三段山(2016/3/13)

ラストパウダーか?


富良野盆地の上に浮かぶ十勝連峰週の前半は気温も高く雨も降って、そろそろパウダーシーズンも終わりに近いことを実感させられる。
それでも標高の高い山に行けば、まだパウダーを楽しめるかもしれない。
そう考えて、今週末は十勝岳連峰の三段山に登る事にした。

先週末のタケノコ山に続いて、再び富良野経由のルートで現地に向かう。
今回も朝から青空が広がり、放射冷却で富良野盆地の気温はマイナス20度近くまで下がっていた。
木々は樹氷で真っ白になり、逆転層ができて地上は霞に覆われる。
そしてその霞の上に十勝岳連峰や夕張山地の富良野西岳のキリリとした姿が浮かび上がる。
気温が下がった時の富良野の風景は本当に美しい。


芦別岳と富良野西岳
富良野西岳と芦別岳の姿が最高に美しい

三段山に登ることに決めてから、十勝岳陵雲閣のフェイスブックで山の様子を毎日チェックしていたが、一昨日辺りにまとまった雪が降ったようである。
しかしそれも山の上だけの話しみたいで、平地の道路はアスファルトも出て乾燥していた。

噴煙を上げる前十勝それが、山に向かうに従って次第に雪深くなってくる。
バーデンかみふらの前の路上は、富良野岳に登るスキーヤーの車で一杯である。
そして、張り切りすぎて集合時間の午前9時半より1時間も早く着いてしまったのに、白銀荘前の駐車場は既に満車に近かった。

他のメンバーの到着を待っている間にも大人数のパーティーが続々と山に入っていく。
さすがに今日はノートラックの斜面を滑るのは無理そうである。

今回のメンバーは、今年になってから週末毎に顔を合わせているI山さん。
I山さんと私達夫婦の3人は完全な固定メンバーとなり、そこに毎回違うゲストが加わる感じである。
今回のゲストはY須賀大先輩とO川さんだ。

白銀荘に登山届けを出して9時50分に登り始める。
何となく私が先頭になってしまった。
先頭と言っても、既に立派なトレースがあるので、ペースメーカーみたいなものである。
最年長のY須賀さんに気を使って、ゆっくりとしたペースで登っていく。

1段目を登るルート1段目の壁まで登ってきた。
今日はボーダーの方が多いみたいで、スノーシューのトレースが1段目の壁を直登していた。
私はスキーのトレースに従って、壁を斜めに登っていく。
ところが後ろから付いてきていたY須賀さんが、何を血迷ったのか、スノーシューのトレースの方を直登し始めたのである。
それに釣られる様に、全員が直登ルートを登り始めた。

それに負けたくはないので、登るスピードを一気に速める。
直登組の方では、やっぱりY須賀さんが、スキーがスリップして苦労していた。
それをかみさんが追い越し、スリップしないようにトレースから外れて直登していく。
壁の上に着いたのは、かみさんと私とほぼ同時だった。
結局、Y須賀さんは大きく遅れて、一番最後に登ってきたのである。
Y須賀さんのプライドを傷つけないように、「どうして直登なんかしようと思ったのですか?」との質問は心の中にしまっておくことにした。


一段目を直登 一段目を登りきる
Y須賀さんを先頭に直登する4人 Y須賀さんの姿は、まだ遥か下だ

小休止の後、再び私が先頭で登り始める。
アカエゾマツの木々の間から、隣の前十勝が見えるようになってきた。
そちらにも多くの登山者の姿が、真っ白な風景の中に黒いゴマ粒のように見えていた。

2段目を回り込むように登るアカエゾマツの林を抜けると2段目の壁が姿を見せる。
今日のトレースは、その壁をトラバースしながら大きく回りこむように延びていた。
登る傾斜が緩いのは良かったが、スノーシューで歩いた跡なので斜めになっているのである。
スキーではそこは登り難いので、新たにルートを切り開くことにする。

2、30センチの新雪が積もっているけれど、その下はカリカリに固まった雪面である。
そんな斜面をトラバースしていると、時々ずるりと横滑りしてしまう。
登るのに夢中になっていると、何時の間にか後続メンバーと大きく離れていた。
私の後から付いてくるのはO川さん。
何時もは先頭で登るI山さんは、今日は美しい風景の撮影に余念が無く、遅れ気味だ。
かみさんは、大きく遅れているY須賀さんの介護をしているようだ。


2段目を登る
2段目を登る時に目印となるダケカンバ、背後には旭岳が見える

2段目を登りきったところで皆を待っていると、O川さんが私を追い抜いて先へ行ってしまう。
何処まで行くのかと思ったら、もっと上で休憩している若い女性グループの方に向かって、見えない尻尾を振り振りしながら近づいていった。
I山さんが追いついてきて、かみさんも途中でY須賀さんを見捨てて一人で登ってきた。

前十勝
前十勝の山頂が直ぐ隣に見えている。
そこからは三段山の山頂も一望できる。
その斜面には既に多くのトラックが刻まれ、これから山頂を目指す登山者の姿も沢山確認できる。

右手に望める富良野岳にも無数のトラックが刻まれている。
トラックの中には崖のような斜面を降りているものもあって、「あんなところを滑るんだ!」と、呆れながら見入っていた。

汗が冷えてくる頃になって、ようやくY須賀さんが追いついてきた。
「皆、登るのが早過ぎるし、途中で休もうとしないし」
一段目の壁までは気を使ってゆっくり登っていたけれど、その壁を登る時にスピードアップしたのが拙かったようだ。
私の場合、車の運転もそうだけれど、一度スピードを上げてしまうと、その後はゆっくり走られなくなる性質なのである。


