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積丹岳(2014/04/13)

輝く雪山


余市岳などの札幌近郊の山に登った時、遠くの方に白い姿で見えている積丹岳が何時も気になっていた。
しかし、「積丹岳は上級者向けの山」との印象があったので、これまでは何となく足が向かずにいたのである。
それが、春山シーズンに入って何処に登ろうかと考えていた時に、突然積丹岳の存在を思い出したのだ。
北海道雪山ガイドのコースタイムをみると3時間50分である。
5時間近くになると登る前に諦めてしまうが、4時間以内ならば我が家のレベルでも登れそうだと判断した

除雪終点一般的な夏道コースから登ることに決めて、朝6時前に自宅を出発。
目的地が近付くにつれて、積丹岳の真っ白な姿が見えてくる。
真っ青な空を背景にしたその姿には、目を引き付けられずにはいられない。
除雪終点である浄水場までやって来ると、そこには既に2台の車が停まっていた。
直ぐに準備を整えて、7時55分に登り始める。

そこから休憩所の小屋が建っている所まで、40分の林道歩きとなる。
林道には、前日土曜日の登山者が付けたらしいトレースが沢山残っていた。
土曜日は気温が低く風も強い予報だったので、我が家は日曜日にしたのだが、そのトレーそのトレースの様子を見ると、昨日の日中はかなり気温が上がったようである。
しかし、今はそのトレースがカチカチに凍りつき、しかもデコボコである。
歩きづらいので、トレースの無い場所を選んで登っていく。
近くにある浄水場の排水池の表面にも薄い氷が張ったままだ。


浄水場の配水池 林道を登る
配水池には薄氷が張っていた 結構な傾斜の林道だ

気持ちの良い林道歩き林道でも、傾斜も結構きつい。
これだけ傾斜があれば、帰りに雪が解けてきても、ストレスなく滑ることができそうだ。
登るに従って、シラカバからカラマツの人工林へと林相が変わっていく。
トレースが林道から離れて林の中へと続いていた。
GPSで確認すると、ここで林道をショートカットするらしい。

木々の間に赤い屋根が見えてきた。
休憩所に到着である。
腕時計をみると出発してからちょうど50分経っていた。
ここまでのコースタイムは40分。ここで10分も遅れるようでは、山頂までは軽く4時間を超えてしまうかもしれない。

ブサ可愛い雪だるま小屋の近くには、小さな雪だるまが作られていた。
ツルアジサイの枯れ花が髪の毛、シラカバの葉っぱが目と口。
ブサ可愛い雪だるまである。

休憩所から更に登っていくと、ようやく森の向こうに積丹岳の白い姿が見えてくるようになってきた。
その姿は、独立峰と言うよりも、白い台地が横に広がりその中に幾つかのピークができている感じだ。

ちょっと急な斜面を登りきったところで最初の休憩をとる。
ここまでで標高差450mを1時間30分で登ってきていた。
浄水場から積丹岳山頂までの標高差は1,100mである。
残り650mも登らなければならず、まだまだ先は長い。

昨日の午前中に30キロ走っていたけれど、その疲れは今のところあまり感じられない。
走る時と山に登る時とでは、使う筋肉が違うような気がする。
と言うことは逆に、「山に登ることもマラソンのトレーニング代わりになるだろう」と思っていたが、それはあまり関係ないのかもしれない。


木の上で一休み カラマツとツルアジサイ
木の上で大福食べてます ツルアジサイを纏ったカラマツ

春の日射しを受けながら風もなく、日射しも温かで、まさに春山日和である。
しかし、気温はまだ低く、雪面も固く締まったままだ。
私たちに先行して登っていると思われるグループが歩いた跡は、ストックがあけた穴でかろうじて判別できる程度である。
この状態で斜度がきつくなってくると、登るのにちょっと苦労するかもしれない。

青空に向かって大きく枝を伸ばしたダケカンバやミズナラの巨木が目立ってくる。
真っ白な雪面に描かれたそれらの木々の影がまた美しい。


大きなダケカンバ 大きなミズナラ
大きなダケカンバにぶら下がる 見事な枝振りのミズナラ(多分?)

