目国内岳(2016/1/10)

未完成のスノーブリッジ


新見温泉が今シーズンで廃業するので「目国内岳に登って新見温泉に入りましょう」との誘いがあった。
しかし、当日の天気予報は一日中雪である。
気乗りがしなかったけれど、3連休に家でゴロゴロしているのも勿体無いし、連休中日の一日くらいは山に行こうと参加を決意する。

スタート時は青空も現地の集合時間は8時半なので、まだ辺りが 真っ暗な6時前に家を出る。
途中で雪に降られることもなく現地に到着。
準備をしている間に青空さえものぞいてきた。
しかし、その青空がずーっと続くなんて、これっぽっちも期待していなかった。

新見温泉ホテルに泊まっていた人達のツアーが先に登っていく。
S藤さんが話しかけたところ、スウェーデンから来ているとのこと。
そのトレースを使わせてもらって私達も登り始める。

それを待っていたように雪が降り始めた。
それも半端ではない降り方である。

以前の私達だったら、こんな天気の時に山に登るなんて考えられない事だった。
頂上に立っても展望が利かないのならば、登る意味がないのである。
それが最近はパウダースノーを滑る楽しみを知ってしまったので、こんな天気でも登る意味ができたのだ。

雪の降りしきる林道を歩く雪は少し小降りになってきた。
先発のツアーは林道上をそのまま登っていたが、私達は862mポコを目指していた。
私も一昨年の4月に目国内岳に初めて登ったが、そこから新見の沢川に降りてくる斜面はなかなか楽しいのである。
今日の天気では山頂を目指すのは厳しそうなので、その斜面を登り返して楽しむのも良さそうだ。

新見の沢川を渡るために、林道から外れて、沢に向かって滑り降りる。
最初の小さな沢は危なっかしいスノーブリッジで何とか渡れたが、その先の本流にはスノーブリッジができていなかった。
積雪はもう十分にあるのだが、それが繋がっていないのである。
対岸にはスキーで歩いた跡が見えているのに、沢を渡ったような跡は何処にもない。

最初のブリッジは渡れたけれど先に登っていったツアーのガイドの人にスノーブリッジの事を聞いたときには、あっさりと「大丈夫ですよ」との返事が返ってきていたので、誰もこんな事態は考えていなかった。
私が去年の4月末に登った時は、もっと下流側に一箇所だけスノーブリッジが残っていたので、そこの様子を偵察しにいったが、そこにもスノーブリッジはできていなかった。

沢を渡るのは諦めて、再び林道まで登り返す。
ここで40分も時間をロスしてしまった。
今日は天気が悪いのでなるべく汗をかかないように登ろうとしていたのに、スノーブリッジの偵察と林道への急な登り返しで一気に汗をかいてしまった。


できかけのスノーブリッジ
さすがにこのスノーブリッジは危なくて渡れない

しっかりしたスノーブリッジ先行パーティーのトレースは林道をショートカットするために途中から林道を離れ、その先で小さな沢を渡っていた。
多分、ガイドの方が言っていたスノーブリッジは、この沢を渡るものだったようだ。

しかし、このルートは前目国内岳を目指すものである。
私も一度、同じようなルートで前目国内岳に登った事がある。
そこから目国内岳を目指すこともできるが、楽しみにしていた862mポコからの斜面は全く別方向になってしまうのだ。
不本意だけど、ここを登っていくしか選択肢はなかった。

この沢を越えて向かいの斜面へダケカンバの疎林の中を緩やかに登っていく。
雰囲気は良いけれど、滑るには物足りない斜度だ。

雪は強まったり弱まったりを繰り返す。
途中でようやく日が差してきた。
勿論、それが一瞬である事は分かっている。

トレースが二手に分かれていた。
一方は普通に登り続けていて、もう一方は沢を越えてその先のやや急な斜面を登っている。
どちらから登っても、最後は多分同じ場所に辿り着くはずである。
少しでも帰りの滑りが楽しめそうな急斜面の方を登る事にする。


沢を越える
つかの間の陽射しだった

雪が降る中を登っていく再び強く降り始めた雪の中を黙々と登っていく。
森林限界を抜けて、周りは潅木が多くなってきた。
それとともに、風当たりも強くなる。
後はここを何処まで登るかだ。

