1107峰・992峰(2015/1/3)

パウダー最高


カヌークラブのメンバーに誘われ、某スキー場の隣にある1107峰に登ることになった。その数字から、セブンイレブンの通称で呼ばれている山である。
山スキーで登る山と言うより、パウダーを追い求めるボーダーやスキーヤーが集まるようなフィールドだろう。

ゲレンデを出発集まったのは我が家を含め6名。
スキー場のセンターハウスで待ち合わせし、そのままゲレンデの下を通り抜けて山へと入っていく。
何時もの山スキーとは勝手が違い、何だかおかしな感じだ。

さすがに人気のある場所らしく、ハッキリとしたトレースがあるのでラッセルの苦労も無い。
何時降ったものなのか、ふわふわの雪がたっぷりと積もっている。
もしもトレースがなければ、登るのもかなり苦労しそうだ。
途中の余市川源流の沢越えも、しっかりとしたスノーブリッジができていて、安心して渡ることができた。


余市川源流 スノーブリッジ
この沢が余市川源流 スノーブリッジを渡る

道を間違えたI山さん道案内役のI山さんが、突然トレースから左へと逸れて深雪の中へと入っていった。
I山さんによると、そのトレースは992峰へと向かっているので、セブンイレブンへ登るには途中から左へ入らなければならないらしい。
「それならば、途中で左へ向かうトレースがあったけど・・・」と思いながら、GPSを確認しながら歩いているI山さんを信じてその後に付いて行った。
しかし、I山さんもようやく、道を間違えたことに気が付いたようである。
左側の沢の向こうに、トレースらしきものが見えていて、そちらが正しいルートらしい。

私も以前にクラブのツアーで案内役を引き受けて、道を間違えたことがある。
その時も、GPSに登録してあった、前に登った時のルートを確認しながら歩いていたのに、それでも何時の間にかルートから外れてしまったのである。
GPSに表示している縮尺と回りの地形を常に頭の中に思い浮かべていなければ、本来のルートから20〜30mずれただけで、何時の間にか沢の反対側を歩いていることもあるので、注意しなければならない。

正しいルートに戻るにしても、沢が深く、所々で水面も開いているので簡単には渡れない。
どうするか迷っていると、S藤さんが一人で沢へ下りていって、スノーブリッジの出来ているところをストックで状況を確認しながら、無事に対岸へと渡った。
それを見て全員が後に続く。
今の季節は、スノーブリッジもまだ完全には固まっていないので、その上を渡るときは緊張を強いられるのだ。

1107峰へ登る1107峰へのトレースはスノーシューのものだった。
今日のトレースはそれだけで、それ以前のトレースは殆ど雪に埋もれかけている。
雪は降ったり止んだりを繰り返していた。
目指す1107峰の山頂が見えたかと思えば、直ぐにまた、もさもさと雪が降り始める。
1月になったばかりで積雪はまだそれ程多くないのか、ブッシュも出ていて、快適に滑れそうな斜面は見当たらない。

かみさんと二人で登るときと比べると、今日はかなりのゆっくりしたペースで登っている。
途中でかみさんが先頭になりそうだったので、慌ててそれを止めて私が先頭に出る。
せっかく皆でゆっくりと登っているのに、かみさんを先頭にしてしまうと一気に暴走し始める恐れがあるのだ。
このペースならば汗もあまりかかずにすむ。
今日は気温もかなり低く、汗をかきすぎるとその後で身体を冷やす原因ともなるので、今日のペースはありがたかった。

1107峰へ急斜面を登る林間の急斜面をジグを切りながら登っていく。
先行者のトレースは、スノーシューだけあって、頻繁に方向転換し、しかも登る傾斜も急である。
去年までの板ならばスリップして苦労したはずだが、幅の広い板に幅の広いシールを貼っていれば、かなりの急角度で登ってもスリップすることは殆どない。

頂上近くになってようやく先行者に追い付いた。
数名のパーティーかと思ったら、単独のボーダーである。
よく一人でラッセルしてきたものだと感心しながらお礼を言って先へと進む。

山頂が近づくと風がまともに吹きつけてきて、おまけに雪も降っている。
今日は頂上までは登らずに途中から滑り降りると聞いていたので、「そろそろここら辺から下りませんか」と訴えるような視線を、後ろから登ってきているI山さんに送った。
そんな私の必死の訴えにも気が付かない様子のI山さんは、「山頂の下をトラバースして、向こうに見える斜面まで行きましょう」と指をさした。
雪崩斜面か?その先に見えていたのは、樹木もまばらな真っ白な斜面。
それを見て、「一緒に登るメンバーを間違えたかな」という思いが強くなってきた。
他のメンバーは皆、ふわふわのパウダーの中を滑ることしか考えていない人達で、真っ白な風景を楽しむことを目的として登っている私たちとは違う人種なのである。

その斜面の上に出てきて、その思いはますます強くなってきた。
今シーズンは上富良野で開催された雪崩講習会に参加して、雪崩の恐ろしさをこれまで以上に感じるようになっていた。
目の前に広がる急斜面は、正に何時雪崩が起こっても不思議ではない斜面なのである。
滑りなんか楽しめなくても良いから、林間の安全な場所を下りたかった。

スプレーを舞上げるS藤さんI山さん、I上さんと続けて、そこを滑り降りていく。
巻き上がる雪煙でその姿は直ぐに見えなくなった。
ここまで来てしまうと、もう覚悟を決めるしかなかった。
雪煙が治まり二人の無事な姿を確認したところで、その後に続いて滑り降りる。
広大な斜面に他の人の滑り降りた跡はない。そんなところにファーストトラックを刻もう何て意識は全くなく、雪崩が怖いのでI山さんの滑った後をなぞるように滑り降りた。

