喜茂別岳(2015/3/29)

二人のデッドヒート


カヌークラブの仲間で日曜日に何処かの山に登ろうとの話になり、漁岳、岩内岳の案も出たが、最終的に喜茂別岳に決まった。
喜茂別岳の隣には小喜茂別岳があり、山スキーを始めたばかりの頃、今から8年前の2月にその山に登ったことがあった。
その山頂から直ぐ隣に見える真っ白な山の姿を見て、いつかはそこに登ってみたいと考えていたのが喜茂別岳である。

駐車スペースが狭いとのことで、午前8寺に豊滝除雪ステーションの駐車場に集まり、そこから6名で車2台に分乗して、目的地へと向かう。
私達が小喜茂別岳に登った時は、道路沿いに広い駐車スペースがあったのだが、その後の道路工事でそれが無くなり、現在はそこから500mほど喜茂別寄りに新しい駐車場所ができているのだ。
喜茂別岳も小喜茂別岳も登山口は同じ場所であり、歩道のない交通量の多い国道を500mも歩くのが嫌だったので、今まで登る機会が無かったのである。

急斜面のトラバースところが、新しい駐車場から直接喜茂別岳を目指すルートもあるらしく、私達も今回はそのルートで登ることにした。
駐車場の後ろの小高い山の斜面に取り付き、そのまま喜茂別川沿いの急斜面をトラバースしていく。
私達だけだったとしたら、そこをトラバースするのは躊躇っていたかもしれないような急斜面を、恐る恐る通過する。

その後は、喜茂別岳山頂へ繋がる南西尾根を目指すのだが、このルートで登ったことがあるメンバーは誰もいなかった。
それでも、インターネットからダウンロードしたトラックログを自分のGPSに入れてあるので、それが参考になる。
便利な世の中になったものである。

平らな喜茂別岳が前方に見える少し登ると、早くも目指す喜茂別岳の姿が前方に見えてきた。
南側から見る喜茂別岳は、皿を伏せたような台地状の形をしている。
その様子からは簡単に登れそうな気もするが、地形図を見ると南側の等高線はかなり狭まっていて、見かけとは違うことが分かる。

右手には8年前に登った小喜茂別岳の姿が見えている。
北側は切り立った崖になっているが、南側はなだらかな傾斜が続いている。
今となっては滑りを楽しむにはちょっと物足りない傾斜だが、その頃はそれで十分に楽しめていた。

地形図には載っていない林道を時々横切る。
雪の上に頭を出しているフクロウやクマの道路標識の様子からは、最近作られた林道であることが分かる。


小喜茂別岳が見える 雪に埋もれた林道
隣に小喜茂別岳が見えている 最近の林道で良く見られる標識

先頭集団が先を登る先頭で登るのはI山さん、その後にかみさん、marioさんが続き、先頭集団を形成していた。
その集団から大きく遅れてO川さん、T津さん、私が付いていく。
I山さんは昨日、一人で樽前山に登っていて、相当疲れているはずなのに、そんな疲れは全く感じさせないペースで登っていく。

樽前山までの通行止めになったままの車道では、スキーを背負って自転車で移動し、しかも車道には雪がまだ残っていてタイヤがスリップし、仕方なく自転車を押して歩くと言う、何だか訳の分からないことをしていたらしい。
普通ならばそれで体力を使い果たして、翌日に更に別の山に登ろう何て考えることもできないだろう。

ただでさえ気温が高くて汗をかいているのに、そのI山さんのペースに付いていけば、半袖のTシャツ姿になっても
暑くてたまらなそうだ。

ミズナラの巨木開けた伐採地を通り過ぎて森の中へと入っていく。
所々でミズナラの巨木が、青空に向かって大きく枝を伸ばしていた。
登山中の楽しみの一つが、こんな巨木に出会えることである。
この辺りの森は、伐採後に新たに伸びてきた2次林なのだが、何らかの理由で伐採を免れた樹木が、こうして残っているのだろう。
こんな巨木があるか無いかで、そこの自然の深みが全く違ったものに感じられる。

