塩谷丸山(2014/12/15)

ラッセル地獄


山スキーの板・金具・ブーツを新調したので、初滑りの機会を窺っていた。
札幌近郊の山は雪不足が続いていたけれど、ようやく週末にまとまった雪が降りそうである。
そこで、月曜日に休んで今シーズン初の山スキーに出かける計画をたてた。

ところが、まとまった雪どころか、日曜日の札幌周辺はずーっと青空が広がったまま。
これならば某キャンプ場に双子座流星群を見に行った方が良いかもしれないとも考えたが、さすがにその翌日に早起きしてスキーに出かけるまでの元気もない。
欲張らずに山スキーだけに狙いを定めた。

しかし、迎えた月曜日は朝から大雪。
せっかくの休みを無駄にしたくはなかったので、家の前の除雪を済ませてから、予定通り山スキーへと出かける。
目的地は塩谷丸山。登り慣れた山なので、足慣らしにもちょうど良い。
上手い具合に雪雲をかわして、JR塩谷駅の駐車場に到着したときは青空ものぞいてきていた。

登山口を出発ザックにスキーを取り付けて、午前9時30分登山口に向かって車道を歩いていく。
そして15分ほどで登山口到着。
この付近では、昨日の夜から今朝にかけて、20センチ程度の雪が新たに積もっていた。
雲間から姿を現した太陽が、その真っ白な雪景色を眩しいくらいに照らしだす。
朝の雪空を見て一時は中止も考えていたのが、そんな予想外の展開に嬉しさがこみ上げてくる。

その新雪の中に、2、3人のグループと思われるスノーシューのトレースがあった。
おそらく、雪が積もるのを待ちかねていたボーダーの若者達って感じだろう。
無垢の斜面を荒らされてしまうのはしゃくだけれど、ラッセルの苦労が無くなるのは嬉しかった。

しかし、そのトレースが途中から変な方向に向かっていた。
登山口から暫くは、林道を歩いていくので道を間違えることはあまりない。
しかし、笹や雑木が茂る荒れた林道なので、道を知っていないと、どこが林道なのかも分からないのかもしれない。
「変だな〜」と思いながら少しだけそのトレースを追ってみるが、明らかに違う方向に向かっていたので、直ぐに引き返して、自分が正しいと思う方向へ進むことにした。

判然としない林道塩谷丸山に登るのはこれが8回目なので、何時もならばGPSに以前の軌跡を登録しておくところを、今回は省略していた。
林道だと思われる場所は、ほとんど藪のような状態で、これは失敗したかなと少し不安になってくる。
しかし、直ぐに、木の枝に付けられた赤いテープを見つけて安心する。
ハッキリとは覚えていなくても、何となく見覚えのある景色は分かるものである。
その後は、テープの目印を頼りにしなくても、正しいルートをたどることができた。

上空には何時の間にか雲が広がり、雪も舞い始めた。
登り始めた時はそのまま青空が広がるかもと期待したのだが、そう簡単に思い通りの展開にはなってくれない。
朝の天気予報によると、天気が回復するのは午後からなのである。

途中で再びスノーシューのトレースが現れた。
先行しているパーティーは、ようやく正しいルートに復帰できたようである。
しかし、通常のルートでは途中で沢を渡らなければならないはずなのに、トレースはそのまま真っ直ぐに上に向かっていた。
あまり信用できないトレースのようなので、そのトレースは無視することにした。

水面がのぞく沢を渡る何時もの渡渉ポイントは、雪が少なくてまだ水面がのぞいていた。
もしも、今朝にかけての雪が降らなかっとしたら、ここで沢を渡るのは難しかったかもしれない。
渡渉ポイントの場所を間違えたのかとも思ったが、家に戻ってから確認すると、やっぱりここで間違いはなかった。
かろうじて、スキーを濡らすことなく沢を渡ることができた。

ますます雪の降り方が激しくなってくる。
ジャケットのフードを目深にかぶり、トレースも目印のテープもない中を黙々と登り続ける。
ここでは、少しくらいルートを間違えたとしても、そのまま登っていけば斜面が急になって、それ以上進めなくなるだけである。
そこまで行く前に、真っ白な雪景色の中にトドマツの黒っぽい姿がぼんやりと見えてきた。
いつもそこで写真を撮る、お馴染みのトドマツの林である。
それでようやく、道を間違えていなかったことが確認できてホッとする。

マツの枝の下で雪を避けながら一休み。
塩谷駅の駐車場を出発してからここまで1時間20分。
ほとんどラッセルしながら歩いてきたので、何時もよりは時間がかかっている。


目印のトドマツ トドマツの中
目印になるトドマツ トドマツの下で雨宿りならぬ雪宿り

休憩を終えて再び登り始める。
ルートの選択を少しミスって、急斜面にぶつかってしまう。
昨シーズンまでの板ならばスリップして登れないくらいの斜度だったが、新調した幅広の板だと、そんな急斜面もスリップせずに登れてしまう。
新しい板はこれまでの2倍近い幅なので、当然それに貼るシールも幅広になる。
雪に接するシールの面積が広ければ、それだけ摩擦係数も増えるのは当然の話だ。
新調した板は、私にとって、滑る時よりも登る時に役立ってくれそうだ。

ラッセルで悪戦苦闘それでも、急斜面を無理して登ると、体力の消耗は激しい。
ここで初めて、かみさんに先頭を任せることにした。
しかし、何時もならばまるでラッセル車のように雪を掻き分けて登っていくかみさんなのに、今日は深雪にスキーが沈み、悪戦苦闘していた。
スキーの先端を雪面まで持ち上げられずに、雪に埋まったままで前に進もうとしている。
それでは、いくら体力のあるかみさんでも、長くは歩き続けられない。
直ぐにまた、私が先頭を変わる。
そこで初めて、幅広の板は深雪でもあまり沈まないことに気が付いた。
去年までの板ならば、私もかみさんと同じ状態になっていたかもしれない。

