白井岳(2012/1/9)

奇跡の青空


 昨日の幌向岳に続いて今日も山スキーに出かけることに。
 朝から雲が広がっていたけれど、昨日と逆で昼頃には晴れてくるだろうと勝手な予想を立てる。
 行き先は2年ぶりの千尺高地。過去に2度登った時はどちらも天気に恵まれず、頂上からの展望は未だにお目にかかっていない。今回は、天気が良ければ長尾山から無意根山まで足を伸ばしてみるつもりだった。
 豊羽鉱山に向かうに従って次第に雪深い風景に変わり、空を覆っていた雲も薄くなってきて、期待が高まってくる。ところが、もう少しで現地に着くところで、道路が工事中で通行止め。
 事前に南区役所のホームページで確認して工事中のことは調べていたけれど、そこには片側交互通行と書かれていたはずだ。ここでガードマンのお兄ちゃんに文句を付けて困らせたところで、事態が変わる訳もなく、素直に引き返すことにした。

 近くで他に登れそうな山は迷沢山か奥手稲山だが、あまり気が進まない。
 そのどちらも、車を停められそうなスペースが無かったので、去年の2月に初めてチャレンジして途中撤退と言う結果に終わった白井岳に目的地を変更した。
 突然の予定変更だったので、白井岳周辺の地図も用意していなく、GPSへのルート登録もしていない。
沢沿いのトレースを歩く これでは何処をどう登れば良いのかも分からないが、今日は3連休の最終日である。
 山頂へは昨日までのトレースが縦横無尽に刻まれているはずだから、迷う心配も無いだろう。
 その予想通り、歩き始めて直ぐ、札幌国際スキー場の敷地から外に出たところで朝里岳沢川沿いに昨日のものと思われるハッキリとしたトレースを見つける。
 去年の初チャレンジの時はそんなトレースもなく、膝までのラッセルを強いられ、最初から苦難の道となったのである。

 それが今回は、素直にそのトレースに従って登っていけば良いだけだ。
 ところが、去年のイメージが変に頭の中に残っているので、「あれ?こんな場所を歩いたかな〜?」と余計な考えが浮かんでくる。
 その時、一人で登ってきた若者に追い越された。
 私達だって歩くのはそれ程遅い方ではないと思っていたけれど、彼のスピードの速さに、私もかみさんも唖然として顔を見合わせる。
 その彼がスノーブリッジを越えて川を渡っていくのを眺めながら、「やっぱり変だ!こんなところで川を渡った記憶はない!この辺りから急な斜面を登って尾根に上がったはずだ!」との考えに囚われる。
 その記憶にあるような斜面を通り過ぎてきたばかりだったので、一旦戻ってみることにした。そこの斜面には、雪に埋もれたトレースらしき跡が微かに見えている気がする。
 「多分ここが去年登ったルートだろう」
 しばらく迷っていたけれど、そこを登ったところで、次に待っているのは去年のようなラッセル地獄である。 昨日の幌向岳での失敗のことも思い出し、変な思い込みは捨てて、素直に今まで歩いてきたトレースに従うことにする。

尾根の上に出る斜面を登る そして次の渡河地点までやって来て、こここそが記憶に残っている場所であることをようやく確信した。
 スノーブリッジを渡って、尾根の上に出る斜面に取り付く。
 沢から上がると回りの景色ががらりと変わる。
 頭上にが青空も広がってきた。
 たっぷりと雪を乗せた枝をしな垂れるトドマツ。曲がりくねった枝を広げるダケカンバ。
 大好きな冬の森の風景だ。
 複雑にうねる斜面の中を縫うように、トレースが続く。
 上空の雲の流れは速く、せっかく広がった青空も直ぐにまた隠されてしまいそうだ。


真っ白な森の中を登る 日射しを受けながら登る
大好きな冬の森の風景 太陽の日射しが嬉しい

青空も広がってきた
冬の森には青空がよく似合う

青空が消えてしまいそうだ 私達を追い抜いていった若者は、昨日のトレースから外れて独自のルートを登っていったようだ。
 多分、何度もここに来ているので、この複雑な地形の中でも何処を登れば良いのか分かっているのだろう。
  私達も彼のトレースを追おうとしたけれど、急な斜面を直登していくそのルートは私達にはきつすぎて、やむなく昨日からのトレースの方に進むことにする。
 ところが、登るに従って山越えの風が強くなり、そのトレースが所々で消えてしまっていた。
 この辺りまで来れば、後は上に向かって登れば良いだけだが、先に何があるかは分からないのでトレースが無いとやっぱり不安である。
 注意深く周辺を観察すると雪面に微妙な凹凸があって、かろうじて埋もれたトレースを判別できる。
 そうやって登りながら、再び若者のトレースと再開できた時は本当にホッとした。

エゾマツの陰で一休み 再び雲に覆われた空からは雪も降ってきた。
 風を避けられそうなトドマツの陰に避難して一休みする。
 GPSの地図を見るとこの先、山頂に続く尾根に上がる部分がかなりの急斜面になっているようだ。
 天気も崩れてきて、果たして山頂までたどり着けるか不安になってくる。
 頂上に立てたとしてもこの天気では何も見えないだろうし、無理することもないとの気持ちも湧いてきたが、ここまで来たらやっぱり山頂を目指したい。
 それに、冬山シーズンに入って3回連続で途中リタイアというのは、何としても避けたかった。