多分、前目国内岳の山頂は直ぐ近くに見えているはずだが、その姿は雲の中で確認できない。
I上さんが「もう少し進めば、樹木が疎らで谷に向かって滑り降りられる場所があったはず」と言うので、そこを滑ることにした。
I上さんによると「多少のアップダウンはあるけれど、そのまま下まで降りられる」との事である。
もしもダメならば登り返せば良いだけだ。

適当な場所を見つけてシールを剥す。
それをザックの中に入れ、フリースの帽子からヘルメットに被り直し、それにGoProを取り付け、ジャケットの開いていたファスナーを閉め、靴のバックルも締めなおし、最後にゴーグルをかけると上下逆さまだった事に気が付いてもう一度かけ直す。
雪降る中での滑走準備雪が降り、風も強く吹いている中でのそんな準備作業は、はっきり言って苦手である。
気が付くと他のメンバーは既に滑降準備を整えていたので余計に焦ってしまう。

上の方から「キャッホー」と喚声が聞こえてきた。
別のグループがそこを滑っているらしい。
雪に霞んでその姿は見えないが、今日の雪ならばそんな喚声を上げてしまうのも良く分かる。

少しだけ陽も射してきていた。
I上さんが堪りかねたように真っ先に飛び出していく。
皆もその後に続く。

スキーの板が宙に浮いているような感覚である。自分の顔にまで雪煙がかかる。
私も思わず「キャッホー」と叫んでしまった。

そんな幸せな時間はあっという間に終わってしまう。
Y須賀さんが「これで200m近くは下っているかな」と呟いた。そんなに滑った実感は全然無かった。


パウダースノーを滑る
楽しい滑りは一瞬で終わってしまう

これでは全然満足できない。
周りには良い斜面が沢山見えているので、当然のように登り返すこととなる。

2本目の滑り目国内岳方向の斜面が傾斜もありそうなので、そこを目指して登っていく。
標高差にして100mほど登ったところでシールを剥す。今回も真っ先にI上さんが飛び出していき、I山さんがその後に続く。

私もその後を追ったが、既に二人の姿は見えなくなっていた。
樹木が混み合ってきたので一旦止まって後続メンバーを待つ。
再び雪の降り方が強まり、離れると人の姿も見えなくなるくらいだ。

1本目に滑った斜面より樹木が多くて、あまり気持ち良くは滑られない。
ようやく二人に追いついた。
後は、この沢地形を何処まで滑り降りられるかが問題だ。
その辺りには他の人が滑った跡も残っていたので、I上さんは「この跡を追っていけば下まで降りられるから大丈夫」と言っていた。
I上さんは、春スキーで一度この沢を滑った事があり、多少のアップダウンはあるけれど登り返すことなく降りられるとの事だ。


かみさんの滑り
雪が激しく降る中を滑るかみさん

私は、誰が滑った跡かも分からないそのトレースを完全に信じる気にはなれなかったけれど、I上さんに付いて行くしかなかった。
そこから少し下った先に、距離は短いけれど良い斜面があった。
そこをまたI上さんとI山さんが一気に滑り降りていく。

シールを付けてトラバース「ええっ?本当にそこまで下っちゃって良いの?」
不安になって、上から様子を眺めていたら、先に降りていったメンバーがきょろきょろと何かを探しているみたいだ。
何をしているのかと思って降りていくと、そこで先行者のトレースが無くなっているらしい。

結局そのトレースは、そのまま下まで滑り降りるのではなく、そこからまた登り返していたのである。
I上さんのあやふやな記憶だけを頼りにこのまま下り続けるのは、さすがにリスクが大きい。

GPSを確認すると、そこから少し高度を上げながらトラバースしていけば、途中で沢を渡ったところまで戻る事ができそうだ。
ここにきてようやく、シールを付けて元の場所に戻るのが結果的に楽だとの結論になる。

巨木の横を滑り降りるこんな時、自分のいる場所が地図上に表示されるGPSは本当に役に立つ。
500m程トラバースしていくと、どんぴしゃりで沢を渡ったトレースにぶつかったのである。

その後は新見温泉まで一気に滑り降りる。
一気にと言っても、林間部分は樹木が多く、林道に出てからは傾斜が緩いのでストックで突きながらでなければ前に進まず、気持ち良くは滑られない。
苦労して登った割には楽しむ部分の少ない目国内岳となってしまった。
まあ、シーズン中はこんな時もあるのである。

GPSトラック) 



新見温泉8:50 - 滑走開始地点11:30 − 2度目の滑走終了13:00 - 新見温泉14:10 



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