驚くくらいの雪の深さで、自分の巻き上げた雪煙で前が見えなくなる瞬間もある。
これがオーバーヘッドのパウダースノーってやつなのだろう。
初めての経験だった。
新しい板はロッカースキーと言って、これまでのスキーとは先端の方が逆に反っている形なので、スキーを無理に浮かせようとしなくても、滑っていると自然に浮き上がってくる。
かみさんの板は古いままなので、ラッセル車のように雪を押し分けながらゆっくりと降りてきた。
青空が広がってきた続いてS藤さん、T津さんが颯爽と滑ってくる。
皆、この雪の状況にとても嬉しそうである。
T津さんは、「雪が深すぎてスピードが出ない」と贅沢な文句を言っている。

上空の雲が取れて、青空が姿を現す。
太陽の光が周囲の雪景色を照らし出し、真っ白な風景と真っ青な空の見事なコントラストにため息が漏れる。
ただ、雲の流れが速いので、せっかく姿を現した太陽も、直ぐに雲に隠されてしまいそうだ。
皆がまだ一休みしている時、I上さんが「今のうちに滑らないと」と言って一人で滑り降りていった。
同じ滑るにしても、光を受けてキラキラと輝く新雪の中を滑るほうが格段に気持ち良いのである。


日に照らされた斜面
突然青空が広がり、美しい風景が現れた

パウダーを滑る パウダーを滑る
日の出ている間にと急いで滑り降りるI上さん ラッセル車状態のかみさん

私も、雪崩に対する恐怖も無くなり、先に滑り降りてカメラマン役をする余裕も出てきた。
残念ながら、太陽は隠れてしまったけれど、雪煙を巻き上げながら滑り降りる姿は、皆とても絵になっている。
ただ、雪煙が舞い上がりすぎて、肝心の滑っている人の姿が隠れてしまうのが難点である。
こんな時は連写モードで写しまくるしかない。


パウダーを滑る パウダーを滑る
かみさんも上手そうに写ってる 格好良いT津さん

ほぼ沢の下まで降りてきて、その後は沢に沿ってトラバース気味に滑っていく。
その左手には、まだトラックの刻まれていない美味しそうな斜面が広がっていた。
どうやらそれが992峰から続いている斜面らしい。
そんな様子を見てしまうと、今日のメンバーの中でこのまま帰ろうなんて考える人は、私達夫婦以外には誰もいない。
992峰へ登り返す1107峰へ登るのに一人だけ大きく遅れて一番苦労しながら登っていたS藤さんが、「これは登り返すしかないっしょ!」と張り切っている様子を見ると、「もう疲れたから帰る」と言い出すことはできなかった。

992峰へは、既に数パーティーが先に登っていたので、しっかりとしたトレースも残っていた。
一休みしてから、そのトレースを登り返す。
再び雪が降り始めた。本当に変わりやすい天気である。

標高差170mを45分で登り返した。
後僅かで992峰の山頂に立てるところだったが、他のメンバーは早滑り降りることしか考えていないので、山頂には目もくれず、滑走地点へと向かう。

雪庇が少しできていたので、危険を避けてその手前から滑り降りることにした。
斜面の下をトラバースしている時、その斜面が少しデコボコした感じに見えていたが、S藤さんによるとそれは多分雪崩の跡だろうとのこと。
青空が広がりセブンイレブンの山頂が見えた私は、潅木が雪に埋もれているのだろう程度にしか見ていなかった。
バックカントリーに足を踏み入れる時は、常にあらゆることに注意を払っておかなければならないのだ。

シールを剥がし、滑り降りる準備が整った頃、再び青空が広がってきた。
セブンイレブンの山頂が雲の中から姿を現した。
この逆のパターンは何度も経験しているけれど、今日は本当に理想的な展開である。

スキー場のゲレンデが遠くに見えている。
そのゲレンデは正月休みのスキーヤーで賑わっていることだろう。
一方自分たちの前に広がる斜面には既に誰の人影もない。
既に何人かがそこを滑っているはずだが、その跡も殆ど気にならない。


キロロスキー場が眼下に見下ろせる
スキー場のゲレンデが眼下に見下ろせる

急斜面を滑るかみさん結構な急斜面で、何時もならばビビッて腰が引けてしまうところだが、今日の雪ならばスピードもあまり出ないので、安心して突っ込んでいける。
おかげでようやく少しだけ満足できる滑りができた気がした。

続けて滑り降りてきたかみさん。
止まった時は腿まで雪に埋もれていた。

さすがに「もう一度登り返そう」と言う人もいなくて、その後は一気に滑り降りる。
途中で登り返すこともほとんど無く滑れるのは良いのだが、樹木が密集している所を滑るので、スピードコントロールが大変である。
足を踏ん張っているものだから、途中で太腿の筋肉が悲鳴を上げ始める。
途中で立ち木に衝突したりしながら、何とかスキー場まで下りてこられた。

余市岳まで登らなくても、スキー場の直ぐ隣にこんなパウダーを楽しめる山があったとは知らなかった。
ただ、ラッセルも大変で、雪崩の危険も結構ありそうで、夫婦二人で気軽に登る山ではなさそうである。


パウダーを滑る パウダーを滑る
I山さん T津さん


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