三段山山頂が見える
三段山山頂が目の前に見える

富良野岳
富良野岳の斜面にも無数のトラックが刻まれている

Y須賀さんに山頂を目指す気持ちは全く無さそうで、I山さんも滑る事しか考えていないので、尾根の途中まで登って1本隣の沢を滑る事になった。
山頂へと続く登りのトレースから外れて、私達のパーティーだけが別の方向へと向かう。
私は今度は一番最後尾から付いていくことにした。

1本のシュプールの横を登っていく沢を1本越えて目指す斜面にはスキーのシュプールが1本だけ刻まれていて遠くからでも良く目立っている。
別方向から現れた大人数のパーティーが、先にそこを登っていったので、私達もそのトレースを使わせてもらう。

時々、何も無さそうな雪面の下にハイマツの枝が隠れていることがある。
滑っている時にこんな枝に引っ掛かりでもしたら堪ったものではない。

私の直ぐ前を登っているY須賀さんが、その前の3人に向かって「おーい、早過ぎるぞー」と声をかける。
私は最後尾なのでY須賀さんのペースに合わせて登るしかないが、そのペースでは全く汗もかかないので身体が冷えてしまいそうだ。

尾根の上まで登ってきた先で大人数のパーティーを追い越す。
そのパーティーはここから、1本のシュプールが刻まれていた斜面の方に滑り降りるようだ。


先頭を登るI山さん 遅れ気味の二人
I山さんが先頭でグイグイと登っていく 遅れがちな60代の二人

今回はここが終点私達はそのまま尾根を登り続けて、安政火口へと切り落ちる崖の上まで出てきた。
先に上に達したかみさんが喚声を上げる。

その後を追って崖の上に出ると、最初に目に飛び込んできたのは富良野岳の姿である。
そして、切れ落ちた崖の向こうには上ホロカメットク山や三峰山。
全ての山が険しい崖面をこちらに見せている。

大昔の激しい噴火が、それらの山の半分を削り取ったのだろう。
夏にもここまで登ってきたことはあるけれど、それらの崖が白一色に染まる冬の美しさは格別である。


爆裂火口の縁から富良野岳を眺める
爆裂火口の縁まで登ってくると富良野岳が姿を現した

ファーストトラックを刻むI山さん私達の前にあれだけ沢山のパーティーが入っていたのに、目の前にはノートラックの斜面が広がっていた。
滑る場所は沢山有るので、上手い具合に分散されるのだろう。
もしもこれが先週登ったタケノコ山程度の斜面しか無かったとしたら、そこは既に圧雪状態になっていたはずだ。

まずはI山さんがビデオ撮影のためにそこにファーストトラックを刻む。
沢地形なので、吹き溜まった重たい雪かと思ったが、予想外のサラサラパウダーだった。
標高1500mまで上がってくれば、3月に入ってもこんなパウダースノーを滑れるのである。

後ろから陽を浴びるので、自分の影を見ながら滑ることができる。
何とも良い気分だ。


青空とシュプール
青空を背景に白い雪面にシュプールを描く

パウダーを滑る パウダーを滑る
雪面に影がくっきりと映る スプレーが舞い上がる

三段山西の谷を滑る西の谷と呼ばれる沢まで降りてくると、さすがにそこには無数のトラックが刻まれていた。
雪が軽いので、それは大して気にしないで滑れる。
しかし、雪面が荒れていると何処に障害物が隠れているのかが良く分からない。
ハイマツこそ無いものの、パウダースノーの下に隠れている硬い雪面が、時々下から突き上げてくるのだ。

前を滑っていたY須賀さんが、それでバランスを崩して転倒。
危なそうなので、横の斜面の上に逃げようとしたが、そこは余計に雪の付きが悪くて、カリカリの雪にスキーを取られる。
諦めて沢の底を滑る事にした。

最後の急斜面で、I山さんが下からビデオカメラを持って待ち構えていた。
カリカリの雪面のことは気にしないで、思い切って斜面の中に飛び込んでいく。
今シーズンで一番の滑りができた気がして、最高に気持ちが良かった。

山には雲がかかり始めていた西の谷を滑り終わったとは、1段目の壁に向かってトラバースしていく。
後ろを振り返ると、山頂付近は雲に隠れ始めていた。
天気予報では午後から曇るとのことだったので、ちょうど良いタイミングで降りてこられたようだ。

その後は白銀荘まで一気に滑り降りる。
これだけ日差しが強いのに、下まで降りてきてもまだ雪は腐っていなかった。
それでも明日からは気温も一気に上がってきそうなので、パウダーを滑るのも今回が最後になりそうである。

この後、私達は十勝岳温泉陵雲閣に一泊。
雪山を眺めながら露天風呂に浸かり、雪山を眺めながら部屋でビールを飲む贅沢な時間を過ごす。
そして翌朝も、美しいモルゲンロートに、光の当たり具合で刻々と様子を変える雪山の風景に見惚れてから、札幌への帰途に付いたのである。
最後まで楽しい十勝岳連峰の山行だった。

GPSトラック


富良野岳のモルゲンロート
富良野岳の山頂がモルゲンロートに染まる(部屋の窓から)

光で表情を変える山々
光の当たり具合で表情を変える山々(部屋の窓から)


白銀荘9:50 − 12:15爆裂火口の縁12:35 - 白銀荘13:20 



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