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塩谷丸山(2014/01/12)

悪天なんか気にならない


3連休の1日くらいは山スキーに出かけようと考えていたものの、3日間とも天気はパッとしない。
こんな時は、近場で手軽に登れて、標高も低く、天気が悪くてもそれなりに楽しめて、遭難の恐れが少ない、そんな山に登るのにかぎる。
そして、我が家にとっての「そんな山」は、塩谷丸山しかないのである。

比較的天気が安定しそうな、連休中日の午前中に狙いを定めて自宅を出発。
しかし、朝から雪が舞う空模様で、助手席のかみさんは「何でこんな時に山に登らなくてはいけないわけ?」と、全くやる気の無さそうな様子である。
その雪も、私の見込み通り、小樽を過ぎる頃には止んできて、風も弱く、まずまずのコンディションとなってきた。
しかし午前8時前に塩谷駅の駐車場に到着したのに、そこは既に満車。
思わぬ事態に焦ったけれど、登山口への途中で、除雪の雪を道路際に押し込んだところを見つけ、そこをスコップで広げて、ようやく我が家の車を停めることが出来た。
これからはもっと早い時間に来なければ駄目かもしれない。

登山口ではツアーの団体さんが出発準備を整えているところだったので、私達も慌てて準備をして、何とか団体さんの前に出発することが出来た。
そんな団体の後に付いて登るくらいなら、ラッセルしながらでも、その前を歩く方がまだ良いのである。
ところが、私達の先に既に誰かが登って行った様なトレースが付いていた。
雪を被る赤い実昨日から新たに積もった雪は10センチくらいだろうか。麓でそれくらいならば、上の方ではもっと積もっているはずである。
自分たちが先頭でない口惜しさと、ラッセルしないで済む安堵が混じりあい、ちょっと複雑な気持ちでそのトレースの跡を追った。

昨日からの新雪が、森の木々を白く覆っている。
そんな白一色の風景の中で、真っ赤な赤い実が一際目立っていた。
最初はナナカマドかと思ったが、よく見るとそれは蔓性の植物が付けている実だった。
植物の名前は分からないが、白い帽子を被った様な赤い実がとても可愛らしい。

柔らかそうな雪に包まれた、お馴染みのツルアジサイの枯れ花も、森の所々で私達を見守ってくれている。


ツルアジサイの枯れ花 トドマツ林
雪を被ったツルアジサイの枯れ花 トドマツ林の中を歩く

雪の中を登る途中のトドマツ林の中を抜けると、次第に傾斜もきつくなってくる。
ビンディングのクライミングサポートを一番高い場所に合わせる。
登るにしたがって、森の白さも増してくるようだ。
前日までのトレースは雪面の僅かなくぼみとして残る程度となり、先に登っている誰かさんのトレースだけが頼りである。

他人のトレースを辿っていると、「どうしてこちらに行っちゃうかな〜」なんて疑問に感じてしまうトレースに時々出会うことがある。
他人の付けたトレースの中を歩いているくせに、それに文句をつけるなんて、とんでもない話だと怒られるかもしれない。。
でも、無駄に向きを変えたり、木の枝にぶつかるようなルートを進んだりと、困らされるトレースが有るのは事実である。
もっとも、自分達だって、トレースが何もない場所を登っている時は、「こんなトレースを付けたら、後から登ってくる人は面喰うだろうな」なんて思ってしまう様なルートで登ってしまうことは良くあるのだ。

雪の中を登るそれと比べると、今日のトレースは小気味好いと言うのか、無駄のないルートで登っているので、全面的に信頼して、その跡を辿っていく事ができる。
何時もならば、300m台地のアカエゾマツを一つの目標として登っているのだが、このトレースはその場所よりもっと高いところを通過していた。
アカエゾマツを過ぎた先の尾根への取り付きで何時も苦労していたので、このルートには「なるほど!」と感心してしまう。

そこから先、林間の急な登りが続くが、この辺りの木々は一本一本が美しい樹形をしていて、そんな木々を眺めていると、登りの辛さも忘れてしまう。
おまけに今日は、それらの木々に真っ白な雪が降り積もり、なお一層美しい風景となっているのだ。