しかし、私の体力も長くは続かず、見かねたかみさんが再び先頭を変わってくれた。
そうやって二人で交代しながら登っていく。
何時もならば、この辺りの樹林帯は直ぐに抜け出して、後は山頂へと続く広々とした斜面を登っていくはずである。
ところが今回はいくら登ってもその樹林帯が果てしなく続いている感じだった。


笹が出ている斜面
笹が出ている森の中

ガスがかかってきた次第にガスがかかってきて、周りの風景が更に霞んで見えてくる。
二人とも疲労困憊で、かみさんは「今日はここで引き返しても良いんじゃない?」と言い始める始末だ。
私もそんな考えが頭の中を過ぎっていたが、まさか塩谷丸山で途中撤退するわけにはいかない。
たとえガスに包まれて視界ゼロだったとしても、維持でも山頂には立つつもりだった。

今シーズン初の山スキーということも影響していたかもしれないが、この疲れは別のところに理由があるような気がした。
今回くらいのラッセルならば過去に何度も経験している。
しかし何時もと違うのは、今回の雪が底なしに深いことである。
通常は、30センチの新雪が積もったとしても、その下にはもっと硬い雪面があるのが普通だ。
ところが今回は、その下にあるのは笹薮の上に積もった僅かの雪だけなのである。
その証拠に、時々ストックが雪を突き抜けて地面まで届いてしまうことがあった。
これではかみさんが雪の中に沈んでしまうのも無理はない。

山頂が近付く悪戦苦闘しながらも山頂が次第に近づいてきたようだ。
ただ、これまで見慣れている塩谷丸山とは、何となく雰囲気が違っていた。
多分、雪が少ないせいなのだろう。
何時もならば雪に埋もれているはずの木々が、まだ雪の上に枝を伸ばしているのだ。
それに、登ってきたルートも今までとは微妙にずれていたのかもしれない。

まだ赤い実を付けたままのナナカマドが、真っ白な樹氷に包まれていた。
モノトーンの世界の中で、その赤い実が一際美しく見える。
たまに冬の早い時期に山に登るのも、こんな光景を楽しめるので良いものである。


樹氷に包まれたナナカマドの実
樹氷に包まれたナナカマドの赤い実が美しい

塩谷丸山山頂そうして、およそ3時間で山頂に到着。
早い時ならば2時間で登れてしまう山なので、さすがに今回は時間がかかった。
ガスも少し晴れて、塩谷や余市の町並みが見えてきた。

山頂標識の近くには、「見晴台→60m」と書かれた看板が新しく立てられていた。
見晴台の名前はちょっと違っている気もしたが、底でも記念撮影。
風が強いので長居は無用だ。
写真を数枚写して、さっさと山頂を下りる。

そう言えば、先に登っていたスノーシューのグループを全く見かけていない。
山頂には足跡も無かったし、そこから見える範囲にも人影は無かった。
一体何処へ向かうトレースだったのか、謎である。


見晴台と余市の街並み
見晴台で記念撮影 見晴台の方が山頂らしく感じる

新しい板で滑る風を避けられる場所を見つけて、シールを剥がす。
いよいよ新しいスキーの滑りを確かめることができる。
この板を買った時、店員さんから「急に滑りが上手くなったように感じますよ」と言われたことを思い出す。

幅が広くてロッカーもついた、パウダー用の板。
ただ、私の場合、道具の違いが全く分からない人間なので、それ程期待はしていなかった。
カヌーの時でも、それまでのフィールディングタイプのアリーからリジットタイプのカヌーに乗り換えた時でさえ、その違いが分からなかったくらいなのである。

それに今回は、雪が少ないので雪面のいたる所に笹が出ていて、その下に何が隠れているかも分からない状態だった。
そんなところで調子込んで滑っていたら、大転倒で怪我をしてしまう。
笹が出ているの慎重に滑る安全第一で滑り降りることにした。
へっぴり腰で滑っていると、パウダー用のスキーであろうとなかろうと大して関係ないのだ。

最後に沢を渡るとき、スキーを少し濡らしてしまった。
スキーの板が濡れるくらいは何ともないと思っていたが、それは大間違いだった。
気温が低いので、濡れた板についた雪は直ぐに氷となってへばり付く。
急にスキーが滑らなくなったと思ったら、板の底にはそんな雪の塊が付着していたのだ。

スノーシューのトレースがあった場所まで下りてきた。
良く見るとそのトレースは、私達が登ってきたトレースの上に新たに付けられたものだった。
「もう下りてしまったの?」
山頂への道が分からずに引き返してきたのか、それともただ森の中をスノーシューで歩き回っただけだったのか。
謎のトレースのグループとは最後まで会うことは無く終わってしまった。

道路の上は滑走禁止街まで下りて来る頃にはようやく青空が広がってきていた。
午後から回復するとの天気予報はやっぱり当たっていたのだ。

と思って札幌まで戻ってきたら、そこはまるで別世界のように雪がもさもさと降り続ける雪国だった。
今朝、スキーに出かける前に10センチくらい積もっていた雪を完璧に除雪したはずだったのに、そこには新たに20センチ以上の雪が降り積もっていたのだ。
ラッセルで疲れ果てた身体に鞭打って、またその雪をはねることとなったのである。


塩谷丸山からの展望
滑り降りる途中に塩谷の港が見えた

駐車場 登山口 300m台地 山頂
0:15 1:00 1:35
下り 1:00
距離:3.5km 標高差:580m


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