989峰・992峰(2015/2/7)

執念の青空


土曜日は、I山さんの誘いでキロロの992峰へ行くことになった。
この誘いに乗ったのは、昨日大黒山を滑った私達夫婦とS藤さん、それに翌日に大滝国際スキーマラソンに出場予定のO川さんである。

朝日に照らされる銭函天狗山を眺めながら車を走らせる。
今日の天気予報は曇りだったはずなのに、何故か天気が良い。
昨日は、晴れの天気予報を信じた私とS藤さんは、わざわざ休みを取って大黒山に登ったのに、天気は曇り。
なかなか思うようにはなってくれない。

そんな複雑な思いを抱いてキロロへ向かっていると、毛無峠を越えた途端に天気の様相ががらりと変わり、周辺は暗い雲に覆われてしまった。
おまけに、スキー場に着く頃には、雪も激しく降り始める。
予報は曇りでも、せいぜい高曇り程度だろうと予想していたのが、今日もまたお天気の神様に見放されたようだ。

執念の青空集合時間より30分以上も早くスキー場に着いてしまった。
他のメンバーを待っている間に次第に天気が回復してくる。
そしてI山さんがやって来た頃には青空も広がってきていた。

まるでI山さんがこの青空を連れてきたかのようだ。
平日に休んでスキーに行こうなんて、よこしまな考えには囚われず、毎日夜遅くまで地道に仕事を続けて週末を迎えた人にこそ、お天気の神様はご褒美をくれるのである。
私もS藤さんも、今日はI山さんのおこぼれに与れそうだ。

道路のようなトレーススキー場のゲレンデの脇から登り始める。
そこには、まるで道路のようなトレースができていた。
平日にはそんなに人も入っていないだろうと予想していたが、甘かったようだ。
ガイドツアーも結構入っているのだろう。

しかし、そのトレースは殆どが1107峰へ向かうもので、途中から分かれる992峰へのトレースは急に細くなり、うっすらと雪も被っていた。
ここでの人気はやっぱり、セブンイレブンの愛称でも呼ばれる1107峰なのだろう。

沢の中を登っていくと、太陽に照らされて真っ白に輝く992峰の姿が真正面に見えていた。
そんな様子を目にすると気が逸ってくる。


992峰が目の前に見える
992峰の姿を見て気が逸る

先頭を歩いていたI山さんが、何時の間にか下りのトレースに迷い込んでいた。
登りのトレースと違って、好き勝手に滑り降りてきた跡である下りのトレースは、まともに登れないような場所も通っているので、その跡を登るのはちょっと苦労させられる。
途中で諦めて、本来のトレースに戻ることにした。

美しい風景の中を登るS藤さんの姿が見えないので少し待っていると、S藤さんは何時の間にか本来の登りのトレースを見つけて、そちらを登っていたのである。
私達もそちらに合流しようと登っていくが、何だかそのトレースの向かっている方向が少しおかしかった。
明らかに992峰とは別の方向へ続いているのである。

この辺りにはバックカントリースキーのフィールドとして、1107峰や992峰の他に、989峰とか色々な山があるらしい。
何処に向かっているトレースなのか分からないので、そちらに合流するのは止めて、そのまま992峰の方向に斜面をトラバースしていくことにした。
S藤さんはそのトレースの先の様子を見に行ったようなので、声をかけてから先に進む。

GPSを確認すると、私たちがトラバースしているのは992峰の隣にある989峰の斜面だった
二つの山の間は沢になっているので、ここで登りすぎてしまうと、結局はもう一度沢に下りることになってしまうので、同じ高さを保ったままでトラバースする。
ここから方向転換最後にS藤さんを確認したとき、そこをやや上に向かっていたのが気になったが、声をかけても届かないくらいに距離が開いてしまったので、そのまま進み続ける。