ここまで登ってくると塩谷の港も見えてくる頃だが、途中から雪が降り始めて、遠くの景色は全く見えない。
しかし、目の前には真っ白な森の風景が広がり、何も不満はない。


真っ白な森
こんな風景の中を歩ける幸せ

真っ白な樹木
一本一本の木が絵になっている
木の前でポーズ 樹林帯を抜ける
ツルアジサイの絡まる木の前でポーズ 樹林帯を抜ける

先頭を歩く人の姿が見えた樹林帯を抜けると、先頭を歩いている人の姿が遠くに見えてきた。
次第に強くなってくる雪が、その姿を霞ませる。
時々立ち止まっている様子からは、かなり疲れているようにも見える。
ここまで一人でラッセルしながら登ってきているのだから、無理もないだろう。
できればラッセルを代わってあげたいところだが、既に頂上も近付いていて、最後までトレースを使わせてもらうことになってしまう。

除雪終点から1時間25分で塩谷丸山の山頂に到着。
山頂からの展望はほとんどゼロ。
それどころか、それまでは大して気にならなかった風も、山頂に登った途端にまともに吹き付けてきた。
1人でずーっとラッセルしてくれた方は、若そうな男性。彼にお礼を言った後は早々に山頂を降りて、風の当たらない場所でスキーのシールを剥がす。


山頂に到着 山頂標識の前でポーズ
雪が降りしきる中、山頂に到着 山頂標識の前でポーズ

登る時はずーっと後から付いて行って、下山は先に斜面にシュプールを描く。
何とも失礼な行為だけれど、この天候では見通しも全然利かず、先に滑っても後から滑っても、大した違いはない。

かみさんの滑り前回の春香山では、深い雪に足を取られてまともに滑れなかった。
今日は反省から、もっと体を使ってターンするように意識する。
すると、それが良かったのか、思った通りのターンができている様な気がした。
何時もならば、自分ではターンしているつもりでも、滑った跡を見ると殆ど直線に近いシュプールなのである。
かみさんの方が綺麗な弧を描いたシュプールになっていて、ガッカリさせられる。

今日は雪のせいで良く見えないけれど、多分美しいシュプールが描けているはずだ。
そんなに突然、滑りが上達するわけも無く、今日の雪質がとても軽いことと、斜面の傾斜もそれほど急ではないことが、影響しているのだろう。

林間に入って雪が深くなっても、変わらずに滑ることができる。
久しぶりに味わう、パウダースノーの中での浮遊感だ。
森の中で小休止私達が滑り降りる横を、ツアーの団体さんがぞろぞろと列を作って登ってくる。
ちょっとした優越感を感じる。
山スキーでは、早い時間に登り始めて、そして誰よりも早く滑り降りるのが幸せなのである。

途中で立ち止まった時に、スキーの先が木の枝に引っ掛かって尻もちをついてしまった。
しかも、斜面の低くなっている側への尻もちである。
雪は底なし沼の様に深く、しかも背中にはザックを背負っているのだ。
こうなると、ザックがが重しとなって、余計に体の自由が奪われてしまう。

どうしようもなくて、かみさんに助けを求めた。
駆けつけてきたかみさんは、私が一人で起き上れないのを確認するや、にやりと笑って懐からカメラを取り出した。
不覚である。これならば、頑張って一人で起き上れば良かった。


見下ろすかみさん 雪の中でもがく私
冷酷に私を見下ろすかみさん 可哀相な私

雪の中を滑り降りる更に雪は激しさを増してくる。
風景を楽しむ余裕も無くなり、その先は一気に滑り降りることにした。
途中で犬を連れた女性とすれ違う。
見覚えのあるレトリバー。先日の春香山で会ったばかりの女性だった。
凄い偶然である。

「また何処かで会いましょう」と挨拶してから別れると、トレースの男性がちょうど後から滑り降りてきて、その彼も女性と知り合いだったようである。
知り合いと言っても今日が初対面で、ネットでの交流は以前からあったみたいだ。
全くの他人だと思っていたのが、お互いに意外なところで繋がっている。
面白い出来事だった。

そうして、30分で車まで戻ってきた。 僅かの間に、車の上にもたっぷりと雪が積もっていたのでビックリする。
この後、自宅に戻るまで猛吹雪。 もしも朝からこんな天気だったら、スキーも諦めていたはずである。

ちょっと無理して出かけるだけで、とても楽しい時間を過ごすことができる。
これからも、天気予報など気にしないで遊びに出かけることにしようと、改めて思い直すこととなった今回の山行であった。

車に戻ってから、滑り降りてきた彼から彼女が書いているブログの名前を教えてもらった。
それが「ルパンのプロムナード」である。


除雪終点 300m台地 山頂

0:35

0:50
下り 0:30
距離:2.5km 標高差:515m

真っ白なダケカンバ
山頂近くの樹氷に包まれたダケカンバ


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