察来山(2007/02/25)

察来山の山頂はこちら


 2月も末に入ってようやく天候が安定してきたようで、三日前の小喜茂別岳へ出かけた日のように、日曜日は朝から素晴らしい青空が広がっていた。おまけに夜の間に雪も少し降ったようで、これならば山の風景も青空に一層映えそうだ。
 今回出かける山は、当別の奥にある察来山である。その付近の山では青山農場キャンプ場から見えるピンネシリや神居尻山の名前を知っている程度で、北海道雪山ガイドを読まなければ全く知ることさえ無いような山である。ネットで検索しても僅かな情報しか載っていない。
 自宅から近い初心者向けの山は大体登ってしまったので、ちょっと違った山へ足を伸ばしてみようと考え、察来山に目を向けたのだ。

 当別の街から、道民の森へ向かう道道28号に入った。道民の森は冬季間は休園となっていて、その付近に住んでいる人も居ないので、すれ違う車は殆ど無い。
駐車スペース 道道が浜益と新十津川を結ぶ国道451号へ合流する近くまで走ってくると、正面になだらかな稜線の当別丸山見えてきた。この山も今回の候補になっていたけれど、標高が500mと低く、登り時間も雪山ガイドで2時間となっていたので、物足りなさを感じて、標高560m、登り時間2時間半の察来山の方を選んだのである。
 道路の分岐を滝川方向へ曲がって約3km進むと、林道入り口部が除雪されていて車を停められるスペースがある。
 タイヤショベルで雪を奥まで押し込んだ跡が付いていて、奥行きはあるものの、その幅は1.5車線程度しかない。つまり、我が家の車を停めてしまえば他の車はもう停められないと言うことである。
 しょうがないので、除雪車がもう一度入ってきた時の邪魔にならないように、奥の方の端ギリギリに車を寄せて駐車した。除雪車ならばその横を通ることができるだろう。
 そうして準備をしていると、軽自動車の男性二人連れがそこに入ってきた。これ以上停めるスペースは無いしどうしようと思っていたら、その男性はスコップを取り出して自分の車を停める場所の雪かきを始めた。
 冬の間に車を停めておける場所を確保するには、それくらいのことをしなければならないのだと感心してしまう。

 準備を整えて出発。この付近では15cmほどの新雪が積もっていて、その雪に覆われた真っ白な森の風景と真っ青な青空のコントラストが息を呑むような美しさだ。
 数日前に気温が上った雨模様の日があって、以前の雪面は硬くしまっている。その上に新たに積もったフワフワのパウダースノーはとても軽くて、ラッセルの苦労も殆ど感じない。
 しばらく川沿いの林道を歩かなければならないのだけれど、美しい雪景色が広がり、歩いているだけで楽しくなってくる。スノーシューで森の中を散歩しているのと同じ気分である。
 唯一気になるのが、その林道には緩やかなアップダウンの勾配があるので、帰りにここを歩く時は疲れそうだな〜と言うことだった。
 歩いている途中で、幹がとても太いのに途中から突然細い枝だけになる不思議な木を見つけた。風で折れた木が再生したのだろうが、なかなかユニークな表情である。
 軽やかな水の音が聞こえてきた。川の方を見てみると砂防ダムからカーテンのように水が流れ落ちている。周りはまだ氷に覆われているけれど、その水音の中に確かな春を感じることができた。