二つの山の間にはしっかりとした登りのトレースがあって、上手い具合にそれに合流することができた。
今回と同じようなメンバーで正月にも1107峰と992峰に登っていたが、このトレースはその時とは全く違うルートで992峰を目指しているようである。
他に992峰への登りのトレースは見当たらないので、I山さんの後に続いてそのトレースの中を登っていく。

先頭のI山さんが途中でそのトレースから外れ、989峰へ向かって登り始めた。
途中で逸れてしまったS藤さんと合流するためには、S藤さんが登っていった方向に向かえば良いと考えたみたいだ。
「えっ?何の打ち合わせもしていないのに、そんなに上手くいくのかな〜?」と思いながら、その後に続いた。

989峰の林間斜面989峰のこの斜面、ダケカンバの疎林で、なかなか気持ち良く滑れそうなところである。
おまけに雪質も最高だった。
昨日登った大黒山の雪質も良かったけれど、こちらの方は、昨夜降ったばかりの様なパウダースノーである。
最近5日間程度は新たな雪は殆ど降っていないはずなのに、これだけの状態が維持されているとは驚きである。

相変わらずS藤さんの姿が全然見えてこないので、途中で電話をかけてみる。
すると、そのまま登ると違う山に行ってしまうので、沢まで下りてから992峰へ登り返しているところだと言う。
とりあえずは、お互いに別々の山に登ってから、何処かで合流することになった。

この付近の山は、スキー場のゲレンデが見えるところならば大体は電話も通じるので、こんな時は便利である。
それにしても、もしも電話が通じなかったらどうしていたのだろうと思ってしまう。

989峰に向かって登るこれまでも、カヌークラブの人たちと一緒に遊んでいて感じるのは、私も含めて団体行動が苦手な人が多いということである。
カヌーが好きな人は、物事に縛られるのが嫌いで、基本的に自由な性格の人が多いからそうなるのだろう。
川を下る時も、最初に「先頭は誰で最後尾は誰々」と決めても、途中から好き勝手に下り始めてしまう。
山に登る時はより一層慎重な団体行動が求められるのに、こんな有様である。

まあ、お互いにそれぞれのスキルも十分に分かっているので、これでも何とかなるのである。
お互いに大人なのだから、楽しく遊ぶことができれば良いのである。
でもやっぱり、山に登るときはもう少し慎重になった方が良いかもしれない。

山頂に到着1時間40分で989峰の山頂に到着。
全く予定外だったけれど、新しい山に登れたのはラッキーだった。
登っている途中で雲が広がってきたけれど、再び青空が広がりつつあった。

隣の992峰の山頂にも人影が見えている。
S藤さんがそこまで登ってくるのにはもう少し時間がかかりそうなので、私達はこちらの美味しそうな斜面を先に1本滑ってしまおうと話をしていると、かみさんが992峰の山頂付近にS藤さんらしき姿を発見した。
お互いの山の間は直線距離で500mも離れていないので、人の姿もハッキリと分かるのだ。
そのS藤さんから電話がかかってきて、お互いに沢まで滑り降りて合流し、それから992峰へ登り返すことになった。


989峰山頂
989峰山頂、隣の992峰山頂にも人影が見える

989峰を滑る989峰の林間を一気に滑り降りる。
そこには既にシュプールが何本も刻まれているけれど、それも殆ど気にならない。
雪質、雪の深さともに申し分なく、自然と笑みがこぼれてくる。

調子に乗ってあまり下まで滑り降りてしまうと登り返しが大変なので、適当なところで止まってS藤さんを待つ。
暫くすると目の前の斜面の上にS藤さんが姿を現し、一気に滑り降りてきた。
そこも気持ちの良さそうな斜面である。

皆が揃ったところで一休みをする。
その横を登ってきたベテラン山屋さんらしきパーティーが、ここの斜面を滑っている人を初めて見たと驚いていた。
S藤さんの前にも何人かが滑った跡が残っていたが、この斜面がノートラックのまま残っていれば、誰だって滑りたくなるところだろう。
それだけ、この付近の山に入る人が増えてきているとも言えそうである。


