三段山(2011/3/27)

ベストコンディション


 週末に予定していた雪中キャンプは土曜日の天気が悪そうなので中止にして、その代案として思い付いたのが三段山。
 山スキーを始めてから既に5年目、そろそろこのレベルの山にもチャレンジしてみたいなと考えていたところである。
山の風景 最近は気温の低い日が続いていて、富良野付近では量は少ないものの毎日雪が降っているようなので、もしかしたらまだパウダースノーを楽しめるかもしれない。日曜日は昼頃までは何とか天気が持ちそうな予報になっている。
 少しでも良い条件の中で登りたかったので、5時半過ぎに快晴の札幌を出発。雲一つ無い空は富良野まで続いていた。
 田園風景の背景に聳える真っ白な十勝岳連峰の山並み。
 逆光となる朝日の中で、その姿が白く霞んで見えている。
 ポツンと浮かび上がる熱気球。
 殆ど乗客のいない電車がゆっくりと通り過ぎる。
 そんな風景が、逸る私の気持ちをなだめてくれた。

白銀荘駐車場からの風景 上富良野町から十勝岳を目指して車を走らせると、ついさっきまで遠くに見えていたはずの山並みが、圧倒的な迫力で突然のように目の前に現れる。
 そこはもう日本ではないかのような気さえしてくる。
 白銀荘の駐車場に到着すると、噴煙を上げる前十勝の姿が青空の下に美しく見えていた。
 駐車場付近では風は吹いていなかったが、その噴煙が真横に流れている様子を見ると、上の方は風がかなり強そうである。
 隣に停まっていた車の男性が登り始めるのを待って、私達もその後に続く。
 ところが、いかにも登るのが早そうに見えたのであえて先を譲ったつもりが、そうでもなかったので直ぐに追い越してしまう。
 美しいエゾマツ林の間を一段目の斜面を目指して登っていく。
 昨日も天気が良かったようなので、沢山の人達が滑った跡が残っている。
 そこで早くも、滑り降りてきた人とすれ違った。私達が登り始めたのが8時半なので、彼は日の出と共に登り始めたのだろうか。
 最初の斜面を登り終えて後を振り返ると、白銀荘が既に遠くに見えていた。


エゾマツ林の間を登る 一段目の斜面
一段目の斜面の上に前十勝が見えている 一段目の斜面を登り切る

エゾマツ林の間を抜ける 8年前に白銀荘前で雪中キャンプを楽しんだ時、フウマと一緒にこの一段目の斜面を登ったことを思い出す。
 その時は、上から滑り降りてきたスキーヤーがフウマを見て驚いていたが、今にして思えば、良くこんな場所まで登ってきたものだと、自分でも驚くくらいである。
 そこからエゾマツ林の中を抜けていくと、前十勝の姿が今度は真横に見えてくる。
 そして再び樹木がまばらになり、その先に二段目の斜面が現れる。
 8年前にフウマと登ったのはここまでだった。
 そこの斜面には縦横無尽にトラックが刻まれていたが、昨日の夜から今朝にかけて少し雪が降ったようで、そのトラックにも薄く雪が積もっていた。


真横に見える前十勝 二段目の斜面
前十勝が真横に見えてきた 二段目の斜面に刻まれたシュプール

二段目の斜面を登る 滑り降りた跡は沢山あるけれど、登る時は皆、同じトレースを使っていたらしい。
 そこに積もった雪の様子から判断すると、今日私達の前にそこを登ったのは二人しかいないようだ。
 そのうちの一人は既に滑り降りてきていたので、私達の前にいるのは一人だけと言うことになる。
 人の後から登るよりは、先を登る方が気分が良い。
 そのトレースもちょうど良い斜度で続いているので、とても登りやすい。
 おかげで今日はかなり速いペースで登ってきている。
 雪山ガイドで位置確認の目印にもなると書かれていた三本のシラカバを見つけた。
 三本がまとまって一つの樹冠を形成しており、なかなか美しい姿である。
 真っ青な空に真っ白な雪面、雪を被ったエゾマツに力強く枝を伸ばすダケカンバ。
 そんな風景の中を登るのは最高に気持ちが良い。


三本のシラカバ 美しい風景の中を登る
三本のシラカバ こんな風景の中を登るのは気持ちが良い

前十勝の上空に雲が広がる ただ、北の空から次々と雲が流れてきているのが気がかりだった。
 天気が崩れるとの予報だけは、外れることがないのである。
 この様子では頂上に着く頃には雲の中に入ってしまうかもしれない。
 それでも時々雲が切れることもあり、先程まで雲に覆われていた富良野岳の山頂が姿を現した。

  既に標高は1300mを越え、ロープウェイを利用した黒岳を除けば、我が家がこれまでに山スキーで登った最高標高を越えている。
  この程度の高さでは酸素濃度もそれ程薄くはなっていないのだろうが、何となく呼吸が荒くなってくる。