真っ白な林道を歩く 不思議な木

 その先に3連の砂防ダムが目印となる林道の分岐点がある。そこまでかかった時間は45分。楽しい散歩の時間が終わり、いよいよ3連砂防ダム沿いに林道を登り始める。
3連砂防ダム 下から見上げると、その林道がやたら急に見えたけれど、所詮車が走る林道である。息切れはするけれど一定のペースを保ったまま登り続けることができる。
 一度かみさんと先頭を交代したが、遅いので直ぐにまた私が先頭にである。スタミナでは負けるけれど、ラッセルだけはまだ私の方が上のようだ。
 これでラッセルする時もかみさんの方がパワフルだったりしたら、私の立場が完全に無くなってしまうのである。
 その曲がりくねった林道を登り続けると細い尾根の上に出てきた。
 振り返るとピンネシリや神居尻山の姿が見える。ここからだとそれらの山は南側に位置するので、太陽の光を後ろから浴びて、その姿もちょっと霞み気味だ。
 それにいつの間にか雲も広がってきていて、余計に山の姿を霞ませている。
 前々回の千尺高地と言い、前回の小喜茂別岳と言い、朝の素晴らしい青空がそのまま日中まで持ったためしがない。
 3回も同じようなことが続くと、こんなもんだと直ぐに諦めの境地に入ってしまう。
 そこでまた不思議な木を見つけた。
 倒れ掛かったミズナラの木をトドマツが支えているように見える。その支えている箇所を良く見ると、何とそのトドマツの幹はミズナラの幹を貫通して真直ぐに伸びているのである。
 実際は、貫通すると言うよりもミズナラの幹を巻きながら上に伸びたのが本当のところなのだろうが、それにしても面白い2本の樹木の関係だ。

尾根の上まで登ってきた 不思議な木その2

 いよいよ察来山の姿が目前に迫ってきた。
 上部に雪庇のできた真っ白な急斜面、今にも雪崩が発生しそうでとても恐ろしげな様子である。
 そこで林道から離れて、山頂まで繋がる尾根に取り付いた。
林道を離れ尾根に取り付く 滑り降りるのが楽しそうな樹木のまばらな林間を、自分の好きなような角度でジグザグを描きながら登る。
 最近は次第に、この登る時の楽しさも感じられるようになってきた。
 でも、次に現れたのはあまり楽しく無さそうな急斜面だった。下から見上げながら何処を通れば良いのか考えたが、何処を通ってもかなり難儀しそうである。
 それでも近くに迂回できそうなところも無いので、しょうがなくその斜面を登り始めた。
 5cmほどの新雪が積もった下はアイスバーンのような雪質で、エッジを立てるのも大変である。
 少しでも緩やかなところを探しながら斜めに登っていくと、例の雪庇の張り出した雪崩斜面に入ってしまいそうになる。
 慌ててキックターンで向きを変えると、前方の斜面は更に傾斜がきつくなっていた。
 唯一の登れそうなルートを見つけて進んでいくと、意地悪なことにその先で潅木が枝を伸ばしていた。
 その潅木を上にも下にもかわすことができず、そのまま無理やり枝を踏みつけながら潅木の中を真直ぐに突き抜ける。
 足の力を抜くとズルッとスキーが流れてしまうので、常に踏ん張り続けていなくてはならず、疲れがどんどん増してくる。
 かみさんが、「何でわざわざこんなところ通るのよ!」と先ほどの潅木のところで文句を言ってるのが聞こえるが、そんなことには構ってられない。
雪庇の上を登る 泣きそうになりながらも何とかその急斜面を登りきって、心底ホッとした。
 今回は途中でエネルギー補給するようなことも無いだろうと思っていたが、そこでたまらずにウイダーinゼリーを口にくわえて一気に吸い込んだ。
 雪山ガイドによると、その付近が唯一の滑りを楽しめる場所と書かれていたが、我が家にとっては少し急すぎる斜面である。
 その先は雪庇の上を登ることになる。
 本で読んだ知識によると、そのような雪庇は実際の○は見かけよりも山側になるので、安易に端のほうに近づくのは危険であるとの事だ。
 雪庇の下の様子は全く窺えないし、後ろからかみさんが「お願いだから雪庇の方に近づかないで!」と叫ぶものだから、私もビビッてしまって木の生えているギリギリのところしか歩けなくなる。
 万が一雪庇が崩れても、その木の枝に掴まれば何とか助かるだろうと考えているのだけれど、我ながら甘い考えだと思う。
 もっとも、実際にはそこの雪庇の半分くらいまでは安全圏なのだろうけれど、春先には全層雪崩も起こる場所らしいので、私達のような経験の浅い人間は必要以上に臆病な方が良いのである。

