春香山(2008/02/09)

風邪にも負けず


 天気の良さそうな週末の三連休。ところがその連休の前に風邪をひいたようで、前日の金曜日には仕事も休んでしまった。
 そうして向かえた土曜日の朝、未だに鼻水は出ているし、何となく頭も重たい。でも熱はないので、鼻水を止める薬だけ飲んで、予定していた春香山へ出かけることにする。
 かみさんは心配していたけれど、この日のために前日に休みを取って体調を整えたようなものだから、今更中止にする気にもなれない。
駐車場に一番乗り 明日まで天気は良さそうなので、今日は一日体を休めて風邪を完全に治すのも一つの方法である。でも、土曜日ならばノートラックのパウダー斜面を滑れそうだし、日曜日も晴れるのならばそれはそれで別の山にも登りたいなどと、まことに都合の良いことばかり考えていたのである。
 7時半には登山口の駐車場に到着、一番乗りだった。
直ぐに準備をして出発。
昨日新たに降ったらしい雪が7、8cm積もっている。
かなり気温が下がっているようで、手袋をしていても指先が冷えて痛くなってくる。オーバーグローブも持ってきているけれど、ザックの一番下に押し込んであるものだから取り出すのも面倒で、手をさすって温めながら歩き続けた。
川を渡って沢沿いの林道に入る。ここで川を渡らずに林道をそのまま真直ぐに進んでいるトレースも沢山あるのは、奥手稲山にでも登る人達なのだろうか。
私達が歩いている場所から少し上の林まで、ようやく朝の光が届き始めていた。もう少し登ればその光の中に入れると思うと、歩く速さもも自然と増してくる。
やがて林道は沢から離れ、山の斜面に沿いながら標高を上げていく。そしてようやく太陽の陽射しの中に入ることができた。

朝の光が届いてくる 急に暖かくなってきた

 真冬からいきなり春になった感じである。先ほどまでの凍傷になりそうな指先の痛みはあっと言う間に消え去り、逆に体が汗ばんでくるくらいだ。
 途中から林道を離れて、登山道の方へと進む。
 去年初めて登った時は、この登山道の存在に気付かずに、ひたすら林道を登り続けることになった。
 今回ははっきりとしたトレースが登山道へと続いているのだけれど、去年は林道の方にトレースが付いていたので、その入口を見落としてしまったようだ。
 普通に歩いていれば、標識も立っているので見逃すことはないだろう。

カラマツ林 登山道はもう一度林道と交差して、その先はカラマツ林の中に続いている。
 その林の中を歩いていると、青空に向かって真直ぐに伸びているカラマツの姿がとても印象的である。
 カラマツ林を抜けるとシラカバを中心とした2次林になってくる。
 汗をかいてきたのでジャケットを脱ぐと、その下に着ていた服にまで汗が染みてきていた。
 風邪の影響もほとんど感じられないので、これは多分健康的な汗なのだろう。
 ただ、鼻炎の薬を飲んだ影響で、口の中がやたらに渇くのが困りものだ。その渇きを癒すために飴を舐めながら歩き続ける。
 やがて、石狩湾が背後に見えてきた。残念ながら北の空には雲がかかっているので、暑寒別の山並みまでは見通せない。
 もしかしたら春香山の山頂に着く頃にはその雲も晴れているかもしれないと、淡い期待を抱く。去年から何度かこの付近の山に登っているけれど、暑寒別岳の姿はまだ一度も見たことがないのだ。
 一冬に数回、空気が澄んで晴れ渡った日に、遠く暑寒別の山並みまでくっきりと見通せることがあり、そんな風景を山頂から眺めることが、当分の目標になりそうである。

登山道を登る 海が見えてきた
登山道を登る 石狩湾が見えてくる

 登山道を登り終えて再び林道と交わる部分は土場と呼ばれている。夏の間はその名のとおり作業用の土場として使われているのだろうが、雪が積もっている今はただの真っ白な平地である。
 このように、邪魔なものが全て隠されて、純粋に白い風景だけを楽しめるのも冬山の魅力の一つである。
ここまで1時間35分、小休止をして水分を補給する。体力はまだ十分に余っているし、風邪はもうどこかに吹き飛んでしまったようだ。


土場の風景
眺めの良い土場

 その先の尾根を右側から巻いて登る。沢へ落ち込む傾斜がややきついところだけれど、ちょうど良いトレースが残っていたので、楽にそこをかわすことができた。
 スノーシューの男性が追いついてきたので先を譲る。
 ここから銀嶺荘までは緩やかな尾根が続いている。ダケカンバやトドマツの風景が美しいところだ。
 去年はこの辺りから樹氷ができていたのだけれど、今日はそれが見られないのがちょっとがっかりである。
 尾根を吹き抜ける風が冷たいので、再びジャケットを着込む。
 やがて前方に春香山の姿が見えてきた。木々の間を抜けて山見の丘に到着。ここは春香山の姿を楽しむには絶好のビューポイントとなっている。
 定山渓天狗岳の姿も見えている。
 しかし、空全体に雲が増えてきているのが気になった。天気予報では一日快晴に恵まれると言っていたはずだ。