エゾマツ林が後に広がる 富良野岳が見える
雪を被ったエゾマツ林が背後に広がる 富良野岳の山頂が姿を現した

美味しそうな斜面が目の前に見える 二段目の斜面を登り切ったところで時計を見ると、登り始めてからまだ40分しか経っていなかった。
 後を振り返っても、一緒に登り始めた男性はおろか、他の誰の姿も見えない。
 雪山ガイドのコースタイムは山頂まで3時間となっており、ネットで調べると早い人は2時間程度で登っている。
 我が家は当然3時間を目標にしていたけれど、このペースならば2時間も無理ではないかもしれない。
 遠くには、トラックもまばらな大斜面が見えている。
 細かなウェーデルンで滑った跡はまだ新しく、最初にすれ違った男性が付けたものだろう。
 その他のトラックは薄く雪を被り、昨日のものらしい。
二段目を登った先の風景 まだ真っ白なままの斜面も残っていて、自然と頬が緩んでくる。
 ここから先は、雪面が氷化していたりクラストしていたりと条件の悪い時もあるらしいが、今日は降り積もった新雪が風に飛ばされることもなく、そのままの状態で残っていた。
 上空の雲の流れは相変わらず速いものの、ここまで登ってきても風は殆ど気にならない。
 森林限界を完全に超えた真っ白な世界が目前に広がる。
 前十勝が間近に迫り、それまで後に隠れていた十勝岳もその姿を現す。
 圧倒されるような風景は、これまでに我が家が登ってきた山とは全く違っていた。


圧倒される風景
圧倒的な山の風景を眺めながら登り続ける

前十勝
噴煙を上げる前十勝が間近に見える

三段目の斜面を目指す そうしていよいよ三段目の斜面を目指す。
 標高はまだこの付近で1400m。
 目指す山頂は既に見えているけれど、その標高は1748mなので、まだ350mは登らなければならない。
 一本道のトレースの中を黙々と登り続ける。
 ルート選択に気を使わなくても良いのは助かった。
 三段目を登った先には廊下と呼ばれるなだらかな斜面が続いている。
 ここで今日初めての小休止を取る。
 日射しが強いので、かみさんが久しぶりにアルカイダのような覆面をした。
 山頂付近にかかっていた雲が取れて、再び真っ青な空が背景に変わった。
 山頂を目指して再び歩き始める。


三段目を登る 廊下で小休止
三段目の登りが一番きつかった 廊下で小休止

山頂まであと少し 風は弱いけれど、気温はかなり下がっているようだ。 
 汗も全然出てこない。
 山頂への最後の登り。
 さすがにここでは、降り積もった雪も所々で薄くなっていた。
 そしてその下には氷化した雪面が隠れている。
 もしもこの雪が積もっていなければ、アイゼン無しでは登れなかったところだ。
 山頂までは辿り着けないかもしれないと覚悟して登り始めたけれど、申し分のないコンディションに恵まれ、三段山の山頂に立つことができた。
 しかも登り始めてから1時間45分での登頂である。
 このタイムが、今日の条件の良さを物語っているのだろう。
 山頂の向こう側は切り立った崖となっていて、その真下に見える安政火口からは噴気が上がっている。
 そのまま視線を上に向けていくと、険しい山肌の先に上ホロカメットク山の頂が現れる。
 驚いたのはそこに、誰かが登っていったらしい跡が付いていたことだ。
 それを見て、恐ろしさと共にちょっとだけ羨ましい気持ちも湧いてきた。
 次第に雲が広がってそんな風景もかき消されてしまう。
 完全に雲に包まれる前にシールを剥がして滑り降りることにする。


三段山山頂に立つ 安政火口が見下ろせる
山頂に立つ頃には雲が広がってしまった 山頂から見下ろす安政火口

雪煙を上げて滑り降りる 広大な斜面の好きな場所を滑り降りることができるが、右側の尾根を滑ることにした。
 適度な斜度と積雪のおかげでとても滑りやすい。
ただ、所々に雪面が微かに盛り上がっている場所があり、そんなところは要注意だ。
 岩が隠れているらしく、スキーの底からガリガリッと音が聞こえてきた 。
 岩ならまだ良いが、その中の一つをストックで突いたところ、雪の中からアーチ状に曲がったダケカンバの枝が現れた。
 そんな場所にまともに突っ込んでいったら、スキーを引っかけてひどい目にあいそうだ。
 障害物が多いので、途中から左に大きくトラバースして、登ってくる時に見えていた美味しそうな斜面へと向かう。
 そこには邪魔なものは何も無く、まだ誰も滑っていない真っ白な斜面が待っていた。
珍しいかみさんの転倒 スキーが下手でも、そんな場所を滑る時は無上の喜びを感じてしまう。
 続いて滑り降りたかみさんが、頭から雪の中に突っ込んだ。
 常に慎重に滑っているかみさんが転倒するのを見たのは、記憶にないくらいに久しぶりだった。
 慎重さを失ってしまうくらいに、目の前の斜面に魅了されてしまったのだろう。
 そこを滑り降りてから振り返ると、相変わらず下手くそなトラックが真っ白な斜面を汚していた。


トラックのない斜面を滑る 斜面への落書き
トラックの無い斜面を滑るのは気持ちが良い 下手くそなトラックを刻んでしまった

下界を眺めながらの昼食 一段目の上まで滑り降りてきたところで、下界の風景を眺めながら昼食にする。
 そこではまだ青空が広がっていたが、西の方の空は既に雲に覆われていた。
 心配していた空模様もギリギリで持ってくれたようである。
 下まで滑り降りたら、そのまま白銀荘の温泉に直行。
 身も心もすっきりとして十勝岳連峰に別れを告げる。
 今シーズン最高の山スキーであったことに、私もかみさんも異論はなかった。


駐車場 二段目上 山頂
0:40 1:05
下り 0:50
距離:3.4km 標高差:740m

GPSトラック
赤:登り  青:下り


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