巨木の下で一休みしていると、遠くの方からけたたましいエンジン音が近づいてきた。
スノーモービルでの遊びを否定する気は無いが、この静かな山の中でエンジン音を響かせ排気ガスをまき散らしながら走り回るスノーモービルとは出会いたくないのだけは確かである。
隣の林道を次々にスノーモービルが通り過ぎていく。
せめてもう少し、エンジン音の静かなスノーモービルを開発できないものなのだろうか。


巨木 巨木
巨木に見惚れる それぞれが特徴的な姿の巨木

急斜面を登る三人次第に傾斜がきつくなってくる。
ダケカンバの疎林の中を縫いながら南西尾根の上を目指す。
相変わらずI山さんのペースは落ちず、しかも標高を稼ぐために急角度で登っていく。
その後ろにピタリと付けるかみさん。
そこからmarioさんが堪らずに脱落し、一人別ルートで傾斜を緩くして登り始める。

かみさんが後で、「I山さんは全然呼吸が乱れないから大したものだわ」と話していた。
直ぐ後ろに付いて、I山さんの様子を冷静に観察しながら登っていたらしい。
当然、自分の呼吸も乱れているわけは無く、完全に上から目線のものの言い様である。
本気で登らせたらどちらが早いのか、一度この二人を勝負させてみたいものだ。


遅れたmarioさん 遅れたO川さん
marioさんが先頭集団から脱落 遅れたO川さん、T津さんの姿は見えない

尾根の上に出た尾根の上に出ると、喜茂別岳の南側斜面が目の前に広がっていた。
I山さんの計画だと、その南斜面を滑り降りることになっていたが、かなりの急斜面で、おまけに上部にできた雪庇が崩れてそこを転がり落ちた跡も見えている。
できれば南斜面は避けたいところである。

尾根の上を更に登っていくと、羊蹄山の美しい姿が見えてきた。
春霞のためにやや霞み気味だが、それでも一幅の絵画のような美しさである。

皆でその姿にしばし見とれてしまう。


羊蹄山
霞んでるけど美しい羊蹄山

南西尾根の1062ピークは、GPSに登録してあるトラックデータではその西側を巻いていた。
I山さんは真っ直ぐにそのピークに向かって登っていたが、少しくらい登りすぎたところで大した支障も無いので、気にしないで後を付いていく。

1062ピークから滑り降りるしかし、そのピークの先は突然、切れ落ちたような急斜面に変わっていた。
一人ずつ、慎重にそこを滑り降りる。
滑っている時は大して気にならなかったが、下まで降りてからそこを振り返ると、直ぐ横が崖になっていたので驚いた。
もしもそれが分かっていれば、恐ろしくて足がすくんでいたかもしれない。

喜茂別岳の頂上までは、樹木が殆ど生えていない真っ白な尾根の上を歩いて、あと少しである。
しかし、このまま登っては待ち合わせ時間よりも早く山頂に着きすぎてしまうので、ここで昼の休憩を取ることにした。
同じクラブのI田さんが、12時45分にグライダーで飛んできて、上空から写真を撮ってくれることになっていたのである。
1月に羊蹄山に登ったときも同じ計画をしていたのだが、その時は雲が多く、他の登山者も沢山いたので、私達の姿を見つけてもらうことはできずに終わっていた。
今日は青空が広がり、他の登山者も単独で上っている人が2、3人いる程度なので、直ぐに気が付いてくれそうだ。


1062ピーク ここで昼食
1062ピークを振り返るとちょっとびびった 登頂前に昼食タイム

白と青の世界昼食を終えて再び登り始める。
そこから先は、白い雪と青い空の2色だけの世界となる。
今日の天気予報は晴れのち曇り。
その予報どおり、周辺からは雲が広がってきていたが、上空にはまだ青空が広がっていた。

そして予定通り、12時45分に山頂到着。
コースタイム3時間30分のところを、休憩時間も含めて3時間45分で登ってきたので、まずまずのペースである。
山頂に立つと、今まで全く見えていなかった中岳と無意根山の真っ白な姿が目に飛び込んできて、なかなか衝撃的な風景である。

