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三段山(2014/01/18)

2度目の山頂


今年のカヌークラブの新年会は、昨年に引き続き吹上温泉白銀荘に宿泊し、土曜日は三段山に登る予定になっていた。
我が家がこの新年会に参加するようになってから、天気に恵まれた記憶があまりない。
新年会というくらいだから、日程は何時も1月上旬から中旬頃。
川霧の立ちのぼる空知川そもそも、北海道の1月のそんな時期に山に出かけて、天気に恵まれる方が珍しいのである。
おまけに今年は、北極からの寒気団が日本上空に流れ込んできている最中で、そんな時に2千メートル近い山に登るなんて考えただけでゾッとしてしまう。
それでも天気予報が、良い方に変わってきていたのが救いだった。

朝日が昇る様子を眺めながら、札幌を脱出。
富良野までやってくると、車の温度計はマイナス20度を下回っていた。
空知川の川面からは、川霧が立ちのぼり、河畔の木々は真っ白な霧氷に覆われている。
そんな風景を撮影しようと車を降りた途端、肺の中に一気に冷たい空気が入り込んで、思わず咳き込んでしまった。
久しぶりに味わうマイナス20度の空気に、身体の方が驚いたようである。


霧氷 十勝岳連峰
霧氷に覆われた河畔の木々 寒さで白く霞む十勝岳連峰

上富良野の市街地までやって来ても、気温はマイナス20℃で変わらず。
「下界がこれでは、山の上は一体何度になっているのだろう」と心配しながら車を走らせていると、逆に標高が高くなるにしたがって気温も上がってきた。
三段山へ向かって白銀荘の駐車場に着いた時はマイナス13度まで上がり、この程度ならば寒さに慣れていない身体でも何とか対応できそうだ。

I山さんから到着が遅れると連絡が入ったので、集まったメンバー9人で先に登り始めることにした。
最近は富良野方面にまとまった雪は降っていないと思っていたが、山の木々は見事なまでに真っ白である。
トレースの横には、まるで昨日降ったばかりのような柔らかな雪が厚く積もっている。
標高千メートルを超えると、下界の天気は全く関係ないのかもしれない。

この日の天気予報は晴れのち曇り。
空は晴れているものの、太陽にかかる暈が、そんな天候の崩れを暗示しているようだ。

1段目の急斜面が目の前に迫ってくる。
そこには既に、沢山のシュプールが描かれていた。
でも、コースさえ選べば、自分だけのシュプールを描く余地はまだ十分に残っている。


日輪 1段目のシュプール
太陽にかかる暈が美しい 1段目は既にシュプールだらけ

ぶっちぎりで先頭を上るN島さんその1段目を先頭をきって颯爽と登っていくのはN島さんだ。
去年、この新年会に初参加してボロボロになっていたN島さんなのだが、今年はまるで別人の様である。
今シーズン、既に黒岳や手稲山で特訓を重ねているらしく、その成果が見事に現れていた。

一方、悪戦苦闘しながら登っているのがO川さんだった。
履いているのは自衛隊が訓練で使っている革バンドのスキー板。
それにシールを貼らずに登っているのである。
板の裏側は一応うろこ状になっているけれど、それはあくまでも、ゆるい傾斜を登るための加工であり、こんな急な斜面を登るためのものではない。
人並み外れた腕力、脚力のO川さんだから、そんな板でも登って来れるのである。
他のメンバーは、そんなO川さんの様子を眺めながら「彼にはあれくらいのハンディがあってちょうど良いくらいだ」などと言っていた。

モンスターの森へと入っていく1段目を登った先に広がる白いモンスターと化したアカエゾマツ林の間を抜けていくと、やがて左手に前十勝が姿を現す。
山麓からその頂に向かう斜面は、スキーで滑るのにちょうど良さそうな傾斜である。
しかし、その斜面には何時もゴツゴツした岩が露出していて、とても滑れそうには見えない。
積もった雪は、強風で全て吹き飛ばされてしまうのだろう。

ところが今日は、その斜面が全て雪に覆われ真っ白に見えている。
ということは、こちらの三段山も上の方まで柔らかな雪が積もっているかもしれない。
3年前の3月に三段山に登った時は、正にそんな状態だったおかげで、初めて真冬の三段山山頂に立つことができたのである。
しかし、年に一度来れるかどうかの山で、たまたまそんな条件に恵まれることなど、奇跡に近い話しである。
それが、もしかしたら今日2度目の奇跡になるかも知れない。
そんな思いに心が躍らされる。

2段目を上ったところで見える前十勝2段目斜面を登るトレースは、斜面を横切って前十勝方向に大きく回り込むように続いていた。
今まではその反対側から登って、最後の部分で何時も苦労していたのだが、今回のトレースは傾斜も緩く最後まで楽に登りきることができた。
ただ、ここでは2012年12月に雪崩のため死亡事故が発生したこともあり、他のトレースが何もない時に斜面を横切るようなルートで登る気にはなれないだろう。

目の前には前十勝の姿が迫り、後ろを振り返ると白く雪化粧した広大なアカエゾマツの森が眼下に見える。
そして、2段目を登ったところで森林限界を超え、そこから先には真っ白な冬山の風景が広がっている。
札幌近郊の山では決して味わえない、圧倒的な山岳風景である