一休み
989峰と992峰の間の沢で一休み

S藤さん 992峰の斜面
颯爽と滑り降りてくるS藤さん 992峰の北斜面

992峰に登り返す皆でもう一度この斜面を滑り、それから登り返して992峰のメインの大斜面を滑ることに決まった。
S藤さんは、私達と合流する前に既にここを1本滑っていたとのこと。
登るのに時間がかかっていたのは私たちの方だったのだ。

15分もかからずに、標高差約100mを登り返した。
私達の後から8人ほどの外人ツアーが登ってきた。
S藤さんが英語で気さくに話しかける。
イタリア人で、北海道には一週間滞在しているらしい。
2週間前に登った羊蹄山もそうだったけれど、パウダーを求めて、ニセコ以外の山でも外国人が増えてきているようだ。

先ほどまで下から見上げていた斜面を滑り降りる。
ちょうどその下では、大人数のパーティーが休憩していて、何だか見世物のようである。
最後に降りてきたO川さんの滑りにギャラリーから歓声が上がった。
テレマークターンはやっぱり見栄えがするのだ。


自分 O川さん
これは私 O川さんのテレマークは絵になってる

989峰そこからもう一度992峰へ登り返し。
さすがに2度目はきつかった。
登りのトレースも多くの人に踏み固められ、急な部分ではスリップするようになって、余計に疲れるのである。
頂上までたどり着くと「これで今日はこれ以上登らなくて済むんだ」と心底ホッとした。

最初に登った989峰が、太陽に照らされて白く輝いている。
木々の間を縫うように何本ものシュプールが描かれているが、楽しく滑れそうな場所がまだまだ沢山残っている。
1107峰も、人が沢山入っている割には、こちら側から見える斜面はそれほど荒らされていない。
この辺りの山は、その気になれば何処でも滑走可能な、まさにバックカントリー天国と言っても良いだろう。


992峰から1107峰を望む
992峰から望む1107峰

992峰を滑るそしていよいよ東斜面のオープンバーンを滑り降りる。
山頂直下に亀裂が入っていて、2月に入り気温が上がってくると、この亀裂も広がってきそうだ。
上の方の斜面はかなり荒らされているが、雪が軽いので気にしないで滑ることができる。
昨日滑った大黒山は、北東向きの斜面でもモナカになっていたのに、雪の質が全く違う。
こちらの方が200mほど標高が高いことに加えて、大黒山より内陸部に入っているので、気温が低いことも影響しているのだろう。

途中の樹林帯で一度止まった後は、大斜面を大きなターンで一気に滑り降りる。
かみさんが「怖い、怖い」と言いながら、私の後から滑ってきた。
雪崩を怖がっているのかと思ったら、斜面が急すぎて怖かったとのこと。
私も、急な斜面ではビビッて腰が引けてしまうことが多いけれど、雪が良い時は恐怖感を忘れてしまうようだ。
おまけに日も射しているので、こんな時にパウダーを滑っていると、高揚感しか感じないのである


急斜面にびびるかみさん S藤さん
急斜面にびびるかみさん スプレーを上げるS藤さん

そこからスキー場のセンターハウスまでは、正月の時は、樹木が邪魔くさくて苦労しながら滑っていた。
それが、雪が深くなったおかげで、こちらも一気に滑れるようになっていた。

簡単に登れて、雪質も素晴らしい。
それでいて、ニセコや羊蹄山のように混雑しているわけでもなく、スキー場の施設も利用できる。
この味を知ってしまうと、パウダーを求めてわざわざ遠くの山に出かける気力も失ってしまいそうだ。
ここは、そんな麻薬のような危険性を併せ持ったバックカントリーエリアなのである。

992峰の大斜面
もっとシュプールを描きたくなる992峰の大斜面


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