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オダッシュ山(2013/2/10)

故郷の山は厳しかった


発達した低気圧が通り過ぎた後の、土曜日から始まる3連休。天気予報で晴マークが付いているのは土日の道東方面だけ。
そこで、十勝の実家に泊まって周辺の山を登ろうと考えた。
最初の土曜日は、実家へ向かう途中に日勝峠の熊見山に登るつもりでいた。
ところが、札幌では朝から雪が降り続いて自宅の雪かきに追われ、家を出たのは午後になってから。
高速道路から見た日高山脈の山には雲がかかり、おまけに風も強くて、どっちみち山に登れるような状況ではなかった。

吹きだまり手前に車を停める翌日曜日、空には薄雲が広がっているものの、風も無くて、実家からは日高山脈の山々もはっきりと見えている。
登る山は東ヌプカウシヌプリとオダッシュ山を候補に挙げていたが、その様子を見て迷わず、日高山脈の北端に位置するオダッシュ山に決定した。

オダッシュ山の登山口までは真冬でも除雪されているようである。
しかしこの日は、畜産試験場から先の道は吹き溜まりで塞がっていたので、そこから登山口までの約2キロを歩かなければならなかった。

この辺りでは数日前に20センチ程の雪が積もっていた。
雪が降った後には必ず、日高降ろしの強風が吹き荒れるのがこの付近の常である。
その風が吹くと、除雪された道路などあっという間に埋まってしまうのだ。
吹きだまった雪は固く締まり、全く埋まらずにその上を歩くことができる。


オダッシュ山へ続く一本道 オダッシュ山
吹きだまりに埋まった一本道 実家から見える姿とは全然違う

実家から見えるオダッシュ山正面にはこれから登るオダッシュ山の姿が見えている。
私の実家のある清水町からは、頂上付近に三つのピークが重なった美しい円錐形をした山に見える。
その姿はまるで富士山のようで、私が子どもの頃は、それが本当の富士山だと信じ込んでいた。
ただ、「富士山は日本一高い山なのに、周りの山と同じ高さに見えるのは何故だろう」と、何となく疑問を抱きながら眺めていた思い出が残っている。

新得側から眺めるオダッシュ山は、ピークが一つの片流れ型円錐形で、富士山の趣きは無い。
それでも日高の山並みの中で一つの独立峰の様にも見えて、如何にも登りたくなる姿をしている。

45分ほどで本来の登山口に到着。
吹きだまりで半分埋まったトンネル入口3連休の中日で天気もまずまず。
当然他の登山者もいるだろうと予想していたが、私達が一番乗り。
後から登って来そうな登山者の姿も全く見当たらない。
登山口から先の林の中は雪も結構深くて、ここをラッセルしながら登るのは結構疲れそうである。

高速道路の下のトンネルは、入り口部分に大きな吹き溜まりができていた。
積雪の多い地方ならば、こんなトンネルも塞がってしまうかもしれない。
そのトンネルを抜けて、高速道路の直ぐ脇まで上がってくる。
そこを走っている人から見れば「どうしてこんな場所にスキーの格好をした人がいるのだろう?」と、不思議に感じることだろう。


高速道路のトンネル 高速道路を眺める
このトンエルが塞がると山へ行けなくなる 車の運転手は不思議そうにこちらを見てくる

枝が散らばるカラマツ林そこから先のカラマツ林の中は、カラマツの小枝が沢山散らばっていた。
強風が吹いた後のカラマツ林の中で良く見る風景である。
その強風に吹かれた雪面は所々でクラストしている。
これが道路の吹き溜まりの様に固く締まっていれば良いのだけれど、スキーで歩くとズボズボと埋まってしまう。
軽い雪の中をラッセルするよりもずーっと歩きづらい。

オダッシュ山は2年前の3月に一度登っているので、登る方向の見当は大体ついていた。
しかしこの時、GPSの調子が悪くて、現在地を表示するアイコンが動かなくなってしまった。
衛星は補足しているのに、現在地の場所が分からないのだ。こんな症状は初めてである。
そのまましばらく登っても状態は変わらず。GPSの電源を入れ直してようやく復旧した。
後ろには新得の市街地がこんなトラブルがあると、GPSに頼りすぎるのも良くないと怖くなってくる。

途中から、列状に規則正しく植林されたトドマツ林の中を登る。
そのトドマツ林の廊下の様な場所を抜けると、樹木のまばらな斜面へと出てくる。
そこをジグを切りながら一気に高度を上げる。

眼下には新得の街並みが広がる。その向こうには、もしかしたら登っていたかもしれない東ヌプカウシヌプリの姿も見えている。
最初はウペペサンケやニペソツなど東大雪の真っ白な山並みも見えていたのが、そちらの方は次第に雲に隠れつつあった。


オダッシュ山を登る オダッシュ山を登る
目指すピークが見えている グングンと高度を上げる

アカエゾマツに行く手を阻まれるそのまま頂上へと続く尾根まで上がりたいところだが、前回は同じ場所を登り、標高770m付近で尾根から張り出した雪庇にぶつかり、そこを越えるのに一苦労していた。
標高810m付近の尾根には雪庇が無いので、今回はそこを目指すつもりでいた。
しかし、そこを目指すためには、今登っているルートの横にある背の低いアカエゾマツ林の中を抜けなければならない。
適当なところからそのエゾマツ林の中に入ったところ、枝が密生していて先に進めなくなってしまった。
かみさんが「上の方が通れそうよ」と言って、列状に植えられたエゾマツの幅3m程の急な斜面を強引にジグザグに登っていく。
スキー板の長い私はそんな器用な真似もできず、木の枝につかまりながら体を引き上げ、ようやくそこを抜け出すことができた。