察来山の山頂 その雪庇の尾根を登りきったところに緩やかなピークがあり、普通ならばそこが頂上になるはずである。
 ところが察来山の本当の山頂は、「残念でした、山頂はこっちだよ〜。」と、登ってくる人間をからかっているかのように、その奥にポコリと飛び出しているのである。
 溶岩ドームのように見えるその山頂は、高さ30m程だろうか。片側の斜面には樹木が生えているものの、目の前の斜面は真っ白な雪に覆われ、その上のほうでは黒い亀裂がパックリと口を開けている。
 一目見ただけでスキーを付けたまま登るのは諦めた。直ぐ下でスキーを外し、ザックも置いて、ストックだけを持って上り始める。
 樹木のない斜面は雪崩れが起きそうで怖いので、樹木の生えている側に回りこむ。足元の雪を踏み固めていると、突然ズボッと太股まで足が埋まってしまった。雪の下に埋まっている潅木の周りに空洞ができて、まるで落とし穴のようになっていたのだ。
 40度以上のの傾斜は、そこを登る時はまるで崖のように感じる。ストックなどはまるで役に立たず、両手両足で這い登るようにしてようやく山頂に立つことができた。
 上り始めてから2時間半、かなり速いペースで登ってきたつもりだったけれど、結果は雪山ガイドの標準タイムと同じだった。
 ポコリと飛び出したピークの上なので、まさに360度の景観が広がっている。
 一番最初に注意を引かれたのが、マッターホルンの様に鋭く尖った黄金山の姿である。以前、滝川から増毛に抜ける道路を一度だけ走ったことがあるけれど、その時は黄金山の姿を麓から間近に見て、「何だ!あの山は!」とビックリしたものである。
 小さなマッターホルンの隣には暑寒別岳などの増毛山地の山々が、雲に隠れながらもかろうじてその姿を見せている。
 くっきりとした青空ならばもっと素晴らしい光景だったはず、と言うことはなるべく考えないようにして、素直に周りの景色を楽しむ。
 ここでもスノーモービルの音が耳障りに聞こえてきた。近くの山の山頂付近には、スノーモービルで走り回ったような跡が何本も見えている。同じ山で鉢合わせしなかっただけ、まだましかもしれない。

山頂到着 黄金山も見えている
暑寒別岳は雲の中 360度の風景

 山頂からの眺めをたっぷりと楽しんで、そろそろ降りようとしていた時、ずっと下の森の中から話し声が聞こえてきた。
 駐車場で合った男性二人連れが登って来ているのが見える。彼らは、雪庇の尾根には上らずに、そのまま緩い傾斜の森の中を歩いてきたようである。
 私達は雪山ガイドに載っていたルートどおりに尾根沿いに登ってきたのだけれど、林道をそのまま進んで、その森の中を登った方が絶対に楽だったような気がした。
昼食タイム 下に降りて小さなピークの上で昼食にする。
 ちょうど神居尻山とピンネシリが真正面に見えて良い眺めだ。
 風も無くて太陽の陽射しも優しく、今回も山頂昼食日和である。
 帰りは男性二人連れが登ってきたルートを滑り降りる選択もあったけれど、それではせっかく苦労して登った途中の急斜面を滑ることができない。
 かと言って雪庇の上は恐ろしくて滑れないので、その尾根の裏側をトラバースするように下ることにした。
 その頃には山頂に登った時よりも雲が取れてきて、暑寒別岳の姿もはっきりと見えるようになってきた。
 もう一度山頂に登り直す気にまではなれないので、トラバースの途中に写真を撮るだけで我慢する。
 あまり下り過ぎないように注意しながら滑っていくと、ちょうど登ってきた時の斜面の上に出ることができた。
 硬い雪面の上に僅かな新雪が積もっているような状況なので、これなら気持ちよく滑られると思って飛び出したら、ちょっとした吹き溜まりに足を取られて転んでしまう。
急斜面にびびるかみさん 登る時に苦労した一番急なところでは、そこをちょっと横切っただけで、上に積もっていた雪が一気に流れ落ちてミニ雪崩れのようだ。
かみさんは怖がってそこを滑ることができず、横向きになって一歩一歩降りてきた。
 その後は林間を滑り降りて林道に合流。3連砂防ダムまではある程度傾斜もあるので、登ってきた時のトレースの中を一気に滑り降りる。
 そこから車を停めた場所までは緩やかなアップダウンがあるものの、シールが無くても登りでそんなに苦労することも無い。30分かけてのんびりと歩き、車まで戻った。
 初心者向けの山=簡単に登れる山、と言う訳ではないことを改めて教えてくれた察来山であった。



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