山見の丘から
山見の丘から見る春香山

 春香山の白い山肌に、頂上に向かって垂直に伸びるトレースが見える。先ほど私達を追い抜いていった男性が、もうそこを登っているようである。
 丘を滑り降り、シラカバの森の中を抜けたところに銀嶺荘が建っている。真っ白な森の中にその姿が溶け込み、まるでおとぎ話に出てきそうな風景だ。
 銀嶺荘の横を流れる沢を渡って、いよいよ春香山への最後の登りである。
 沢山あるトレースの中から一番登りやすそうなのを選んで、そこを進む。途中で見晴らしの丘から見えていた、スノーシューで直登しているトレースとぶつかった。
 私はそのまま斜めのトレースを進んだけれど、かみさんは「ちょっと行ってみる」と言って、スノーシューのトレースの中をガシガシと登り始めた。凄いパワーである。
 さすがに途中で力尽きてスキーのトレースに戻ったけれど、パワーが有り余っているようなので、そのまま先頭を任せることにする。
 トレースは残っているものの、この付近では新たに20cm程の新雪が積もっているので、それなりにラッセルしながら登らなければならない。
 気が付くと、上空が暗くなってきていた。
 見晴らしの丘から見た時は青い空に浮かぶ白い雲と言った様子だったのに、それがいつの間にか空一面を覆う暗い雲に変わってしまっていたのだ。

春香山への登り もうすぐ山頂

 広大な斜面を、途中で邪魔するものがないのでそのまま一直線に登り続ける。枝の上に雪をたっぷりと乗せたダケカンバの姿が目を楽しませてくれるけれど、ここまで登ってきても樹氷はほとんどできていなかった。
 途中で一旦向き変えて、後はそのまま一直線に登って山頂に到着。
 登り始めて3時間15分。今シーズン初めての3時間を越えての登頂だったけれど、意外と疲れは少なかった。
 でも、どんよりと曇ってしまった空を見上げると、頂上へ着いた感動もあまり湧いてこない。何せ、去年ここへ登った時の条件が良すぎたので、どうしてもその時の風景と比べてしまうのだ。
 石狩湾の海岸線も見下ろせるし、手稲山、鳥帽子岳、定山渓天狗岳の姿も見えている。あまり贅沢ばかりも言ってられない。


石狩湾の海岸線
石狩湾の海岸線が見える

手稲山も見える
手稲山も見えている

 スノーシューで登っていた男性の姿は、もう頂上には無かった。私達が頂上付近でウロウロしている間に単独の男性が続けて2名登ってきた。
 お二人ともかなりの歳のように見えるけれど、山登りをする人たちは本当に元気が良い。
 そのうちの一人は、頂上まで来ると直ぐにシールを剥がしてそのまま滑り降りていった。
 私達も負けじとその後を追うように滑り始める。時々かみさんにカメラを渡して、滑っている姿を写してもらうのだが、まともに写ったためしがない。
 大体が、写真の隅に小さくしか写っていなかったり、体が半分切れていたり、ひどいのになると私の姿さえ何処にも写っていないものまである。
 最後に少し急な斜面があったので、「ここで写してあげる」と、かみさんがカメラをぶら下げて先に降りていった。
 「写してあげる」と言われても、そこはちょっと急過ぎるし、新雪をかぶった下の雪面が荒れていそうにも見える。
 そんな風に弱気になりながら滑ると、体が傾斜に付いていけずに、バランスを崩して尻餅をついてしまうのだ。
 そしてそんな時に限って、どんぴしゃのタイミングでかみさんがシャッターを切ってくれるのである。

颯爽と滑るかみさん 転んだ!
せっかく格好良く写してやったのに 私はこれだ・・・

 山見の丘まで降りてきて昼食にする。その頃には再び太陽が姿を現して、日の光を浴びながら気持ちよくお昼を食べられたのは良いけれど、一番天気が悪い時に私達は山頂にいたようである。
 そこから先は滑りを楽しめるような場所も無く、登りのトレースの中を滑り降りるだけである。
 途中の土場からは林道の方を滑る。新雪がサラッと積もっているので、林道滑りもなかなか快適だ。
 でも下のほうまで来ると雪質が悪くなってくるので、ボーゲン気味に滑らなければならない。そうすると一気に太股に負担がかかってくる。

山見の丘で昼食 林道を滑り降りる
山見の丘でランチタイム 林道を滑り降りる

 そしてやっと駐車場に到着。
 心地良い疲労感に包まれながら、自宅に向かって車を走らせた。
 ところがそれは、心地良い疲労感とはちょっと違っていたようだ。次第に顔が燃えるように熱く感じてきて、体にも全然力が入らなくなってくる。
 結局、風邪を悪化させてしまったようである。
 朝のあの状態で山登りをするなんて絶対に無茶だと自分でも思っていたので、まあこんな事態は織り込み済みだった。
 三連休の間、中途半端な状態で家の中で悶々としているより、一日だけでも思いっきり遊んで後の二日間を寝込んで過ごす方が、私にとっては充実した休日となるのだ。
 でも、この翌日は一冬に一度有るか無いかくらいの素晴らしい晴天となってしまい、「馬鹿なことしないで、一日だけ大人しくしていれば、最高の展望を楽しめたのに・・・」と、部屋の窓から青空を見上げて本気で反省することになったのである。


駐車場 土場 春香山

1:35

1:40
距離:6.5km 標高差:780m



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