そこから上の雪面は固くクラストし、ハイマツも顔を出している。
2年前に登った時は山頂までふわふわの新雪が積もっていたのだが、そんなコンディションは滅多にないことだったのだろう。
少しでも風が吹けば、そんな雪はあっという間に飛ばされてしまうのだ。
何度か止まっては、N島さん達が追い付いてくるのを待つ。
やっと追い付いて来た頃には、こちらは体が冷えているので直ぐにまた登り始める。
結果的にN島さんは、全く休む間もなく歩き続けなければならない。
気の毒だけれど、去年我が家で登った時は、遅れている私を待っている間にかみさんが体を冷やしてしまい、その後下山して風呂に入るまで体の震えが止まらなくなったこともあるので、自分の身の方が心配なのである。
3段目の急斜面にさしかかる。
先に登っていたかみさんが、スキーがスリップして難儀しているのが見える。
かみさんがそれなので、私はもう最初からあきらめていた。
そこまで登ってきたところで躊躇わずにスキーを外してザックに取り付ける。
でも、固く締まった急斜面をアイゼンを付けないスキー靴で登るのも、それ程楽なことではない。
私が苦労して登っているところから少し離れた斜面を、N島さんがスキーを履いたままスタスタと苦も無く登って、私を追い抜いて行く。
これは登る場所を間違えたのかと悔しくなったが、後で聞くとT津さんからスキー用のアイゼン貸してもらって、それを付けて登っていたとのこと。
以前から買うかどうかで迷っていたスキーアイゼンだけれど、これはやっぱり私には必需品かもしれない。
山頂は相変わらず雲に隠れたままで晴れそうな気配は無し。それどころか逆に雲が下がってきていて、天気は下り坂になりつつあるようだ。
途中で「今日は登頂は無理」との話が出ていたので、当然、この3段目から滑り降りるのかと思っていた。
しかし、ここからでは滑りを楽しむ斜面が無いので、右の尾根まで登ってその向こう側の状態を見てみようとのことになる。
スキーを履くのも面倒なので、私はツボ足のままその尾根まで登ることにする。
そして、スキーを履いて登るのはツボ足よりもずーっと楽であることを思い知らされたのである。
尾根の反対側にはハイマツだらけの斜面が広がっていたが、そこを下った先の沢筋には楽しそうな斜面が続いている。
標高は約1530m、今回はここで登はん終了とすることになった。
到着が遅れたMオさんも、ちょうどそこで追い付いて来た。
私達が2時間半かけて登ってきたところを1時間ちょっとで登ってきたと言うのだから、本物の山屋さんはレベルが違うと驚かされる。
良さそうに見えた斜面も、風で吹き飛ばされてきた雪が積もっている様な状態で、我が家のレベルでは滑るのが難しそうである。
そんな雪質などお構いなしに、先陣を切ってT津さんが一気に滑り降りていき、他のメンバーもそれに続く。
私も負けじと続いてみたが、重たい雪にスキーをとられて、途中で尻もち。
滑りなんかどうでも良いと言うかみさんは、マイペースでゆっくりとターンしながら降りてきた。
そこから本来のコースに戻るべく、斜面を大きくトラバース。
風を避けられる森の中まで下ってきたところで昼食を食べることにした。
ザックに入れてあったおにぎりは、半分凍りかけ。
こんな時は、食べ物はカイロと一緒にしておくのが正解である。
昼食を終えて滑り降りようとしたところでN島さんが転倒。
真っ白になって雪の中でもがいているN島さんを皆で助け起こす。
ザックを背負ったまま深雪の中で転倒すると、ストックはズブズブと埋まるし、一人で立ち上がるのはほぼ不可能に近いのである。
そこから先は、暖かい温泉が待っている今日の宿泊場所の白銀荘に向かって一気に滑り降りた。 |