ降りてきていたので、林間をトラバースして登りのルートへと戻る。
そこは、登り始めた時と全く同じで、スキーのトレースが硬く凍りついたままのデコボコの斜面だった。
滑っていると、スキーの下からガリガリと音が聞こえてくる。
「ガリガリ君だ〜」と言いながら、凍りついた斜面を滑り降りたのである。


I山さんの後ろ姿 T津さんの滑り
I山さんの後ろ姿 T津さんの滑り

ガリガリ君山からの帰り道、I山さんが日高町のコンビニ立ち寄り、そこで買ったガリガリ君の写真をフェイスブックにアップしていたのは、完全に受け狙いの行動であると思われた。

GPSトラック


樹氷
最後に樹氷の写真


駐車場所9:10 − 10:20山頂10:35 - 10:50沢の下11:10 - 11:20登り返し11:30 - 駐車場所11:55 



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