塩谷丸山(2010/01/11)

長い前置き


 今年のカヌークラブの新年会ではニセコ五色温泉に宿泊し、その後でニトヌプリに登る予定になっていた。
 我が家は、この周辺ではニトヌプリだけがまだ登っていない山だったので張り切ってこの新年会に参加した。
 一晩で40センチ以上の雪が積もり、朝は車を掘り出すところから始まる。
出発準備 ニトヌプリに登るのなら、道道の通行止めゲートのところから南斜面を登るのだと思っていたら、五色温泉の裏から直接登り始めることとなった。
 先行者のトレースもあったので、それを使ってニトヌプリを目指すらしい。
 ところが、登っていく途中にそのトレースは消えていたのである。
 二人のパーティーで、深雪のラッセルに挫折したのか、それとも最初からそのつもりだったのか、途中で滑り降りてしまったらしい。
 しょうがないのでその後は交代でラッセルしながら登り続ける。
 私も一度先頭に出てラッセル役を引き受けた。
 しばらく登ってから後ろを振り返ると、後続メンバーをかなり引き離していた。まあ、私の直ぐ後ろはスノーシューの女性だったのでスピードが違うのは当然なのだけれど、私の場合、ラッセルしながら登るのが好きだと言う奇妙な趣味を持ち合わせているのである。
 膝まで埋るパウダースノーを掻き分けて歩くのはとても楽しく、ついついピッチも上がりすぎてしまう。
交代でラッセル そうして突然スタミナが切れてしまうのは何時ものこと。宿から続く急斜面を登りきったところで、堪らずに後続に先頭を譲った。
ところが、パーティーの歩みはその直後に止まってしまった。
 前方に広がる平らな平原。いや、それよりも窪地と言った方が正確かもしれない。
 そしてその先には上部に雪庇の発達した小高い山が連なるように広がっていて、そこを迂回するためには大きく回り込まなければならない。
 私は事前に、ニトヌプリについてネットで調べておいたので、こちらから登っていくとアップダウンが多くて、帰りも滑るのに苦労することを知っていたのだけれど、このルートを選択した人はあまりそのことは考えていなかったようである。
 おまけにこの深雪。ニセコの山に詳しいメンバーから、このままニトヌプリを目指したのでは時間がかかりすぎるとの話が出て、急遽行き先をイワオヌプリに変更することとなった。
 そして、せっかく登ったのだから、その分は楽しもうと言うことで、一旦滑り降りてからもう一度イワオヌプリへ登り返すことに決まる。
 ここで私の気持ちは萎えてしまった。
 パウダーを滑ることに生きがいを感じている他のメンバーと違って、私は山の風景を楽しむことが冬山に登る主目的で、滑りはあくまでも2次的な楽しみなのである。
 それが今日のような雪の降り続ける天候では、最初から気合も入らない。そして皆の話に耳を澄ませていると「雪が深いから急斜面でないと滑れない」などと恐ろしげな内容が聞こえてくる。
深雪 イワオヌプリは一度登っているので、その急斜面が何処のことを言っているのか、大体の想像はつくのである。
 それに、これだけのふわふわのパウダースノーの深雪を滑るのは初めての経験だった。
 滑り始めた途端に顔に雪が被ってきて前が見えなくなる。スキーも思うように曲がらず、殆ど直滑降のような滑りになってしまう。
 それでもこれくらいが、自分にとってはちょうど良いところだ。
 下まで降りてきたところで早々にリタイア宣言。
 かみさんは「えっ?本当に止めちゃうの?」ともっと滑りたそうな表情を見せていたけれど、3年前にイワオヌプリに登った時、一番傾斜の緩い場所を探して登ったのにもかかわらず、途中で方向転換ができずに倒れこんで斜面にしがみついたまま動けなくなった自分の姿を忘れてしまったようである。
 リタイアした後にチセヌプリのスキー場で少し滑ろうと思ったけれど、リフト乗り場の長蛇の列を見てそれも諦め、そのまま札幌まで帰ることになってしまった。

 長くなったけれど以上が前置きである。
さすがにそのままでは欲求不満のまま3連休を終えることになってしまうので、連休最終日は塩谷丸山へ出かけることにした。
天気もまあまあである。ただし、ニセコとは違って札幌や小樽周辺では正月以来まとまった雪が降っていないので、美しい雪景色は期待できそうにない。
登山口周辺に適当な駐車スペースが無かったので、JR塩谷駅まで戻ってきてそこの駐車場に車を停める。
そこから登山口まで1キロ程だが、最近は歩くのが趣味になってきたので全く苦にもならない。


車道歩き 登山口
駐車場から車道歩き この付近でスキーを履く

 さすがに3連休最終日ともなるとトレースはしっかりと踏み固められ、普通の靴でもそのまま歩けそうなくらいだ。
 街の周辺で見た山の木々には雪が全然積もっていなくて、とても寒々とした風景だったのに、山の中に入ってくると重たそうな雪をたっぷりと枝に乗せたままの木々が冬の森の風景を作り出して、心を和ませてくれる。
 そんな雪にストックで悪戯したりしながらのんびりと登っていく。