 休憩を終えて再び登り始めると、まもなくしてトドマツの姿は見えなくなり、樹氷に覆われたダケカンバだけとなる。
モノトーンの世界 完全なモノトーンの世界である。
 何時の間にか新しいトレースが延びているのに気が付いた。
 途中で追い抜かれた気配はなかったし、スキー場の方から滑り降りてきて、また登り返しているトレースだろうか。
 それにしても、スキー場のゴンドラ終点からこの辺りまで来るには3時間程度はかかるはずである。
 私達はゴンドラが動き始める30分前に登り始めているので、やっぱり早すぎる。
 まあともかく、しっかりとしたトレースがあるのはありがたかった。
 そのトレースを追いながら、ようやく尾根の上に出ることができた。


尾根の上へ 雪の中を登る
かみさんが一足先に尾根の上に出る 私はまだ雪の中で苦闘中

かろうじて姿が見える白井岳山頂 白く霞みながらもかろうじて白井岳の山頂が見えていた。
 そこまでは急な登りもなく、後はその山頂を踏むだけである。
 風に吹き飛ばされそうになりながら、黙々と歩を進める。
 山頂に続く斜面を滑り降りてくる複数の人影が見えた。
 多分、途中から現れたトレースの主であろう。
 そしてついに山頂に到着。
 登り始めてからちょうど3時間が経過していた。
 山頂といっても真っ白な台地が広がっているだけで標識もなく、GPSの表示を確認してようやくそこが山頂であることが分かるだけだ。

何も見えない山頂でポーズ 山頂らしさはないけれど、一応はかみさんに登頂記録写真を写してもらう。
 その時である、かみさんの頭の上に青空が姿を現した。
 完全に諦めていた青空なので「まさか!」と思ってしまう。
 ところが、そのまさかの展開となるのである。
 青空は徐々にその面積を広げ、まずは雲の中から朝里岳の平らな山頂が姿を現した。
 その朝里岳が太陽の日射しを浴びて真っ白に輝く。
 スキー場のゴンドラ駅も見えていた。
 朝里岳を照らしていた太陽の光はやがて、私達のいる場所に向かってどんどんと広がってくる。
 そうしてとうとう白井岳の山頂にまで到達した。
 スキー場の駐車場も遠くに見えている。
 残念ながらそれ以上青空が広がることは無く、間もなくして空は再び雲に覆われてしまったが、私達の登頂を見て神様が少しだけ微笑んでくれたのかもしれない。


奇跡の青空 私達にも陽が当たる
朝里岳山頂が白く輝く 陽は当たっているけど風が強い

白井岳山頂からの眺め
白井岳山頂からのつかの間の展望

この斜面を滑る 風を避けられる場所まで下りてから、シールを剥がす。
 山頂から続く斜面は雪崩の心配だあると雪山ガイドに書いてあるので、登ってきた尾根まで戻るつもりだった。
 でも、その斜面には既に先程の人達のトラックが刻まれていて、思っていた程の急斜面でもない。
 私達もそこを滑ることにした。
 昨日の幌向岳ではほとんど滑っていないので、シーズン最初の滑りがいきなりの急斜面の深雪である。
 それでも何とか昨シーズンの感触は残っていて、ふわふわのパウダースノーの中を気持ち良く滑り降りる。
 かみさんも、スピードは緩いのに派手な雪煙を上げて滑り降りてきた。
 楽しい斜面はまだまだ続いていたが、先行者のトラックは斜面をトラバースして、登ってきたルートの方に戻っている。
 そのまま滑り続けても最後には登りのルートに合流できそうだったが、無理はしないで私達も登ってきたルートまで戻ることにした。
雪煙を舞上げて滑るかみさん その途中で小さな沢状の地形を抜けようとしたら、予想以上に深くなっていて、その底で転んでしまった。
 その瞬間に回りの雪面がドサッと沈んでビックリする。
 下の方の沢では何ヶ所も穴が開いていて、深さは3mくらいはあり、そこに落ちたら一人では絶対に這い上がれない。
 バックカントリーではいたるところに危険が潜んでいるので、油断禁物である。

 先に滑っていたパーティーに追いついた。学生の4人組である。
 皆、大きなザックを背負っていたので「キャンプでもしてきたの?」と話しかけたら、「はい!沼のところにテントを張って3泊してきました!」とのこと。
 それでようやく、途中から現れたトレースの意味が分かったのである。それにしても、昨日もかなり冷え込んでいたはずで、元気な若者達に感心してしまう。

 その後は一気にスキー場まで滑り降りたけれど、途中の沢を渡るところで相変わらず「おかしいな〜、こんなところで渡らなかったはずなのに」と口の中でモグモグとつぶやく。
 家に戻ってから去年のGPSトラックログと比較したところ、そのルートに全く違いはなかった。
 一週間前のことさえ覚えていないのに、1年前の記憶だけを頼りに山に登ったりするととんでもないことになると、ようやく理解したのである。


スキー場駐車場 最終渡河地点 頂上への尾根 山 頂
0:40 2:00 0:20
下り 1:20
距離:4.6km 標高差:672m

地図(赤:登り、青:下り)

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