積丹岳の山頂はどれ?やがて、積丹岳の山頂が右手に迫って見えてきた。
と言いながらも、白い台地の上には幾つかのピークがあって、目指している積丹岳の山頂がどれなのかが良くわからない。
ザックの中から地図を取り出せば直ぐに分かるのだが、面倒なのでそのまま歩き続ける。
「一番右側に見えているピークが多分余別岳だね」
そんなことを言っていたけれど、私達の場所からは余別岳が見えるはずないことは、地図を見れば一目瞭然なのである。
山に登る時は、常に地図と周りの地形を見比べながら登るようにしようと考えているのだが、なかなか実行できない。
そのためには、地図を首からぶら下げるとかの工夫が必要かもしれない。

いつの間にか、すぐ後ろまで登山者が迫ってきていたので、びっくりした。
単独の男性。つぼ足で、かなりのハイペースで私達を追い抜いていった。
この固い雪ならば、つぼ足の方が登りやすそうだ。


白い世界
素晴らしい風景に胸も弾む

トラバース気味にここを登った標高850m付近から900mにかけてはやや急な斜面となり、そこをトラバース気味に登っていく。
心配していたことが、ここで現実となった。
固く凍った雪面でスキーが横滑りし、前に進めなくなってしまったのだ。

斜面にエッジを立てると、スキーに張ったシール部分が雪面から浮いてしまい、これでは登れるわけがない。
誰かのブログに書いてあった「片方の板のシールを利かせ、もう片方の板でエッジを立てる」という方法を試してみる。
簡単にはそんな器用な真似はできないが、ガニ股になりながらも何とか難所をクリアできた。

そこを登った先は既に森林限界を超えて、何もない真っ白な斜面が目の前に広がっていた。
その辺りが900m台地と呼ばれているところらしい。
つぼ足で私達を追い越して行った男性の姿は、その雪面のはるか遠くに米粒のように小さく見えていた。

森林限界を越えるここまで2時間40分。
遠くには山頂らしき姿も確認できて、これならばコースタイム以下で登れるかもしれない。
真っすぐに山頂を目指すルートもとれそうだが、まずは山頂から続く尾根の上に出ることにした。

固く凍った雪面も、真っすぐに登るのならば支障はない。
尾根の上に出てくると、その向こうには羊蹄山やニセコ連峰の姿が見えていた。
ここまで登って来るとさすがに気温も低く、風も強くなってきたので、ジャケットを着込む。
後は山頂を目指して一歩一歩登っていくだけである。


尾根の上を登る 偽の山頂を目指す
尾根の上に出た後はひたすら山頂を目指す 先に見えるのが山頂だと思っていた

もう少しで山頂というところで、斜面の陰からスキーを履いた登山者が現れた。
最初は夫婦の登山者かと思ったが、その後から次々と人影が現れ、結構な人数のパーティーだった。
私達の前に停まっていた車2台の人達なのだろう。
「それにしてもこの人達、何処からやって来たのだろう?」
この先が本物の山頂だったその疑問は山頂にたどり着いて直ぐに分かった。
私達が山頂だと思い込んでいたのはただのピークにすぎず、本当の山頂はそのピークのまだ先で更に高く聳えていたのだ。

折れかけた心をもう一度奮い立たせ、そこから一旦滑り下りて、本物の山頂を目指した。
真正面から登ると斜度がきつすぎるので、右側から回り込むように登る。
凍った斜面に僅かに雪が付いていたので、何とかそこを登れたが、最後の部分はさすがにスキーのエッジも全く歯が立たず、スキーをデポしてつぼ足で登った。