ストックで穴を開けて 穴の中には
積もった雪にストックで穴を・・・ するとこんな風景が

シラカバのゲート 雪の重みで大きくたわんだシラカバが、まるでゲートのように私達を出迎えてくれた。
 そのゲートは急斜面の始まりを知らせるゲートでもあったようだ。
 しっかりと踏み固められたトレースは滑りやすく、ちょっとでも傾斜がきつくなると私のスキーはズルズルと後ろに後退してしまう。
 同じシールを貼っているのに、かみさんはスリップすることも無く、同じトレースを平気で登っていく。
 僅か1メートルの高低差を登れずに四苦八苦している私を「邪魔よ!」とばかりに追い抜いていった。
 スキーがスリップし始めると、余計な力を使わなければならないので、体力の消耗も激しくなる。
 冬のシーズン前にたっぷりとトレーニングをしていたので、体力はかなり付いたつもりでいたのに、その自信はあっけなく崩れてしまった。
 これでは今までの冬と何の変わりも無いのだ。
 沢の源頭部まで登ってくると下界の風景が見下ろせるようになる。
トドマツの森 登り始めた頃には青空が大部分を占めていたのに、いつの間にか雲の割合の方が多くなっていた。
 海の色も鉛色だ。
 その先の立派なエゾマツの森(300m台地)を過ぎると、木々も次第にまばらになってくる。
 相変わらず固いトレースは滑りやすく、その傾斜を見ただけで「あ〜、これは駄目だ〜」と判断が付いてしまう。
 堪らずにトレースから外れて、自分でラッセルしながら登ることにした。
 確か、以前に塩谷丸山を登った時もこんな羽目になっていた気がする。
 他の人が見たら「何でわざわざトレースから外れて登っているのだろう?」と思われそうだが、スリップを繰り返しながらトレースの中を登るよりは、私はその方が確実に楽なのである。

木々もまばらに 樹林帯を抜けると頂上まではもう少し。
 先に登っていた4人パーティーが途中で休んでいた。
 これまでも、なるべく追い越さないようにしながら、相手が休憩していれば自分達も休憩するようにして登ってきたのだけれど、このまま一気に頂上まで登ってしまいたい気もする。
 ザックを降ろして長そうな休憩のように見えたので、私達は休まずにそのまま登り続け、挨拶をして先に出ることにした。
 しかし、山頂へ向かって一直線に続くトレースは、途中から私のスリップ限界を超える傾斜となり、再び四苦八苦することに。
 ふと後ろを振り返ると、しばらく休んでいると思った人達が、直ぐ後ろから登ってきていた。
 これだから、あまり追い抜きたくなかったのだ。
 スリップしながらドタバタしているのを見られるのは恥ずかしいので、写真を写す振りをして何気なくトレースから外れ、後続の人を先に行かせた。
一人だけ置いて行かれてしまった かみさんがその4人パーティーを先導するようにして先に登っていってしまい、残された私は写す気も無いのに、意味も無く周りの風景にカメラを向け続けるのであった。
 チラチラと雪も舞い始める中、ようやく山頂に到着。
 空は曇っているものの、これまで塩谷丸山に登った中では風の穏やかさは一番かも知れない。
 何せ、塩谷丸山の山頂は風の強いイメージしかないのである。
 しばらくすると青空も広がってきたが、それでもまだ雲の面積の方が多い。
 こちらの方は何時もと同じ按配である。
 一度で良いから真っ青な空の下でここの山頂に立ってみたいものだ。


山頂に着くと青空も広がってきた
これだけ青空が広がってくれたら満足できる

山頂からの眺め
余市の街並みまでは見えるけれど積丹の山は雲の中

山頂からの風景
何故かカラスも・・・

 4人パーティーが滑り降りた後、暫くたってから私達もスキーのシールを剥がす。
 3連休で沢山の人が滑っているはずなのに、山頂から続く斜面に刻まれたシュプールの数は少ない。前日までの分は風で消されてしまったのだろうか。
かみさんの滑降 それでも新雪とほぼ同じ感覚で気持ち良く滑ることができる。
 初めて、自分の滑る姿をかみさんに動画で撮影してもらったけれど、後でそれを見てガッカリしてしまった。
 自分ではもっと上手に滑っているつもりだったのに、動画でその姿を見ると、無理やりスキーを曲げていることがはっきりと分かる。
 年を取るとスキーを上達しようと言う気にもならないけれど、さすがにこの姿を見てしまうと、もう少し頑張らなくてはと思えてくるのである。
 滑っている間はそんなことにも気が付かないので、気持ち良く滑っているうちにあっと言う間にトドマツの森まで降りてきてしまった。
 せっかく暖かいコーヒーを持ってきていたので、そこでちょっと一休みをする。
 でも、太陽の陽射しが無いと体が冷えるだけなので、コーヒーを飲み終えたら直ぐにまた滑り始める。
 シラカバのアーチまで下りてくると、そこから先は緩やかな傾斜が続いているだけだ。
 しかし、傾斜は緩くても雪面が硬く踏み固められているのでスピードが出過ぎてしまう。
 立ち木や倒木など障害物も多いので、その間はボーゲンで制動しながら滑らなければならず、太腿が悲鳴をあげそうだった。
 そのままJRの踏み切り手前まで、スキーを履いたまま車道を滑り降りる。
 駐車場に着いたのは12時10分、たった半日の行程で山スキーの気分を十分に味わえる塩谷丸山。
 これでようやく、ニセコでの欲求不満を解消することができたのである。


塩谷駅駐車場 300m台地 塩谷丸山

1:00(0:25)

1:00(0:20)
距離:3.7km 標高差:570m
( )内は下りの時間


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