初めての小休止そしてようやく、雪庇のない場所を見つけて、そこから尾根に上がることができた。
ここまで2時間40分、ほとんど休みも取らずに登ってきて、おまけに最後の強引な藪突破と急登。
さすがに体力を消耗していた。
途中でもっと休憩をとるのが我が家の課題ともいえる。
かみさんが休憩嫌いなので、私もそのペースに引きずられ、何時も余計な汗を掻いてしまうのだ。

小休止してから尾根を登り始める。
ここからはもうラッセルの必要もない。
大体は、尾根に上がると急に風が吹き付けてくるのだが、今日は殆ど無風状態である。
ただ、山の向こう側から灰色の雲が広がってきているのが、ちょっと気がかりだった。

オダッシュ山の尾根を登るそしてとうとう、太陽が雲に隠されてしまった。
ピークに近づくにしたがって、傾斜も次第にきつくなってくる。
前回登った時は、天候も悪化してきて、ピーク直前で引き返していた。
天候が下り坂なのは前回と同じだったが、今回は何とかして山頂までたどり着きたい。

かみさんが「これ以上登るとスキーでは降りられない」と言うので、そこでスキーをデポして、後はツボ足で登ることにした。
雪は柔らかく、これならば最後までスキーで登れたかもしれないと後悔する。


東ヌプカウシヌプリと西ヌプカウシヌプリ オダッシュ山からの展望
東ヌプカウシヌプリと西ヌプカウシヌプリ かなり蜘蛛が広がってきた

良い眺めだ

オダッシュ山前峰そしてようやく、最初のピークに到着。
そこには真っ白な雪の中から黒い岩がニョキニョキと生えていた。
岩の裏側に回ると、前峰と書かれた看板がひっそりと立っていた。
木立に囲まれ見通しはきかない。
オダッシュ山の山頂はどこかと探してみると、木立ち越しの遥か先にそれらしいものがチラリと見えていた。
そこまでの遠さに心が折れてしまう。

せめて山頂の姿くらいはカメラに収めておこうと、写真を撮れそうな場所までもう少し進むことにする。
しかし、ツボ足ではズボズボと埋まってしまってとても歩きづらい。
私は「ここで諦めようかな」と弱気になっていたが、かみさんはお構いなしにドンドンと先へ歩いていく。
「あれ?どこまで行くつもりなのだろう?」
しょうがなくかみさんの後を追った。

山頂の尾根を歩く途中から雪も固くなり、何とか埋まらずに歩けるようになってきた。
ちょっとした斜面を登った先で、かみさんが足が埋まって雪の中に倒れ込んでしまう。
そこで限界かと思ったら、もがきながら雪の中を抜け出して、再び前へと進み始める。

その場所が清水側から眺めた時の真ん中のピークだった。
前峰があるのだから、ここは中峰と名付けても良いだろう。

そこを越えるとようやくオダッシュ山の山頂が見えてきた。
それは前峰や中峰のピークと違って、更にひときわ高く聳えていた。

オダッシュ山頂上 その山頂付近に人の姿が見えたのには驚いてしまった。
私達とは明らかに別の場所から登ってきたのだと思われる。
その人と会って話を聞いてみたかったが、真下まで近づいて見上げたその斜面は、とてもツボ足で登れるようなものではなかった。
おまけに、周辺の山も雲に隠れつつあり、苦労してまで登る価値は無さそうである。
こうして2度目のオダッシュ山も、山頂には立てずに引き返すこととなってしまった。

スキーをデポした場所まで歩いて下りる。
そこから少しの区間は雪面も平らで快適に滑ることができたが、直ぐに吹き溜まりでデコボコした場所まで下ってきて、そこから先はへっぴり腰ボーゲンで苦労しながら滑り降りる。


尾根を滑り降りる 再び太陽が
この辺りは滑りやすかったけど・・・ 下山すると晴れてくるのは良くあるパターン

下界を眺めながら昼食風も無いので、その尾根の途中で昼飯を食べることにした。
実家の母親に電話すると、「雲が広がってきていたので心配していた」とのこと。
実家から倍率の高い望遠鏡で覗けば、尾根の上に座ってカップラーメンをすすっている私達の姿が見えるかもしれない。

オダッシュ山からの下山は、もっと山頂近くの場所から滑り降りるのが一般的ルートらしい。
でも、そのコースが分からないので、私達は素直に登ってきたルート沿いに滑り降りることにする。
尾根から降りたところで3人組の男性ツアーとすれ違った。
私達のトレースを使ったお礼を言われるが、エゾマツの藪の中を突っ切る私達のトレースにはさぞ閉口したことだろう。

起き上がれない途中のオープンバーンは雪質も良く、かみさんは気持ち良さそうなシュプールを描きながら滑り降りてくる。
一方の私は足に力が入らず、何度も転倒を繰り返す。
雪質が良いと言うことは、その中で転ぶと、体が埋まってなかなか起き上がれないと言うことでもある。
何度もかみさんに助け起こされる。
そして私の描いたシュプールはガクガクとぎこちない。
個人レッスンを受けて以来、頭の中がこんがらかって、かえって滑りが下手になったような気がする。

途中からは登って来た時の苦労が嘘のように、トレースの中を一気に滑り降りる。
登山口から先も、思っていたよりも傾斜があって苦労することなく滑り降りられた。
しかし、そこで最後のダメ押し転倒。
車まで戻って来た時は心身ともに疲れ果てていた。
子どものころから見上げていた故郷の山は、なかなか私に優しくしてくれないのである。


駐車場所 登山口 尾根 山頂直下
0:45 2:05 1:00
下り 1:40
距離:5.7km 標高差:805m

GPSトラック図

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