風がかなり強いので、その風を避けられる場所まで降りて滑走準備をする。
記念撮影を済ませて、後はI田さんの乗るグライダーの到着を待つだけである。


山頂までもう少し 喜茂別岳山頂
右に見えるのが喜茂別岳山頂 左に微かに羊蹄山も写っている

喜茂別岳山頂から見える中岳と無意根山
シールを剥がして滑走準備中、背後に中岳と無意根山の姿が

しかし、待てど暮せどなかなかその姿が見えてこない。
札幌方面は雲に覆われていたので、天候悪化で引き返したとか、途中で墜落したとか、皆は勝手な憶測を始める。

風が強くて体が冷えてきたので、たまらずに途中まで滑り降りる。
I田さん到着南斜面はさすがに急すぎるので、南東尾根を滑ることにした。
その途中でようやく、上空からエンジン音が聞こえてきた。
空を見上げると、雲間にグライダーの姿が小さく見えている。
飛行高度は思っていたより高い。高度をあまり下げることはできない規制等があるのだろう。

一度通り過ぎた後、旋回して再び戻ってきた頃、滑っているところを写してもらおうと言ってT津さん、I山さんが目の前の広大な斜面に向かって飛び出していった。
皆もその後に続く。
「本当に写真を撮ってくれてるのかな〜」と思いながら、何となく上空のカメラを意識して斜面を滑るのも変な感じである。


喜茂別岳空撮
上空を意識しながら滑り降りる

グライダーも去っていき、その後は平常心で滑ることができる。
オープンバーンが終わって林間斜面に入っていくと、急に雪質が変わった気がした。
スキーが全く滑らないのである。
これが俗に言う「ストップ雪」なのだろう。

ストップ雪に悪戦苦闘そんなストップ雪にスキーを取られて転倒。
何時も華麗なテレマークターンを決めるO川さんも、頭から雪の中に突っ込んでいた。
雪は、黒い汚れが目立ち、これも中国から飛んでくるPM2.5の影響なのだろうか。

次第に樹木も混んできて、快適に滑れる斜面がなくなってきた。
GPSに登録してあるトラックはそのまま尾根の上に続いているが、その辺りは樹木が密集していた。
一方、沢に下りる斜面は適度な疎林である。
人間という生き物は、概して目の前の誘惑には弱いものである。
何とかなるだろうと自分に都合の良いように考えて、沢に向かって滑り降りる。

その結果は直ぐにハッキリとした。
沢の底は深く切れ込み、とてもその上を滑り降りれるような状況ではなかったのである。
シールを貼って尾根の上に登り返すのも面倒なので、沢沿いにトラバースしながら進むことにした。
滑る場所がなくなったそうすれば、尾根の標高も次第に下がってくるので、最後には登り返すことなく尾根の上に出ることができる。
計算上はそうなっても、自然の地形は計算どおりにはさせてくれないのだ。
やっと、尾根の上に戻れた頃には皆汗だくになっていた。

その後も状況に大きな変化は無く、国道に出るまで修行が続いた。
私達が登ってきた南西尾根は、比較的樹木も少なく、滑り降りるのならばそちらの方が楽だったはずである。
ネットで調べても南西尾根を登って、下山も南西尾根を滑り降りるのが一般的である。
でもそれだと、山頂からの大斜面を滑り降りる楽しみがなくなってしまう。
この辺の選択は個人の好みの問題だろう。

ちょっと危ないスノーブリッジ最後に、解けかかったスノーブリッジを冷や冷やしながら一人ずつ渡って、ようやく国道まで下りてこられた。
その後は、スキーを担いで500mの車道歩き。
まあ、山スキーは大体がこんなもので、快適に滑れる斜面なんてごく僅かしかないのが普通である。
滑りだけを楽しみたいのならば、ニセコやキロロへ行けばいいのだ。
自分達でルートを考えながら山に登って、山を下りる。
これが山スキーの面白いところだと思う。

肉体的にはきつかったけれど、十分に楽しむことができた喜茂別岳の山行だった。



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