11時50分、積丹岳山頂に到着。
そこからは360度の見事なパノラマが広がっていた。
一番に目を引くのは積丹半島の最高峰余別岳である。
そこから右に視線を転じていくと、積丹岬が見えている。
積丹岳山頂神威岬はここからでは見えないようだ。
真っ青な海の上に白く浮かんで見えているのは暑寒別岳だ。
更に目を転じていくと、周辺のと比べて一際白く見えているのは余市岳だろう。
羊蹄山は残念ながら山頂部分に雲がかかってしまっていた。
ニセコ連峰も白く見えている。
そしてまた海の向こうに白く見えるのは狩場山地になるのだろうか。
若干霞んでいるものの、文句の付けようのない大パノラマである。(山頂からのパノラマ動画

先に登っていた男性も、「積丹岳に登ってこんなに晴れていたのは初めてです」と感動した面持ちである。


隣に見える余別岳

積丹岳からの展望
ニセコ連峰が見えているけれど、羊蹄山が半分しか写ってない!

積丹岳からの展望
真っ青な日本海に飛び出た積丹岬

凍った斜面をへっぴり腰で滑る頂上から去り難そうにしている男性を後に残して、私達は下山開始。
シュカブラができている場所を避ければ、凍った斜面でも何とか滑ることができる。

バブル全盛期には、ここでヘリスキーも行われていたはずだ。
確かに厳冬期ならば、ここのどの斜面も素晴らしいパウダー斜面となるのだろう。
現在はそんな成金スキーヤーもやってこない、静かな山に戻っているのはありがたい限りだ。

ただ、スノーモービルは結構入ってきているみたいで、下山途中にも1台のスノーモービルとすれ違った。
積丹岳では2007年にスノーモービルのグループが雪崩に巻き込まれ4名が死亡するという事故が起きている。
他にも2009年にはスノーボーダーが遭難して、救助に失敗して死亡させたと北海道警察が訴えられると言う、何とも得心のいかない出来事もあった。
海の上に浮かぶ暑寒別岳を眺めながらの昼食この春山の穏やかさからは想像できないくらいに、真冬には恐ろしい表情を見せるのだろう。

900m台地まで降りてくると風も弱くなったので、そこで昼食にすることにした。
何時もならば樹木の下を昼食の場所にすることが多いのだが、この素晴らしい展望を楽しまないわけにはいかない。
広い斜面のど真ん中に場所を構え、積丹岳、海の上に浮かぶ暑寒別岳、白さの際立つ余市岳、それらをすべて眺めながら贅沢な昼食を楽しんだ。


積丹岳を眺めながらの昼食
積丹岳が後ろに聳える

余市岳、無意根山を遠くに眺める
遠くに見えるのは余市岳や無意根山だろうか

こけた!そこから下は雪も溶け始めていて、ダケカンバの疎林の中を気持ち良く滑り降りる。
調子に乗りすぎて思いっきり転倒してしまう。
かみさんが嬉しそうにカメラをこちらに向けていた。

その気になれば、標高差1,100mをノンストップで滑り降りることも可能だろう。
それくらい、登り返しも殆ど無いくらいに傾斜が続いているのである。
ただ、そこを殆どボーゲンだけで下りてきたかみさんは、さすがに疲れたようである。
私も最後の林道部分はボーゲンでスピードコントロールするしかなく、車までたどり着いたときはさすがに疲労困憊の態だった。
スキーで滑り降りる時は、ランニングの時の筋肉と山に登る時の筋肉の両方を存分に駆使しているのかもしれない。

国道まで下りてきて後ろを振り返ると、午後の強い日差しに照らされた積丹岳がギラギラと白く輝いているのが見えていた。 

林間滑降の動画 


白く輝く積丹岳
麓から見る積丹岳は白く輝いていた

浄水場 休憩所 900m台地 山頂

1:00

1:50 1:50
距離:7.3km 標高差:1093m


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