眼下に広がるアカエゾマツの森
雪を被ったアカエゾマツの森が眼下に広がる

前十勝 富良野のスキー場も遠くに見える
隣の前十勝も気になる 富良野スキー場が遠くに見えている

期待していた通り、2段目から先にも柔らかい雪が積もっていた。後はこの状態がどこまで続いているかである。
トレースの中を黙々と登っていく。
そして時々足を止めては周りの風景を楽しむ。
三段山の2段目から上の様子三段目あたりまで登ってきたところで、遅れて到着したI山さんとI上さんが追い付いて来た。
今日はゆっくり登っているとはいえ、さすがに先日羊蹄山を登ってきたばかりの二人である。

パーティーで登っていると、登るのが早い人と遅い人とで、どうしても差が付いてしまう。
そうして、途中で遅い人が追い付いてくるのを待っていると、次第に体が冷えてきてしまい、後続が追い付いてくると直ぐにまた登り始める。
結果的に、遅い人は休む間もなく登り続けることになってしまう。
こんな時は遅い人のペースに合わせて登るのが正しいのだろう。
ゆっくりでも、動き続けていれば体が冷えることはないのである。

頂上へ向かってまっしぐらそんなことはこれっぽっちも考えていないかみさんは、三段目から先はサッサと先頭で登り始めた。
私もその後を追い、N島さんも後に続く。
これまで人の後ろから大人しく登っていたかみさんだが、これが先頭に出てしまうと糸の切れた凧、手綱の切れた馬車馬みたいなものである。
1人でどんどん先に進んで行ってしまい、私との間隔はみるみるうちに開いてくる。
後ろを振り返ると、私とN島さんの間隔もかなり開いてきていた。
そしてその後ろからは誰も付いて来ていなかった。
このまま登って行って良いのかどうか、N島さんが心配そうに何度も後ろを振り返りながらも登ってくる。
かみさんはもう、山頂目指してまっしぐらって感じで突進し続けていた。

尾根の上を上るしばらくして、尾根の反対側からI山さんとG藤さんの姿が現れた。
誰も付いてきていないと思ったら、他のメンバーは違うルートから登っていたようである。

そうして、かみさんとI山さんはほぼ同じタイミングで尾根の上で合流。
私もその後を追ったが、尾根の上に出る手前がガリガリの雪面になっていて行く手を阻まれ、雪の柔らかな場所を探してルート変更。

そうこうしながら、最後までスキーを履いたままで、I山さん、G藤さん、かみさんが待つ三段山の山頂に到着。
続いてI上さん、そして少し間をおいてN島さんも登ってきて、皆から拍手で迎えられた。

薄い雲が上空の青空を隠してしまったが、それでも三段山の山頂から眺める十勝岳や上ホロカメットク山、そして富良野岳へと続く純白の山の連なりは、人を寄せ付けない厳しさと美しさを合わせ持ち、心を震わせる。


三段山山頂から
三段山山頂から見下ろす

十勝岳
三段山山頂から見える十勝岳

三段山山頂で 富良野岳
山頂到着 富良野岳を望む

他のメンバーが登ってくるまでは、まだしばらく時間がかかりそうなので、立ったままでおにぎりを食べる。
こんな気温の低い時には、おにぎりは凍ってしまうので、パンを持ってきた方が良かったみたいだ。
山頂から滑り降りるそれにしても、こうして山頂で食事ができるくらいに風も穏やかで、今の季節にしては本当に天気に恵まれたと言えるだろう。

しかし、上ホロカメットク山などの稜線からは次第に雲が湧き出し始めていた。
他のメンバーも、業務用の板で登っているO川さんを除いて全員が登頂を果たす。
他のパーティーも登ってきて、山頂は大賑わいである。

O川さんも山頂へ続く4段目斜面の下まで登ってきていたので、一旦そこまで滑り降りて合流。
そこから尾根を越えて、西の谷と呼ばれる沢を滑る。
前回の塩谷丸山で開眼したつもりだったけれど、ちょっと雪質が変わると、また元の状態に逆戻りである。
雪は柔らかいけれど、何日も前に積もった雪はやっぱりそれなりに重たく、中途半端な技術ではスキーを曲げられないのである。
滑り降りるでも、上手くターンできなくても、深雪の中を滑るのはとても楽しいのだ。

N島さんが、転んだ時に膝の靭帯を痛めてしまったようだ。
その後何とか駐車場まで滑り降りられたが、後日病院にかかったところ全治4週間の診断。
せっかく三段山登頂を果たしたのに、残念な結果になってしまった。

O川さんは何度も転倒しながらも皆と一緒に滑り降りてきた。
そもそも、革バンドのスキーで、こんな深雪の急斜面を滑ってくるのだから、それだけで大したものである。

こうして新年会一日目が終了。
白銀荘の温泉で疲れを取って、翌日は前十勝を登ることになった。


白銀荘 二段目上 山頂

1:20

1:10
下り 1:20
距離:3.3km 標高差:743m

三段山を滑り降りた
樹林帯まで降りてきました


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